10月になったら、「最低賃金」を忘れずにチェックしよう!

「最低賃金」とは

日本の法律では、労働者の賃金の最低限度額が定められており、使用者は、その額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。この賃金の最低限度額を「最低賃金」と言います。

最低賃金よりも低い賃金で働く労働契約を結んだとしても、それは法律によって無効となり、最低賃金と同額の定めをしたものとされます。したがって、最低賃金未満の賃金しか支払われなかった場合、労働者は使用者に対して最低賃金との差額分の支払いを請求することができます。

最低賃金には、都道府県ごとに定められている「地域別最低賃金」と、特定の産業について設定されている「特定最低賃金」の2種類があります。地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、高い方の金額が最低限度額となります。
地域別最低賃金は、正社員だけではなく、パートタイマー、アルバイト、派遣社員など、すべての労働者に適用されます。(ただし、一般の労働者より著しく労働能力が低い者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けて、個別に最低賃金を減額する特例が認められています。)

地域別最低賃金は、毎年10月1日頃に改定されており、その額は厚生労働省のホームページなどで公表されます。例えば、東京都の最低賃金は、2018年10月1日から1時間当たり「985円」になりました。それまでの最低賃金が「958円」でしたから、1時間当たり27円も引き上げられたことになります。

2018年10月は、すべての都道府県において、最低賃金が25円前後引き上げられました。自分の賃金が最低賃金を下回っていないかどうか、各自でチェックしてみるとよいでしょう。

最低賃金は「時給」で比較する

最低賃金は、原則として「1時間当たりの金額」で表示されます。したがって、自分の賃金と最低賃金を比較するときには、時給ベースで行うことになります。

時給制で働いている人は、自分の時給と最低賃金を比較します。
日給制の人は「日給÷1日の所定労働時間」で算出した金額、月給制の人は「月給÷1箇月平均所定労働時間」で算出した金額を、それぞれ最低賃金と比較します。

最低賃金の対象は「毎月支払われる基本的な賃金」で、残業手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは除外されます。これらの手当が支給されている人は、それを除いた賃金(1時間当たりの金額)と最低賃金を比較します。

なお、歩合給は、最低賃金の対象になります。時給制で働いている人が、1カ月の売上に応じて歩合給が支給されている場合、「時給+(歩合給÷月間総労働時間数)」を算出して、最低賃金と比較します。

ここ数年、時給が増えていないパートタイマーは要注意

この数年間、地域別最低賃金は、大幅に引き上げられてきました。例えば、東京都の最低賃金は、2013年10月は「869円」でしたから、この5年間で116円(約13%)も引き上げられたことになります。

同じ会社で数年間働き続けているパートタイマーやアルバイトで、入社してから時給が増えていないという人は、時給が最低賃金よりも低くなっている可能性があります。これは、時給の見直しが行われないうちに、最低賃金が引き上げられて、その人の時給を上回るようになってしまったということです。いわば、使用者が最低賃金をチェックすることを忘れていたわけで、こういう場合は、労働者が「時給が最低賃金よりも低い」と指摘すれば、会社は、すぐに時給を引き上げてくれるでしょう。

時給の引き上げに応じてくれない場合は、労基署に相談する

しかし、使用者の中には、意図的に最低賃金よりも低い時給を設定している人もいます。こういう使用者は、「今は業績が悪いので、最低賃金を上回る時給を支給できない」とか「あなたは、能力が低いので最低賃金は適用されない」などと言い訳をつけて、時給の引き上げに応じてくれないでしょう。

このような場合は、賃金明細などを持って労働基準監督署に相談に行くようにしてください。労働者から相談を受けた労働基準監督署が、最低賃金以上の賃金を支払うように使用者を指導してくれます。

国は、今後も、最低賃金を毎年3%程度引き上げて、全国平均額を1,000円にすることを目指しています。2018年10月時点で地域別最低賃金の全国平均額は874円ですから、あと5年ぐらいは、最低賃金の大幅な上昇が見込まれます。

パートタイマーやアルバイトとして働いている人は、毎年10月になったら、最低賃金を忘れずにチェックするようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。