知ったかぶり47

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2021.12.16

知ったかぶり対談 第四十九回:秋田県秋田で砂糖の消費量が多いわけ

デイリーポータルZがいろいろな場所で取材してきた記事を読むことで、その県の出身者に負けないくらいに知ったかぶりできるんじゃないか。それが知ったかぶり対談です。

今回は秋田編として、秋田県大曲市出身の和菓子店「菓子司つじや」五代目、辻さんにお話を聞きました。インタビューはデイリーポータルZ編集部安藤が担当します。

日本酒にも合うお菓子とは

  • いま辻さんのお店のお菓子を前にしているんですが、どれも見たことないものばかりで興奮しております。

  • 辻さんから送ってもらったお菓子たち。

    辻さんから送ってもらったお菓子たち。

  • どれも珍しいですよね。言葉で説明するのが難しかったのでお送りしました。

  • この「とうふかまぼこ」というのは、そもそもお菓子なんですか?とうふ?かまぼこ?どっち?

    • とうふかまぼこ。

      とうふかまぼこ。

      • 豆腐と魚のすり身を甘く味付けて蒸したものです。名前はとうふかまぼこですが、これでもお菓子なんですよ。食べてみてください。

      • おおー、これは優しい味だー。たしかにお菓子と言われたらお菓子だけど、おせちに入っていてもおかしくないですね。

      • そうですね、伊達巻とよく比較されます。でも歯ごたえにかまぼこらしさを残していると思いませんか。秋田県南部で江戸時代から冠婚葬祭の引き菓子として作り続けられているものです。

        • 秋田の結婚式で配られるお菓子。

          秋田の結婚式で配られるお菓子。

          • たしかに歯ごたえはかまぼこなんですが、この優しい甘さはお菓子なんですよね。不思議だなー。秋田では砂糖を大量に消費しているという記事があるんですが、昔からお菓子作りが盛んなんですか。

            • 記事「砂糖大量消費県の底力を計測する」より。

              (記事:「砂糖大量消費県の底力を計測する」より。)

              • 江戸時代は砂糖が貴重だったので、冠婚葬祭とか晴れの日に砂糖をたくさん使ってお客さまをもてなす文化ができたんです。いまでも砂糖をたくさん使うのはそのおもてなし文化の名残なのかもしれないですね。

              • なるほどー。でもこのとうふかまぼこ、甘いのになぜか日本酒にも合いそうな気がするんですよね。

              • そうなんです。アミノ酸度の高い旨口の日本酒によく合います。

秋田で砂糖の消費量が多いわけ

  • 甘い物にこだわりのある秋田県で代々続くお菓子屋さんをやられていると、やはり甘い物を見る目が厳しくなるんじゃないですか。

 辻さんのお店。ただならぬ老舗感。

辻さんのお店。ただならぬ老舗感。

  • いえいえ、けっして厳しいわけではなく、甘い物が全般に好きなんですよ。秋田では納豆やトマトなんかにも砂糖をかけて食べる人が多いです。太巻き寿司はシャリが甘いですし。

  • 納豆にも砂糖ですか!

  • 粘りが強くなって美味しいですよ。

  • 甘納豆みたいになるのかな。ちょっと今度やってみます。

  • 最近、お菓子を食べて「甘くなくて美味しい~」とかいう若者が多いじゃないですか。そういうこと言われると力が抜けますよ。

  • 甘さ控えめとか、なにを贅沢言ってるのか、と。

  • 甘い=おもてなし、の文化で育ってきたので。甘いものを食べるとみんな笑顔になって嬉しいのにな~と思いますよ。でもうちのお菓子も甘さ控えめって言われてるんですけどね。

  • さっきいただいたとうふかまぼこは、まさに甘さ控えめで優しい味でした。

  • 「三杯もち」というのも面白いですよ。口に入れるとお餅、噛めば噛むほど小豆餡の美味しさが増して、飲み込むときにはあんこになっています。

  • ちょっと想像できないのでいただきますね。

これが三杯もち。

これが三杯もち。

  • は!辻さんの説明の通りだ!これ、中に餅が入ってるのかと思いきや、全体があんこであり、全体が餅なんですね。

  • 小豆餡を米粉、餅米粉と合わせて練り上げて蒸したものです。秋田県南部ではこれも江戸時代から伝わる大切なお菓子です。昔はミソとか華ミソとも呼ばれていました。

  • 食感は餅なんだけど食べているうちにあんこに変わっているという。とうふかまぼこもだけど、これもおもしろ食感ですよ。

  • そうですよね。よく他県の百貨店の催事なんかで出店しているんですが、ほんとに説明が難しいんです。「もちもちのあんこです」とか、とうふかまぼこにいたっては「甘い伊達巻みたいな豆腐と魚のかまぼこです、でもお菓子です」とか。何度説明しても首を傾げられますから。

  • これは確かに食べてもらうしか納得してもらえないでしょうね。いやあ、食べれば食べるほど面白いですよ、秋田のお菓子は。

秋田は甘じょっぱ文化

  • 秋田って勝手にしょっぱいものが好きなイメージがあったんですが、実は甘い物の方が好きなんですか?

  • 秋田は甘じょっぱ文化ですかね。

  • 甘じょっぱ!確かに!この前秋田に取材に行ったときに道の駅でバター餅を見つけたんですが、あれも甘じょっぱ文化ですね。

記事「新・秋田名物「バター餅」ってどんな餅?」より。

(記事:「新・秋田名物「バター餅」ってどんな餅?」より。)

  • バター餅は秋田県北部の食べ物ですね。かつてはばあちゃんが炊飯器で作っていたんですが、テレビで流行ってからは県内のお菓子屋さんでも見かけるようになりました。

  • 辻さんは生まれも育ちも秋田県なんですか。

  • そうです、生まれも育ちも秋田県の大曲です。

  • 大曲といえば、花火で有名な大曲ですね!

大曲の花火。撮影coburu

大曲の花火。撮影coburu

  • そうです。来年はまだ開催が決まっていませんが、決まったらぜひ見に来てください。

  • 友だちが毎年楽しみにして行ってるんです。次回は僕も連れて行ってもらいます。

撮影coburu

撮影coburu

  • 秋田に遊びに行くならお勧めはやっぱり花火の時期ですか?

  • 大曲なら当然花火は外せないですね。大曲の花火は8月最終土曜日の開催ですが、最近は春秋冬にも小規模ながら通好みの花火大会をやっていたりします。秋田全体で言うと、春夏秋冬、どの季節にもそれぞれ旬のものがあるので、いつでもオッケーです。またいつでも来てください。

辻さん、ありがとうございました!

【次回予告】次回は1月20日公開予定です!

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辻卓也(つじたくや)
辻卓也(つじたくや)

和菓子店「菓子司つじや」五代目。
1968年 秋田県大曲市(現大仙市)生まれ。
東京で商社勤務ののち帰郷して家業の和菓子屋五代目を継ぐ。秋田独特の珍しい郷土菓子「とうふかまぼこ」と「三杯もち」を守り続ける。 有名な花火競技大会「大曲の花火」では親子二代続けて運営側の「花火を背中で見る人」。

菓子司つじや
https://akita-tsujiya.jp/

安藤昌教
安藤昌教

デイリーポータルZ編集部
1975年生まれ。愛知県出身。
前職は国立研究所にて高速炉の研究に従事。その後、氣志團バックダンサー、コーヒーショップ経営、等を経てデイリーポータルZ編集部に。
ものをむかずに食べる「むかない安藤」としての活動も8年目に突入。

今回話題にもならなかった秋田県の記事(デイリーポータルZのサイトに移動します)

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