元いた会社に戻る「出戻り転職」は、昨今転職の選択肢の一つとして注目を集めています。
企業側にとっても教育コストを抑えやすく、他社で得た知見を社内に持ち込んでもらえるなどのメリットがあることから、「アルムナイ採用」などの名称で積極的に取り入れるケースが見られます。
ブロガーのまっさんさんも、そんな出戻り転職を経験した一人。一度外に出て戻ったからこそ気付いたことについてつづっていただきました。
わたしは新卒入社した会社で7年間働いたのちに転職し、2社目で2年半働いた後、現在はまた1社目に出戻っている。
戻ってからまもなく4年がたとうとしているが、最初に入社した時よりも充実した働き方ができているように思う。
今回はそんな出戻りの経験で得たことと、転職を考える上で大切だと感じたことについて振り返ってみたい。
新卒入社から7年。焦りもあって転職を決意
- 新卒入社した会社は特に人間関係が良く、7年間勤めた
- 規模が大きいゆえにチャレンジしたいことができない場面も
- 「30歳までに転職しないと」という焦りも転職のきっかけに
新卒入社したIT系の会社には、7年間在籍した。それだけ長く働けていたのは、自分との相性が良かったからだと思う。
会社の人たちとは土日に遊ぶことがあるくらい仲が良かったほか、仕事自体も順調で、社内表彰をもらうなどとてもいい評価をもらえていた。
不満がまったくないとは言わないけれど、それ以上に、そこで働く人たちが大好きだった。
一方でIT業界は転職が多く、同期や先輩・後輩の入れ替わりも激しい。そんななかで「7年間という在籍期間は、そろそろ長過ぎるのではないか」とも感じ始めていた。
仕事に対して「自分はもっとやれるのでは?」という驕(おご)りもあったと思う。その気持ちは、次第に「ゼロからサービスを立ち上げてみたい、自分の力で勝負してみたい」というものに変化していった。
しかし会社の規模が大きく、自分が知る範囲では「ボトムアップで新規サービスを作れる機会」は到底期待できなかった。それに当時は「30歳になるまでに転職を経験しないとヤバい」というどこで聞いたか分からないような話からの焦りもあって、悩んだ末に転職することを決めた。
上司や先輩は「本当に残念だけど、あなたが決断したなら引き止めない。戻りたくなったら戻っておいで」と快く送り出してくれた。
IT業界のなかでも開拓余地がありそうな分野で、ゼロからサービスを作れそうな、規模の小さい会社へ転職した。
転職後、希望がかなうも「向いていない」と気付いた
- 転職後はプロダクトマネージャーとして、新サービス立ち上げに参加
- 想像以上にハードかつ自信のなさからうまく立ち回れなかった
- フルリモートで思うようにコミュニケーションできないつらさも
こうしてわたしが人生で初めて転職したのは、社員数は多くないが売り上げはそこそこあり、伸び盛りの企業。最初は知らないジャンルの専門用語などを覚えるのに必死だった。
1年ほど既存サービスの企画職を経験した後、新規事業の立ち上げ部署へ異動が決まり「ついに!」とワクワクが止まらなかった。

しかし「ゼロからサービスを作る」というのは本当に、本当にハードだった。
プロダクトマネージャーとして、考えなければならないことが山ほどある。加えて立ち上げたサービスの数字が思うように伸びていかず、プロジェクトメンバーからもいろいろなフィードバックが届いた。
しかし、わたしが「やる・やらない」を判断すべき立場なのに、自信が持てず決めることができない。
それに、前職と違う「フルリモート」という環境にもなじめなかった。
画面の向こう側にいるプロジェクトメンバーから真っ当なフィードバックをもらうときほど、こたえるものはなかった。さらには対面と違って、同僚と気軽にコミュニケーションすることすら難しい。
そんななかで、同僚のこと、会社のことがよく分からなくなっていった。サービスを作りたかったはずの自分の本心も、どこかへいってしまった。
作ったサービスが終了する方向で話が進みかけていたとき「ああ、わたしには新規サービスの立ち上げなんて向いてなかったんだな」と実感した。よくいわれる「やってみて初めて分かる」という言葉に心底同意したのは、このときだったと思う。
出戻り転職は元の経験と外に出た経験、両面を生かせた
