引越後の住所は、会社に届け出なければいけませんか?

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あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>
引越しをすることになりました。居住地が変わった場合には、会社の総務部に「住所変更届」を提出することになっているのですが、このような届け出は、絶対にしなければいけないのでしょうか?

また、会社に住所変更を届け出ない場合、何か処分を受けることになるのでしょうか?

私は、職場の上司にストーカーまがいの行為を受けたことがあるので、会社には、転居後の住所を知られたくないのです。

引越したときには、転居後の住所を会社に届け出ることが必要

<回答>
結論から申し上げれば、引越したときには、転居後の住所を会社に届け出なければなりません。

会社は、次の理由により従業員の住所を把握しておくことが必要になります。

(1)税金や社会保険などの業務を問題なく行うため
会社は、従業員の所得税等の納付に関わる業務、または健康保険や厚生年金保険の加入・脱退などに関わる業務を行なっています。これらの業務を正しく、かつスムーズに行うために、会社は、従業員の住所を把握しておかなければなりません。

(2)通勤手当を正しく支給するため
通勤手当は、一般的には、居住地から会社までの往復にかかる交通費が支給されます。従業員の住所を把握しておかないと、会社は、通勤手当を正しく支払うことができなくなります。

(3)災害が発生した場合などに、従業員の安否確認などを行うため
災害が発生した場合、あるいは無断欠勤が続いている場合などに、従業員の安否確認を行うことがあるため、会社は、従業員の住所を把握しておくことが必要です。

これらの理由から、ほとんどの会社が、就業規則において「従業員として採用された者は、住所を会社に届け出ること」および「住所に変更が生じたときは、速やかに会社に届け出ること」を定めています。このような規則がある会社では、従業員は、転居後の住所を会社に届け出なければなりません。

転居後の住所を届け出ないと処分を受けることもある

就業規則に定められているにも関わらず、転居後の住所を会社に届け出なかった場合は、何らかの処分を受けることもあります。

「会社への届け出を忘れてしまった」という程度であれば処分を受けることはないものと思われますが、「通勤手当を多くもらうために、故意に住所変更を届け出なかった場合」などは、会社から、手当の過払い分の返金を請求され、さらに始末書の提出などを求められるなどの処分を受けることがあります。

なお、住所を教えようとしない、あるいはうその住所を届け出た従業員に対して、会社は、「多額の借金を抱えているなど、特別な事情があるのではないか」などの不信感を抱くことでしょう。仮に処分を受けなかったとしても、会社や上司にマイナスイメージを持たれてしまい、仕事がやりにくくなる可能性は十分にあります。

うその住所を届け出ても、年末調整の提出書類などで会社にばれてしまう

転居後の住所変更を届け出なかったり、うその住所を届け出たりしても、いつかは会社にばれてしまいます。

毎年、会社は年末調整(各従業員の納付するべき所得税を精算する業務)を行いますが、その際、全従業員に「扶養控除申告書」の提出を求めます。この書類には、従業員の住所の記入欄がありますので、これを見れば、転居後の住所がばれてしまいます。

また、健康保険や厚生年金保険を運営する機関は、各従業員の自宅にパンフレットなどを郵送することがあります。その際、これらの機関に届け出ている住所が正しくないと、配達されずに戻されてしまいます。すると、これらの機関は、会社に対して、その従業員の住所の確認を求め、そこから住所が正しくないことがばれてしまいます。

いずれにしても、うその住所の状態を長く続けることはできないので、従業員は、会社に正しい住所を届け出ておくことが必要です。

総務部に事情を説明して、個人情報の管理を徹底してもらうこと

今回のケースについても、質問者は、転居後の住所を会社に届け出ざるをえないことになりますが、そうであれば、質問者は「住所変更届」の提出先である総務部に事情を説明して、転居後の住所に関する情報が漏れないように要求したほうがよいでしょう。

会社は、個人情報保護法により、従業員の個人情報を適正に管理する義務が課せられています。ですから、会社に届け出た転居後の住所が絶対に漏れないよう、施錠されたキャビネットに書類を保管する、職場の上司からの依頼であっても転居後の住所を教えないことを約束してもらうなど、厳格な情報管理をするように総務部にお願いしましょう。

それでも、転居後の住所に関する情報が漏れたなどの事態が発生すれば、その者は、会社に対して苦情を申し立てたり、弁護士などに相談したりすることができます。

総務部に情報管理の徹底をお願いするだけで、転居後の住所が上司に漏れるリスクは小さくなります。今回のようなケースでは、皆さんも、情報管理の徹底を会社にお願いするようにしてください。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。