2020年の秋、「副業」の取扱いが大きく変わる!そのポイントとは?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>
昼は会社で事務職の社員(本業)、夜は飲食店でパート(副業)として働いています。
これまで、本業をしている会社には、副業をしていることを隠してきました。しかし、先日、本業の会社から「労災保険の取扱いが変わるので、副業をしている者やパートの掛け持ちをしている者は、会社に届け出るように」と言われました。

具体的に、何が、どのように変わるのでしょうか?

また、私は副業をしていることを会社に届け出なければいけないのでしょうか?

会社から副業を届け出るように指示されたら、従わなければならない

<回答>
副業中にケガなどをして働けなくなった場合に、労災保険から支払われる休業補償は、これまでは副業先の賃金額を基準にして算定されていましたが、2020年秋からは、副業と本業の賃金を合算した額が基準となります。また、労災認定において、長時間労働が病気の原因になったかどうかを判断するとき、これまでは本業と副業の労働時間を分けて考えていましたが、今後は両者を合算した時間が使われることになります。

このような法改正に対応するため、会社によっては、就業規則を改定して、副業に関する届け出を厳格化しています。会社から副業を届け出るように指示されたのであれば、従業員は、それに従わなければなりません。

副業中のケガにより本業を休む場合でも、休業補償が行われる

2020年3月末、副業を行っている労働者に対するセーフティネットの整備などを盛り込んだ「雇用保険法等の一部を改正する法律」が国会で成立しました。

これを受けて、2020年秋から、副業を行う労働者が仕事中にケガをしたり、病気にかかったりしたときに支払われる休業補償の取扱いが大きく変わることになります。

具体的に言うと、労働者が副業をしているときにケガをしたり、病気にかかったりして働けなくなった場合、労災保険の休業補償給付(特別支給金を含む)として、これまでは、副業先の賃金額の約80%が支給されていましたが、2020年秋からは、副業と本業の賃金を合算した額の約80%が支給されることになります。

副業中にケガをして本業の仕事ができなくなった場合、これまでは、本業の賃金に対する補償は行われませんでした。今回の改正により、副業中のケガにより本業を休むことになったとしても、労災保険から本業の分の休業補償も行われることになります。

長時間労働かどうかは、本業と副業の労働時間を合算して判断される

また、今回の法改正では、労災保険給付の対象範囲の拡充も行われます。

例えば、本業で週40時間、副業で週25時間働いている労働者が、脳・心臓疾患を発症した場合、これまでは、それぞれの会社ごとに長時間労働に該当するかどうかの判断が行われていたため、労災としては認定されませんでした。

法改正後は、本業と副業の労働時間を合算し、週65時間労働(毎週25時間の残業をしていること)に相当するものと判断され、労災として認定される可能性が極めて高くなります。労災として認定されれば、この疾患の治療費は労災保険から支払われ、また、会社を休んだ場合の休業補償も行われます。

これからは、会社が定めたルールに従い、正しく副業をすることが必要

今回の法改正により、労働者は、安心して副業ができるようになります。

一方、使用者からは、「副業中のケガに対して本業の休業補償を行う必要があるのか」「本業は副業の労働時間を管理できないのに、本業・副業の労働時間の合計をもとに労災認定することはおかしい」などの批判も出ています。しかし、すでに決まってしまったことなので、今さら騒いでも仕方ありません。本業の会社としては、副業をしている従業員から「どこで、いつ、何時間働いたのか」を届け出てもらい、長時間労働に陥ることが無いように注意することぐらいしかできません。

会社によっては、法改正にあわせて、従業員に副業の届け出を義務づけるように就業規則を改正し、これに違反した場合は、懲戒処分を科すなどのルールを定めたところもあります。これまでは会社に隠れて副業をしていた従業員も、今後は、会社に届け出ずに副業をすることは難しくなるものと考えられます。

今回の法改正の背景として、副業を行う労働者がそれだけ増えてきたということがあります。副業も「一つの働き方」として、社会に広く認められるものになってきています。今後、副業を行う場合、労働者は、会社に隠して行うのではなく、定められたルールに従って正しく行うことが必要となります。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。