
今年のひな祭りの様子
はじめまして。桜口アサミ(id:asami81)と申します。インターネットでは13年くらい前からasami81というハンドルネームでさまざまなサービスを使っています。
81って何だ、とたまに聞かれます。わたしは1981年生まれ。ハンドルネームをつけたとき「歳をごまかすような女になりたくない!」という、若いからこそ持てる意識高い系発想でつけてしまいました。最近は8月1日生まれということにしようかな、と考えています。
わたしは26歳のときに結婚し、すでに起業していた夫と地元の関西で2人暮らしでした。28歳のときに東京のネットベンチャーでメディア立ち上げメンバーに加わるため、わたしが東京へ単身赴任となり週末婚へ突入。
30歳になった2011年7月、長男出産。それを機に関西に戻り、在宅ワークを中心に仕事(正社員)をしていました。2014年1月に長女、2015年11月に次女を出産しています。
3人目の出産直前から、夫が仕事で東京や海外に行くことが増え、「ほぼワンオペ(1人育児)」がスタートしました。
そして現在。36歳となったわたしは東京で正社員として渋谷のベンチャー企業で働きながら、3人の子どもを引き続きワンオペで育てています(夫は基本週末に帰宅しますが、海外出張も多く、そのときは1ヶ月近く帰ってきません)。2017年に兵庫→東京へ引越したのですが、このとき実は転職活動・引っ越し・そして保活を同時進行で行っていました。今回は、このときの出来事を振り返っていこうと思います。
3人目出産。わたしの心境の変化「人と働きたい」
3人目を産んで1年数ヶ月がたった頃、そろそろ在宅ワークではなくどこかに本格復帰しようかなと考え始めました。その理由は「人と働きたい」。
育児を優先できる働き方がしたくて正社員ながら在宅ワークでできる企業に所属していましたが、約6年間たつと、単純に人が恋しくなったのです。
夫は忙しく、あまりおしゃべりではないためわたしが求めるコミュニケーションが取れません。でも、不満を言っていても仕方がない。わたしも組織に戻って働くことができればコミュニケーション欲求も満たされるのでは? というのが動機でした。
家から通える大阪や神戸で職をリサーチしていたところ、ある日メッセンジャーでチャットをしていた友人から「東京においでよ」と言われました。最初は「子ども3人もいて、しかもワンオペで働ける会社なんてないでしょ。そもそも東京で育児なんてしんどそう」とわたしは言っていました。
しかし友人は「東京のWeb系企業の多くは人材不足。子持ちが不利にはならないよ。アサミのような経験者なら絶対にどこか決まるよ」と言うではありませんか。
「ならば探してみよう」と思い始めたが最後。もはや東京で仕事をしているイメージしか持てなくなったのです。「子どもを育てるなら自分の親も近い場所で」「都会よりも少し田舎で」という、謎の理想を持っていましたが、それよりも「やっぱりWebが好きだから、東京で働きたい!」という気持ちの方が大きくなっていきました。メッセンジャーでの会話から1週間後、すでに引っ越し先も探し始めていたわたし。
それに実際に転職先を探してみて、東京は非常に選択肢が多いということを痛感。オンラインでの転職活動をしていましたが順調に進み、Skype面接などで数社受け、東京で仕事を探し始めて3週間以内にはほぼ内定という会社が数社あった状況です。
とはいえ、当時は転職活動、引っ越し作業、子育て、仕事をほぼワンオペで同時進行していたので、目が回りそうな毎日(夫は海外出張中だったため、物理的にサポートが難しい状態でした)。毎晩睡眠時間は4時間ほどでした。在宅ワークじゃないと倒れていたかも……。
保活という一大プロジェクトが始まった
転職先を東京にするとして、問題は保育園です。
認可保育園の場合は原則、住んでいる地域にしか申込みができません。関西から引っ越す身としては「保育園が決まったら引っ越し(物件)を確定させたい」という思いがあったため「なんと厳しい……!」と感じました*1。
