はたらく気分を転換させる深呼吸マガジン

イーアイデム

働きたくない私が「働き続ける」ためにやってきたこと 嫌な仕事は“自己理解のツール”と捉えてみる

「働きたくない」私が「働き続ける」ためにやってきたこと。嫌な仕事は“自己理解のツール”と捉えてみる

「働きたくない」「向いている仕事が分からなくて疲れた」と感じることはありませんか。

現在、フリーのライターとして活動している伊藤七さんは、学生時代から働くことにネガティブな印象を抱きながらも、生活のために「新卒フリーランス」を選択。

週3日会社員を試したり、働きたくない気持ちの原因を「研究」にするなど、自分に合う仕事や働き方を8年にわたり模索してきた結果「今では仕事に楽しさを見いだせるようになった」そうです。

私は新卒で「フリーランス」という働き方を選び、“週3日会社員”を経由して現在は再びフリーのWebライターとして生計を立てている。

なぜこの働き方・職種を選んだかといえば、「週5で普通に働くのは無理」な自分でも、なんとかギリギリこなせる仕事のような気がしたからだ。

当初はフリーのWebライターですら自分には無理かもしれない」と思ったこともある。それでも最近ようやく「ギリギリこなせる働き方」や「やりたいと思える仕事」が見えてきた。

今回はそんな私がやってきた「働きたくない人間が働き続けるためにやってきたこと」を紹介する。かつての私のように「働きたくない」という気持ちにぶつかったときに参考にしてもらえたらうれしい。

「どうしたら働き続けられるか」を考え続けた8年間

💡POINT
  • 学生時代の不登校や保健室登校をきっかけに養護教諭を目指す
  • 勉強はできたけど大学の教育実習やアルバイトで「仕事のできなさ」にぶつかった
  • 「働きたくない人間の働き方研究」と題し「苦しくない働き方」を模索してきた


私は中学・高校時代に断続的な不登校を経験した。断続的な不登校とは、週のうち2日間だけ欠席したり、1週間欠席した翌週は5日間フルで登校したりと、「ずっと休み」ではない形の不登校を指している。

いじめられたり、トラブルがあったわけではない。教室のざわめきやパーソナルスペースを確保できない環境、睡眠不足と心労による体調不良などが重なって、休みがちになった。 保健室のお世話になることも多かった。

地元の秋田駅。中学・高校時代によく過ごしていた場所
地元の秋田駅。中学・高校時代によく過ごしていた場所

進路選択をする高校3年生の頃、「保健室の先生になって、自分みたいな人を救うぞ」と決意し、浪人と引越しをしてまで国立大学の教育学部に進学した。

しかし入学から数年がたち、いざ実践的な授業や教育実習が始まると、他の学生たちと比べて無能感があった。座学の成績は5段階評価の「5」なのに、実習の評価は「2」だった。

さらにアルバイト先でも、電話対応や事務仕事など「できて当たり前」とされることがうまくできなかった

「全然仕事ができなくて、コミュ力も体力もないし。そもそも学校すら安定して行けなかった自分が、週5日働くなんてできるわけがない」

「私は保健室の先生として“支える側”になれる人ではなく、あくまでも“支えられる側”なのだろう」と絶望的な気持ちになった。

どうにか保健室の先生の免許を取得して大学は卒業したが、教員採用試験は受けなかった。向いてる人がやったらいいし、どうしてもやりたくなったら十年後にでも挑戦したらいいと考えたからだ。

働く自信はすっかりなくなっていたが、生活のためにはお金を稼がなくてはいけない。

「人と関わらず、匿名でやれる仕事」を探し、「新卒フリーランス」としてライターのキャリアをスタートさせた。その後フルリモート・フルフレックスの週3日会社員期間や、キャリアブレイク期間を1年挟み、再びライターをメインとしたフリーランスに戻った。

この8年間、私はずっと「働きたくない人間の働き方研究」と題して「働きたくないなりに働く方法」を探してきた。そしてようやくストレスが少なく、時には仕事に楽しさややりがいを感じられるところまでたどり着いた。

