自己都合退職は、会社都合退職よりも不利な取扱いを受けるのでしょうか?

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<質問>
会社から「業績低迷が続いているので、今月末で退職してほしい」と言われ、退職願を提出するように指示されました。ここで質問があります。

(1)「自己都合退職は会社都合退職よりも不利になる」と聞いたことがありますが、どのような点で不利になるのですか?
(2)会社からの指示があったとはいえ、労働者から退職願を提出すると、自己都合退職となるのでしょうか?

自己都合退職は、会社都合退職よりも不利な取扱いとなる

<回答>
自己都合退職は、会社都合退職と比べて失業手当を受け取る時期が遅れるなどの不利な点があります。労働者からすれば、会社都合退職として取り扱ってもらったほうがよいのですが、今回のようなケースでは、労働者が退職願を提出すると、「最終的には本人が退職を決めた」と解釈されて、自己都合退職とされてしまう可能性が高くなります。

退職は、労働者が自分の意思で会社に申し出る「自己都合退職」と、特別な事情が発生したときに会社が労働者を退職させる「会社都合退職」に分けられます。会社都合退職としては、「定年退職や契約期間満了による退職」「人員削減のために行われる整理解雇(いわゆる『リストラ』)」および「労働者が問題を発生させたときに行われる懲戒解雇」などが挙げられます。

自己都合退職や懲戒解雇は、労働者の責任で発生するものですから、会社都合退職(懲戒解雇を除く)と比べると、次の点で不利な取り扱いを受けます。
・退職金が、会社都合退職よりも低額になる、または支給されないことがある。
・失業手当(雇用保険の基本手当)を受け取るタイミングが、会社都合退職よりも3か月遅くなる。(自己都合退職等には、失業手当の給付制限期間がある。)
・失業手当としてもらえる額が少なくなることがある。(例えば、勤続年数が5年以上10年未満の労働者が失業した場合、失業手当の上限は、整理解雇や期間満了退職であれば120~240日分ですが、自己都合退職等だと90日分になります。)

なお、以前は「会社都合退職をすると、『問題がある人』というイメージがついてしまい、次の就職先を探すときに不利になる」と言われましたが、今は、そのようなことはほとんどありません。

このように、退職金や失業手当の取扱いの点から考えると、労働者としては会社都合退職にしてもらったほうがよいということになります。

会社は「なるべく自己都合退職で処理したい」と考える

一方で、会社としては、「整理解雇をすると会社の評判が落ちる」「解雇をしないことを条件に支給されている助成金がある」などの理由により、会社都合とするべき退職であっても、できるだけ自己都合で処理したいと考えます。自己都合退職として処理された労働者は、退職後、ハローワークで失業手当をもらう手続きをしている中で、自分が不利な取扱いを受けたことに気づきますが、ほとんどの場合、「今さら騒いでも仕方がない」とあきらめてしまいます。

しかし、ここまで見てきたとおり、会社都合退職と自己都合退職の取扱いの違いは、「仕方がない」で済まされるような小さいものではありません。ですから、労働者は、退職する前に、自分の退職が自己都合と会社都合のどちらになるのかを確認して、会社都合とするべきものは、そのように処理してもらうことが必要です。

退職願を提出すると「自己都合退職」として処理される可能性が高くなる

今回のケースは、会社から「退職してほしい」と労働者に持ちかけているので、本来は会社都合退職とするべきです。ところが、労働者が退職願を提出すると、会社やハローワークは「退職を最終的に決めたのは労働者自身である」と受け取って、自己都合退職として処理される可能性が高くなります。

会社都合退職扱いを希望する労働者は、退職願を会社に提出することを、なるべく避けたほうがよいです。もし、会社から「退職願を提出してくれないと手続きが進まない」と言われたら、「会社からの退職勧奨に応じて」等と理由を明記したものを提出するようにしてください。

なお、退職に当たり、会社は、ハローワークに提出する「離職証明書」に退職理由を記入し、それについて異議の有無を本人に確認することが義務付けられています。労働者は、離職証明書に記入されている退職理由が納得できないときは、本人確認欄の「異議有り」に丸をつけて、会社に返却するようにしましょう。

自己都合退職とされたことに不満がある場合は、ハローワークで相談する

前述したとおり、失業手当は、会社都合退職と自己都合退職で大きな違いがありますが、実際に、会社・自己都合のどちらの退職として取り扱うかを決めるのは「ハローワーク」です。もし、会社との間で退職理由について揉めるようであれば、とりあえずは会社の言うとおりにして、失業手当の申請をするときに、ハローワークの窓口で事情を説明するとよいでしょう。離職証明書に「自己都合退職」と記入されていても、ハローワークが事実確認をしたうえで、失業手当については「会社都合退職」として取り扱ってくれることがあります。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。