給与から親睦会費が勝手に引かれています。これを止めることはできますか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

入社した会社の給与明細を見たら、「親睦会費」という名目で1000円が差し引かれていました。総務部に確認したところ、「当社で働く従業員であれば、親睦会に加入し、会費として毎月1000円を支払うことになっている」と言われました。親睦会は、社内旅行のイベント等を行うということですが、私は、そのようなイベントに興味がないので、親睦会に参加する気はなく、会費も支払いたくありません。

私は、親睦会から脱退することができるでしょうか?
そして、親睦会費が給与から引き落とされないようにすることはできるのでしょうか?

親睦会への加入を強制することはできない

<回答>

「親睦会(従業員会)」とは、社内の交流を深めるために、旅行やパーティーなどのイベントを行ったり、冠婚葬祭時に慶弔金を支給したりする、従業員の集まりをいいます。親睦会は、従業員が自主的に集まったものとなりますので、それに加入するかどうかは、従業員一人ひとりが決めることになります。会社は、親睦会の活動を後押しすることはできますが、従業員に親睦会への加入を強制することはできせん。

親睦会がある会社では、通常は、親睦会の幹事が、入社した従業員に対して趣旨や活動内容を説明したうえで、加入希望者から申込書を提出してもらいます。

今回のケースでは、質問者は、親睦会に関する説明を受けておらず、また、親睦会に加入するかどうかの意思確認も受けていないようですが、このような状態で親睦会に加入することは、本来はありえません。質問者は、親睦会の幹事に連絡して、「自分が親睦会への加入申し込みをしていないこと」および「自分が親睦会に加入している状態になっているのであれば、そこから脱退したいこと」を明確に伝えるべきです。

親睦会から脱退したい旨を伝えると、幹事が「当社の親睦会は、全員参加を原則としているので、できる限り脱退はしないでほしい」等と説得してくるかもしれません。それに応じるかどうかは、質問者が決めることです。最終的には、質問者が「親睦会から脱退したい」と言えば、親睦会の幹事は、それを拒むことはできません。

親睦会費の給与からの天引きは、労使協定がなければ止めることができる

親睦会からの脱退が認められれば、親睦会費を支払わなくてもよいことになりますので、給与から親睦会費が天引きされることもなくなります。

一方、親睦会には加入し続けるが、親睦会費については給与から引き落とされないようにしたい(例えば、現金で毎月支払うことにする)場合は、どうすればよいでしょうか。

労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められており、会社は、本人の承諾を得ないまま、何らかの費用を給与から差し引くこと(天引きすること)は、原則としてできません。しかし、同条の但し書きには、「法令に別段の定めがある場合」と「労使協定がある場合」については、使用者は、賃金の一部を控除して支払うことができると定められています。ここで「法令に別段の定めがある場合」とは、税金や社会保険料の手引きのことを指しています。また、「労使協定がある場合」とは、例えば、親睦会費の天引き等のことで、これについては、従業員代表と会社との間で協定を結べば、給与からの引き落としが認められています。

親睦会費が給与から天引きされないようにしたい従業員は、会社に対して「労使協定を確認させてほしい」と頼んでみるとよいでしょう。労使協定を結んでいなかったり、または協定の中に「希望しない従業員については天引きを行わない」という条文があったりすれば、従業員は、会社に対して、親睦会費の天引きの中止を求めることができます。

親睦会については、会社ではなく、親睦会の幹事に相談をすること

冒頭に述べた通り、親睦会は、従業員の自主的な集まりです。会社が親睦会の活動を後押ししたり、親睦会費の徴収が給与天引きで行なわれていたりするため、「親睦会は会社が運営しているもの」と思い込んでいる人もいますが、それは誤解です。親睦会は、あくまでも従業員が自主的に集まって、運営しているものなのです。

ですから、「親睦会から脱退したい」あるいは「親睦会費が給与から引き落とされないようにしたい」ということは、会社ではなく、親睦会に相談することが必要です。そして、親睦会の中で従業員同士が話し合って、脱退の可否や会費の支払い方法等を決めればよいのです。

質問者の場合、親睦会の幹事に事情を話せば、よほどのことがない限り、親睦会からの脱退が認められ、親睦会費の天引きも止めることができるでしょう。質問者は、一度、親睦会の幹事に相談してみてください。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。