自転車通勤や保育園送迎後の通勤でケガをしたときも、労災保険は適用されますか?

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あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

私は、近所の会社で、パートタイマーで働いています。通勤には自転車を使っていますが、先日、通勤の途中で転倒して足を骨折してしまいました。自転車通勤でケガをした場合にも労災保険は適用されるのでしょうか?また、その日は、子供を保育園まで送った後で事故にあったのですが、このような場合でも労災保険は適用されるのでしょうか?

通勤の途中でケガをした場合にも、労災保険が適用される

<回答>

労働者が通勤によってケガなどをした場合(これを「通勤災害」といいます)は、業務上の事由で傷病を負った場合と同様に、「労働者災害補償保険(労災保険)」から、療養費の支給や休業期間中の賃金補償などの保険給付が受けられます。

労災保険が適用される「通勤」とは、「就業に関し、住居と就業の場所との間の往復を、合理的な経路および方法で行うことをいい、業務の性質を有するものを除くもの」とされています。なお、移動の経路を逸脱(合理的な経路からそれること)し、または中断(通勤とは関係のない行為を行うこと)した場合には、逸脱・中断の間およびその後の移動は、原則として「通勤」とはなりません。ただし、その逸脱・中断が、日常生活上必要なことを最小限行うものであれば、逸脱・中断の間を除いて、通勤と認められます。

今回の質問者の場合、ケガが発生したときの移動が「通勤」と認められれば、労災保険が適用されます。そして、「通勤」と認められるかどうかの判断は、次の2点がポイントになります。
(1)自転車通勤が合理的な方法といえるか?
(2)保育園へ子供を送迎した場合も「通勤」と認められるか?

自転車通勤も、労災保険が適用される「合理的な方法」と認められる

労災保険が適用される通勤の「合理的な方法」としては、徒歩はもとより、電車、バス、自動車、自転車等の利用が認められています。

ところで、会社には「バス通勤をする」と申請しておきながら、あるいは、会社が自転車通勤を禁止しているにもかかわらず、労働者が自分の判断で自転車通勤を行い、ケガをした場合は、どうなるのでしょうか?

このような場合、「会社が認めた経路や方法以外の『合理的ではない』往復をしていたのだから、労災保険は適用されない」と決めつけて、労災保険の給付申請を行わない会社が多いようです。

しかし、ケガをしたときの「通勤」が合理的な経路や方法によるものかどうかの判断は、労働基準監督署が行うものであり、仮に会社が「通勤」と認めなくても、労働基準監督署が合理的な経路・方法による「通勤」と認めれば、労災保険の適用対象となります。

「自転車通勤でのケガだから」という理由で、会社が労災保険の給付申請を進めてくれないのであれば、労働者は、自分で労働基準監督署に相談に行くとよいでしょう。

ただし、「バス通勤」と申請しておきながら、あるいは会社が禁止しているにもかかわらず、自転車通勤をしていれば、その労働者は、会社に対して虚偽の申請をしていた、あるいは就業規則に違反したことになり、会社から何らかの処分を受ける可能性がありますので、その点は注意が必要です。

保育園への送迎も「通勤」の一部として認められる

厚生労働省の通達では「他に子供を監護する者がいない共稼ぎ労働者が託児所、親せきなどにあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となるものと認められる」(基発0331第21号 平成27年3月31日)とされており、保育園へ子供を送迎した場合も、労災保険が適用される「通勤」と認められています。

ただし、この通達に「共稼労働者が…」とあるとおり、例えば、配偶者が働いていない場合、その労働者が子供を保育園まで送迎せざるを得ないとまでは言えないので、保育園への送迎経路が通勤と認められないこともあります。

今回の質問者も、「共稼ぎ」であれば、子供を保育園まで送る経路も通勤と認められ、子供の送迎後にケガをした場合でも労災保険が適用されるものと考えられます。

事故にあったときのために、通勤経路や方法を会社に伝えておくことが必要

通勤途上のケガに対する労災保険の適用は、それが「合理的な経路および方法での移動であるかどうか」が判断の決め手になります。この判断がスムーズに行われるようにするためには、会社に通勤の経路や方法を正しく伝えておくことが必要です。とくに、自転車通勤をしている場合、あるいは、通勤途上で子供を保育園に送迎している場合や親の介護のために施設などに立ち寄っている場合などは、万が一、事故にあったときの対応のことも考えて、その旨を会社に伝えておくようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。