自分の仕事ぶりを、自分で責めるな。私に必要だったのは「傷つけない」働き方

 スイ

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20代の頃は「とにかく圧倒的な結果を出さなければ」とがむしゃらに働き続けていたブロガーのスイさん。しかし、自分を追い詰めてしまったことで、限界になって辞めるという経験を重ねてきたそう。

そんなスイさんの「働き方」に影響を与えたのはパートナーの存在。「自分とは真逆」と語る彼女の働く姿を見て、自身の働き方を見つめ直すように。そして3回目の転職を経て、心地いいと思える会社に出会えたというスイさんに、これまでの経験を通じて感じたこと、これからのことを寄稿いただきました。

成長を求め続けた結果、疲弊してしまった

「あなたは悩みたくて悩んでるように見えるし、自分できついほうを選んでる」と、ある友人に言われたことがある。20代も終わりの頃だ。その時私は俯瞰した意見やアドバイスを求めていたわけではなく共感してほしかっただけなので、大変に腹が立った。

しかし、今改めて振り返ってみると的を射ていると思う。20代のうちに、転職を2回し、3社で働いた。どの会社も最後は仕事のし過ぎで会社が嫌になったり、メンタル不調になりかけたりして辞めているからだ。

1社目の会社は長時間労働が蔓延するベンチャー企業で、終電まで働く日も多かった。いくら就職氷河期の再来といわれていた時期の就活だったからといって、なにも最初からそんなハードモードの会社を選ばなくてもよかった気もする。

2社目の会社には、「スキルアップしたい」という目的で入社したが、なかなかに過酷な環境の企業だった。「俺が成長させてやるよ。ここで3年頑張れたら一人前になれる」とその時の上司は私に言った。何度も繰り返されるその言葉は洗脳のようだった。必死に働いたが、それでもうまく成果が出ず、態度が悪いといって怒鳴られたり、細かく行動をチェックされたり、反省文を何度も書き直させられたこともあった。最終的に死にたくなってしまい、辞めることになった。そこで働いているとき、ずっと私は「成果を出せない自分」を責め続けていたし、辞めたあとも「上司に言われたように3年頑張れなかった。本当に私はぽんこつだ」という絶望を長いこと背負うことになった。

3社目の会社は、平凡な、いい会社だと思っていた。とても評価をしてもらった。給料も上がり、満足していた。順調なはずだったのに、会社のあり方への不満を抱いた時「誰よりも仕事ができなければ偉そうなことを言えない」と思い込んだ。そうしてどんどん自分から仕事を背追い込んだ。黙々と仕事をする私の姿もあってか、上司も他の人の炎上案件をどんどん私に回してくるようになった。最終的にキャパオーバーの仕事を抱え込むことになり、またしてもメンタル不調寸前まで追い込まれた。

根底にあったのは「成長への強迫観念」「自信のなさ」。どちらも、仕方のないことではあったと思う。

私は同性のパートナーと長いこと付き合っていて「結婚して子供を作って家族で助け合いながら幸せに暮らす」みたいなオプションが最初からなかったから、「自分で自分を食わせられるようにならなければならないと」という思いがとても強かった。

生来の、そして、おそらく家族との関係のなかで増幅された自己肯定感の低さや自信のなさは「とにかく目に見える形で成果を出す」ことでしか、埋められなかった。

仕方のないことではあったが、20代が終わる頃にはそんな生き方に少し疲れてしまっていた。

食卓で語り合う、お互いの「働き方」について

そんな自分で自分を追い詰めるような働き方をしてきた私と、10年以上交際を続けているパートナーは真逆の働き方をしている。

よく食卓で働き方や仕事の話をするのだが、私が「つらい」「死にたい」と言っていた時も彼女は親身になって支えてくれていた。会社やパワハラ上司のことは当時も悪く言っていたが、一方で、そんな会社でも私が頑張ろうとしていることを尊重してくれていたように思う。当時のことを思い出して、最近こんなことを言っていた。

「君は、いわゆる『やりがい搾取』する会社を選びがちだよね。正直、君がこれまで働いてた会社、私だったら全部3日で辞めている」と。

そういうことを、彼女は実際にやる。

つい先日、異業種・未経験職種への転職をしたばかりの彼女だが、入社した会社を実際にすぐ辞めた。そしてすぐ、同時期に内定を受けていたが辞退した会社に電話をかけ、再度内定をもらい、今度こそ楽しそうに働いている。

詳しく話を聞くと、入社して1日目から残業があり「1カ月後にはこの程度じゃ済まないよ、残業」と先輩から言われたそうだ。有給休暇も、ほぼ使えない環境らしい。さらに入社して間もないのに仕事に関すること以外で誰からも声をかけられず、10人以上に書類を配って回っても誰にも「ありがとう」を言われない職場だったのだそう。もともと残業の少なさを重視していたことと、ジョブチェンジをして1から仕事を覚えなければならないことに不安を覚えていた彼女は、「ここで働き続けたらメンタル不調になる」と感じ、即座に辞める選択をした。

