退職後の健康保険。健保の任意継続と国民健保への加入の、どちらが得ですか?

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あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

会社を退職することになり、健康保険証を会社に返却しました。現在、病院に通ってケガの治療を受けていますが、健康保険証がないと治療は受けられなくなるのでしょうか?また、退職後に健康保険に加入するには、どのような方法があるのでしょうか?

健康保険に加入していないと、医療費が大幅に増加する

<回答>

社会保険に加入している従業員は、退職にあたり、健康保険の被保険者資格を喪失します。次の会社に入社すれば、再び健康保険に加入することができますが、就職していない間は、何も手続きをしなければ健康保険に加入していない状態になります。

健康保険に加入していなくても、病院などで治療を受けることはできますが、医療費全額が自己負担になり、病院窓口で多額の費用を支払わなければなりません。子供や配偶者などの被扶養者についても同様です。(健康保険に加入していれば、治療を受けたときなどに窓口で支払う費用は、原則として医療費の30%、小学校入学前の子供と70歳以上の高齢者(現役並み所得者を除く)は医療費の20%です。)

退職後も健康保険に加入するには3つの方法がある

したがって、退職する人は、退職後の健康保険をどうするのかを、あらかじめ考えておくことが必要です。退職後も健康保険に加入するには、次の3つの方法があります。

(1)配偶者や親族の健康保険の被扶養者になる
配偶者または親族が健康保険に加入していれば、その被扶養者になることができます。この手続きは、配偶者または親族が「被扶養者(異動)届」を勤務先に提出することによって行います。

(2)退職時に加入している健康保険の任意継続被保険者になる
退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヵ月以上あれば、退職時に加入している健康保険に2年間加入し続けることができます。これを「任意継続被保険者」といいます。なお、被扶養者もあわせて任意継続にすることができます。
手続きは、退職時に加入していた健康保険組合または協会けんぽに退職日の翌日から20日以内に所定の申請書を提出することによって行います。

(3)居住する市区町村の国民健康保険に加入する
市区町村が運営する国民健康保険に加入します。なお、被扶養者がいる場合は、あわせて国民健康保険に加入することが必要です。手続きは、退職日の翌日から14日以内に市区町村の窓口に届け出ることによって行います。

任意継続被保険者と国民健康保険。保険料が安いのはどちらか?

配偶者などの被扶養者になっても、配偶者の保険料負担は増えませんし、自分で保険料を負担することもありません。他の2つの方法と比較して、断然「お得」なので、退職者は、まず、この方法を選択するべきです。

被扶養者になれない場合、退職時に加入していた健康保険の任意継続被保険者になるか、国民健康保険に加入するか、いずれかを選択することになります。どちらを選択しても、保険給付の内容は原則として変わりませんから、これら2つについては保険料が安いほうを選択するとよいでしょう。

任意継続被保険者は、それまで会社が負担していた保険料も自分で払うことになるため、通常であれば、保険料は退職前の2倍の金額になります。ただし、保険料の上限額が定められていますので、詳しいことは、加入している健康保険組合などに問い合わせてみてください。

国民健康保険の保険料は、退職者の前年の所得金額を基礎として算出され、所得金額に乗じる率などは市区町村によって異なります。例えば、横浜市の場合、次の算式で国民健康保険料(年額)が算出されます。

国民健康保険料=前年の所得金額×8.63%+42,070円(上限73万円。なお、40歳以上65歳未満の者は、これに介護保険料が加算されます)

月額給与が15万円、前年の年収が180万円(所得控除後の年間所得75万円)の従業員の場合、協会けんぽ(神奈川)の任意継続被保険者の保険料(月額)は約11,700円、横浜市の国民健康保険の保険料(月額)は約8,900円になります。ですから、この場合は、国民健康保険に加入したほうがよいということになります。

配偶者の被扶養者になる見込みがあるならば、国民健康保険に加入したほうがよい

任意継続被保険者の加入期間は2年間ですが、この間は「就職して健康保険の被保険者になった」などの場合を除いて途中で脱退することができません。つまり、いったん任意継続被保険者になると、「国民健康保険に加入したい」あるいは「配偶者の健康保険の被扶養者になりたい」といっても、2年間はそれができません。

自分の退職後に配偶者が就職する見込みがあり、数か月後に配偶者の被扶養者になるつもりならば、任意継続被保険者にはならずに、国民健康保険に加入しておいたほうがよいでしょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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