大雪のため終業時間の2時間前に帰るように指示されました。会社の指示で早退した2時間について賃金は支給されますか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

私は、時給制で働いているパートタイマーです。先日の大雪のとき、会社から「急ぎの用事がない人は帰宅するように」という指示が出たので、終業時間の2時間前でしたが退社しました。月末に給与明細を確認したところ、その2時間分の労働時間はカウントされておらず、時給も支給されていませんでした。ところが、同じ職場で働く正社員については、その2時間は「早退」の取扱いはなされておらず、賃金も通常どおり支給されていたようです。

私も、会社に請求すれば、早退した時間分の賃金を支払ってもらえるでしょうか?

「働かなかった時間分の賃金は支給されない」ということが原則

<回答>

会社は、原則として、働かなかった時間について賃金を支給しません。今回のケースで、早退した2時間分の労働時間がカウントされず、その分の時給が支給されていないということは、この原則にそった一般的な処理といえます。

ところで、労働基準法第26条では「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めています。今回のケースについては「会社が退社を指示したので、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うべきだ」という考え方もあります。

しかし、「大雪」という防ぎようがない事情によるものを「使用者の責に帰すべき事由による休業」とすることは、やや無理があります。そもそも今回のような退社指示は、「交通機関の混乱が生じる前に帰宅させたほうがよい」という、従業員の通勤の安全面に配慮した措置です。そのような措置に対して「退社させたのは会社だから、休業手当を支払うべきだ」というのは、使用者にとって厳しすぎます。

このような点から、今回のケーでは、質問者が会社に請求しても、早退した時間分の賃金は支払ってもらえることはないものと考えられます。

退社指示による早退については賃金カットを行わない会社もある

質問者の勤務先では、正社員については、雪のために早退した2時間の賃金カットをしなかったようですが、これは、会社が「不可抗力による早退だから、今回は、通常の終業時刻まで働いたことにする」という特例を認めたことになります。

一般的に、時給制が採用されているパートタイマーは、日々の労働時間を加えていき、各月の締日に1カ月間の総労働時間と時給を掛け合わせて、賃金支給額を算出します。一方、月給制が採用されている正社員は、毎月支給される賃金から早退時間分に相当する賃金を減額するという処理を行います。正社員の早退時間にかかる賃金カットは、複雑な賃金計算や面倒な処理が必要になるので、会社は、できるだけ回避したいと思います。ですから、今回のケースのように「時給制のパートタイマーについては早退時間分の賃金を支給しないが、月給制の正社員については(特例として)早退時間分の賃金カットを行わない」という措置をするのです。

なお、「早退時間分の賃金は一切支給しない」という考え方から、正社員についても賃金カットを行うこととして、年次有給休暇への振り替えを希望する場合は、それを認めるという措置をしている会社もあります。

閉店時間を早めたことによる退社指示であれば、休業手当を請求できることも

例えば、スーパーなどで「雪のために客が来ない」あるいは「雪による渋滞のために仕入れた商品が届かない」という理由で店を閉めて、従業員を退社させた場合はどうなるのでしょうか?

この場合は、「客が来ない」、「仕入れた商品が届かない」という使用者側の理由で休業したことになりますから、従業員を早退させる(休業を命じる)と、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが必要になることがあります。

なお、休業手当の支払いは、一日単位で考えることが原則です。例えば、1日の所定労働時間が8時間の場合、早退2時間分について賃金カットを行っても、その日は6時間分(平均賃金の75%相当)の賃金が支給されているので休業手当は発生しません。また、早退が4時間であれば、休業手当(平均賃金の60%)と、その日に支給された給与(同50%)の差額(同10%)分を支払えばよいということになります。

以上のとおり、従業員に退社指示を出した場合の賃金の取扱いは、労働基準法に定める休業手当を踏まえて、それぞれの会社で独自に決めることです。「どのような処理が正しい(または、間違っている)」とは、一概には言えません。不明な点があるときには、勤務先の人事部に問い合わせてみるとよいでしょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。


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