上司が怖くて退職願を提出できません。退職代行業者を使えば、退職できますか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。あなたの疑問に社労士がお答えします。

[質問]
1年契約のパートタイマーとして働いていますが、契約期間の途中で退職したいと思っています。ただ、退職願を提出すると上司から怒られそうなので、自分からは言い出すことができません。インターネットで調べたら、本人に代わって退職願の提出や退職手続きを行ってくれる「退職代行業者」があることを知りました。
退職代行業者を使えば、私は上司と直接話さなくても、退職することができますか?
また、退職代行業者を使うときに、注意することはありますか?

退職できますが、原則は本人が意思表示を行います

[回答]
「退職」とは「労働契約の終了」を意味するもので、その意思表示は、原則として、契約の当事者である労働者本人しかできません。(本人に代わってそれを行うことができる者は、弁護士などに限定されています。)

しかし「退職代行業者」は労働者本人の代わりに、勤務先との間で退職手続きを行うことが可能です。

まずは退職代行業者とはどういったものなのか説明していきましょう。
退職願を上司に提出しても「人手不足だから、退職は認められない」と受け取ってもらえないことがあります。中には、「自分勝手なことを言うな」と怒り出したり、「退職するなら損害賠償をしてもらう」と圧力をかけてきたりする上司もいるでしょう。質問者のように「上司が怖くて退職願を提出できない人」は、大勢いるものと思われます。
このような人のために「退職代行業者」が生まれました。退職代行業者とは、退職を希望する者から料金を受け取り、本人に代わって勤務先との間で退職手続きを行う会社です。「退職したいが、上司や勤務先とは話したくない」という人には、まさにうってつけのサービスと言えるでしょう。

勤務先の人と話さずに退職できる?

退職代行業者を使うことを考えている人にとって最大の心配ごとは「本当に勤務先の人と話さずに退職できるのかどうか」ということです。
これについては「絶対に勤務先の人と話さずに退職できる」とまでは言い切れません。
そこで、上司や勤務先の人は、退職代行業者から連絡を受けたとしても、本人の携帯に電話するなどして、退職意思を直接的に確認しようとします。このような連絡が入ると、本人も上司や勤務先の人と話をせざるをえないからです。

できれば、勤務先に対する退職の意思表示については、退職代行業者を使う前に、労働者本人が行っておくべきです。「それができたら苦労しない」と言われるかもしれませんが、例えば「上司ではなく人事部に退職願を提出する」など、どのような形であっても、勤務先に自分の退職意思が伝わりさえすればよいのです。これさえ行っておけば、勤務先から連絡がきたとしても、「自分の意思はお伝えしました」と言って、勤務先の人との話を避けることができます。

退職代行業者を使った場合、退職手続きが遅くなるリスクはある

「退職代行業者を使うことによって、手続きに時間がかかったり、問題が生じたりすることはないか」と心配をする人もいるでしょう。
退職に当たり、労働者は、健康保険証や雇用保険の手続きに関する書類などを勤務先に提出しなければなりません。一方、勤務先も、労働者に対して、最後の給与を支払い、失業給付を受けるための書類などを渡さなければなりません。これらの物や書類などを退職代行業者経由でやり取りすると、本人と勤務先の間で行うときよりも時間がかかってしまうのは当然です。
また、手続きの過程で物や書類などを紛失してしまうリスク、勤務先と退職代行業者のどちらが紛失したのか分からなくなってしまうリスクもあります。
したがって、退職代行業者を使うときには、次の点に注意することが必要です。
(1)退職代行業者への物や書類の提出は、時間的に余裕をもって、早めに行う。
(2)退職代行業者との間でやり取りした物や書類のリストを作っておいて、紛失したのかどうかを分かるようにしておく。

退職代行業者を使うのは、あくまでも「最後の手段」

途中でも触れましたが、退職に関して勤務先との間で交渉が必要になった場合、労働者の代理ができる者は、弁護士に限定されています。したがって、退職代行業者を使うのであれば、弁護士事務所が運営しているところ、あるいは弁護士に相談できる体制が整っているところに依頼したほうが安心です。

退職代行業者は、退職を言い出せない労働者にとって「心強い味方」となりますが、退職に関することは、本人と勤務先の間で処理するのが本来の姿です。退職代行業者を使うのは「最後の手段」と割り切って、できる限り自分で勤務先に退職意思を伝え、手続きを進めるようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。