パート勤務で副業を始めたいと思います。社会保険や税金の取扱いは、どうなりますか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

A社で正社員として勤務したまま、終業時間後や休日にB社でパートとして働くことになりました。B社(従業員数501人以上)での勤務は、週20時間以上、報酬が月額8.8万円以上になりますが、この場合、A社とB社の両方で社会保険料が徴収されるのでしょうか?また、源泉所得税は、A社とB社の両方で徴収されるのでしょうか?

適用条件を満たせば、社会保険料は、副業先の報酬からも徴収される

<回答>

従業員が2つの会社に勤務し、両社ともに社会保険(健康保険と厚生年金保険)の適用条件を満たす場合、原則として、両社の報酬から社会保険料が徴収されます。具体的には、従業員自身が、2つの会社のうち一方を選択して、それを年金事務所に届出ることにより、2つの会社の報酬を合算した社会保険料が決定され、各会社の報酬から支給額に応じて按分された社会保険料が徴収されます。

なお、いわゆる「健康保険証」は、従業員が選択した会社が加入する健康保険組合または協会けんぽから交付されます。2つの会社の報酬から社会保険料が徴収されていても、2つの健保組合等に加入しているわけではないので、保険給付は通常と同じ基準で行われます。

一方、雇用保険については、主たる報酬を受ける会社において被保険者になり、雇用保険料は、その勤務先から受ける報酬についてのみ徴収されます。

したがって、質問者の場合、普通に考えれば、社会保険は、A社の被保険者になることを選択したうえで、A社、B社それぞれの報酬から保険料が徴収され、雇用保険については、A社で被保険者になり、A社から支払われる報酬のみ保険料が徴収されます。

副業先から受ける報酬についても源泉所得税が徴収される

2か所以上の会社から報酬をもらっている従業員の源泉所得税については、まず、従業員が、「主たる給与の支払者」を決定し、その会社に扶養控除申告書を提出します。源泉所得税は、それぞれの会社で報酬が支払われるたびに控除されますが、年末調整(月々納付した源泉所得税と1年間の報酬総額に基づいて算出した所得税との間の差額調整)は、主たる給与の支払い者である会社のみで行われます。主たる給与の支払い者以外の会社(副業先)から支払われた報酬については、従業員自身が、翌年2月中旬以降に、税務署で確定申告をすることが必要です。

なお、地方税である「住民税」は、確定申告の際に従業員が納付方法を選択することもできますが、ほとんどの場合、主たる給与の支払い者である会社の報酬から、それ以外の会社の報酬にかかる住民税も合算して徴収する方法がとられます。

質問者の場合は、A社、B社それぞれの報酬から、源泉徴収税が徴収されます。ただし、年末調整は、主たる給与の支払い者であるA社のみで行ないますので、B社から受けた報酬については、翌年、ご自身で確定申告を行ってください。

2つの会社で勤務した場合、原則として、両社の労働時間が通算される

2つの会社で勤務する場合、社会保険や税金以上に注意しなければいけないことは、「労働時間」の取扱いです。労働基準法第38条第1項には「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められており、質問者の場合、A社で1日8時間勤務した後にB社で勤務すると、両社の労働時間が通算されて、B社で勤務した時間は「法定時間外労働」になってしまいます。

したがって、2つの会社で勤務する従業員を雇用する会社は、その従業員の他社での労働時間も把握することが必要になり、従業員は、一方の会社の労働時間を他方の会社に報告することが求められます。(ただし、実際には、従業員が会社に内緒で副業をしていることが多いため、2つの会社に勤務する従業員が、それぞれの会社に労働時間を報告することは、ほとんど行なわれていません。)

社会保険等の取扱いに応じて、副業先での働き方を調整することも必要

これまでは、ほとんどの日本企業が、就業規則等で従業員の副業を禁止してきましたが、最近になって、一定のルールのもとに、それを認める動きが出てきています。今後、副業として、パートタイムで働く人が増えてくることでしょう。

ところで、今回の質問者の場合、A社で社会保険に加入しているので、B社については、労働時間を短くして、社会保険料がかからないようにしておいたほうがよかったように思えます。このように、複数の会社で勤務する場合、社会保険や税金等の取扱いに応じて、それぞれの会社での働き方を調整したほうがよいこともあります。副業を考えている人は、そういうことも知っておいてください。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。


/