「働きたくない」私が「働き続ける」ためにやってきたこと

働きたくないからといって働かずに済む人間は、ごくわずかだろう。

働かずに生きられるほど裕福ではないし、FIREを目指す根性もない。そんな私の「働きたくないけど、働かなくてはいけない」気持ちとの折り合いのつけ方を紹介する。

💡POINT
  • ①仕事を「自己理解のツール」と考える
  • ②「働きたくない」理由を徹底的に分析する
  • ③過去や未来の自分と対話してみる

①仕事を「自己理解のツール」と考える

私が「働きたくない人間の働き方研究」をしてきたように、仕事でしんどいと感じていることも含めて「研究テーマ」にしてみるのはどうだろう。

「自分は今、なぜこの仕事や働き方がしんどいのか、どうしたらしんどく無くなるのかを研究中なんだ」と一歩引くと気持ちが楽になる。「研究」と自称することで、まるで高尚な活動をしているような感覚すら感じる。

以前「すでに内容が決まった仕事を依頼されるよりも、企画から携われるものの方が楽しめるのではないか」と考えたことがあった。

この「もしかしたら、こうなんじゃないか」という思考は、そのまま仮説になる。

仮説を実証するため、企画から携われる仕事に取り組んでみると予想通り「こっちの方が楽しい」という結果が得られた。

コワーキングスペースで、マイペースに働く私
コワーキングスペースで、マイペースに働く私

一方で、生きていくためには、これまで通りすでに内容が決まった仕事もこなす必要があった。しかし「研究」という前提があったおかげで、単に「面白くない仕事」ではなく、「楽しい仕事の比較対象」として捉えることができた。

仕事自体にエネルギーを注ぐのがしんどい場合は、「仕事の目的は自己理解にある」と目的を勝手にズラしながら働くことも許されるのではないだろうか。

さらに「研究結果をブログで共有する」「いつか自主制作の本にする」と目的を追加すると、もはや前向きな気持ちすらわいてくる。

②「働きたくない」理由を徹底的に分析する

「働きたくない」を分解し「自分に対処できるもの」と「環境を変えるしかないもの」に仕分け、原因や改善策を探ることも自分を守ってくれる。

例えば「周囲に指摘される度に落ち込む」のは、「自分自身を否定されたと思い込んでしまう」のが原因かもしれない。その場合は、自分の思考の癖と向き合うことが解決の糸口になる。

一方で「週5日間で決まった場所へ通勤するのが体力的に無理」「周囲に人がいると音や匂いが気になって集中できない」といった、身体や感覚に根ざした拒否反応は、思考の癖に向き合ったところで解決しない。「在宅ワーク」や「ミーティングが少なめ」といった環境へ移動する戦略を取る方が良いだろう。

ちなみに私の「働きたくない」を分解すると次のような理由がある。

  • 働く時間や場所、メンバー、業務内容、取引相手を自分で決められない
  • 眠くなっても自由に昼寝できない
  • すっぴん+パジャマのまま仕事できない
  • 自由に帰省や旅行をできない
  • 頭痛や生理痛で苦しいのに出社しなきゃいけない
  • 人の間に挟まれながらコミュニケーションを取るのが嫌
  • リーダーやマネージャーになりたくない
  • 納得感のない条件の中で人と上手くやるモチベーションがない

社会人としてどうなんだ、と思われる項目もあるかもしれない。でも、逆に「社会人」という枠組みのせいで、本来人間として選べるはずの選択肢をあらかじめ消される方がおかしいと思う。

「盆と正月しか帰省できないスケジュールを強要されてたまるか」「眠い中で労働させられてたまるか」といった気分である。

平日の昼間でも、好きな喫茶店でのんびりできる自由さを守りたい
平日の昼間でも、好きな喫茶店でのんびりできる自由さを守りたい

「何が嫌か、何だったら受け入れられるのかを把握する」ことは、自分専用の働き方を作る第一歩になる。

「こんな条件の職場なんてあるはずない」「わがまま言い過ぎかもしれない」と世の中の空気に対して遠慮するのではなく、まずは回避できるかは分からなくとも、自分の欲求をリストアップすることが大切だと思う。