そういうわけで、物件を決める前にまずは「できるだけ入園確率が高い地域を探す」というミッションが始まりました。仕事でいうとリサーチ段階です。「優先順位」「ToDo」を洗い出し、整理。
わたしの場合、まずは引っ越し先を都内への通勤が可能な神奈川・千葉付近か、23区内かで決めることに。
神奈川・千葉(補足:都内にも通える範囲の地域で「23区に比べると」という結果です)
- 家賃→安い◯
- 保育料→高い。2倍くらいする地域もある✗
- 子どもの医療費無料期間→年齢制限や収入制限が厳しめ✗
- メリット→車を所有できる△
- デメリット→通勤時間が長い✗
23区
- 家賃→高い✗
- 保育料→安い。ただし、区によって価格差あり◯
- 子どもの医療費無料期間→年齢制限や収入制限が緩い◯
- メリット→通勤時間が短い◯
- デメリット→車が所有できない△
補足:◯……個人的に非常にいいポイント/△……いいけどなくてもいいポイント/✗……個人的にだめなポイント
このように項目を洗い出し、◯が多い方の23区にまず絞ることができました。項目も、◯✗の結果も家庭によって異なると思います。
次に「保育園の入園確率が高い地域を探す」に移ります。ここでも、また項目を洗い出し同じような作業をしていきます。
- 保育料
- 新設予定の保育園がいくつあるか
- 翌月の空き枠に対して申込み者数を教えてくれるかどうか
他にもたくさんありますが、最終的になるだけ◯が多い地域に入園申込みを行いました。
引っ越し前でまだ関西に住んでいたので、市役所経由での提出です。物件の契約書も同時に提出する必要があったため、地域を決めたあと、不動産屋さんで働いている友人に猛スピードで手続きを依頼し、間に合わせてもらいました(大急ぎで東京に物件内覧に行き1日で5件見てその中から今の家を決定)。
本当に、保活は仕事のプロジェクト進行と一緒です。
やるべきことを洗い出し、リサーチ、優先度、妥協点。それをメンバー(夫)と話し合い、クライアント(子ども)からのクレームも処理しつつ、最終的に皆が幸せになるところに着地させる……。
今、仕事に全力を出している保活前の方には「そのスキル、絶対に保活で活かせますよ!」と声を大にして言いたいです。

保活をしていたときのメモ
全員、認可保育園に入園決定! 決め手は?
申込み期限ギリギリで滑り込みセーフ。無事に申し込めたことに一旦安堵(あんど)しましたが、決まらなかったらまた認可外保育施設を探さなければいけませんでした。
しかし、無事に3人とも認可保育園の入園決定通知が到着!
決め手としては以下の3つだと思います。
- わたしが在宅ワークとはいえ正社員で就業証明書があったこと
- 夫がほぼ不在であること(単身赴任証明書を会社から発行してもらいました)
- 子どもが3人いること
特に3つ目が大きいポイントであると考えています。保育園入園は加点制で、点数が高い人ほど入園確率が高くなります。その中に「きょうだいが在園児である場合」は加点される地域が多くあるようです。
特に新設された保育園の場合、4歳児以上の入園児童は比較的入りやすいと言われています。そのことから、長男(当時5歳)が合格し、それに伴い長女(当時3歳)も優先されたという流れかと推測しています。
とはいえ、やはり激戦と言われる1歳児クラスは難易度が高く、長男、長女2人が入園する保育園では空きがありませんでした。末っ子は別の小規模保育施設にお世話になることになりましたが、そこも認可保育園。自転車で送迎が往復2時間かかろうとも、認可保育園に入れただけで万々歳! と感じました。
保活でわたしが実際にやったことや使ったツール
保活が成功して思うことは、保活=情報戦ということ。単純にインターネットの検索力に比例して情報が入ると言ってもいいでしょう。
実際にわたしも少しでも疑問に思ったら検索したり、うまくいった人のブログを読んだりしました。1番よく見ていたものは以下の2つです。
いくつか保育園の目星をつけて、物件を探す際には「保育園と物件の距離」を地図で比較したいという思いが出ました。そのときも検索して非常に便利なツールを発見。
