自分のテンションを上げるための手札を多く持つ もぐもぐさんの「20代女性、仕事と趣味事情」

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はたらく女性の深呼吸マガジン『りっすん』で今回お話を伺ったのは、Webメディアで記者をしているもぐもぐさんです。ジャニーズ、宝塚、将棋など多彩な趣味を持ち、Twitterやブログで感想などを発信し続けているもぐもぐさんは、今20代後半。仕事のお話、そしてとにかくたくさんの趣味にかかる時間やお金などについて、率直に伺いました。

Twitterには、「趣味で見たもののログ」を書き残している

もぐもぐさんの自己紹介をお願いします。

1989年(平成元年)生まれで今20代後半です。Webメディアに所属して、記者をやっています。新卒入社した会社に4年ほどいて、2年目から記者職になり、今年転職をしました。

もぐもぐさんのTwitterアカウントのフォロワー数は14,500を超えていて、ブログも多くの人に読まれていますよね。インターネットとの関わりの経緯について教えてください。

もぐもぐ💸✨ (@mgmgnet) | Twitter
インターネットもぐもぐ

インターネットは小学校高学年からがんがん使い始めました。本格的にブログを使い始めたのは大学に入ってからです。私はブログよりもTwitterを先に使っていて、自分の書いたものがたくさんRT(リツイート)されるのを見ていてすごく面白かった。Twitterの140字では書き切れないことを書こうと思ったのが、ブログを始めたきっかけです。

それまでもネットはずっと好きだったけど、「先生むかつく」みたいな友達同士の話題や日記っぽいことばかりで、何かを書いて残そうとは思っていませんでした。ブログで最初にバズった記事が、3記事目だったんです。

mogmog.hateblo.jp

今思えば結構辛辣な反応が多かったんですが、特になんとも思わず、へこみもしませんでした。当時の仲間内で言い合っていたことを外向けに書いたら、他の人にとってはこんなに面白いんだって、文化の断絶、落差を感じました。同じものを見ているのに違うふうに感じる人がいるんだ、というのが面白かった。

過去の自分がふわふわと書いたもの、世代のリアリティがあるものが残っているほうが、自分が後から読んでも面白い。そう思うようになりました。

mogmog.hateblo.jp

社会人になって、ネットへの接し方は変わりましたか?

そんなに変わっていないかもしれません。Twitterは別人格のひとつみたいな感じで使っていて、意識して人格を分けているわけではありません。仕事の自分とネットの自分はよく見ていれば同じ人だとわかるようになっていて、仕事の相手から「もぐもぐさんですよね」なんて言われることはありました。Twitterで炎上するという経験もないんですが、たぶん私は自分のことしか書いていないから、「女性はこう」「日本はこう」というように主語が大きくならない。私生活のことは書いていないから、どこで何をしているかもわからない。Twitterに書くことは生活のログではなくて「趣味で見たもののログ」という感じですね。

好きなジャンルがたくさんある人の情報収集方法は?

ブログやTwitterで言及している趣味のジャンルを調べてみたところ、かなり多岐にわたっていました。今好きなもの・ジャンルをざっと挙げてみてもらっていいでしょうか?

そうですね……最近だとなんだろう。ちょっとログをさかのぼってみます。

  • ジャニーズ(Sexy Zone)
  • 宝塚(月組中心)
  • 女子アイドル(今はNMB48、欅坂46を最近勉強し始めた)
  • 将棋(完全に観るだけ)
  • 歌舞伎(この1年くらい)
  • 2.5次元系のミュージカル(直近では黒執事を観ました)
  • その他のお芝居やミュージカル(誘われて行くことも多い)
  • 音楽(スピッツがずっと好き)
  • 映画(話題になったものだけですが)
  • 漫画(そこそこ読んでいる程度)
  • ドラマ(今期は今のところ4つ、「黒い十人の女」が最高)
  • アニメ(今期は今のところ7つ、楽しみにしているのは「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」)

趣味の“沼”を広げることについて、人によっては「はまりそうだから見るのをやめる」という場合もありますよね。もぐもぐさんは“沼”にはまるのを恐れるタイプではないんですね。

私はどんどん興味の対象が変わるんです。しかもそれに罪悪感がないですね。だから、何かにはまりすぎて困るということはないです。むしろ、それを防ぐためにいろいろ見ているんだと思う。例えば、何かのジャンルでトラブルがあって、ファンがちょっとぴりぴりしたり落ち込んだりしているときに、他のジャンルの話題を見ているとメンタルが安定するんですね。自分のテンションを上げるための道具をたくさん持っていた方がいいな、と考えています。

