勤務中や通勤中に地震が発生。どう対応すればよい?

勤務中に地震が発生した場合は、会社から帰宅指示があるまで待機すること

勤務中に地震が発生した場合、まずは自分の身の安全を確保し、地震がおさまったら避難するなど、会社の指示に従って落ち着いて行動することが必要です。従業員を帰宅させるかどうかは、会社が、職場の被害状況や周辺の交通事情などを考えたうえで指示を出します。したがって、会社から帰宅指示があるまで、従業員は職場あるいは避難場所に待機していなければなりません。

過去の地震発生時には、鉄道などの交通機関が動き出す前に、多くの会社が帰宅指示を出してしまったため、道路は帰宅困難者であふれかえり大混乱に陥りました。このような経験を踏まえて、今では、安全に帰宅できる状況になるまで、従業員を職場にとどまらせておく(あえて帰宅指示を出さない)会社が多くなっています。

「少しでも早く帰って、家族の無事や自宅の被害状況を確認したい」という気持ちは分かりますが、こういときは焦らずに、会社からの帰宅指示を待ちましょう。

なお、自宅まで歩いて帰れる従業員であっても、上司や同僚に何も告げないまま、勝手に帰宅してはいけません。安否確認のときにその場にいない従業員は、行方不明者とみなされてしまうことがあります。帰宅するときには、上司あるいは同僚にその旨を伝えて、自分の居場所を明らかにしておくことが必要です。

通勤中であれば、安全を第一に考え、無理して出勤しない

通勤中に地震が発生した場合、自分の身の安全を第一に考えましょう。地震がおさまったのちに、周囲の状況を考えて出勤するかどうかを、自分で判断することが必要です。

交通機関がマヒしている状況であれば、無理して出勤する必要はありません。このようなときに出勤したところで、従業員がそろわなかったり、お客様が来なかったりして、ほとんど仕事になりません。会社の近くまで来ていれば、「とりあえず会社まで行ってみよう」と判断し、自宅の方が近ければ「いったん帰宅して、自宅で待機していよう」と判断すればよいでしょう。

なお、地震発生直後は、一時的に携帯電話などがつながりにくい状況になります。会社と連絡ができないときには、会社に出勤するか、帰宅するか、という判断を自分自身でしなければなりません。その際、「どうすれば、最も安全か」ということを第一に考えて、無理をしないようにしましょう。

勤務中や通勤中に地震が発生し、けがをした場合も労災保険が適用される

勤務中や通勤中に発生した地震によってけがをした場合でも、原則として、労働者災害補償保険(労災保険)の保険給付の対象となります。したがって、病院で治療を受けるときには、治療にかかった費用などは労災保険から支払われ、また、入院して会社を休業するときには、その間の賃金の補償(賃金の約60%分の給付金の支給)が行われます。

労災保険は、原則として、会社に雇用されるすべての従業員が適用対象となりますので、パートタイマーやアルバイトなどにも保険給付が行われます。ですから、勤務中や通勤中にけがをして治療を受けた場合などは、労災保険の適用を申請するとよいでしょう。なお、労災保険の保険給付の申請は、基本的には従業員本人が労働基準監督署に対して行うものですが、会社によっては申請書類の作成などを手伝ってくれるところもあります。労災保険の申請をするときには、最初に会社の総務・人事部門に相談してみるとよいでしょう。

地震によって建物や設備が壊れてしまったために会社が休業する場合、休業期間中の賃金は、原則として支給されません。労働基準法第26条には「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められていますが、地震で被災したことによる休業の場合は、会社の責任を問えないため、この定めは適用されないのです。被災による休業期間中、従業員は賃金をまったく受けられない状態に陥ることがあるものと知っておいてください。

日ごろから、地震が発生した場合の対応を考えておくこと

地震が発生したときに適切に対応できるようにするために、日ごろから準備しておくことが必要です。

まず、交通機関が復旧する前に帰宅指示が出た場合、または、通勤中に発生した地震によって帰宅することになった場合に備えて、会社から自宅までの徒歩ルートを確認しておきましょう。会社から自宅までの徒歩ルートは、危険な場所をなるべく避けて、途中の休憩地点なども確認しておくとよいでしょう。

また、地震によって会社が休業する場合に生活に支障が生じないように、1か月分の賃金に相当する額を貯金しておくことが望ましいと言えます。1か月分の賃金に相当する貯金があれば、賃金が支給されない状況になったとしても、とりあえず、その月は生活を続けることができます。

東日本大震災、熊本地震、大阪北部地震…と、近年、大きな地震が相次いで発生しています。この機会に、地震が発生したときの対応について、皆さんも考えてみてください。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。