パートと正社員とでは、老後にもらえる年金の差はいくらぐらいになりますか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

現在、パートタイマーとして働き続けるか、転職して正社員になるか、迷っています。パートタイマーと正社員では、給料や賞与に差がありますが、老後に国から支給される年金の額も異なると聞きました。
私は、33歳ですが、このまま60歳までパートタイマーで働き続けるとしたら、老後の年金は、いつから、いくらもらえるのでしょうか?
また、もし正社員になったら、年金はいくらになるのでしょうか?

なお、私の職歴は、次のとおりです。

20~26歳(7年間):正社員として勤務(この間の平均年収300万円)
27~30歳(4年間):専業主婦(夫の被扶養配偶者になる)
31~33歳(3年間):パートとして勤務(この間の平均年収180万円)

65歳以上になると、国から年金が支給される

<回答>

私たちは、老齢になったり障害の状態になったりして働けなくなると、国から年金が支給されます。老齢時に国から支給される年金には、二種類あります。一つは、国民年金から支給される「老齢基礎年金」で、これは国民全員を支給対象としたものです。もう一つは、厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」で、これは会社などで働いたことがある人を対象に、老齢基礎年金に上乗せして支給されます。

老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに、一定の要件を満たした人に、原則として65歳に達したときから死亡するまでの間、支給されます。

老齢基礎年金の支給額は、年額779,300円(2017年度、満額支給された場合)です。ただし、国民年金保険料を納付していない期間があると、その月数分の年金が減額されてしまいます。なお、厚生年金保険に加入していた期間(つまり、会社で働いていた期間)、および厚生年金保険に加入している夫または妻の被扶養配偶者となっていた期間は、ともに国民年金保険料を納めていた期間として扱われます。

自分の老齢厚生年金の概算額を計算してみよう

もう一方の老齢厚生年金は、基本的に、働いていた期間(厚生年金保険の被保険者であった期間)とその間の報酬の平均額に応じて支給額が決まります。ですから、働いていた期間が長いほど、また在職期間中の報酬額が高いほど、年金額は多くなります。老齢厚生年金の支給額の概算額は次の式で計算できます。

年金支給額(概算・年額)= 在職中の平均年収×0.0055×厚生年金に加入した年数

なお、老齢基礎年金、老齢厚生年金の支給額は、毎年、各自の誕生月に日本年金機構から郵送される「ねんきん定期便」で確認することができます。自分がもらえる年金の額を正確に知りたい人は、それを見てください。

正社員になって報酬が増えると、65歳以降に支給される年金も多くなる

それでは、質問者の老齢年金の支給額(概算)を計算してみましょう。
なお、ここでは、33歳以降、パートとして勤務した場合の平均年収を180万円、正社員として勤務した場合の平均年収を360万円として計算します。

(1)60歳までパートで働き続けた場合

老齢基礎年金:779,300円
老齢厚生年金:
20~26歳(7年間)115,500円(=300万円×0.0055×7)
31~60歳(30年間)297,000円(=180万円×0.0055×30)
老齢年金合計: 1,191,800円(年額。月額に換算すると約99,300円)

(2)34歳から正社員になり、60歳まで働き続けた場合

老齢基礎年金: 779,300円
老齢厚生年金:
20~26歳(7年間)115,500円(=300万円×0.0055×7)
31~33歳(3年間)29,700円(=180万円×0.0055×3)
34~60歳(27年間)534,600円(=360万円×0.0055×27)
老齢年金合計: 1,459,100円(年額。月額に換算すると約121,600円)

この試算によれば、このままパートとして働き続けるよりも正社員として勤務するほうが、65歳以降に支給される年金が月に約22,000円多くなることが分かります。

ただし、パートと正社員では、報酬の違いにより、在職期間中に支払う社会保険料の額も異なってきます。(このケースでは、正社員で働いたほうが、月に13,500円ほど社会保険料負担が増えます。)ですから、「年金が増えるから正社員になったほうが得」とは一概には言えず、むしろ、「正社員になると、報酬が多くなる分だけ社会保険料の負担も増えるが、その分は65歳以降に支給される年金で戻ってくる」と考えるべきでしょう。

パートとして働くか、正社員として働くかによって、在職中の報酬だけではなく、社会保険料の負担や老後に支給される年金の面でも大きな違いが出てきます。こうしたことも考えて、今後の働き方について考えてみるとよいでしょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。


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