たくさんのジャンルについて、どのように情報収集しているんでしょうか。

私の場合はTwitterがハブの役割になっています。どのジャンルでも私よりきちんと追っている人がいるので、ハブになる人を探してフォローしておけば、今何が熱いか、何を見ておかなければならないか教えてもらえます。例えば将棋の場合、毎日何かしら並行してあるので、さすがに全部は追いかけられていないです。「映画『聖の青春』の打ち上げ生中継に羽生先生(羽生善治三冠)が出演している、これは熱い!」といわれているのを見つけて、別のことをしながらラジオみたいにニコニコ生放送を聞いておく、というような感じで。

あとは、通勤時間には意識的に本を読むようにしています。仕事関連の本から小説まで……自分で時間を作らないと全然読まないので。

インターネット is ラブ - インターネットもぐもぐ

趣味と同じように、インターネットへの愛情もつづられているブログ

そんなにいろいろなものに接していて、疲れることはないのでしょうか。

体調面でいえば元気です! でも、好きなものから“元気をもらう”というわけではなくて、やっぱり「書きたい」んです。耽溺している感じではないですね。モチベーションとして、面白かったものをTwitterやブログに書こう、というのがあります。書き物の対象として面白いものが欲しいから、疲れないのかもしれない。面白くなかったら、本の場合は途中で読むのをやめることもあります。舞台を観に行っても面白くなかったら何も書かない。

仕事にだけ集中するのを避けようと、意識的に趣味を増やした

ちゃんとお仕事もしていて、趣味も満喫しているのに、「仕事と趣味の両立」という印象は受けないですね。

どちらも「頑張ってやっている」というわけではないです。記者という仕事が割と好きなんですよね。情報収集していることが直接的にではなくても何かにつながるので、そういう意味では仕事と趣味に連続性はあるかもしれません。なんとなく流行っていることや自分が面白いと思ったものが、世の中の大きな流れにどうつながるか、アンテナを立てておくのは、仕事と近い性質があると感じます。

最初の1年は記者ではなかったそうですが、結果として記者をやってみたら向いていた、という感じでしょうか。

自ら志望したのではなく異動で記者になったのですが、いざやってみたら、これならいける、向いてると思いました。でも、それって比較しなければわからなかったことでした。1年目にやっていた仕事は、やりがいがなかったわけではないし、つらいとも思っていなかったんですが、今思えば向き不向きでいうと向いていたわけではないな……。「新卒だから頑張って働いていた」という感じでした。

そのときに仕事にだけ集中していても疲れちゃいそうだなと思って、意図的に趣味を増やしたのが、今こうやってミーハーな日々を過ごしているきっかけですね。ちょうどAKB48では前田敦子さんの卒業があった時期で、ジャニーズや宝塚も追い始めて、それまでは全然見ていなかったのに突然アニメを見始めたり。ぼんやりしていても時間はたってしまうから、自分のテンションが絶対に上がるものの手札を増やそうとしていました。

平日に仕事をしていて土日は2日間で、例えば映画、舞台、歌舞伎、宝塚など2~3時間かかるようなものは、どのように時間管理をしているのでしょう。本や漫画、アニメなどは隙間の時間に観賞可能だと思うのですが……。

スケジュール管理はGoogleカレンダーでやっています。やりくりで苦労しているという感じではないですね。大きい公演の場合はだいたい半年先、3ヶ月先が埋まっていくので、当日券で行く以外は「今週末どうしても行かないと!」という予定はあまりないです。一度めちゃくちゃハイペースで予定を入れて、お金を使い過ぎるし疲れてしまった、ということがあったから、だいぶペースがつかめてきましたよ。

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その時期に、意識的に好きになろうと思えば何でも好きになれるってわかりました。私が「好きになりやすい人間」なのかもしれないけど、好きなものが雪だるま式に増えていく。私、何かに誘われたときにあんまり断らないんです。信用している人から「これ面白いから行きましょうよ」って言われたら「行く行く」っていう感じで。

例えば、何が当てはまりますか?

