どこの企業も人手不足。「今が就職する最大のチャンス」って本当?

統計データを見る限り、今が「最も就職しやすい状況」

厚生労働省は、毎月、「有効求人倍率」という指標を発表します。これは、ハローワークが企業などから受け付けた「求人数」を、仕事を探している「求職者数」で割った数値です。この数値が「1.00」を超えると、1人の求職者に対して1件以上の求人案件があることになりますから、労働者からすれば「就職しやすい状況」、企業からすれば「人手不足の状況」にあると言えます。

2018年6月の有効求人倍率(パートタイマーも含めた一般労働者、季節調整値)は、1.62で、1974年1月以来44年5か月ぶりの高い水準になっています。なお、有効求人倍率が1.50以上になった期間は、1973年1月~1974年2月(14カ月間)と、2017年6月~2018年6月(13カ月間、現在継続中)の2つしかありません。

つまり、統計データを見る限り、現在、企業は過去最大級の人手不足に見舞われており、労働者にとっては「最も就職しやすい状況」にあると言えます。

一般事務職の仕事を探している人にとっては「就職しにくい状況」にある

しかし、仕事を探している人からすれば、「今は、就職しやすい状況ではない」という実感を持っているかもしれません。
そのように感じる理由は、人手不足が生じている職業が偏っていることにあります。

現在、深刻な人手不足が発生している主な職業は、保安の職業(2018年6月の有効求人倍率:7.11)、建設・採掘の職業(同:4.50)、介護サービスの職業(同:4.30)、接客・給仕の職業(同:3.91)などです。

一方、一般事務の職業(同:0.35)、機械組立の職業(同:0.82)、運搬・清掃・包装等の職業(同:0.75)などの事務的職業や軽作業は、有効求人倍率が1.00を下回っており、むしろ「就職しにくい状況」になっています。
したがって、「一般事務の仕事を探している人」や「軽作業のパートを探している人」にとっては、求職者数に比べて求人数が少ないため、「就職しにくい状況」にあると感じるのです。

「就職しやすい状況」は、あと2年すると一変する可能性が高い

このように職業によって差はあるものの、全体的に見れば、今は「就職しやすい状況」にあります。仕事を探している人にとっては、就職する最大のチャンスが訪れていると言えるでしょう。

ところで、この「就職しやすい状況」は、いつ頃まで続くのでしょうか?
現在の「就職しやすい状況」は、保安や建設などに生じた深刻な人手不足を起点としており、それらの職業について一定数の求人が見込まれる今後2年間は、「就職しやすい状況」が続くものと考えられます。

問題は、その後です。
過去のデータを見ると、有効求人倍率は、長期間をかけて少しずつ上昇し、ピークを過ぎると短期間で急激に下降しています。そして、そこから長期にわたり有効求人倍率が低い期間が続きます。

例えば、1973年頃の状況を見ると、有効求人倍率が上昇していく期間が約5.5年間、有効求人倍率がピークに達して「就職しやすい状況」になった期間が約1年間であり、そのピークを過ぎた8カ月後には、有効求人倍率は1.0を下回り、「就職しにくい状況」に陥っています。そして、その後、約13年間、「就職しにくい状況」が続いています。

この傾向を現在に当てはめると、「就職しやすい状況」が今後2年間続いた後、一気に求人数が減少して、それから数年間は「就職しにくい状況」が続くものと考えられます。

「就職しにくい状況」の到来に備えて、今から対応しておくこと

このような状況に対して、私たちは、どのように対応すればよいでしょうか?

まず、仕事を探している人は、なるべく早めに、遅くとも今後2年間のうちに、就職先を見つけるようにするべきです。とくに一般事務職への就職を希望する人は、今後、求人数のさらなる減少が見込まれるため、労働条件の面で多少の妥協をしてでも、早めに就職先を決めたほうがよいでしょう。

また、仕事を探している人も、会社で働いている人も、いざというときに就職先をすぐに見つけられるように、人手不足が続きそうな職業に関する勉強をしておくことです。具体的には、「情報処理・通信技術」や「介護、家庭生活支援サービス」などの職業は、今後も人手不足の状況が続くものと考えられますので、これらの職業に関する知識やノウハウを身に着けておくことをおすすめします。そうすれば「就職しにくい状況」」に陥ったとしても、次の就職先を簡単に見つけることができます。

現在の「就職しやすい状況」が、永遠に続くということはありません。「就職しにくい状況」の到来に備えて、今のうちから、早めに就職先を見つける、就職に有利な知識やノウハウを身に着けるなどの対応をしておくことが重要です。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。