契約期間の途中で、突然の解雇。あきらめるしかないですか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>
自宅近くのスーパーで、パートタイマーとして働いています。先日、店長から「この店を閉めることになったから、10日後にパートやバイトを解雇する」と一方的に通告されました。なお、正社員は、このスーパーの別店舗へ異動になるらしいです。
あまりに突然のことで、次の勤務先も見つからずに困っています。
1年契約を結んでいるパートタイマーの場合、突然に解雇されたとしても、「仕方がない」とあきらめるしかないのでしょうか?

契約期間中の解雇はできないため、あきらめる必要はありません

<回答>
「有期労働契約(1年間などの雇用期間を定めている契約)は、一時的な雇用を前提としているものなので、いつでも解雇できる」あるいは「正社員とは異なり、非正規社員は簡単に解雇できる」と思い込んでいる人がいます。

しかし、これは大きな誤解です。

「○月○日から×月×日まで」のように期間を定めた労働契約を結んでいる場合、会社は、原則として、その労働者を契約期間内は雇用する義務を負います。したがって、特別な事情がない限り、会社は、その労働者を契約期間の途中で解雇することができません。(労働契約法第17条)

ただし、その労働者が重大な問題を起こした、あるいは業績不振により会社が継続できなくなった等の「やむをえない事由がある場合」は、話は別です。もっとも、このような場合でも、「有期労働契約だから」とか「パートタイマーだから」等の理由で、正社員よりも簡単に解雇できるということはありません。過去の裁判の判決を見ても、非正規社員の契約期間内の解雇については、正社員と同様に(あるいは、それ以上に)厳しく、その有効性が判断されています。

まず、他店で働けるように申し出てみる

今回のケースでは、まず「勤務している店の閉鎖がやむを得ないものかどうか」また「閉店に伴う解雇がやむを得ないものかどうか」という観点から、解雇の有効性が判断されます。

会社は「業績不振だから、店の閉鎖も解雇もやむを得ない」と言うかもしれませんが、「正社員を他店に異動させる」ことができるのであれば、(店の閉鎖はやむを得ないとしても、)パートタイマーも他店で雇用することは可能と考えられます。ですから、質問者が「別の店に異動してもよいから、今の会社で働き続けたい」と思うのであれば、まずは、他店で働きたいと会社に申し出てみるとよいでしょう。

直前の解雇通知であれば、解雇予告手当を請求できる

しかし、自宅から遠くなる等の理由で他店では働きたくない場合、あるいは、何らかの理由により異動の申し出ができない場合は、勤務している店の閉鎖に伴い、質問者も解雇されることになります。

この解雇にあたり、会社は、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。なお、解雇予告の日数は、解雇予告手当を支払った分だけ短縮できることになっています。(労働基準法第20条)

今回のケースのように10日後に解雇する場合、会社は20日分の賃金を解雇予告手当として労働者に支払う義務があります。質問者は、「10日後に解雇する」と通告してきた会社に対し、20日分の賃金に相当する解雇予告手当を支払うように請求してみてください。

「あきらめること」はないが、「今の状態を長引かせないようにすること」が重要

近年の法改正により、パートタイマーをはじめとした非正規社員の待遇は、大幅に改善されてきています。とくに解雇については、正社員も非正規社員も差がないものと考えてください。ですから、質問者は「パートタイマーだから、突然に解雇されたとしても仕方がない」とあきらめることはありません。会社に対して、正社員と同じように他店への異動を求めることや解雇予告手当を請求することは、法律上、当然に認められる権利であって、図々しいことではないのです。

なお、有期労働契約の場合、会社は契約期間の最後まで雇用する義務を負いますから、質問者は、解雇に当たり契約期間終了時までの賃金を会社に請求することも可能です。こうなると、会社は「そこまでは支払えない」と言い出して、裁判で争うことになるかもしれません。

質問者にとっては、「次の勤務先が見つからないという状態を長引かせないこと」が重要です。その点では、会社と裁判で争って不安定な状態を続けるよりも、解雇予告手当をもらったうえで今の会社を退職し、次の勤務先を探すほうがよいように思います。

突然に解雇を通告してきた会社を腹立たしく思うかもしれませんが、その気持ちを切り替えて、早めに次の一歩を踏み出すようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。