- 自信を失うなかで前職の先輩から声をかけられ、出戻りを決意
- ブランクがあっても元いた経験を生かせる場面が多く自信を取り戻した
- 出戻りゆえに、昇給や昇進のペースが遅くなるデメリットはある
何もかもに対して自信を失っていた頃、定期的に会っていた前職の先輩に「戻っておいでよ」と声をかけてもらい、「とりあえず」という気持ちで出戻りを決意した。先輩もそこは察してくれていたんだと思う。
もともと出戻りがとても多い会社で、わたしが「この人は戻ってこないだろう」と勝手に思っていた先輩さえも戻ってきていたのは、出戻りを決める上での安心材料になった。
配属された部署は退職時の部署ではなく声をかけてくれた先輩の部署で、企画職からマーケティング職へと、職種も変わることになった。
部署の“上司”のなかには、社会人歴ではわたしより“後輩”になる人もいたが関係は良好だった。
また会社の基本的なルールやシステムが大きく変わることはなく、ツールも見覚えがあるものばかり。転職によるストレスがほとんどなく、快適な環境だった。
さらには昔の自分が作った資料などがまだ社内で活用されていたりもして、最初の7年間は無駄ではなかったのだと思った。
戻ってほどなくして、初めて管理職になった。明確に部下、という存在を持つのは初めてだったけど、前職でプロジェクトメンバーをまとめるのに苦労した経験も生かして、自己評価としてはうまくやれていたと思う。
もちろん、出戻りもメリットだけではない。
会社の人事制度によるので一概には言えないと思うが、新卒からずっと在籍している人と比べると昇給や昇進のペースが遅くなっている印象があり、上司も気にしてくれているようだった。
また、後輩が直属の上司になるケースもある。わたしの場合はその上司がとても優秀だったので不満はなかったけれど、気になる人もいるだろうなと思う。
元職場と“いい関係性”でいると転職の選択肢が広がる
- 退職時に丁寧に引き継ぎをして円満に退職したことが功を奏した
- 退職後のコミュニケーションは出戻り関係なしにメリットがある
- 人との関係性を大切にすれば、さまざまな働き方の選択肢につながる
総括すると、ありきたりな言葉だけれど、人に恵まれたなと思う。
ただ人に恵まれているとはいえ、スムーズな出戻りのためには、まず円満に退職をしておく必要があると思う。
当たり前のことだけれど、退職するときは、引き継ぎをきちんと丁寧にやる。意外とこの基本ができない人は多いようで、出戻り後、引き継ぎをした後輩に再会したとき「僕が受けたなかで、一番丁寧な引き継ぎでした」と褒めてもらえたくらいだ。
その基礎がまずあった上で、退職後もごはんに行ったり、連絡を取り合ったりできる関係性が成立するんだと思う。
もちろん、最初から出戻りのために会っていたわけではなく、ただ会って話したかっただけだ。でも「〇〇さんが大阪支社から帰ってきたよ」とか「XXさんと同じチームだよ」といった話を聞いてなんとなく会社の様子が見えたので、出戻ることを決断する後押しにもなった。
それに出戻るかどうかとは関係なく、シンプルに社外の人とのコミュニケーションはいい刺激になった。
そういうつながりがあったからこそ、出戻り後もいい関係性のなかで、気分よく過ごせているんだと思う。「会社としてのつながりが切れても、人としてのつながりは大切だったな」としみじみ実感している。
そういう意味では、2社目の人とは退職後にプライベートでのコミュニケーションを継続できるような関係性を築くことができなかったのは、少し後悔ポイントかもしれない。

出戻ってもう少しで4年がたつが、今はもう「とりあえず」という気持ちはない。最初に転職したときは「二度と戻らないだろう」と思っていたけれど、人生どうなるか分からないもんだなと思う。
退職は、その会社やそこで出会った人との関係を全て終わらせることではない。円満に会社を離れ、その後もつながりを持ち続けていれば「また一緒に働く」「相談する」「別の形で仕事をする」といった別の可能性が生まれるかもしれない。
これまで一緒に働いてきた人との関係を大切にすることは、自分自身の今後の選択肢を広げることにもつながるのだと思う。
この先自分がどんな選択をするにしても、このことは念頭に置いておきたい。
編集:はてな編集部

