知ったかぶり47

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2019.06.20

知ったかぶり対談 第二十五回:福井県福井の厚揚げは本当に厚い

デイリーポータルZがいろいろな場所で取材してきた記事を読むことで、その県の出身者に負けないくらい知ったかぶりできるんじゃないか。それが知ったかぶり対談です。

今回は福井県。古生物学者の芝原暁彦さんに登場してもらいました。インタビューはデイリーポータルZ編集部安藤が担当します。

ファミコンを買ってもらえなかったから

  • 福井といえば恐竜。ということで、今回は古生物学者の芝原暁彦さんにお話をうかがいます。芝原さんは福井市のご出身ということで。

  • はい、高校までを福井市のど真ん中で過ごしました。

  • 子どもの頃からやっぱり恐竜が好きだったんですか?

福井といえば恐竜。勝山駅前にあるでかい恐竜。

福井といえば恐竜。勝山駅前にあるでかい恐竜。(勝山は恐竜だらけのまちだった

  • そうですね、小さいころから家にあった恐竜や化石の図鑑ばかり見ては岩場に行って、巻貝なんかの化石を掘っていました。恐竜の発掘現場には18歳にならないと入れなかったので。

  • 最高の環境ですね。芝原さんと僕とはおおよそ同世代だと思うんですが、ということはあれですか、家でファミコン買ってもらえなかった口ですか。

  • 実家にはファミコンなかったですね。その代わりとにかくいろいろな博物館に連れて行ってもらいました。

  • うちもファミコンなかったんです。やることといえば図書館行って本を読むか田んぼでザリガニ取るかでしたから。確かに博物館にもよく行った気がします。おかげで僕も未だに恐竜が大好きなんですよね。ものすごく育った環境が似ている気がしますが、どうして福井はこんなに恐竜発掘とか地質学なんかで有名になったんでしょう。

  • 福井は80年代くらいに恐竜の化石が見つかったんですが、そのあとで大規模に発掘作業をやったんですね。おかげでそれ以降の恐竜ブームに先駆けて実績を作った。これは地方創生がうまくいったいい例だと思っています。
    僕の場合は中学と高校の先生がまさに地学の研究者で、論文とか書いてるような人だったんです。それでよく地質調査で東尋坊まで連れて行ってもらったりとか、家に帰ってもファミコンがないから代わりに博物館に入り浸って化石を見たりとかしていましたね。

  • 地域的にも環境的にも、地学についてエリート教育を受けてきたということですね。いいなあ、うちの子どもも留学させたい。

  • 国内留学っていうのもいいと思いますよ。さまざまな特色がある地方がありますからね。ほら、海外よりも安全だし。

油揚げといえば厚いのがふつう

  • 福井の食べ物でよく食べていたものとか思い出深いものとかありますか。

  • やっぱり厚揚げですかね。福井で油揚げといえばあの厚揚げのことでして、この辺で売られている油揚げは薄揚げといって別物として我が家では認識していました。この記事に出てくるメーカーはほとんど知ってて笑っちゃいましたね。

こんなに美味しそうな油揚げがほかにあるだろうか

こんなに美味しそうな油揚げがほかにあるだろうか(福井の油揚げがあつい

  • 僕は石川県に住んでいたことがあるんですが、こんなに厚揚げが美味しそうだった記憶がないんですよね。どうして福井の厚揚げはこんなに美味しそうなんだろう。

  • 詳しくはわからないですが、母に聞くと、かつては田んぼのあぜ道にも大豆を植えていて、米のついでに収穫していたみたいですね。あとは大きなお寺さんがあるので、精進料理としての大豆料理が発展したっていうこともあるのかも。

