
ジモコロ編集長のだんごです。そろそろマイホームが欲しいなと思い始めたのですが、物件サイトを見てるとめちゃめちゃ高くてびっくりしてます。
そんなとき、ジモコロ初代編集長で長野の田舎に住んでいる柿次郎と話していたのですが……
「家ってこんなに高かったんですか?」
「すごいよね。材料費の高騰や人手不足、さらに円安や戦争も起きてトリプルパンチどころじゃない。『若者が家を買えない』みたいなニュースも最近見るし」
「僕の住んでいる神奈川の辻堂エリアでは、中古の戸建てでも便利なエリアは4000〜5000万円以上は出さないと買えないのでは?って感じで。遠い目になってます」
「とにかく全国的に上がってるからね。地方都市でもマンションは高騰傾向にある。でも、田舎にはまだ手の届く安い物件はあるし、高齢化で空き家は増え続けるから、ジモコロらしく自然とともに暮らす選択肢を提案したい!」
「住宅事情がこうなってくると、家建てたり買ったりするなら田舎だ!って人も増えてきそうですね。とはいえ、都会と田舎では家の探し方も変わってきそう」
「そうだね。あくまで実体験ベースになるけれど、今回は俺が長野の田舎で家を買った話からいろいろお伝えします!」
<この記事の目次>
内見を重ねて「家に求める条件」を具体化しよう

長野県北部の豪雪地帯・信濃町(しなのまち)に4年前から住む柿次郎。中古の平屋を買い、リノベーションした
「物件サイトを見はじめて、そもそも『家ってどうやって探せばいいんだ?』となってて。ネットに情報はいくらでもあるけど、『自分に合った、いい家』との探し方というか。柿次郎さんはどうやって今の家に?」
「俺もいきなり今の家を買ったわけじゃないんだよね。東京から長野に移住したのが2017年で、最初は長野市の賃貸に住んでいて、庭付きで家賃5万円でした。70平米ぐらいあった」
「それはそれで安い! まずは賃貸スタートだったんですね」
「今思うと、段階を踏んでよかったと思っていて。東京に仕事で出ることも多かったし、長野駅に車で10分もかからないアクセスのよさを意識して選びました。でもいつか自然の中で暮らしたいっていう願望があったから、2022年頃に本格的に物件探しを始めたんだよね」
「コロナの3年目ですね。今みたいな住宅価格の高騰が来る前」
「そう、ウッドショックがやってきたぐらいのタイミング。コロナで地方移住が一気に増えてたけれど、長野の田舎の物件はまだ多くて。トータル2〜3年は物件情報を探してたと思う。もともと物件サイトを見るのが好きだったし」
「そういや当時『こんな面白い物件があった! 誰か移住しない?』とかよく言ってましたね」
信濃町の数少ないきれいな賃貸物件。夏の暑さに備えて、逃げ込むのもアリ。保険としての冷涼地賃貸。
【Douce】信濃町の絶景を独り占め!!アパート登場☆古間【No.270-1B】 https://t.co/WDFcaDWM73
— 徳谷 柿次郎 (@kakijiro) March 24, 2026
SNSでも物件情報を投稿
「人を移住させるのは趣味みたいな感じだからね。トータルで10組ぐらい移住させてる。よさそうな物件があれば現地を見に行ったり、周辺情報と相場を調べつつ「あの物件どう思います?」って地元の知り合いに聞いたりしてた。すると『このエリアの方が雪が少ないよ』とか『ここは利便性がいいよ』とか教えてくれる」
「やっぱりリアルの情報は大事なんですね」
「超大事! 特に長野は雪がどうとか、実際に住んでみないとわからない情報がいっぱいあるからね。そのなかで、今住んでる信濃町が自然暮らしをするなら最高だな〜と候補になっていった。
それである時、信濃町にある野尻湖の湖畔沿い物件が急に出てきて。あの辺は国立公園のエリアだから中々出てこない、超レア物件」