歌舞伎がそんな感じでした。「ワンピース歌舞伎」がすごく面白くて、そのことをブログに書いたら「それが面白いなら、こういう演目のここが面白いと思うよ」とか「市川海老蔵めっちゃかっこいいから一緒に行こう!」なんて教えてもらって。義経千本桜や、コメディチックな八月納涼歌舞伎など、今年に入ってから4~5回は行っていますね。だいたい面白かったものを言ったり書いたりすると、誰かが関連するものを勧めてくれるので、いろいろなことを知りたい私にとって、精神衛生にいいということがわかりました。

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年間150回くらいは何かしら観に行っているけれど、そんなにお金はかかっていない……かも

観に行っている公演数や時間などは数えたことありますか?

2014年くらいから「エンタメ記録」を付けていて、何かしら遊んだ回数を旅行も映画も全部含めてカウントしてるんですが、だいたい150くらいはいきますね。そう思うとちょっとやばいですね。

その合間にアニメやテレビや本が入ってくる、ということですね。

目が泳いでしまいますね……働いてないなこの人、って感じだな、本当に。よく働いているな……。

趣味の維持にかなりお金がかかるのではないか……とつい考えてしまうのですが、そのあたりはどうされていますか?

ちょっと考えたくないですね。収支管理、怖くてしてないです。クレジットカードの明細は薄目で見て、そっと閉じます。意外になんとか大丈夫です。家賃も光熱費も払えてますよ! 結構「えっ、お金大丈夫なの?」なんて言われるんですけど。毎月末に死にそう……って感じではないです。

同世代に比べてどうかは不明ですが、貯金はそこそこしてます。月何万かは、よけてちゃんと積立はしているんですよ。そもそも実はそんなにお金がかかってないと思うんですよね。舞台や旅行にはかかりますけど、テレビやネットで見られるコンテンツが結構あるし……。あとはやっぱり、はまりすぎていないから無理はしていない、というのは大きいです。どうしてもこれに行きたいから悪魔に魂を売ってでもどうにかする!ではなくて、じゃあその日は違うことしよ、ってなります。

物事を俯瞰して見ているというスタンスが、生活においても効いているのかもしれないですね。

そうですね。そう考えると、多趣味の方がもしかしたら収支が抑えられるかもしれない! 逆転の発想になってきました。パラダイムシフトが今起こりましたね!

興味を持つジャンルのひとつとして「結婚」「子育て」がある

ご自身のキャリアについては、どのようにお考えでしょうか?

記者の仕事はやはり割と向いている気がするので、しばらくはこれをやっていきたいです。働き方というよりも、取材して書くことが楽しいから。ブログはブログで好きですが、自分の中では結構分けていられています。「書くことが楽しい」ということをどこで実現するか、ですね。

記者職をやっていて向いていると思った上で、転職しようと思った理由を教えていただけますか?

何ででしょうね……天啓?(笑) 辞めよう、と思った日のことは結構覚えてます。何か嫌なことがあったとか我慢できなくなったとかではなくて、ある記事を書きながら、あ、そろそろ違う場所で何かをしよう、と思ったんですよね。

変化したいと思ったタイミングだったんですね。

それまで転職したいって全然思ったことなくて、仕事は好きで楽しかったし、取材もたくさんさせてもらってハッピーだったけど、そのときほとんど初めてその選択肢を意識したんですよね。だから逆に「あ、これは今なんだ」と思って。

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20代後半という年齢のことは、転職の際に考慮に入れましたか?

年齢的なことは特に関係ありませんでした。年齢というよりは、4年間続けてきたしそろそろ次かな、と。幅を広げるためには環境を変えるのが一番いいかなという気持ちが単純にありました。

他にやってみたいことはありますか?

そうだな~、次は結婚したいですね。人生ゲームのコマを埋めたい、みたいな。趣味に生きてはいても、このままでいいというわけではなくて、普通に結婚してみたいと思っています。興味の範疇のひとつとして、「結婚」「子育て」があります。次にはまりたいジャンル……?

宝塚や将棋の延長線上に「結婚」や「子育て」が入ってくるんですね!