  • なるほど、そもそもが大豆文化なんですね。でもそばの出汁は関西風ですよね。

  • そうですね。おろしそばも思い出深いというかよく食べていたものなんですが、やはり薄味で関西風でしたね。

  • ちなみにおろしそばは辛かったですか。

おろしそばは辛すぎるのか

おろしそばは辛すぎるのか
辛すぎる「越前おろしそば」は幻だったのか確かめる

  • この記事にあるように辛かった記憶はないんですよ。基本的に薄めのお出汁、ねぎ、かつお、それに大根おろしで、それぞれが風味を引き立てて美味いんです。だから東京で初めて食べたそばのつゆの黒さには驚きましたね。

恐竜の話がとまらない

  • 恐竜の話に戻ってもいいですか。僕も子供の頃から恐竜がとにかく大好きでして。裏庭から古生物の卵を掘り当てたのび太(映画「のび太の恐竜」)がうらやましかったですから。芝原さん、一番好きな恐竜は何ですか?

  • やっぱりトリケラトプスですかね。

  • あー、そっちですか。子どもの頃から恐竜が好きだった人ってだいたいティラノサウルスかトリケラトプスに分かれますよね。僕も家ではこのペアでフィギュアを飾っています。

恐竜好きの家にはかならずあるペアだと思います。

恐竜好きの家にはかならずあるペアだと思います。

  • 昔はこの2体は常に戦っているイメージで描かれていましたからね。当時の恐竜本なんかだとイラストでトリケラトプスの角がティラノサウルスに刺さっていたりして。

  • 実際にはそこまでのリスクを冒してまで狩りをしていなかったんじゃないか、なんて説もありますよね。

  • ティラノサウスについては復元図も最近になってずいぶん変わりました。

  • 最近のものだと羽毛に覆われていたりしますよね。やはり鳥が恐竜の生き残りだっていう説が一般的になってきた影響が大きいんでしょうか。

  • そうですね。でも最近ティラノサウルスのうろこの化石が見つかって、ティラノに関しては、やはり大部分がうろこに覆われていたこともわかってきました。基本的には羽毛は小型種だけのもの、というのが一般的なんですよね。でもユティラヌルスみたいに全身羽毛で覆われた大型種が出てきたりするので、恐竜は面白いです。

  • 恐竜ってすでに絶滅してしまっているのに毎年情報が更新されて、僕らが子どもの頃からは想像図とか印象も変わってきているのが面白いんですよ。オヴィラプトルだって本当は卵泥棒ではなかったかもしれないんでしょう?

  • オヴィラプトルはラテン語で「卵泥棒」なんですが、あれは化石がいつも卵の化石の近くで見つかっていたから、という説もあります。

  • 一度つけられた学名というのは新事実がわかっても変えることができないんですね。オヴィラプトル、かわいそうに。あと僕は巨大なブロントサウルスが好きだったんですが、ブロントサウルスって、今はもういないですよね。

  • はい。先に見つかっていたアパトサウルスと同種だとわかってきて、統一されてしまいました。でも最近になってやっぱり別種なんじゃないかという研究もあったりして、そうなるとまたブロントサウルスが復活するかもしれないですね。

  • いやあ、恐竜の話は尽きないですが、これを読んだ人が福井に行くことがあれば、ぜひ恐竜博物館に行ってもらいたいものです。あそこ本当に面白いですから。

  • そうですね、ぜひ。

芝原さん、ありがとうございました。

【次回予告】次回は山形県を知ったかぶります!(7月18日公開予定)

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芝原暁彦 (しばはらあきひこ)
芝原暁彦 (しばはらあきひこ)

福井県生まれ。
古生物学者・地球科学可視化技術研究所CEO。筑波大学博士課程修了(理学博士)。
同大研究員、産総研特別研究員を経て、2017年まで産総研地質標本館所属。福井県立大学恐竜学研究所客員教授。

安藤昌教
安藤昌教

デイリーポータルZ編集部
1975年生まれ。愛知県出身。
前職は国立研究所にて高速炉の研究に従事。その後、氣志團バックダンサー、コーヒーショップ経営、等を経てデイリーポータルZ編集部に。
ものをむかずに食べる「むかない安藤」としての活動も7年目に突入。

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