休業手当にも、社会保険料や税金がかかるのですか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>
新型コロナの影響で、勤務先が休業となりました。休業期間中は、通常時の賃金の60%相当額の休業手当が支給されるとのことです。ところで、1か月間すべて休業になると、その月分の賃金は休業手当だけになりますが、このような場合も、社会保険料や税金の天引きは行われるのでしょうか?

社会保険料などが天引きされるのであれば、実際に支払われる「手取り額」は、通常時の賃金の何%ぐらいになるのでしょうか?

休業手当にも、社会保険料や税金がかけられる

<回答>
休業期間中に支払われる「休業手当」も、社会保険料や税金の徴収対象となります。
1か月間すべてを休業し、休業手当しか支払われない月であっても、天引きされる社会保険料や住民税は、原則として、休業前の月と同額です。例えば1か月分の賃金として60%相当額の休業手当だけが支払われた場合、手取り額は通常時の53%ぐらいになります。

新型コロナの影響で、多くのお店や会社が休業しています。この期間中、事業主は、休業1日について、通常時の賃金(原則として、休業前3か月間に支払った賃金の総額をその期間の総日数で割った額)の60%以上の「休業手当」を支払わなければなりません。

「働けないときの補償とも言える休業手当にまで、社会保険料や税金はかからないだろう」と思われるかもしれませんが、そうではありません。休業手当も社会保険料や税金の徴収対象となります。

例えば、1か月間すべてを休業した場合、その月分の賃金は、原則として休業手当だけになってしまいますが、実際に支払われる額(手取り額)は、休業手当から社会保険料や税金を差し引いた残額ということになります。

一時的に賃金が減っても、天引きされる社会保険料や住民税の額は変わらない

さて、月々の賃金からは、次の社会保険料や税金が天引きされています。

(1)健康保険料:原則として、標準報酬月額(前年4月~7月の3か月間に支払われた賃金の平均額)の約4.9%。なお、40歳以上の従業員は、これに介護保険料約0.9%が加算される。
(2)厚生年金保険料:原則として、標準報酬月額の約9.2%。
(3)雇用保険料:その月に支払われた賃金の0.3%。
(4)源泉所得税:その月に支払われた賃金の約1.5%。
(5)住民税:前年の年収によって算出される。前年の月収の約3.0%。

ここで注意が必要なのは、「健康・介護保険料、厚生年金保険料および住民税は、前年の収入等から算出された額であるため、休業によって賃金が一時的に減った場合でも、その月の賃金から天引きされる額は変わらない」ということです。そうなると、休業手当として通常時賃金の60%に相当する休業手当が支払われたとしても、そこから休業前と同額の社会保険料と住民税が天引きされて、実際に支払われる手取り額は、通常時の60%を下回ってしまいます。

「60%」の休業手当の場合、手取り額で見ると「53%」ぐらいになってしまう

それでは、通常時賃金(社会保険料・税天引き前の賃金総額)が15万円の人について60%の休業手当が支払われた場合の手取り額(社会保険料・税天引き後の実支給額)を試算してみましょう。(なお、前年の賃金も今年と同額であったものとします。)

通常時の賃金が15万円であっても、そこから社会保険料・税が天引きされるため、実際に支給される手取り額は約12.2万円となります。休業期間中に通常時賃金の60%に相当する休業手当(9万円)が支給されますが、そこから社会保険料・税が天引きされるため、手取り額は約6.4万円、通常時の約53%になってしまいます。(下表参照)

休業が続く場合は、生活設計の見直しなども必要になる。

従業員の中には、「休業しても賃金の60%が支給される」と聞いて安心した人もいらっしゃるでしょう。ところが、ここで見たとおり、1か月間のすべて、または大部分を休業すると、その月の賃金は、手取り額でみると休業前の60%を下回ってしまいます。

4月に入ってから休業日数が多くなった会社は、5月に支給される賃金から手取り額の低下がはっきりと表れてきます。これらの会社では、5月の賃金を受け取ったときに「予想していた額よりも少ない」と驚く従業員も出てくることでしょう。

しかしながら、現在の状況を考えると、休業による手取り額の低下は、やむを得ないものと受け入れるしかありません。

新型コロナの感染拡大は、少しずつ収まってきているように見えますが、今後も、お店や会社の休業が続く可能性はあります。当面は、休業により賃金の手取り額が少なくなることに備えて、生活設計の見直しなどを行うことも必要といえるでしょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。