「今すぐ結婚したい、20代後半だから」というよりは、これまでいろいろやってきて、まだまだ知らないことをもっとしたい。となると、次は結婚が自然と視野に入ってきます。

20代後半だと、「結婚しないの?」「いい人いないの?」って聞かれることは多くなりますよね。

そういう場合は「したいっすよ! いい人紹介してよ!」って逆ギレしますね(笑)。よく「結婚願望ってあるの?」とは聞かれます。その理由はよくわかっていて、たぶん「結婚しろ」っていうけしかけをしたいんじゃなくて、「一人でも人生が楽しそうだけど、どうなの?」という感じなんだと思います。聞かれること自体はあんまり嫌な感じはしないですね。一人でも楽しいけど、二人が嫌っていうわけじゃないし。子育てハック、してみたいじゃないですか。

これからのキャリアにおいて、ロールモデルとしている方がいらっしゃったら、教えてください。

そう言われてみるとあんまりいないですね。もう少し長く働いていたいとは思いますが……私が今問題に直面していないからかもしれないけど、ロールモデルを意識したことはないです。書くことを仕事にするという点では、やり方の幅は広いんじゃないかとは思います。自宅でできる可能性もありますし、フリーで活動している先輩もいるし。

「ネットのお兄さんお姉さんたち」に話を聞いてもらうことは結構ありますね。ずっとネットをしてきて、いろいろな人に会ったりかわいがってもらったりしたのがすごく大きいな、と思います。

ネットを使うことで、仕事と趣味が両方広がっているんですね。

「これから転職しようと思ってるんですよねー」くらいの温度感で少し相談事ができる、ちょっと先輩の、しかも利害関係がない人って、リアルではどうしても作りにくいですよね。そういう人たちにネットで出会えたのは本当によかったなと思います。それこそ趣味の世界でつながった人が似たような業界にいたり、業界は全然違っても会っているときに「今度何かやりましょうよ」という話になったこともありました。ずっとインターネットをしていてよかったなって思います。

お話を伺った人:もぐもぐ (id:haruna26)

もぐもぐ

平成元年生まれ、インターネット育ち。ふみコミュニティとロリポップとヤプログ!に生息していた日々よ……。紆余曲折を経て、大人になってからの方が絶対に人生楽しくなった。だいたい毎日幸せです。

ブログ:インターネットもぐもぐ Twitter:@mgmgnet

マイナスの感情を認め、自分が楽しいと思えるように生きる ブロガー・はせおやさいさんが歩む道

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Photo by Jonathan Kos-Read

はたらく女性の深呼吸マガジン『りっすん』で今回お話を伺ったのは、女性の働き方に関する寄稿のほか、音楽や映画の記事執筆も手掛けている会社員兼ブロガー・はせおやさいさんです。はせさんは、激務から心身の調子を崩した経験を2012年10月に記事「逃げろ、そして生き延びろ」としてつづり、大きな反響を呼びました。

ご自身の結婚・離婚についての考え、家族観についても率直にブログで書いているはせさんが、何について考え、どんな理由から発信を続けるのか、お聞きしました。

アルバイト、契約社員、正社員、フリーランス……今は「チームで働く楽しさ」を選択

はせさんのご経歴を教えていただけますか。

20代の中ごろまでは「どうせ結婚してすぐ家庭に入るから」みたいなノリで、アルバイトや契約社員を転々としていました。でも、婚約していた相手から、「今やっているバンドの芽が出そうだから結婚を待ってくれ」と言われてしまいまして……。そのときにやっと、「他人のジャッジで自分の人生が左右されるのはきつい」「自分で自分を養えるよう、ちゃんと働かなきゃいけない」と思い至りました。

会社員としては遅いスタートなのが意外ですね。ブログなどからは、てきぱきと働く会社員の印象を受けるかと思います。

完全に遅かったですね。同年代の人はその時点で社会人4~5年目に入っている。そこから周りに追いつくためにどうするか考えて、いわゆる新興企業、ネットベンチャーだったら、私のような「まだ何もないけど頑張ります」みたいな人でも入れる余地があるんじゃないかと思って必死に探しました。運良く入社できた会社があって、そこから10年以上、ネットベンチャー界隈を転々としてきています。仕事が非常に好きで楽しく働いてきたのですが、あるとき働き過ぎて体を壊し、結婚するタイミングで一度フリーランスになりました。

いろいろな雇用形態を経験されているんですね。

会社組織を離れ、フリーランスとして働く間に、さまざまなことについて自問自答することができました。「なぜ自分はハードワークをしてしまったのか?」など、気づいていなかった課題や自分の働き方のクセ、性格などもきちんと認識できた。そして当時、業務委託で携わっていた会社で「チームで働く楽しさ」を改めて実感できたので、そのまま正社員になって現在に至ります。

その楽しさはどんなものだったのでしょうか?

