出産をひかえて働き続けるか、退職するか迷っています。それぞれのメリットは何ですか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

3年間、パートとして勤務してきましたが、数か月後に出産をひかえて、育児休業を取得したうえで働き続けるか、あるいは退職するかで迷っています。どのように判断すればよいと思いますか?

産前産後休暇や育児休業期間中は、社会保険から給付金が支給される

<回答>

出産・育児にあたり、育児休業などを取得したうえで働き続けるか、この機会に退職するかで悩む女性従業員はたくさんいます。

ここでは、最初に、出産や育児にあたり、女性従業員が取得できる休業や社会保険から支給される給付金について説明してから、働き続ける場合、退職する場合、それぞれのメリットについて考えてみましょう。

6週間(双子等を妊娠した場合は14週間)以内に出産する予定の女性従業員は、会社に請求すれば、休業することができます。また、産後8週間を経過しない女性従業員を就業させることは労働基準法で禁止されています。(ただし、産後6週間を経過した女性従業員が働くことを会社に申し出て、医師が「支障なし」と認めれば、仕事をすることが可能です。)これを「産前産後休業」といいます。

産前産後休業は、正社員だけではなく、パート従業員も取得することができます。

一般的には、産前産後休業の期間中、賃金は支給されません。その代わり、社会保険に加入していれば、健康保険から賃金の3分の2に相当する額の給付金(出産手当金)が支給されます。

産後休業が終了した後は、原則として、子が1歳に達するまで(保育園に入れない等の場合は1歳6か月に達するまで)、育児休業を取得することができます。(ただし、有期契約を結んでいるパート従業員の場合は、「雇用期間が1年以上」などの要件を満たすことが必要です。)

育児休業期間中も、一般的には、会社から賃金は支給されません。その代わりに、雇用保険に加入しているパート従業員は、一定の要件を満たせば、休業開始前の賃金の50~67%に相当する額の給付金(育児休業給付金)が支給されます。

出産などのために働くことができない期間は、雇用保険の基本手当が受けられない

退職を選択した場合は、どうなるでしょうか?

普通は退職して失業状態になると、雇用保険から基本手当(いわゆる「失業手当」)が支給されます。ただし、妊娠、出産、育児などですぐに仕事につくことができない場合は、失業とは認められないため、基本手当を受けることができません。(このようなケースでは、本人が、受給期間の延長申請を行えば、出産が終わり仕事ができる状態になったときに、あらためて基本手当を受給できるようになります。

なお、健康保険の出産手当金については、一定の要件を満たせば、退職後も受けることができますが、雇用保険の育児休業給付金は、退職すると「育児休業」ではなくなってしまうため、支給されません。

ですから、出産、育児のために退職すると、再び働き続けることができる状態になるまで、収入がなくなってしまうことになります。

現在の仕事や勤務先が気に入っていれば、「働き続けること」を選択するべき

このように、社会保険に加入しているパート従業員の場合は、出産・育児後も働き続けることにしたほうが、健康保険や雇用保険から給付金を受けて、一定の収入が確保できるというメリットがあります。

さらに、働き続けることを選べば、育児が一段落すれば新たな勤務先を探すことなく復職できるというメリットがあります。なお、期間を定めて雇用されるパート従業員については、勤務期間が通算して5年を超えると無期契約に転換できるルール(無期転換ルール)が法律で定められており、これには育児休業期間も含まれます。現勤務先に3年間勤務している質問者の場合、育児休業を1年間取得し、さらに復職後1年間勤務すれば、無期契約への転換を会社に申し込む権利を得ることができます。

ですから、現在の仕事や勤務先が気に入っている人は、産前産後休業や育児休業を利用して、働き続けたほうがよいでしょう。

一方、退職すると、収入面や再就職面での不安はありますが、仕事や勤務先のことを考えずに、出産・育児に専念できるというメリットがあります。現在の仕事などを見直したいと思っている人は、出産・育児を機に退職して、生活が落ち着いたら、あらためて自分に適した仕事や勤務先を探してみるとよいでしょう。

なお、「出産や育児で長期間にわたり休業すると、職場に迷惑をかけるのではないか」と心配する人もいますが、法律で認められている産前産後休業や育児休業は、今や、多くの人が当然の権利として取得しています。職場に気兼ねすることなく、自分が今の仕事や勤務先を気に入っているかどうかで、出産後も働き続けるか、出産を機に退職するかを判断するほうがよいでしょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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