知ったかぶり47

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2020.06.18

知ったかぶり対談:とくべつ編④手書きの地図には愛がある

デイリーポータルZがいろいろな場所で取材してきた記事を読むことで、その県の出身者に負けないくらいに知ったかぶりできるんじゃないか。それが知ったかぶり対談です。

今回はとくべつ編として、「手書き地図推進委員会」の川村さんに、さまざまな土地で手に入る手書きで作られた地図の面白さについて聞きます。インタビューはデイリーポータルZ編集部安藤が担当します。

手書き地図は地図ではない?

  • 手書き地図推進委員会の出しているこの本が面白くて、今回はご連絡させていただきました。

「手書き地図のつくり方 学芸出版社」

「手書き地図のつくり方 学芸出版社」

読み応えがありすぎる。

読み応えがありすぎる。

  • ありがとうございます!

  • 僕たちも「地元」を軸に全国で取材をしているんですが、取材先にこういう地図があると助かるのになあ、といつも思うんですよね。

  • 旅先でオリジナルの地図を見つけるとうれしいですよね。でも手書き地図は正確な地図ではないんです。

  • 地図なのに地図じゃない?

  • どちらかというと読み物ですね。作者のストーリーがたまたま地図というフォーマットに落とし込んであるというもので、これが原稿用紙だったらエッセイになるんじゃないかな。

  • なるほど!手書き地図は目的地にたどり着くための地図ではなく、読んで楽しむものなんですね。

  • そうなんです。その人が気にしないものは描かれていないので内容が好きなものに偏るというか、こだわりが現れるんですね。そこが面白いんだけど、地図としてはある意味バランスがよくないとも言えます。

手書き地図の作り方も詳しく書かれています。これ、自分でも実際に描いてみると本当に面白い。

手書き地図の作り方も詳しく書かれています。これ、自分でも実際に描いてみると本当に面白い。

  • なので同じ場所の地図を何人かで描くと、それぞれにまったく違ったものが出来上がります。

  • 作り手の興味がそのまま地図に現れるんですね。だから読んでいて面白いんだ。

手書き地図は地元有利か

  • 手書き地図はやはり地元に住んでる人が描くのが有利ですか。

島根で見つけたという松江の蕎麦マップ。超いい。

島根で見つけたという松江の蕎麦マップ。超いい。

  • やはりその土地への思いがあるので地元の人は強いですね。でもたまに知らない土地で手書き地図を作るワークショップをやるんだけど、参加者は地元の人が「おれこれ知らねえ!」っていう場所を描いたりして、それがまた面白いんです。

  • 地元の人と観光客とでは目線が違うんでしょうね。

  • 地元に住んでいると、一度行ったことのある場所とか建物って歩いても目に入らなかったりするから。僕らみたいなよそ者と、そこに住んでる人とは町を見る角度が違っていて、だから結果として描く地図も違ってくるんです。

  • 生活してると近くに観光地があってもめったに行かないですからね。

  • でしょう。町の見られ方というのは一通りではないんです。

手書き地図は見つけた時の喜びもひとしお

  • 僕らは「地元の人頼りの旅」と「投稿頼りの旅」という企画をやっていて、地元の人に頼りまくって旅をしているんですが、川村さんたちはどうやって手書き地図を集めてくるんですか?

  • こういう活動をしていると最近は送られてくるようになりました。ありがたいことです。

いい手書き地図が見つかると送られてくるらしい。

いい手書き地図が見つかると送られてくるらしい。

  • なんと!それはうらやましい。でも最初はどうやって探したんですか。

  • はじめの頃は出張とか旅行に行くたびに現地で探してましたね。温泉街なんかに行くとよくあるんです。

  • 見つけた中で特に思い出深いものとかありますか。

  • ぜんぶいいんだけど、このときがわのはすごいですよ。

埼玉県ときがわ町の情報が満載。

埼玉県ときがわ町の情報が満載。

  • 「このあたりでキツネに化かされたという情報あり、ご注意!」とか。情報がなにしろ地元に根付いていて、ひとつひとつのエピソードも最高なんです。

地元住民しか知らない情報が満載。

地元住民しか知らない情報が満載。

  • あまりによすぎて作者の方に会いに行きましたからね(くわしくは「手書き地図のつくり方」に載ってます)。

  • この地図、年間10万部発行って書いてますよ。もはや個人の仕事とは思えない。

この情報量で月刊ってことはどれだけの労力をかけているのか。

この情報量で月刊ってことはどれだけの労力をかけているのか。

  • 毎月発行だからね。こうやって「伝えたい」っていう熱意が半端ない人っているんですよ。手書き地図を通じてそういう人に出会うとほんと最高だなと思います。

  • 手書きだから熱意がそのまま地図に現れますね。取材先で見つけたらうれしいだろうなー。

  • あと最近送られてきた活版印刷のやつもよかった。

なるほど、これはいいものですね。

なるほど、これはいいものですね。

  • これは一目見ていいものだとわかりますね。

内容もさることながら、紙質もプリントも、ぜんぶよくて額装したくなる。

内容もさることながら、紙質もプリントも、ぜんぶよくて額装したくなる。

  • おしゃれですよね。やっぱり作り手が楽しんでるのがわかるのと、読んでいて楽しいのが、いい手書き地図の条件なのかなと。

  • 楽しんで作ってるかどうかは一目でわかりますもんね。

  • 字とか汚くてもいいんですよ、それで作ってる人の顔が見えれば。

  • 手書き地図を作るモチベーションは、やっぱり地元に対する熱意なんでしょうね。

  • その土地に愛があるから伝えたいんだろうね。好きな場所じゃないときっと地図を作ろうなんて思わないから。

手書き地図推進委員会が手掛けた地図。

手書き地図推進委員会が手掛けた地図。

これだけ持って歩き回りたくなります。

これだけ持って歩き回りたくなります。

動物情報も多数。

動物情報も多数。

こういう小ネタが地図に書いてあるとうれしいんです。

こういう小ネタが地図に書いてあるとうれしいんです。

川村さん、ありがとうございました。

【次回予告】次回はとくべつ編⑤をお届けします!(7月16日公開予定)

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川村 行治
川村 行治

(株)ロケッコ (手書き地図推進委員会)代表

東京都中野区生まれ、小金井市育ち、神奈川県茅ヶ崎市在住。
様々な地域の情熱を傾け制作された手書き地図の魅力に魅せられ収集する同好の士3人と、「手書き地図推進委員会」を2013年に結成。
その面白さは何なのかと考え、自治体や企業むけに地域の人たちが魅力を再発見し地図を作るワークショップを主宰している。昨年7年の活動とノウハウをまとめ書籍を出版。
自著「手書き地図のつくり方」学芸出版社

安藤昌教
安藤昌教

デイリーポータルZ編集部
1975年生まれ。愛知県出身。
前職は国立研究所にて高速炉の研究に従事。その後、氣志團バックダンサー、コーヒーショップ経営、等を経てデイリーポータルZ編集部に。
ものをむかずに食べる「むかない安藤」としての活動も8年目に突入。

「地元の人頼りの旅」「投稿頼りの旅」についてはこちらをご覧ください。

「全国各地を地元だと思って旅行する」

「全国各地を地元だと思って旅行する」

手書き地図についてはこちらの記事がくわしいです。

「正しさよりも面白さを!地図は手書きにかぎる理由」

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