③過去や未来の自分と対話してみる

「働きたくない」と感じるときは、どうしても視野が狭くなりがちだ。

「この仕事に向いてなさ過ぎる」「あの人と相性が悪過ぎる」「もう辞めるしかない」といったように、極端な考え方で心のシャッターをおろしてしまう。

視野が狭くなると「今よりさらに向いてないであろう真逆の仕事」が、やけに輝いて見えたりもする。「対人援助職に疲れたから、倉庫勤務がいい」「大企業で疲弊したから、ベンチャーだ」みたいな。

そんなときにおすすめなのが「過去や未来の視点から自分と対話する」ことだ。

何冊目になるか分からないほど書いてきた日記
何冊目になるか分からないほど書いてきた日記

私はこのやり方を小学生3年生の頃から「以前書いた日記に返事を書く」という形で続けてきた。

例えば、自分のミスのせいで人に迷惑をかけ「もう辞めたい」という考えがちらついたとき。

まずは「日記」として今の思いを書き出す。すると内容は「辞めよう」の一点張りになりがちだが、後日、5年後の自分になりきって返事を書き出してみると、視点が変わるのだ。

「まだ若いしできないことが多いのは当たり前。だんだん慣れてくるはずだし、質問する&謝るでだいたいのことは済むんだから、早まって辞める必要はないよ」というふうに。

逆に5年前の自分になりきって今の自分に手紙を書くと、「できることが2つくらいしかなかったけど、10個くらいに増えてるよね。私にしては十分過ぎじゃない?」という言葉が出てくるかもしれない。

また「今の自分の思考から離れる」ために「もし私が〇〇だったら」という空想もよくしている。

例えば、もし自分が憧れの「作家」だったらどんな1日を過ごしたいか考える。何時に起きて、誰と連絡を取り、どんな物を作るか。休日を丸々使って「空想の1日」を再現して過ごしてみるのもいいと思う。

前向きな気持ちを得やすい上に、少しでもその存在に近づける気がしてくる。

働き方を「カスタマイズ」し続ける

💡POINT
  • 大事なのは自分に合った働き方や仕事を「実験し続ける」こと
  • 環境を調整するたびに「自分の向き不向き」を知れた
  • 徐々に“マシ”な働き方や環境に移動できればそれでよい


世の中にはいろんな働き方がある。もちろん、立場や環境によって制限される場合もあるだろうけど工夫できることはあるだろう。

大事なのは、一発逆転の大正解を期待することではなく、あくまでそのときどきの自分に合う働き方や仕事を「実験し続ける」というスタンスではないだろうか。そうして徐々にマシなところへ移動できるのではないか。

新卒フリーランスや週3会社員など、環境を調整する度に多くの発見があった。人と関わりたくないと思っていたけど、信頼できる数人とならやれそうなこと。週3リモートなら会社員もできそうなこと。興味があることなら苦がなくやれる、むしろワクワクすること。

最近はライターとして記事を書くだけではなく、ZINE作りなど仕事と趣味の中間に位置する「個人活動」にも取り組む中で、新しく「まだ世の中にないものを、自分または信頼できる人たちと一緒に作りたい」という欲求が私にあると気がついた。

自分が学生の頃に「普通」だと思ってきた働き方が合っていなかっただけであって、決して「全ての仕事に向いてない」わけではなかったのだ。

文学フリマでは「働き方」にまつわる本を販売してきた
文学フリマでは「働き方」にまつわる本を販売してきた

仕事に押し潰されそうになるほど仕事に真剣に向き合っている人なのであれば、たまには仕事を手のひらで転がすような感覚で眺めてみても、バチはあたらないんじゃないかと思う。


編集:はてな編集部

著者:伊藤七

伊藤七プロフィール

1994年秋田生まれ千葉在住のフリーライター。千葉大学卒業後、就職せずに新卒でフリーライターとして活動を始める。週3会社員、地方移住、半農半X、二拠点生活などを通して、自分に合った働き方や暮らし方を模索。現在はフリーライターとして活動する傍ら、ZINE制作や文学フリマへの出店、小説執筆なども行っている。
Xnote