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2021.08.26
知ったかぶり対談 第四十六回:神奈川県④箱根を歩くならわらじが正解
デイリーポータルZがいろいろな場所で取材してきた記事を読むことで、その県の出身者に負けないくらいに知ったかぶりできるんじゃないか。それが知ったかぶり対談です。
今回は神奈川県。神奈川県出身の文化財ライター木村岳人さんに話を聞きました。インタビューはデイリーポータルZ編集部安藤が担当します。
綾瀬は陸の孤島なのか
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木村さん、よろしくお願いします。木村さんは神奈川のどちらでしたっけ。
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生まれも育ちも、陸の孤島こと綾瀬市です。
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陸の孤島。
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はい。なんと綾瀬市には鉄道駅が一つもありません。
「陸の孤島」綾瀬市。
(記事:「あなたは綾瀬市を知っていますか?」より。)
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僕もいま神奈川県に住んでいるんですが、たしかに綾瀬ってあまりなじみがないんですよね。駅がない場合、僕たちはどうやって綾瀬市に近づけばいいんでしょうか。
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それがですね、市内には高速道路は通ってるわ新幹線は通ってるわ空港はあるわ(厚木基地)なんですが、どれも使えないんですよ。最近になってスマートインターチェンジができたのでかろうじて東名高速が使えるようになりましたが。なので基本的に歩いて来ていただけると…。
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木村さんがよく歩いているイメージがあるのはそのためなんですね。
木村さんはとにかくよく歩いているイメージです。
(記事:「フランスの田舎を歩いた一ヶ月」より。)
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それもありますね。周辺の駅まで自転車やバスを駆使するのが綾瀬流です。
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たとえば綾瀬で半日ひまになったとしたら。僕たちはいったいどこへ行ったらいいでしょう。何かおすすめのプランはありますか?
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うーむ。うーーむ。
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そんな悩みますか。
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ぶっちゃけ何もないですからね。
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何もないって言っても火星とかじゃあないんだから。
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市役所が立派なので展望台に上がって、食堂で昼ごはん食べて、あとはタウンヒルズをぶらぶらする、ですかね。タウンヒルズっていうのは綾瀬の中心にあるショッピングモールで、電気屋とか本屋とかサイゼリヤとかがあります。
畑の向こうにそびえたつのが綾瀬市役所。
(記事:「あなたは綾瀬市を知っていますか?」より。)
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ふつうの休日だ。でもそういうのも楽しそう。
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うちの綾瀬がすみません。最近、綾瀬の鬼門を守っていたゴリラもいなくなってしまったので、ますますみどころがなくなりました。
これが綾瀬の鬼門を守っていた(木村説)というゴリラ。
(記事:「あなたは綾瀬市を知っていますか?」より。)
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あのゴリラ、いなくなったんですか!
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はい。パチンコ屋がつぶれてゴリラも撤去されてしまったんです。
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なんと。
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諸行無常です。
神奈川県には古い物がいっぱい
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木村さんは文化財とか古い物が好きなイメージがありますが、そんな木村さんから見て神奈川県はどうですか。
木村さんはとにかく古いものが好き。
(記事:「高知空港の近くにたたずむ飛行機の格納庫を見に行った」より。)
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古いモノ大好きな立場から見ると神奈川はみどころ満載ですよ。古代は相模川の周辺に遺跡が多く見つかっていますし、中世ではなんといっても鎌倉幕府がありましたから。
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鎌倉はたしかに古いモノの宝庫な感じがしますね。僕は前に横浜の金沢区に住んでいたことがあるんですが(鎌倉市の隣です)、摩崖仏とか切通しとか、時代の名残みたいなものがたくさんあって、タイムスリップしたみたいな感覚でした。
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あのあたり、とくに朝夷奈切通しは最高の雰囲気ですね。イチオシの古道です。鎌倉は城壁のように三方を山が囲んでいるので、よいハイキングルートがたくさんあります。
これが切通し。
(記事:「古都鎌倉の神髄は城壁にあり」より。)
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鎌倉って、たまに崖みたいなところに横穴が掘られていますよね。あれがすごい怖いんですが、やっぱり昔の墓だったりするんですか?
怖い横穴がたくさんあります。
(記事:「鎌倉「穴場」スポット探訪」より。)
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あれは「やぐら」という横穴式の墓ですね。もともとは墓なんですが、今では倉庫として使われていたりもします。
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そうそう、中に石積みがしてあったりして墓らしさを残しているものもあれば、完全にリノベされて駐車場になってる穴があったりもします。
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なにせ鎌倉は山ばかりで土地がないので。都市を守る、という意味では都合がよかったんでしょうけど、狭くて墓地が作れなかったんでしょうね。それで横穴を掘った。
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なるほどー。
箱根を歩くならわらじが正解
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箱根なんかも古道としては面白いんでは。
箱根。
(記事:「カルデラとしての箱根観光」より。)
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箱根もいいですよね。石畳の古道が残っていて歩いていて楽しかったです。
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僕はトレイルランニングという競技をやっていて、このあたりもたまに走りに行くんですが、この石畳、ものすごい滑りますよね。わらじだと滑らないってほんとですか?
わらじだと石畳でも滑らないって本当なのか。
(記事:「わらじを履いて箱根の石畳を歩く」より。)
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これがわらじだとビックリするほど滑らないんです。
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現代のトレランシューズよりも優秀だ!僕の友だちはここで滑って骨を折りました。
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苔むしてつるつるだし、なんだかいつも湿っていて滑るんですよね。石畳にはわらじが正解、これ以上のものはありません。
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先人の知恵!そういえば木村さんも前にヨーロッパを歩いていて骨折してませんでしたか。
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サンティアゴ巡礼の時にスペインでしこたまワインを飲んで、宿の階段を踏み外して足の骨を折りました。当時はただの捻挫だろうと思って残りの200kmぐらいを無理やり歩きとおしたんですけどね。
スペインで骨折した木村さん。
(記事:「ピレネー山脈を越えて西の果てへ」より。)
その後入院。
(記事:「入院生活を楽しむ10の方法」より。)
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200kmは骨折したまま歩ける距離じゃないですよ。
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あの時は折れてるかわかんなかったんです。杖を突いてなんとかかんとか。
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ふつうの人には真似できない無茶加減だ。
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足腰が強いのは綾瀬で生まれ育ったおかげかも。
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なるほど!うまい具合に綾瀬市に戻ってきましたね。
木村さん、ありがとうございました!
【次回予告】次回は9月22日公開予定です!
他の記事を見る- 木村岳人(きむらたけひと)
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1981年生まれ、神奈川県綾瀬市出身&在住。学生時代にアジアを巡り、古いモノの素晴らしさに目覚めた。以降は日本各地の文化財を求めて右往左往する日々。教員免許やソフトウェア開発技術者など様々な資格を持っているが活かせたことは一度もない。好きな食べ物は麻婆豆腐とプッタネスカ。
個人サイト 閑古鳥旅行社
http://kankodori.net
Twitter
https://twitter.com/kimuratakehito
- 安藤昌教
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デイリーポータルZ編集部
1975年生まれ。愛知県出身。
前職は国立研究所にて高速炉の研究に従事。その後、氣志團バックダンサー、コーヒーショップ経営、等を経てデイリーポータルZ編集部に。
ものをむかずに食べる「むかない安藤」としての活動も8年目に突入。むかない安藤
https://www.youtube.com/playlist?list=PLI3lg7RZciQwJbfwfbzoo-ntIQV5IAEYhデイリーポータルZ編集部としてのプロフィール
https://dailyportalz.jp/writer/kijilist/212