35歳を過ぎてからの「出産」ーー仕事と育児を両立する4人のホンネ座談会

集合写真

子どもはいつか欲しいけど、「妊娠・出産」に対して具体的なイメージが持てないーーそう考えている女性も、妊娠・出産の“適齢期”が気になることはあるのではないでしょうか。公益社団法人日本産科婦人科学会が監修した健康手帳『HUMAN+』には、妊娠に適した時期は25歳から35 歳前後*1と記載されており、「35歳が1つの壁」と認識している人も多いかもしれません。

とはいえ、晩婚化や女性の社会進出などの影響もあり、最近では35歳を過ぎてから子どもを持つ人も増えています。そこで、実際に35歳を過ぎてから出産を経験した4人の先輩による座談会を実施。妊娠・出産・子育てのリアルな声をお届けたいと思います。

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<<参加者プロフィール>>

加藤さん

加藤さん(仮名):42歳
パートナー、お子さんの3人家族。仕事は研究職。2017年、41歳で第1子を出産。産休育休期間を経て2018年春より復職。裁量労働制の職場ということもあり、時短制度などは利用せず働いている。

ほそいさん

ほそいあやさん:43歳
Webライターとして活動中。パートナー、お子さん2人の4人家族。30歳のとき結婚。41歳で第1子、43歳で第2子を出産。

田坂さん

田坂さん(仮名):42歳
パートナー、お子さん2人の4人家族。新卒入社以来勤務する出版社で、現在は管理職として働いている。社内でのワーキングマザー第1号。20代の頃は仕事に邁進し、32歳のときに第1子、36歳で第2子を出産。両立生活をブログ「働く母。両立メモ」に綴る。

マリカさん

マリカさん:42歳
パートナー、お子さんの3人家族。第1子を出産後、約3カ月で復職(化粧品メーカーの正社員)。復職当時は時短制度を活用し勤務していた。その後退職し、フリーランスを経て2017年に起業。自身のWebショップでデザインアイテムのディレクション、企画、制作を行っている。

「子どもを産む人生」を意識していなかった20代

本日は、35歳以降で出産を経験された皆さんにお集まりいただきました。最初に、お子さんが欲しいと思われたきっかけから伺えますか?

加藤さん(敬称略、以下同) 私は37歳で結婚したのですが、36歳までは「このまま1人で生きていくんだろうな」と思っていたんです。でも、いまの夫と出会って結婚。私は夫婦2人でいいかなと考えていましたが、夫が望んでいたこともあって、子どもを持つ人生を意識するようになりました。

ほそいさん 結婚は30歳のときでした。夫とは結婚後も友だちみたいな関係で、しばらくずっと一緒に飲み歩いていて。でも、ふと妊娠のタイムリミットを感じて、後回しにせず妊活しようと決めました。

田坂さん 私は結婚が24歳と早かったのですが、勤め先の社長から「手に職をつければ子どもができてもやっていけるから」と言われ、まずは仕事優先で愚直に頑張っていました。なんとなく「35歳くらいがタイミングかな」と思っていたのですが、ちょうど30歳くらいで友人や家族の出産ラッシュがあり、子どもっていいな~と。そこから「産もう」と決めて妊活を始めました。

マリカさん 結婚が36歳で、出産は37歳でした。結婚を決めた時点で子どものことは考えていました。年齢もありますし、もし不妊症だったら早めに治療もしないといけないと思い、結婚式が終って半年間は妊活に励むつもりでした。

20代の頃は出産を意識されていなかったのでしょうか?

田坂 20代では「子どもはいらない」と思っていたので、仕事と遊びの毎日でしたね。旅行にもたくさん行きましたし、かなり自由な生活でやりたい放題でした。

ほそい 30代後半くらいまで1人で飲み歩いていたくらいなので、20代の頃なんてまったく考えていなかったですね。私の場合は、急に「子どもが欲しい!」と思った感じでした。それまでは、友だちの子どもを見ても特に何も感じなかったのに、ある時期から他人の子どもがかわいく見えてくるときがあり、「あれ、私どうしちゃったんだろう……」って。もしかしたら本当は自分も欲しいのかなと。

加藤 私も20代の頃は、願望がありませんでしたね。結婚してからも「夫の子どもだったらかわいいのかな~」くらいの気持ち。ただ、夫は子どもを望んでいる様子だったし、私もそれを否定するほど欲しくないわけでもなかったので、「じゃあ作ろうかな」みたいな。

マリカ 私も同じような感じですよ。産んでみたい気持ちはありましたが、特に子ども好きでもなかったので深くは考えていませんでした。ただ、結婚を機に夫と家族を作るのも楽しそうだなと思って、それならリミットもあるし早くしなきゃという感じです。いつでも産めるならいいんですけどね……。

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産むことを決めてから、妊娠まではスムーズでしたか?

