はたらく女性の深呼吸マガジン

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「漁師の妻」と「エンジニア」の自分、2つの世界での暮らしで気づいたこと

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こんにちは。林由子(はやし・よしこ)と申します。私は結婚を機に福岡県の大島という人口約700人の離島に移住し、現在は漁師の夫と猫たちと一緒に、島で暮らしています。また、結婚前から勤めている福岡市内のIT企業で、システムエンジニアとして働いています。

島で暮らす漁師の妻である自分と、都会のIT企業のシステムエンジニアである自分。周りの環境や考え方なども違い、2つの世界に生きているように感じることがあります

私と夫の生活リズムの違い

私は週に1回、福岡市内の会社に出勤して、他の日は島の自宅でリモートワークをしています。基本的に平日は10時から19時まで、PCに向かって仕事をしています。

一方漁師である夫は、仕事が天候に左右されるため、生活リズムが一定ではありません。漁に出る日は夕方ごろに出航し、夜に漁をして、朝方に帰ってきます。漁に出られない日は船や網の修理の仕事をしたり、休んだりします。

食事の時間は夫に合わせているので、夫が家にいるときは夕食を作るために定時で仕事を切り上げますが、漁に出る日は自分一人だけなので少し遅くまで仕事をすることがあります。反対に、仕事関係の打ち合わせや飲み会などのため、私が月1回程度福岡市内に泊まり、島に帰ってこないこともあります。

夫婦の間でもしイライラすることがあっても、物理的に会わなければ気分が落ち着くので、お互いたまに留守にするのはいいことだなと思っています。

結婚・島への移住を決めるときに考えたこと

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▼「エンジニア」という自分の仕事をどうするか

結婚するときに、自分の仕事をどうするかについて考えなければなりませんでした。

夫は「ワカメをとる仕事をすれば?」と言っていましたが、それまで10年間デスクワークしかしていない私には、さすがに海に潜る仕事は無理だと思いました。エンジニアの仕事を続けていくためにネックになっていたのはフェリー含め片道2時間かかる通勤でした。私の頭の中に「島でリモートワークをすれば辞めなくていいのでは……?」という考えが浮かびましたが、その当時会社にはリモートワークをしている人はいませんでした。そこでリモートワークの提案書を作り、許可を取って解決しました。

▼ 子育てのイメージが怖くなくなった

以前は子育てするのが怖いと感じていて、子供を持つかどうかすら迷っていました。

子育てについて話を聞いたりネットの情報を見たりすると、ギスギスした印象があり、マイナスイメージを持ってしまっていました。でも、島にはそういう事態があまりなさそうです。保育園に入れない問題もありません。今子供はいないのですが、できれば欲しいなと思うようになりました。

教育格差は少し気になるところでしたが、「地方と都会の格差」というより「親の収入による格差」の方が影響が大きいな、と思って気にしないことにしました。塾や習いごとをするところがないというデメリットよりも、顔見知りが多く子供にも親にも優しい地域に住むというメリットの方が大きいと思っています。

島での生活が落ち着いてから、あらためて考えてみたこと

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▼ 「仕事」に対する気持ちが楽になった

以前は仕事で大きなストレスを感じても、生活のためには絶対に仕事を辞められないと思っていました。でもワカメをとったり民宿の手伝いをしたり、「他にも仕事はある」と思うと、少し気が楽になりました。

私は仕事や生活のストレスを溜め込みやすいタイプなので、もし移住していなかったら、今ごろは何もかも放り出して放浪していたかもしれません。

▼ 島の仕事と働き方

島の仕事は主に漁業です。漁業には人手が必要な仕事も多いので、みんなそれぞれが社長のような感じで人の手配や売上管理などをしています。島の人口は約700人ですが子供とお年寄りを除いた労働人口は少なく、人手の確保が大変そうです。

移住前は島にはあまり仕事がないと思っていました。でも、民宿や海産物の加工など、ちょこちょこと漁業以外の仕事もあります。自分が考える「仕事」の枠が狭かったんだということに気が付きました。また、大島は2017年に世界遺産になるかもしれない*1のですが、それを見据えてカフェやレンタカーなど新しい商売を始めている人がいて、そのバイタリティに刺激を受けています。

最近は、「仕事は自分で作ればいいのかも」「思い切ってやればできるのかも」と前向きに考えるようになりました。

▼ 島の女性の働き方

島に移住して、それまで知り合うことがなかったさまざまな年代の奥さんと話す機会ができました。

70代~80代の奥さんたちは、昔は海女さんとして海に潜っていたそうです。夫婦で船に乗って漁をすることもあり、男性女性あまり関係なく、同じ仕事をしていたようです。その後の時代に専業主婦が当たり前になって、今はまた共働きに戻りつつあるようです。