彼女は「我慢はしない」し「自分に合わないことはしない」、「やったことに対して正当な対価を求める」と決めている。そのぶん、給料分はちゃんと仕事をしようとする。仕事は好きじゃないから究極的な効率化をするらしいけれど、やることはやる。加えて、将来的な仕事の選択肢の広がりができるよう「入った会社で身に付けられること」を考えて仕事選びをしている。

私だったら最初に「このままじゃダメかも」と思ったとしても、「もう少し我慢して頑張ったらなんとかなるかも」と結論を先延ばししたり、「すぐ辞めることへの罪悪感」が頭をよぎったりして、逃げ出すのを躊躇してしまう。でもそんなふうに働き続けていたら、結局、追い込まれてしまった。

働く上で重視していることや、考え方は人それぞれだ。だから、彼女の行動や思考が100%正しいということは決してないと思う。そんな彼女の姿勢を見ていて、「私は本当にこれでいいんだろうか」と考えさせられることも多い。

がむしゃらに働く瞬間があってもいい。けれど、傷つくな

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彼女の働き方のスタンスを間近で見てきたことや、これまでの経験から「今度こそは間違えない」と決めて臨んだ3回目の転職。

入社できた会社は私がもともと入社したいと思っていた、社会的に意義のある事業を行っている会社だ。リモートワークが育児中などの事情がない社員も全員できるし、精神的に成熟した人の多い会社だ。マイノリティに対する理解も深いので、私は面接の時からカミングアウトをしていたし、普通にパートナーの話が会社でできる。

私はこの転職で、ようやく「自分には価値がなく、とにかく成長できる環境に行って、目に見える成果を出さないと駄目だ」という思い込みから少しだけ解き放たれた。少し前の私だったら、「あの憧れの会社に応募するのはまだ早い。もっともっとスキルアップしないと」と思っていただろう。でも、応募することができて、面接では等身大の自分を出せて、内定までもらえた。

この経験を通じて、私はただでさえ自分を追い詰めがちな性格で、真面目で、ちゃんと仕事をやらないと気が済まない。だったら、真摯に仕事をしていれば、自然とできることは積み重なっていくはず。それをきちんと見せていけばいいんだ、と腑に落ちた。

キャリアという言葉の由来は「轍(わだち)」(馬車の通った道に残る跡)というのをどこかで見たことがある。

つまり、自分が歩いていれば自然とその後ろに道はできていくということ。だから、もちろん目の前の仕事にしっかり取り組むことと、やれることを広げることは大事だけれど、「将来のために」と必死になって自分を傷つけてまで仕事をする必要はない。

舗装された道を元気よく歩く時もあれば、ジャングルをかき分けて道を作り、なんとか歩いてきた時もあるだろうし、砂漠で一滴の水もない中でヨロヨロしながら前に進んだ時もあっただろう。一緒に歩いてくれる人がいる時もあれば、そうでない時もあっただろう。

そうやって今まで歩いてきた道を時々振り返って、転職などの大きな節目には、人に「いいね」と思ってもらえるように整えてみせてあげればいい。そう思えるようになった。

自分にとって最適な、楽しくなる道のりを求めて

私の選んできた道は決して楽な道ではなかったように思う。ぜんぜんキラキラしていない。涙と鼻水をたらしながら這いずって、やっと少しのスキルと「どこでもやっていける」という自信が得られてきた。

しかし、全てが満足なわけではない。

今の会社は素晴らしく環境が良い一方で、これまでいた会社より給与水準が低く、退職金制度もない。

私はハロー! プロジェクトのアイドルちゃんたちを応援しているし、おいしいご飯が大好きだし、文房具や本も好きでいろいろ買い集めたいタイプなので、お給料が少ないことが生活の幸せ度の低下に直結するということに最近気づいた。

「節約頑張ってみて、お給料が上がるまで一時的に我慢」と思っていたけれど結構これがつらかったりする。

でも、会社自体も、業界としてもとても好きなので、できれば長くいたい。だから今は、副業でなんとか稼いでいけないかなと思っているし、投資信託や保険で少しでもお金を増やせるような工夫もはじめた。

この時代、選択肢は本当にたくさんある。その選択肢を、組み合わせることもできる。お金・やりがい・時間・人間関係などのさまざまな資源の、最適なバランスを、地道に、トライ・アンド・エラーで探していきたい。

著者:スイ

スイ

ブロガー。LGBTの「B」としての生活と、おたく活動と働き方の両立について文章を書く。エンタメ(ハロプロ、舞台、漫画、小説など)が好き。
Blog:七転び八起き