ほそい 思い立ってから早かったです。41歳で第1子と、今43歳ですが約3カ月前(2018年12月)に第2子を産みました。

一同 えー! 3カ月前ですか! 見えない!

マリカ 私はタイミングをとって計画的に妊活をし、運よく妊娠できました。

加藤 私たち夫婦は結婚1年くらいで検査を受け、仕事が忙しいときはさぼりながらも、トータルで2年ほど通院治療をしました。その間一度流産も経験し、もうそろそろ(治療を)止めるべきなのかな……と思い始めた頃に妊娠できました。ただ、「望んで、望んで、やっと妊娠できた」というよりは、ゆるりと取り組んでいた感じではあります。

田坂 私は妊活を始めてから1年ほどタイミングをとっても妊娠できませんでした。そこで不妊治療クリニックを受診し、不妊治療がスタート。産もうと考え始めてから2年越しに第1子を授かることができました。その後、第2子を36歳で出産しましたが、その間に2回の流産を経験し、不育症外来にも通っています。妊娠出産はこんなに思惑通りにいかないものなんだなと、つくづく実感しましたね。

体力的なデメリットは、やっぱりある

皆さん、妊娠までの道のりもさまざまなのですね。無事に産まれてくるまで、不安はなかったですか?

加藤 やはり出産時の年齢を考えると胎児の異常が気になりました。悩んだ結果、クリニックで胎児の疾患可能性を調べる血清マーカー検査と超音波の基本検査を受けることに。もし異常が分かっても中絶する考えはありませんでしたが、覚悟は決めたいと思っていました。何の検査を受けるかについては、外国の論文などにも目を通したり、制度も調べたりしましたね。

マリカ 私も、血清マーカー検査と超音波検査はやりました。

ほそい 年齢も年齢だったので、妊娠前から羊水検査をやると決めていました。リスクも承知の上です。ただ、結構な値段で15万円以上かかりました。

田坂 私は第1子がいたこともあり、第2子のときもそこまで不安はなかったので検査はしませんでした。第1子を出産した約10年前は検査そのものが一般的ではなかったですしね。

ちなみに、年齢的な問題で大変だったと感じたことはありますか?

加藤 不妊の治療を開始してしばらくたってもなかなかできなかったときに、「止めどき」はどうしようかなとは思っていましたね。治療は費用も時間もかかりますから。結果として悩んでいる最中にうまくいったから良かったですが、当時41歳間近だったので、どこかでジャッジしないといけない。少なからず焦りはありました。

どのステップまでやるのか、そしていつまで治療を続けるのか、というのはシビアに考えてしまいますよね。不妊治療を始めるとき、「止めどき」も前もって考えておいた方がいいという話もよく聞きます。

田坂 正直なところ、ここにいる4人は、たまたま運良くいったパターンだと思うんです。やはり年齢の問題で諦めた人もいるはずです。子どもが欲しいなら早いに越したことはないと思います。

加藤 妊娠までのプロセスもですけど、産んでからもやっぱり体力面で大変だと思います。「子育てってこんなに疲れるのか……そしてなぜ毎日こんなに眠いのか……」と。

ほそい 分かります。私は2人目で体力の限界を感じました。ストレスに負けそうになることも多いですね。

田坂 私は第1子を32歳で産んでいるので、ことさら36歳で出産した第2子のときとの体力的なギャップを感じます。妊娠中もつらくて、助産師さんに打ち明けたら「それはあなたが4年分年をとったんだから当然だよ」と言われました。

4年前の自分と同じように、とはいきませんよね……。

田坂 あと、私の場合は出産後体重が戻らなかったです。上の子のときはすぐに戻りましたが、下の子のときはなかなか戻らず、今も戻っていません……。確実に身体が年を取っているな、若い頃と同じようにはいかないな〜と思います。

マリカ 体力的な面でいえば、やはり若い方が楽だったと思います。私は出産経験が1回なので比較はできませんが、育児と仕事の両立は、想像以上に体力を消耗してしまいます。

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ほそいさん、田坂さんはお子さんが2人いらっしゃいますよね。2人目となると、より強い意思が必要だったのでは?