最近「主婦が活躍する、女性が活躍する」というキーワードをよく目にします。実は女性はずっと前から活躍してはいて、今の時代に「普通」とされている働き方をしようとすると、子供がいる場合に難しくなる、ということなんだと思います。

「子育てしやすいような施策」を女性だけでなく男性も対象にして、男性も女性も同じように「子育てと仕事の両立問題」に取り組んでいけば、この問題が解決する日も近いかもしれません。

▼ 漁師とITエンジニア、どっちが家事育児に協力的に見える?

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ITエンジニアの男性って先進的なイメージで、家事や育児に協力的な人が多いように感じますよね。それに比べて、漁師ってなんとなく「粗野なイメージ」がありませんか?

私も夫と知り合うまではそんなイメージを持っていました。でも、私の結論は「どっちも同じくらい協力的」です。

漁師同士で話しているのを聞くと、確かに「喧嘩してるのかな?」と思う口ぶりの場合もあります。でも基本的には優しい。もちろん個人差はありますが、家事育児も普通にこなします。魚料理は夫担当の家庭が多いですし、シケで漁に出られない日にお父さんが子供と外で遊んでいるのを見るとほっこりします。

人との付き合い方で学ぶことがたくさんある

島では、都会よりも「表立って対立すること」「はっきりと意見を言うこと」を避けているように思えます。小さい島だと対立が発生するとお互いに面倒なので、生活の知恵なのかもしれません。

私はおかしいと思ったことや疑問に思うことを本人に直接言ってしまう方なのですが、そういうやり方もあるのだな、と学びました。

▼ “飲みニケーション”は自宅や集会所での宅飲みで

人付き合いの濃密さも違います。夫の同僚はご近所さんでもあり、どの家に住んでいるか、どんな家族構成かなど、みんな大体知っています。普通の会社の場合、同僚の奥さんや旦那さん・子供・両親まで会ったことがある人ってそういませんよね。

島には居酒屋がないので、“飲みニケーション”は誰かの自宅や集会所での宅飲みです。夫たちが忘年会をしている時にその奥さんと子供たちで集まって飲み会をしたのは楽しかったです。どの子がどのお母さんの子供かわからないくらいに入り乱れ、ワイワイとにぎやかに過ごしました。

▼ 当事者意識を持って「できることを考える」ようになった

島ではいろいろな出来事と自分との距離が近く、その本質が見えてくるように思います。

この前、島で火事が起きて、夫と島の人たちが火を消しに行きました。島には消防署がないので自分たちで火を消さないと燃え広がってしまいます。そのために、日ごろ消防団で訓練しています。

都会だったら「その役目の人」がちゃんといるので、自分はやらなくていい、関係ないと思いますが、都会よりも人が少ない島の中ではいろいろなことに自分が当事者として取り組まないといけません。

私にはそれまでの生活で自然と「私には関係ないからスルーでいいや」という考え方が身についてしまっていたのですが、最近は「何か私にできることはないかな?」と考えるようになりました。そしていい方法を思い付いたら勇気を出して行動してみます。行動するのは難しいですが、うまくいくと嬉しいし、うまくいかなかった場合も周囲から助言がもらえたりします。

これは仕事でも同じです。会社も島と同じように小さなコミュニティ。当事者意識を持って自分ができること、いい方法を考えることが大事だと気が付きました。

2つの世界との接点を生かしながら

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島に移住する前は、人間関係や生活リズムなど、島でうまくやっていけるかどうか不安でした。でも、新しい生活が楽しみでもありました。実際に来てみると、最初は不便さに驚いたりもしましたが、周りの方に助けられて島で普通に生活できるようになりました。人の優しさに本当に助けられています。

せっかく2つの世界と接点を持ったのだから、それぞれの世界で学んだことをもう一方に生かせればいいなと、これからもチャレンジしていきたいと思います。

文と写真:林由子id:hayashi_77

林由子

離島在住ITエンジニア。福岡市内のIT企業に所属し、週に1回は会社に出勤しつつ島の自宅でリモートワークをしています。
漁師の夫とたくさんの地域猫を愛でつつ暮らしています。飲み会が大好きです。

ブログ:hayashi_77のブログ
Twitter:https://twitter.com/hayashi_77