「緊急連絡用に携帯番号を教えてほしい」と上司から言われました。拒否できますか?

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あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

先日、「職場での緊急連絡用に、あなたの携帯電話の番号とメールアドレスを教えてほしい」と上司から言われました。(携帯電話は、会社から貸与されたものではなく、私物です。)私としては、携帯番号やアドレスを知られたくないのですが、こういう場合は、上司に教えなければいけないのでしょうか?

また、携帯番号などを上司に教えなかった場合、何か不都合があるのでしょうか?

上司に携帯番号などを教える義務はないので、拒否も可能

<回答>

災害が発生したときに緊急連絡をするために、あるいは帰宅後に仕事のことを確認するために、部下の携帯番号やメールアドレスを聞いてくる上司がいます。しかし中には、プライベートな用件で携帯に電話してくる上司、休暇中でも仕事のメールをしてくる上司もいるので、部下の中には「上司には携帯番号などを教えたくない」と思っている人もいることでしょう。

そもそも「上司に緊急連絡先を伝えること」を従業員に義務付けている法令はありません。ですから、上司が携帯番号などを教えるように要求してきても、従業員は、それを拒否することができます。

なお、従業員は、税金や社会保険の手続きを行ううえで、現住所や電話番号などを記入した書類を会社に提出することになりますし、入社時に住民票や履歴書の提出を会社から求められることもあります。これらについては原則として拒否することはできないため、従業員は、自分の現住所や連絡先などの情報を会社に対して提供することになります。もっとも、このような形で会社に提供した情報について、会社は、事務手続きなどの特定された目的でしか使用することができず、上司(第三者)に提供することもできません。携帯番号などの情報が会社から上司に流れている疑いがあるときは、従業員は、会社に苦情を申し立てて、実際に情報が流れているのであれば、直ちにそれを止めさせることができます。(厚生労働省「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」)

携帯番号を教えないと、上司との人間関係が悪くなる可能性がある

しかし、上司が携帯番号などを聞いてきたときに、それを拒否するのは、実際には難しいといえます。携帯番号を教えないということは、上司に対して「私はあなたのことを信頼していない」という意思表示をするようなものです。上司としては、その部下に対して悪い印象を持つでしょうし、「万が一のときに連絡がつかないから」という理由で、その部下の仕事を減らす可能性もあります。

携帯番号を上司に教えなかった場合、緊急連絡ができないことよりも、上司との人間関係が悪くなることのほうが、部下にとっては不都合と言えるでしょう。

とりあえず携帯番号を教えておいて、何かあったら人事部などに相談をする

それを考えると、従業員としては、とりあえず上司に携帯番号を教えておいて、何か問題が生じたら人事部などに相談する、という対応をとったほうがよいものと思われます。

プライベートな用件で携帯電話に電話してきたり、何度もメールを送信してきたりした場合、それがデートへの執拗な誘いや性的な内容などを含むものであれば、その行為はセクシュアル・ハラスメントに該当します。また、就業時間外に個人の携帯電話に電話してきて、長時間にわたり仕事のミスを怒ったり、無理な仕事を押し付けたりすれば、その行為はパワー・ハラスメントに該当します。

このような行為があった場合は、まずは、その上司に対して「迷惑なので止めてほしい」と明確に伝えて、それでも続くときには、会社の人事部などに相談してみましょう。また、会社に相談しても対策を講じない場合は、労働基準監督署などに設置されている「総合労働相談コーナー」に相談してみるとよいでしょう。(相談は無料です。)

残業代の支給や業務用電話の貸与を求めると、上司からの連絡は少なくなる

セクハラやパワハラまではいかないものの、就業時間外や休暇中であるにもかかわらず、何か困ったことがあると、すぐに部下の携帯電話に連絡してくる上司もいます。このような場合、部下は、対応のためにかかった時間について残業代や休日労働手当を請求できますし、また会社に対して業務連絡用の携帯電話を貸与するように要求することもできます。

こうした請求が行なわれると、会社は、残業代の支給や業務用電話の貸与を避けるために、その上司に対して「よほどのことがない限り、部下の携帯電話には連絡しないように」と注意します。そうなると、上司からの就業時間外の連絡は少なくなります。

上司に対して携帯電話への連絡を止めるように言いにくいのであれば、その従業員は、会社に対して残業代の支給や業務用携帯電話の貸与を要求して、会社から上司に注意してもらうようにするとよいでしょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。