離婚しても、配偶者の老齢厚生年金の一部をもらうことができる

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

夫と離婚することになりました。結婚後もパートタイマーとして働いていますが、ずっと夫の扶養に入っており、自分で社会保険に加入していた期間がありません。これでは、自分が65歳以上になったときに、国から支給される年金が極端に少なくなってしまうのではないかと心配しています。知人に相談したら「夫の年金の半分を自分が受け取れるようにすればよい」と言われましたが、そのようなことは可能でしょうか?

婚姻期間中の厚生年金は、夫婦間で分割できる

<回答>

私たちは、65歳以上になると、国から「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の支給を受けることができます。老齢基礎年金は、国民全員を支給対象としており、保険料の滞納などが無ければ、満額で779,300円(年額:2017年度)が支給されます。

一方、老齢厚生年金は、会社などで働いたことがある人を対象に、老齢基礎年金に上乗せして支給されるもので、その支給額は、在職中の報酬や勤続年数によって決まります。

このような仕組みであるため、例えば「夫が会社で働き、妻が専業主婦(あるいは、社会保険に加入しないパートタイマー)になる」パターンで過ごしてきた夫婦が離婚すると、夫と妻の間で老齢年金の額に大きな差がついてしまいます。夫には老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が支給される一方で、妻には老齢基礎年金しか支給されないことから、この差が生じるのですが、妻にとっては不公平な取扱いになります。

この不公平を是正するため、2007年から、離婚したときに、婚姻期間中の厚生年金を夫婦間で分割できる制度が導入されました。この制度によれば、例えば、離婚後に夫の老齢厚生年金を半分に分けるという合意がなされた場合、夫、妻ともに、自分の老齢基礎年金と(夫に支給されるはずだった)老齢厚生年金の半分が支給されます。

このような年金の分割は、男女の立場が逆になっても(例えば、妻が正社員として働き、夫が専業主夫またはパートタイマーである場合も)、同じように行われます。また、夫婦が共働きで、それぞれが自分で厚生年金に加入している場合には、夫と妻の年金を合算したうえで、それを分割することになります。

合意に至らなくても、配偶者の年金を折半する仕組みがある

この取扱いは「合意分割」と呼ばれ、離婚にあたり夫婦間で年金の按分割合について合意した場合に行われます。逆に言えば、夫婦のどちらか一方が拒否すると、この年金分割は、基本的には行われません。(裁判所に按分割合を定めてもらうこともできますが、こうなると手続きが大変です。)

そこで、夫婦間で合意に至らなくても、国民年金の第3号被保険者、つまり、配偶者に扶養されていた専業主婦(夫)が請求すれば、2008年4月1日以後の婚姻期間中について、配偶者の老齢厚生年金の半分を分割して受給できる制度も導入されました。これを「3号分割」といいます。

なお、合意分割は「婚姻期間全体」が対象となりますが、3号分割の対象は「2008年4月1日以後の婚姻期間のうち第3号被保険者だった期間」に限定されます。つまり、3号分割は、2008年3月31日以前の婚姻期間、および配偶者に扶養されていなかった期間(自分で厚生年金に加入していた期間)は対象にならないので、注意が必要です。

年金分割の手続きは、離婚後2年以内に行わなければならない

それでは、質問されたケースについて、とるべき対応を考えてみましょう。

質問者は、まず、夫と「合意分割」について話し合うことが必要です。基本的には、婚姻期間中に夫に発生した厚生年金の半分を分割するように交渉するべきでしょう。

夫が年金分割に合意しないようであれば、3号分割の手続きをしましょう。そうすれば、夫の合意がなくても、2008年4月1日以後の婚姻期間については、夫の老齢厚生年金の半分が妻(質問者)に支給されることになります。

年金分割の手続きは、年金事務所に所定の用紙を提出して行います。詳しくは、年金事務所に問い合わせてみてください。

なお、合意分割、3号分割ともに手続きを行なう期限は「離婚をした日の翌日から起算して2年以内」となっており、それを超えてしまうと、原則として年金分割はできなくなります。離婚して2年以上が経過し、それぞれに老齢年金が支給されるようになってから年金分割を行おうとしても、もはや手遅れということです。

離婚時には、財産の分割や当面の生活費の保証のことばかりに目が向いてしまいがちですが、老後に支給される年金についても考えてみる必要があります。とくに婚姻期間が長く、夫婦ともに50歳以上で離婚する場合には、年金分割の手続きを忘れずに行うようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。