ほそい 確かに、年齢的に1人でも仕方ないかなとは考えていました。ただ、私自身にも妹がいて、すごく仲良しで楽しいんですよね。なので、きょうだいを作ってあげたいなと思ったのが大きいです。無謀かなと思いながらもトライしてみました。

田坂 私も姉妹だったので、2人目が欲しいなと思いました。それに、友人からも2人目を産んだ方がいいと言われたんです。彼女も私も1人目の出産が大変で長時間なかなか出てこなかったのですが、2人目はすごく楽だったみたいで。「2人目を産まないと、あの苦しみが報われないよ」と言われたのが妙に響いて、背中を押されましたね(笑)。

マリカ 私はやっぱり年齢のことがネックで、第1子を妊娠する前から「子どもは1人までにしよう」と決めました。

加藤 実はちょうど、第2子をどうするかの問題に直面しています。というのも受精卵を1つ病院に凍結してあって、1年更新ごとに2万円を払っているんです。それを廃棄するか、もう1年伸ばすか、結論が出せなくて……。仕事のことを考えると第2子はちょっと難しいんじゃないかなと、限界を感じるんです。ただ決心がつかず、もう少し考えようと思って更新しました。

仕事と育児を両立させるためにしてきたこと

育児と仕事を両立させるためには、何が必要だと思いますか?

田坂 年齢関係なく、職場に近い場所に住居をかまえる「職住近接(しょくじゅうきんせつ)」は1つの武器になるなと思います。私はたまたまずっと同じ会社で働いているので、15年以上前に会社に近いところに家を買ったんです。さらに、保育園がたまたま家の裏で。

会社・家・保育園の三箇所が離れれば離れるほど、一気に負担が大きくなって、だんだんつらくなると思うんですよね。逆に全てが近くにあれば体力も温存できます。私自身、仕事が忙しい時期も延長保育をほとんど使わずに済んだのも、職住近接のおかげだと思います。

加藤 私も引っ越しました。実は、妊娠発覚と同時に夫の単身赴任が決まったんです。

一同 えぇ! それは大変過ぎる……!

加藤 私も最初はどうしようかと思いました(笑)。何とかやっていくために、職場の最寄り駅に子どもと住むことにしたんです。住んでいるマンション内に保育園も入っているので、どうにかワンオペで回せていますし、毎週末には夫も帰ってきてくれます。

マリカ 通勤時間、本当に大事です! 私は第1子を出産後すぐに復職しましたが、当時会社と自宅の距離が片道1時間半ほどかかっていました。時短勤務を活用していて働いていたものの、体力的にかなりつらくなってきてしまって……。

特に復職してから翌年4月に希望の保育園に入るまでの間は隣市の託児施設に通っていたんです。抱っこ紐で子どもと一緒に電車通勤し途中下車をする、という生活をしていたときが一番大変でした。

マリカさんは現在、Webショップを運営されているとのこと。

マリカ 仕事と育児を両立したいという思いはあったものの、当時の職場ではいずれ限界がくるなと感じました。復職後4年で退職し、フリーランスの期間を経て2017年に自身のショップを立ち上げました。妊娠前は想像すらしていなかった働き方ですが、決断してよかったと思っています。夫が仕事を応援してくれているのもあり、育児や家事は可能な範囲で分担しています。

年齢を重ねてからの出産で、よかったことも

いずれ子どもを持って、仕事と両立させたいと思っている人は、ぼんやりでも住む場所を考えておくといいかもしれませんね。それにしても、やはり妊娠出産は年齢と切り離して考えられないものなんだなと、つくづく実感します。

ほそい ただ、20代にくらべると気持ち的には楽に構えられたかもしれないです。仕事との両立も、結構なんとかなるよな~と、わりと気楽な感じでした。20代はまだまだ遊びたい盛りでしたが、41歳にもなるとやりきった感があって、そのぶん心にゆとりができたんでしょうね。