検索力というのは保活でもかなり役立ちました。しかし、検索力だけでは解決しない問題があります。じつは、各地域の保育園情報などは最新のものが全てインターネットに掲載されていないのです。
23区でいうと最新情報を持っているのは区役所。でも更新はだいたい月1回くらいです。
そこで電話の登場です。とにかく最新情報は電話をかけまくるしかありませんでした。「そんな大事な情報、ネットになくて電話で回答って、電話をしなかった人はすごく不利になるのでは……」という情報に山ほど出会いました。
困ったのは、同じ区に電話しているのに担当者によって回答が異なるというパターン。この場合も、質問を繰り返して正しい情報を手に入れるしかありません。
わたしは遠方からの引っ越しだったのでできませんでしたが、実際に区役所に通って情報収集して保活に成功した友人もいます。
ネット社会になったとはいえ、最新情報は電話や訪問で手に入れるしかない保活。仕事や育児で忙しいと非常に困難です。
1番辛いのは、これだけ頑張っても合格するかどうかは時の運、みたいなところがあります。仕事の方が頑張れば頑張るほど報われるよなぁ……と何度も思いました。
女性の社会進出が進んだ日本ですが、まだまだ育児は母親の役割という文化が根強く残っていると思います。世の中の働く母は疲れています。そして保活でも疲れます。
そんなに大変だったらもう働くのは諦めよう、となる人の気持ちも分かります。これは日本の生産性を下げていると言えるでしょう。
死なない・死なせない。そして「やらないこと」を決める
仕事をしながら、ほぼワンオペで3人の育児をしていると諦めないといけないことが増えるのは事実です。例えば平日にある子どもの習い事には通わせてあげられません。小学校お受験も難しいでしょう。毎日たくさんの絵本を読み聞かせてあげたくても時間がありません。
仕事をしながら全てを叶えようとすると母親である自分が倒れてしまいます。理想を高く持つと、現実とのギャップに苦しむことになります。子どものために、自分の身体も心も大切にしなければいけません。
とにかく(自分は)死なない・(子どもを)死なせない。
これだけを目標にし、これがちゃんとできていれば良しとしよう、と日々言い聞かせています。
そのために、「やらないこと」を決めて、エネルギーを適切な場面で使うように心掛けています。
家事をする時間があるなら本を読みたい。わたしがいつも考えていることです。
本を読む以外にも、マッサージに行ったり美容院に行ったり、好きな映画を観たり漫画を読んだり。自分が好きなこと・自分にしかできないことを優先し、家事など外注できることは外注しています。
さいごに
地方から東京に引っ越して保活をするというパターンの人が、インターネット上ではあまり見つけられませんでした。ただ、周囲にも社会的にも、夫の転勤に伴い、子連れで引っ越すというケースは非常に多く見られます。
そういった家庭の多くが「奥さんが一度仕事を辞める」という選択肢をとっているんじゃないか、と思います。
保活というのがあまりに難易度が高く、認可保育園への入園可能性も低い。そういうイメージがあるため「やる前から諦めた」という友人もいました。
現状の日本は、保育園問題がまだまだ大きく、女性の社会進出は本格化していないと実感しています。子どもを産んでも当たり前に社会へ復帰できる、そんな社会が実現することを願っています。
まずは自分自身がこういった保活体験をネット上で発信することで、その一歩になればいいなと思います。
全ての女性が「母になっても仕事を続けるべき」とは決して思いませんが、「仕事をしたいけれど諦めている」という人が少しでも減る社会になるといいなと思います。
著者:桜口アサミ(id:asami81)
asami81です。インターネットとお寿司が大好きです。
家事の外注など、「やらないことを決める」については、わたしが執筆したこちらのコラム記事も読んでいただけますと幸いです。
Blog:iGirl
編集/はてな編集部
*1:実際は物件確定していなくても申込むことは可能ですが、選考のための点数指数が非常に低くなり入園は困難です