野尻湖ではSUPもできる
「湖畔沿い! 住もうと思ってもなかなか住めない場所では」
「実際に見に行ったし、最初は買う気満々だったけど、そこで気がついたんだよね。自分が家に求める条件に」
「条件とは?」
「その物件は湖畔沿いだから、景色もすばらしいし、別荘としては最高だった。だけど、畑はなくて。だけど自分の『自然の中で暮らしたい』には『畑をやりたい』もあったことに気づいた。そこがちょっと違うかもなと」

念願の畑を手に入れ、嬉々として手入れする現在
「なるほど! 実際に物件を見ていくと、本当に自分が求めるものが見えてくる」
「そう、やっぱりいろいろ見てみないと具体的な条件はわからない。それに私道が含まれていたので除雪が大変なのもネックで、湖畔沿いの物件は諦めました。とはいえ、東京の興味ありそうな知り合いに紹介して、今はその人の家が建ってるんだけどね」
「(人に物件紹介するの、ほんとに好きなんだな……)」
「二段階移住」のススメ
「そのあと家探しはどうなったんですか?」
「知り合いのお母さんが『いい物件あるわよ』って教えてくれた。信濃町に住んでいて、物件情報を見るのが趣味の人なんだけど」
「物件情報見るのが好きな人、意外と多いな」
「めちゃめちゃ多いよ。土地が約400平米で、上物が100平米に満たないコンパクトな平屋。土地が四角くて扱いやすいし、野尻湖まで歩いて行ける。10年以上前から通っている信濃町の宿泊施設『LAMP』も近い。ここなら田舎でも友だちが勝手に遊びに来る場所だなぁと」
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野尻湖ではスモールマウスバス釣りの聖地でもある
「まさに理想の物件が転がり込んできた!」
「そう。前回からの反動で『ここだー!!』ってすぐに決めた。結果的に『二段階移住』になったのが家探しにおいてもよかったなと思ってて」
「二段階というと、一度、長野市を挟んでの信濃町ってことですよね」
「そうそう。長野市を拠点にしながら信濃町のお店に通って知り合いを増やせたし、雪の多さについても事前にリサーチできた。まずは地方の主要都市に何年か住みながら、より自然の中にある物件探しをするのは結構オススメです」

「いきなりガチの田舎へ飛び込むより安心ですね。ちなみに信濃町に移住した人の中には、まずは賃貸って人もいるんですかね」
「田舎はどうしても賃貸の物件は少ないけど、いるにはいるね。最初の1年は賃貸で借りたあとでオーナーさんに交渉して、その物件を購入したケースもある」
「へー! それも二段階移住のひとつですね。住み心地を知った上で買うのは賢い」
「いずれにせよ、漠然とした『田舎暮らししたい』の解像度を上げて、自分はどんな暮らしがしたいか?の優先順位を3つくらい考え抜くこと。これが第一歩だと思います!」
<柿次郎の条件トップ3>
①庭から大きな山が見えること
②それなりの規模で畑ができること
③集落でも隣同士が離れていること
倉庫付きの物件を探すべし

リノベ前の信濃町の家
「あと、田舎に家を買う人にアドバイスしたいことがあります!!! それは『倉庫付き物件を選んだ方がいい』ってこと」
「倉庫。田舎だと家も広いし、都会みたいに収納が足りないとかはなさそうですけど……」
「田舎暮らしって、必ず草刈りとか除雪とか畑がセットになってくる。俺が信濃町に買った家は倉庫がなかったんだけど、すぐに『除雪機を置く場所がない!!!』ってなったんです」
「外に置いちゃダメなんですか?」
「雪に埋もれて終わりです」
「雪国ゆえのトラップ……」