タイムリミットもありますし、絶対にできる保証はありませんが、その時々の気持ちを押し殺して子どもを作ろうとするよりも、自然なタイミングに身を任せたのは、個人的によかったと思います。

加藤 年齢を重ねてからの出産でよかったことを強いて挙げれば、友人の子どもがかなり大きく、何なら成人しているので、学校に入る前にしておいた方がいい準備とか、最近の受験事情とか、いろいろ教えてもらえます。情報は入りやすいですよね。

田坂 金銭面にもゆとりがあるケースが多いと思います。知恵もありますから、子どものトラブルにもあまり動じず、冷静に対処できる気がします。さらに言えば年齢を重ねただけ人間関係の経験値もありますし、ママ友のややこしいイザコザも俯瞰して見れるのかなと。

あと、仕事に関して言えば、すでに職場で一定の地位を築いているので、年齢が高いママほど辞めずに復帰している気がします。

ほそい 私はフリーランスで働いていますが、30代を自分のやりたいことに費やし、仕事の基盤もできた点はよかったなと思います。

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皆さん、しっかりとキャリアを築かれていますが、年齢を重ねたからこそ育児と仕事のバランスが取りやすいということはありますか?

マリカ ずっと同じ会社にいるという状況なら、一定の地位は確立できていることも多いはず。なので、比較的わがままは言いやすいかなと思います。もちろん周囲の負担にならないような気配りは必要ですが、経験を重ねたぶん、自ら積極的に働きやすい状況を作り出すこともできると思うんですよね。

田坂 私の場合は小さい会社なのと、第1子の出産が約10年前だったので、出産前後の福利厚生も十分ではありませんでした。そもそもワーキングマザー自体いませんでしたし。ただ、新卒から勤めていて会社から信頼されていたこともあり、逆に自分から率先して制度を作っていくことができました。

田坂さんは自ら会社の制度を作っているということですが、今後、具体的に働き方を変えることは考えていますか?

田坂 会社に毎日行くのが段々つらくなってきたので、週1回でもリモートワークができたらと思っています。ただ、そこまでやるのは今の立場だとちょっと難しそうなんですけどね……。そういう意味では、大きい会社はうらやましいです。福利厚生が充実しているので、リモートなどの相談にも乗ってもらいやすいんじゃないかと。

今回、みなさんのお話を伺って、妊娠出産のタイミングに正解はないし、人それぞれだと改めて感じました。

ほそい そうですね。私は長らく子どもに興味が持てず、人生設計の中で妊娠・出産を後回しにしてしまいましたが、結果的にそれでよかったと思っています。

田坂 私も結局、産もうと思ってから時間がかかりましたから。子どもが欲しいと思ったとき、運良くすぐに妊娠できるとは限りません。晩婚で2人目以降も考えるなら、なおのことです。ただ、妊娠出産はどうしても思い通りにはいかないもの。なので、もしいま迷っている人がいるのなら、気負い過ぎないで欲しいな、とも思います。

マリカ キャリアについて言えば、今の時代、出産によって永久にチャンスが失われるということはないはず。もし、仕事と天秤にかけて妊娠を迷われているのであれば、身体的リスクも含めた上でパートナーと一緒に考えてみてほしい。特に体力面は、30代後半で出産を経験したからこそ、「早めがいい」と感じます。

加藤 いつ産むとしても、どんなトラブルがあるかは分からないものです。それに、環境も人によって違いますから、妊娠出産に関して、迷わないわけはないと思うんです。自分は41歳で出産後、なんとか仕事と両立できていますが、これは正直、職場環境や夫婦関係、体力などに恵まれているからだ、と自覚しています。だから、一概に「頑張ればなんとかなります」とは言えない。何かが欠けていたら、自分も徹底的にテンパると思います。

でも、自分の周りで、もしタイミングを迷っている女性がいたら「先輩として出来る限りフォローするし、必要ならば仕組みを変えていく手伝いをするから」と言ってあげたいです。

取材・文/末吉陽子(やじろべえ)
撮影/小野奈那子
編集/はてな編集部

 
※座談会参加者のプロフィールは、取材時点(2019年3月8日)のものです

*1:HUMAN+改訂第二版 pp66 参照