一番大きかったのは、周囲に優秀な人ばかりがいて刺激し合える環境だったことです。お互いの得意分野を持ち寄って、それぞれが知らなかったことについて「あっ、それ知らなかった、すごいね。じゃあこんなことができるんじゃない?」なんてわーっと議論できるのが、すごくいいなと思います。

スーパーウーマンになれなくても楽しく働けることを示したい

はせさんが2012年10月に書いた記事「逃げろ、そして生き延びろ」は、当時SNSなどで反響を巻き起こしました。ご自身のつらい体験もまとめられていますが、どういった経緯で書かれたのでしょうか。

逃げろ、そして生き延びろ - インターネットの備忘録

逃げろ、そして生き延びろ - インターネットの備忘録

当時、体調を崩して会社を辞めた女性が書いたブログを偶然読んで、「自分も同じ立場だった」と思いました。私には「逃げることができたから死ななくて済んだ」という自覚がとてもありましたし、逃げることができず不幸な状態に陥る人たちが続けて出るようではいけないと思った。つらい環境に置かれている人が動けるようになるきっかけとして、誰かが「逃げていい」と伝えた方がいいと思ったのと、それを書き記すことで自分のつらかった体験も過去の話にできるんじゃないかと思って。じゃあ書いてみようかな、くらいの気持ちで公開したら、予想外に反応をもらいました。

今はブログや寄稿で働き方について積極的に書いていらっしゃいますが、そのときは偶発的だったんですね。

そうですね。そのブログを書いた彼女に向けて共感の言葉を届けたい、という気持ちが強かったですね。たぶん、真面目な人ほど「逃げちゃいけない」って考えがちだと思うんですが、「それでもあなたは逃げていい」ということを伝えたかったんです。

「過去の話にできる」という動機もあったとのことですが、昇華されたと感じましたか?

それはすごくありました。読んでくださった人から「救われた」「泣いた」というメールもたくさんもらいました。私のブログにしては珍しくコメントがたくさん書かれていたり、今でもTwitterで感想が送られてきたりします。私の経験を伝えることで同じような経験をした人にも「あれでよかったんだ」と思ってもらえて、お互いにいい作用があると感じました。

「逃げる」ことを発信するのに抵抗感はありませんでしたか?

抵抗感はありました。ただ、同時に30代~40代の女性には「ロールモデルがない問題」があると思っているんです。私たちの世代の先輩だと、本や雑誌、Webの記事を探しても「起業してバリバリ仕事しながら子どもを育てて立派に社長を務めている」ような、誰しもが認めるスーパーウーマンしか見当たらない。身近で指針にできそうな方が見つけづらいですよね。

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いわゆるスーパーウーマンは「逃げない」じゃないですか。でも、私は逃げたから死なずに済んで、今も楽しく生きている。それをブログに書いたら反響があった。仕事術やノウハウのような具体的に役に立つ記事でなくても喜んでもらえると実感したときに、自分の失敗事例をたくさん書いて出すことで、自分より若い人が「これでいいんだ」って思えるようになれたらいいな、と思ったんです。

実際の後輩の方々にも、同様に接しているのでしょうか。

ブログでやっている「文章に書いて残す」と、実生活で心がけている「楽しく働く姿を見せる」のは結構近いんじゃないかな、と思って、ずっと実践しています。

自分の年齢が上がるにつれ、自分は下の世代に対して何ができるのかを考えるようになりました。過去を振り返って、自分が倒れるまで働き続けたのはなぜか?と考えたとき、お手本にできるのが男性しかいなかったために、男性のようにバリバリ働かないと仕事を続けていけないのでは、という強迫観念があったということが、理由のひとつだと感じました。特に私のいる業界は若い会社が多いので、どうしても「女性としてこういうふうに生きればよさそうだ」というロールモデルが少ないように感じます。

そんな中で、私はたぶんスーパーウーマンにはなれないけれど、それでも楽しく働いていけるんだよ、自分の好きなように生きていけるんだよ、と後輩に見せていくことが、下の世代を勇気づけることになるだろうと思っています。

自分のマイナスな感情を認める。自分が乗り越えた内容を書くことで過去にする

「自分の失敗を書き残す」のは、自分でつらくなったりはしないのでしょうか……?