豪雪地帯の信濃町では、一晩で車もこんなことに
「あとは車庫もあると最高。冬は車に積もった雪下ろしだけで30分ぐらいかかるから、ガレージもいまだ憧れている」
「あとから倉庫や車庫をつくるとお金も結構かかります?
「たとえば昔は200〜300万円で建った倉庫も、今建てようとしたら500〜1000万円ぐらいする。つまり、倉庫や車庫の付加価値がすごく高くなってるんだよね。
仮に500万円で上物(うわもの)の建物は古いんだよな〜って田舎の家でも、今建てると1000万するような倉庫と、中古で買ったら150万する除雪機と、古い農具が付いてくるとします。
それはもう、異世界転生で言ったら最強装備でスタートみたいな状態です。絶対にお得!」
「装備をゼロから揃えた人が言うの、説得力あるな」
「だから倉庫はマストだし、あると釣りとか登山とかの自然の遊びも拡張する。マジでオススメです!」

倉庫はあとから作りました
家庭円満の秘訣は寒さ対策にあり!

「古民家って寒いイメージがありますけど、リノベーション前提だったら問題ないですか?」
「うーん、田舎暮らししたい人って予算を2000〜3000万円に抑えたい人が多いと思うんだよね。都市生活を諦めたリターンは、費用を抑えられることも大きい。寒さ対策には断熱材や機密性も大事もだけど、重要なのは窓とサッシ。ダブルなのかトリプルなのかが超重要です。
だけど材料費、建築資材もかなり高騰していて、いまはリノベーションの費用も上がってる。古民家のロマンもあるけど、予算もよく吟味しながら考えたほうがいいと思います」
「都会で家建てるみたいな金額になっちゃうと本末転倒感ありますしね」
「子どもがいるなら広いほうが絶対にいいよ。都内で80平米を超えるマンションは手が出ないでしょ。 自治体によっては断熱の補助金もある。信濃町の知り合いは二階建ての中古物件を買って、一階の居住スペースだけをしっかり断熱してリノベ費用を抑えてるね。
いずれにせよ、燃料代も年々高騰してるし、長年住むトータルのコストで考えれば、断熱はしっかりしたほうがいい。 温暖なイメージの高知県は雪が降らないけれど、冬はそれなりに冷える。なのに断熱がまったくされていなくて、家が底冷えするパターンもある」
「僕の岡山の実家がまさに底冷え状態ですね〜。断熱された家に慣れちゃうと、昔の家は寒い」
「家族での移住だと、女性側の不満は寒さ、冷えから来ることが多いとも聞きますね。家庭円満の秘訣は寒さ対策です!」
「家を建てるときは断熱をケチらないようにしよう」
いい物件情報は、いい人間関係から

「柿次郎さんの話を聞いてると、いい物件や地元の情報をくれる知り合いって大事だなと。そういう人って、移住先でどうやったら出会えますかね?」
「物件に関していうと、やっぱりその土地の不動産屋や工務店が情報を一番持ってると思う。あとは地元で活動してる建築家や設計士さん。そういう土地に根付いてる人たちのところに、いい情報は集まってくるから」
「なるほど。そういう人との接し方のコツとかってあります?」
「まずは本気度じゃないかな。『この土地に住みたい!』『こういう家を建てたい!』って気持ちがあるなら、その熱意を伝える。結局はコミュニケーションだから、そのやりとりの中でお互いの相性とかもわかると思うし。
あとこれは持論だけど、田舎の人ほど、そのコミュニティに入ってくる人の人間性を見たいと思ってるはず」
「都会よりはコミュニティが狭いし、人付き合いも濃いゆえの」
「住みたい土地の候補が見えてきたら、好きなお店を見つけて通うのは大事だと思う。 俺も実際に信濃町の店に通って、『信濃町で家を見つけたいいんですよね〜』って言うようにしてた。
その上で人間関係を誠実に築いて『この人に来て欲しいなあ』と思ってもらえたら、いい物件の情報も入りやすくなってくるはず」
「馴染みの店を作って知り合いを増やして、情報をもらう。ネットで探すだけじゃなく、足を使うやり方ですね」

