年齢を重ねていき、徐々に職場での立ち位置が「プレイヤー」から「管理職」に変化していく人も少なくありません。ただ、「初めて部下ができたけど、注意の仕方に悩む」「できる後輩の姿を見ると焦ってしまう」ーーそんな職場の後輩との接し方に、迷ってしまうことはありませんか。
そこで今回お話を伺ったのはモーニング娘。OGの道重さゆみさん。モーニング娘。のメンバーとして13歳でデビュー後、8代目リーダーとしてグループを牽引。卒業後、約2年4カ月の芸能活動休業期間を経て、現在はソロアーティストとして活躍中です。リーダー就任期間中、同僚のメンバーは年下ばかりだった道重さん。そんな彼女にやわらかに後輩に接するコツについて聞きました。
また道重さんは「ソロになってからは、生活も心境も完全に変わりました」とも語ります。令和元年に30歳を迎えた道重さんに、年齢を重ねることについての正直な気持ちについても伺いました。
ソロになって自由にできるからこそ、迷いだらけにもなった
道重さゆみ(以下:道重) 私、リーダーになったからプレイヤーじゃなくなったとか、ソロになったからプレイヤーに戻ったっていう感覚は、正直あんまりないんですよ。どの立場でも自分は自分として、道重さゆみというプレイヤーなんだっていう意識でやっています。でも、もし「リーダー=管理職」と例えるならば、ソロになってからは、道重さゆみの管理を自分自身がやっている状態ですね。
道重 やり方は全然違いますね。モーニング娘。時代は、つんくさんや会社の方が作品や演出を考えてくれることの方が多いので、私はそんなモーニング娘。を「どう伝えるか」を意識して活動していたんです。ソロになってからは、アルバムのタイトルとか、ライブのコンセプトやセットとか、衣装のイメージとか、そういうことを自分で考えるんですよ。
道重 そりゃもう、迷いだらけでした! だから、普段の生活から変えましたね。街を歩いて見えること、全部参考にしようと意識したんです。「あの看板、なんでこの色なんだろう?」とか「私だったらこのフォントは使わないな」とか、今まで気にしていなかったことも注意して見るようになりましたし、考えながら歩くようになりました。
道重 知識の土台もないと本当に分からないので、普段からファッション誌を眺めたり、今まではあまり見なかった海外のモード誌を買ったりしました。「世の中はこういう服があるんだな」っていうのを知識として持っておくと、いざ何かするときにアイデアが思いつきやすいので。それでも、やりたいことが分からなくなったときは、友達に聞くこともあります。「これ、どう思う?」って。
道重 はい。ずっと仲が良い同級生の子に聞いていますね。本当に気を使わずに、ダメならダメって言ってくれるので。自分ひとりで考えていると、考え過ぎて訳が分からなくなってくるんですよ。あとは、行き詰まったら一旦寝ちゃうこともあります。一瞬、現実から逃げるんです。
もちろん起きても何も変わっていないし、締め切りは守るタイプなので逃げたことはありません。結局ただの仮眠です(笑)。でも一旦寝ることにより、気持ちが整理されてやりたいことが見えてくる場合もあります。
道重 基本的には「自分は人見知りじゃない」って思いこむようにしています。「人見知りなんです」って言われても相手は困っちゃうと思うし、そう言うと自分でも「私は人見知りだから仕方がない」と開き直ってしまいそうで。だから自分からは言わないようにしてるし、「私は人見知りじゃないのに、なんで縮こまってるんだ! ちゃんと言わなくちゃ」って考えるようにしています。
道重 そうですね。自分に自信がない日は特にそう言って思い込ませています。ただ、昔から正直に自分のことをかわいいと思ってるんですよ。本当に恥ずかしいんですけど(笑)。鏡見るのは、大好きです!