つらいときもあります。でも、書くことで感情の整理をつける習性が身についているんだと思います。「文章として外に出すことで過去にできる」というのは、他の人にブログを書くといいよって勧める理由のひとつです。書くことで他人事として見られるので、客観視して「自分、大変だったね」という気持ちになれる。読み返すと、このとき頑張ってたなと思えるので、さらに過去にできる。良い意味でつらかった感情を風化させていけるのはすごく大事だなと思います。

書くことで乗り越えられるんですね。

もともと自分が思っていることを書いて表現するのが好きだったというのもありますが、体を壊して倒れてから療養期間を経て立ち直っていくという過程で、自分の感情を言葉にするようにしました。そこで初めて過去と向き合えるようになったのかもしれませんね。

その部分と向き合えるようになったのは何がきっかけだったのでしょうか。

離婚が一番大きかったですね。離婚直後に一度アイデンティティが全部崩壊してしまって。ここで本当に変われなかったら、私はきっと一生同じところをぐるぐる回り続ける、同じことの繰り返しになると思いました。働き方のほかにも、女としての悩みがあること、自分の生き方に迷いがあることを認めるのはとても怖かったです。でも、そこから目をそむけていると、一生向き合えないままで前に進めないと思いました。

不安や怖さから逃げたいと考えるから、そこから目をそらして、人に対して攻撃的になったりする。だから、自分はこれがいやだとか、怖いとか、恥ずかしいとか、誰にも見られたくないとか、そういう感情の存在そのものをまず認めるのが大事だと思ったんです。認めたからって消えてなくなるものでもないんですけど。

ブログなどを読んでいると、ご自身をある程度客観視できているから記事が書けるのかと思っていました。

できているつもりだったんですが、実はまったくできていませんでした。離婚以前のブログは、「自信満々に仕事を頑張っています!」みたいなキャラクターでいきがっていて、“客観視できてるふう”に書いていた。でもできていなかったんです。そこに気づけたから書けるようになったことが増えたように思います。

20160922 - インターネットの備忘録

ブログには読んだ本や趣味に関することも日々つづられている

嫌な言い方になりますが、あのまま離婚しなかったり、仕事がずっと順調だったりしたら、わざわざネットで弱点を晒そうとはしなかったと思うんです。良くも悪くも「離婚で1回傷がついたんだったら、もう恐れるものも失うものも何もないぜ!」という気持ちになれましたね。同時に、自分の中に「バツがつく」っていう古い価値観があったんだなって認識できました。

離婚してからその価値観の存在に気づいた、ということでしょうか。

そうですそうです。先進的な感覚を持っているつもりだったのに、めちゃめちゃ保守的な価値観を持っていた。そこに気づいて、ああ、自分って全然たいしたことなかったんだわーって思い知らされて。それで楽になりました。一度全部リセットして、自分で自分を養いながら新しく生き直そうと思いました。その経験もあって、自分で稼ぐということは、生き方の選択肢を増やすことにつながるんだな、と思うようになりました。

最初に伺った「他人に自分の人生が左右されるのはきつい」という話と似通う要素がありますね。

そうですね。振り返ると、結婚したときも自分が働いていたから、相手がどんな状況であろうと「私はこの人が好きだから結婚したい」という選択肢を選び取ることができました。逆に結婚生活が終わるときも、仕事を通じて社会から求められていたからこそ「私はあなたと別れたら生きていけない」ってぐちゃぐちゃ言わなくて済んで、お互いが生きやすい道に戻れてよかったなと思いました。経済的に他者へ依存しないということは、女性が生きていくのにとても重要な決断だと思っています。

「生きやすい道に戻る」という表現はいいですね。「発展的解消」という感じですね。

きれいごとっぽいですけど、元夫とは友達に戻って今は親友、という感じです。離婚を決めたときは、これ以上一緒にいると相手を憎んでしまう、この人のことは絶対に嫌いになりたくない、だったらもう辞めよう、という感じでした。

離婚したことをブログで公表されたのも勇気があるなと思いました。できれば触れたくないと考えるかと思ったのですが……。

私、結婚したときに「結婚最高!」「結婚楽しい!」ってたくさん書いちゃったから、失敗してそれを書かないのは不誠実だなと思ったんですよね。元夫にも「書くよ」って言って「おう」って言われて(笑)。

hase0831.hatenablog.jp

離婚は確かに悲しい決断でしたが、必ずしもそれだけじゃありませんでした。いろいろな意見があると思いますが、今はお互いに「離婚してよかったね」と話したりしているので、私と元夫にとってはこの選択がベターだった、フィットした、というだけだと思っています。なので、私みたいに転んでも立ち上がれるよ、大丈夫だよ、というのを見せるのって大事かなって思うんです。

誰かを助けることで「誰かに助けてほしかった自分」も癒やす

自分の過去を書いて発信した後の、読んだ人からの反応はいかがですか?

