パートタイム労働者も正社員と同様に通勤手当をもらうことができる

通勤手当を支給するかどうかは、各社が決めて、就業規則に定める

自宅から職場までの通勤にかかる交通費として支給される賃金を「通勤手当」と言います。多くの会社は、通勤で使用する公共交通機関(電車やバスなど)の定期券代を支給していますが、全労働者に毎月一定額を支給している会社、あるいは通勤手当をまったく支給していない会社もあります。

厚生労働省の「平成27年 就労条件総合調査」によれば、通勤手当は、91.7%の会社で支給されており、平均支給額(月額)は11,462円となっています。この統計を見る限り、通勤手当を支給していない会社も8%ほど存在するということですが、このような会社は、通勤にかかる交通費を労働者が負担していることになります。

通勤手当は、法律で支給が義務付けられている賃金ではありません。したがって、通勤手当を支給するかどうか、あるいは支給額をいくらにするか等については、各社が決めて、就業規則などで具体的に定めることになっています。
「通勤手当の支給額が違っているのではないか」など疑問があるときには、まず、就業規則の通勤手当に関するルールを調べてみるとよいでしょう。

正社員に通勤手当が支給されているかどうかがポイント

ところで、パートタイム労働法(正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)第8条には、会社は、パートタイム労働者の待遇を正社員と異なるものとする場合、その違いは、職務内容や人材活用の仕組み(人事異動の有無及び範囲)などを考慮して不合理と認められるものであってはならない、と定めています。
この法律に基づけば、正社員に対して通勤手当を支給している会社では、原則として、パートタイム労働者についても正社員と同様の通勤手当を支払わなければならない、ということになります。

また、正社員に支給している通勤手当が、自宅から職場までの交通費全額を基準としているのであれば、パートタイム労働者の通勤手当も、それと同様に支給することが原則となります。同じ経路と交通機関を使って通勤しているのであれば、誰であろうと交通費は同額になるはずなので、パートタイム労働者の通勤手当が正社員よりも低いことは、客観的に見ると「不合理な取り扱い」になるのです。

一方、正社員に通勤手当をしていない会社においては、パートタイム労働者についても通勤手当を支払う必要はありません。パートタイム労働法は、「正社員とパートタイム労働者の待遇を均衡がとれたものにすること」を会社に求めているのであって、「パートタイム労働者に通勤手当を支給すること」を義務付けているわけではないからです。

採用面接時に、通勤手当の有無について確認すること

通勤手当が支給されていないこと、あるいは支給額が低いことを疑問に思うパートタイム労働者は、まず、パートタイム労働者用の就業規則を見て、通勤手当がそこに定められたルールに従って支給されているかどうかを確認します。それでも納得がいかないときには、さらに正社員用の就業規則を見て、パートタイム労働者の通勤手当が正社員のそれと比べて低い条件になっていないかどうかを調べてみるとよいでしょう。
通勤手当が就業規則どおりに支給されていない場合、また、パートタイム労働者の通勤手当が正社員のそれよりも不合理に低い場合は、会社が支給額を見直してくれる可能性が高いと言えます。

なお、これまでに述べたことは、入社後に「通勤手当の支給に間違いがあるのではないか」と疑問に思ったときの対応です。本来であれば、このような疑問が生じないように、入社前の採用面接の段階で通勤手当の有無や支給額について会社に確認しておくべきです。そして、通勤手当が支給されない会社であれば、1日分の賃金から往復交通費を差し引いた実支給額を考えたうえで、入社するかどうかを決めるようにしましょう。

一般的には、採用面接のときに、通勤手当の有無および支給額について、会社側から説明があるはずです。会社から説明がないと「通勤手当は当然に支給されるもの」と勝手に思い込んでしまう人が多いのですが、前述したとおり、実際には約8%の会社が通勤手当を支給していないのです。ですから、採用面接時に、会社側から通勤手当に関する説明がない場合は、労働者側から必ず確認するようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。