「私かわいい」キャラも、最初はキャラだと思っていなかったんです。たまたま先輩が「それ面白いよ」ってMCでネタにしてくれたことで、見つかったキャラクターですね。ありがたいです。




後輩への注意。マイナスな気持ちを引きずらないようにさせる
道重 私も加入当初はすごくよく怒られる新人だったんですけど、先輩から怒られるときに何が一番嫌かって、怒られた後がすごく嫌だったんですよ。
道重 「まだ怒ってるかな……?」って気にしたりとか、「さっき怒られたばかりだから、気軽に話しかけたら反省してないみたいかな?」とか、ずっと様子を伺っちゃって。そういうことをすごく考えて、次の日の朝ですら「昨日怒られたから挨拶しづらいな……」って、ずっとドキドキしたままなんですよ。
道重 勝手にこっちが気まずいと思っているだけなんですけど、それがすごく自分の中でつらかったんです。だから、私が後輩に注意した後は、基本的に「帰り際には絶対に私から声をかけて、笑顔でバイバイする」って、自分の中で決めていました。
もちろん怒ったこと、注意したこと、その事実(内容)はこれから反省してほしいけど、「怒られちゃったな」っていうマイナスな気持ちを引きずってしまうのは良くない。これだけは、常に意識していましたね。
道重 それは難しいですね。私の場合は直してほしいところがあるとき、できるだけその場ですぐ声をかけるようにしていたので、うまくセットにならないことが多くて。何に対してもモヤモヤを持ち越さないように「褒めるときは褒める」「注意するときは注意する」という感じです。後出しするとあの時から「ずっと怒ってたのかな?」って思われちゃうし。
道重 自分ができていないことは人に教えられないので、歌とかダンスのテクニックに関しては、私は後輩に注意したことが一回もないんです(笑)。むしろ私が(歌やダンスの)得意な後輩に聞いてました。
「ここの振付って、どうやったらうまくできるかなぁ?」とか。歌もダンスもトークも、得意な子と苦手な子がいる。それぞれ得意な子に聞いて、支えあえばいいのかなって。そういう、お互いの歩み寄りがあったからこそ、距離が縮まった部分が大きいですね。
道重 確かにその気持ちも、分かります。でもプライドなんて捨てて普通に聞いてましたね。後輩たちも普通に「こうやるんですよ!」と教えてくれて、一緒に練習していました。「リーダーだから」「先輩だから」って考えるより、グループ自体のレベルの底上げが大事だと思います。
道重 自分から声をかける場合、はじめは「今度行こうね!」みたいな感じでふわっと誘っています。リアクションが良ければ本格的にスケジュールを合わせていく、みたいな感じですね。
道重 そうですね(笑)。最初から強制的には言わないみたいな感じですね。本当に行きたければ、向こうからも「じゃあ◯日はどうですか?」と言ってきてくれますし。
道重 私、正直後輩に恵まれてたんですよね。気は使ってくれるけど、いい意味で遠慮がない子たち。
でもリーダーになったばっかりの頃は、やっぱりすごく思い詰めてたんです。「リーダーなんだから頑張らなくちゃ」とか「今までの歴代のリーダーみたいに動かなくちゃ」と悩んでいたけど、中澤裕子さんが「今までのリーダーの真似はしなくていいよ、しげちゃんらしくね」って言ってくださって、すごく安心したことを覚えています。


ツインテール、一生やります
道重 実はあんまり時代の流れに……とかいうのは意識してないんですよね。私は私。だから、ずっとピンクが好き。ただ昔は「かわいい」のピークは25歳なのかな? って思っていたので、そこのうちに卒業したいって思っていました。あと、20代になったあたりで「私、ツインテールやってて大丈夫かな?」って不安になる時期もあったんです。
でも、今となっては、30歳になったけど、全然やりたいんですよね(笑)。もうここまできたら「一生やり続けよっ」って感じです(笑)。でも、似合わなくなったらしたくなくなると思うので、いつまでもツインテールがしたいと思える自分でいたいなと思います。
道重 「結局、こんな私が好き」って気付くことができたのが大きいですね。自分で言うのは少し恥ずかしいですけど、2、3年前の自撮りを見返していても、「今日の方がかわいい!」って思うんですよ(笑)。
道重 応援してくれている人たちに対しても失礼じゃないですか。だんだん劣化していってるって自分自身が思ってるなんて、絶対によくないことだと思うので。今の道重さゆみを応援してくれている人たちに対して、一番かわいい私を見せたいっていう気持ちでやってます。
取材・執筆/小沢あや(@hibicoto)
撮影/曽我美芽(@mimeeeeeeee)
編集/はてな編集部
お話を伺った方:道重さゆみ(みちしげ さゆみ)さん