発信し続けていると、「この人は悩みをわかってくれそう、アドバイスしてくれそう」というふうに思ってもらえるようです。面識のない方から離婚やキャリアに関する長いメールをもらうこともありますね。

知らない人からのメールに真摯に返答していると、はせさんご自身が疲れたりはしないのでしょうか。

疲れることはもちろんあります。でも根底の部分に「人が好き」「人と関わるのが好き」ということ、誰かに対しての返答を通じて自分の過去を癒やしているという部分がすごくあって。たぶん誰かを助けることで、誰かに助けてって言いたかったのに言えなかった若いころの自分も癒やしているんだと思います。相手に自分を投影して、自分がしてほしかったこと、救われたかったことを解消しているイメージです。前向きな返信が来たり、相手がほっとしている様子がわかると「よかったな」って思います。

そういう包容力を身につけられるようになったのは、どうしてなのでしょう。

包容力とはちょっと違うのかもしれませんが、「誰でも、どんな人でも自分の弱さを誰かに言ってもいい」と思えるきっかけをもらったのは結婚生活かもしれないですね。

私にはあまり「そのままでいい」と言われるような子供時代がなかったんです。母親が入退院を繰り返していて、小学校高学年のときから母親の代わりに家を支える役割をしていたので、弱音を吐いたら家族が不安定になるというプレッシャーが常にありました。誰かの役に立たなきゃいけないという思いが強くて、しかもそれが自分を追い込んでいたことにも気づけていなかったんです。

結婚して元夫に個として承認してもらった。育て直してもらった、という思いが強いです。倒れてしまって何もできなかった時期、毎日泣いて「役立たずになってしまった、もう生きる価値がない」というようなことをずっと言っていたんですが、元夫は辛抱強く、何度も何度も「生きてるだけであなたは素晴らしい」「人間は生まれてきていること自体が奇跡なんだから、あなたがただ寝ていたってそこにいてくれるだけで俺はうれしい」って言ってくれたんですよ。誰かに人間として承認されることってこんなにすごいんだ、こんなに癒やされるんだって感じました。

根源的な承認欲求が満たされたという感じなんですね。離婚をされたのはそれとこれとは別の話だとは思うのですが……。

そうですね。そのことと、生活や人生を共にできるかはまた別なんだな、と思いました。元夫は音楽を仕事にしている人だったので、離婚のことを「音楽性の違いで解散」ってよく言っているんですけど(笑)。今もたまに会うと「お前ちゃんとやってんのか?」って心配してくれています。

過去の自分を認められるようになったのは、元夫が私のどんな話でもめちゃくちゃたくさん聞いてくれたからでした。くだらない感情でも全部受け止めてくれて「この人すごいなー」って思った覚えがあります。他者を承認することでこんなに相手を癒やすことができるなら、私もそれを誰かにしてあげたいと思いました。それでその誰かは自分をちゃんと好きになれて、生きやすくなれるかもしれないし。私がしてもらったことを、どんどん誰かにつなげていきたいと思っています。

大事なのは「自分が心地よく生きられること」「自分の気持ちと人生がフィットしていること」

今、ご自身の働き方を通じて後輩に伝えたいと思うことについて教えてください。

自分の現状や感情を認めないと生きづらい、っていうことはすべてに通底するテーマだと思うんです。

例えば、やっぱり老いって怖いですよね。老いていく自分を直視するのは結構みじめでつらいじゃないですか。「20代のころはその辺を歩いてたら誰かに声をかけられたのに今は……」みたいな具体的なみじめさもあるにはありますが、私は若さを手放した分、手に入れたものがあるっていう自信があって、今の自分が一番好きなんです。

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若さをなくすことを認めてこなかった人は生きづらそうで、自分の焦りを認められなかったりいろいろなことにむやみに手を出したり、攻撃的に強がったりしてつらそうだな、と思います。だったら素直に「老いていくのはしんどい」と言っていこうよ、って思っています。おしゃれするのが好きで楽しんでいる人と、老いが怖くて鎧をまとうような装いをする人って、あからさまに違うじゃないですか。

年を取るのはいやだ、という感情を丸ごと認めるんですね。

事実としてありますからね。若さはフルに活かした方が良いけれど、いつか絶対なくなっていくものだから、その代わりに一生使える資源・武器として、若さと引き換えに何を手に入れるのか考える。リアルな後輩には「あなたの良さ、強みを今から一生懸命考えておきなさい、5年後には若さが使えなくなるから!」と言うようにしています。

結構伝え方が難しくないですか……?