愛犬も地域交流にはうってつけ。犬の散歩で自然と会話が生まれる!
「あと、まずは行政の移住促進課に行ってみるのも手だね。 行政が運営する移住者向けの物件情報サイトもあるし、そういう正攻法もやりながら、関係性もつくっていくのがオススメかなあ。
いずれにせよ、実際に田舎へ住んでみて、仕事も家も教育もすべてが揃ってる土地はないなって実感した。人口の少ない田舎は特に。だから移住促進課なんかに相談するときも、『全部揃えてほしい』ってスタンスじゃなくて、自分にとって何が必要なのか、優先順位をちゃんとつけた上で行くのは重要だと思います」
「そうですよね〜〜。『全部が完璧なところはない』は都会の物件探しにも言えそう」
「ちなみに俺のいまだから思えるおすすめは沢があったり井戸があったり、水のある土地かな。サバイバル視点で強いし、自然暮らしの可能性が広がる」
「このご時世、インフラがあると強いですね」
「畑もそうだよね。とはいえ水があるところはたいてい辺鄙な場所になる。街の機能まで車で20分圏内のアクセスなのか、家の周りが静かで少し畑もできたら満足ってテンションなのか。ガチで自然暮らしをしたいのかでも探し方が変わってくると思う。グラデーションがあるのが田舎暮らしじゃないでしょうか」

“除雪のおもしろさ”について語った記事もジモコロで公開中(撮影:小林直博)
「それこそローンを組むと数十年先のライフプランまで考えなきゃってなるし、自分の人生に何が欲しいかをちゃんと考えなくては……」
「住宅ローンは一気に人生の時間感覚が変わるパワーがあるね。フラット50は怖すぎるけれど! ちなみに駅前のタワマンと比較すると、田舎の家って資産価値はほとんどない。うちも3000万円強のローンを組んだけど、不動産サイトに出しても同じ値段では売れないだろうね。
つまり損得感情を持ち込んだ瞬間に、田舎暮らしは難しくなる。こだわった家や暮らしに、自分で手入れして生きていくっていうのが価値みたいなところがあるし」
「ロマン重視ではありますよね。災害とか戦争が起きた時、畑やインフラがある強さもありますが」
「そこの強さも考えて住んでるところはあるけど、実際将来がどうなるかはわからんからね。
その土地でずっと暮らしていけたら一番いいけど、いざ子どもが生まれてみると、10年経って進学してもずっと住み続けられるかどうかの問題はある。環境が変わってしまったら手放すくらいのスタンスで考えてますね」
「今の暮らしは全力で大切にしつつ、その時々での最良の選択をする」
「家選びには、そういう『軽さ』もあっていいと思うなあ。じゃないとエイヤ!って知らない土地に飛び込めないし」
関係性にお金を使うべし
「さて、最後にこの記事で伝えたいことがあります!」
「それは一体……?」
「農具はネットじゃなくて地元の店で買うこと!!」
「amazonよりも書店で本を買え、みたいなこと?」
「草刈機しかり、除雪機しかり。この手の機械はメンテナンスが必須なんだけど、困ったら地元の店に持ち込むよね。でも、お店も忙しいから、ネットよりもその店で買った地元の常連さんがどうしても優先になる。これは実際に俺が『失敗した』って思ったことです」
「またもや経験者からの魂のアドバイスだ」
「数千円とか一万円とかの安さに目が眩んでネットで買うと、そのあとが大変!!! 最初は修理のことなんか考えてもなかったから……。こんな情報どこにも載ってなかったなぁ」

夏場は草との戦い
「すごく納得しました。つまり、お店との関係性を買うってことですね」
「その通りです。田舎では特に、値段じゃなくて関係性に金を払うべき! これはすべてに言えます」
「いろいろ詰まってる言葉だ」
「そういう関係性をつくればつくるほど暮らしが豊かになるのも田舎の醍醐味なので。田舎暮らしは面白いし、いまの社会情勢を考えると目先の利益ではなく、長期的な安心と生きる知恵が身につくので最高です。みなさん家探しを頑張ってください!」
構成:岡部ベイコ














