難しいのですが、「いつか若さが使えなくなる」ということは、その後輩の未来を一緒に考える上では言わなければならないことなので、きちんと丁寧に話しています。「ババアのひがみ」みたいなことを言われることもあるにはありますが、それもわかる、私もそう思ってたよ、と切なくなるくらいです(笑)。

でも、いろいろなことを受け入れた方が人間としてモテるよって言ってます。私は老若男女にモテたいし、犬や猫にもモテたい(笑)。やっぱり自分を認めて自由にリラックスしている人の周りには人が集まってくるので、そこは意識した方がいいっていう話をよくしています。

はせさんは今、リラックスしている状態なんですね!

してます! それと同時に、若い人に向けて体現していかねばという使命感はありますね。先日、会社の後輩から「30代後半になってもそんなに楽しそうでいいんだ、って見ていて思います」って言われてうれしかったんですが、楽しそうに生きているのが、一番いいお手本ですよね。

女性として生きていて、一般的なルートから落ちたらアウトって思ってしまう人が予想外に多いと感じています。30歳までに結婚できなかったらからだめだとか、この歳になって非正規雇用だとどうこうとか、「それはいったい誰が決めたの?」っていうことがたくさんありますよね。私はたぶん、順調に新卒で良い会社に入って、仕事もほどほどに楽しくて、勤続10年以上で、結婚して子供もいます、という状態だったら、“そうじゃない”価値観を否定するすごくいやなやつだったと思うんですよ。

私自身がでこぼこした道をずっと歩んできたし、これはこれで楽しいし、この道じゃなかったら見えなかった景色があるということに気づけました。そりゃ「一般的なルート」に乗れたら乗れたで楽しいだろうけど、この道にはこの道ならではの楽しさがあります。一番大事なのは、自分が心地よく、ストレスなく生きられて、自分の気持ちと人生がフィットしていることだから、それで良いんだって伝えていきたいなと思っています。

文章でもそれを伝え続けていくんですよね。

以前、「なぜブログを書いているんですか?」と聞かれて、「ブログは遺言みたいなものです」と答えたことがあります。ネットにおいておけば、誰かが私の考えに触れて、何かの役に立ててもらえる。それが私のやりたいことです。例えば結婚に関する情報よりも離婚に関する情報って少ないなあ、と思っているんですけど、離婚の方が処理も煩雑だし、自分の感情のケアもしなきゃいけないから、やることが思ったより多いんですよ! なので「離婚 生き方」で検索してきた人の役に立てたら、それもそれでうれしいなと思っています(笑)。

お話を伺った人:はせおやさい (id:hase0831)

はせおやさい

会社員兼ブロガー。仕事はWeb業界のベンチャーをうろうろしています。一般女性が仕事/家庭/個人のバランスを取るべく試行錯誤している生き様をブログ「インターネットの備忘録」に綴っています。

小さいことの積み重ねで自分を育てる ブロガー・kobeniさんの仕事観と「働く母親」観


はたらく女性の深呼吸マガジン『りっすん』では、女性が普段の仕事や生活で感じるさまざまな思い――楽しさも苦しさも、“考え事”も“もやもや”も――について、もっと誰かと気軽に話し合えるような土壌を整えていきたいと考えています。今回お話を伺ったのは、ブログ「kobeniの日記」や主にワーキングマザーをテーマとした寄稿で活躍するkobeniさんです。

「ワーキングマザー」という属性に焦点が当たりがちなkobeniさんに、このインタビューではkobeniさんの仕事への考え方、ブログで「働く女性」に関する発信をするきっかけについて伺うことにしました。kobeniさんが思いを発信するようになっていった経緯とは?

「女性がずっと働いていくのは難しい」注意深く生きなければ、と思っていた

kobeniさんのこれまでの経歴について教えてください。

30代後半で、新卒のときに入った広告関連の会社に10年以上ずっと勤めています。その間に2回育児休業を取得しました。家族構成は夫、男児2人、猫1匹です。名古屋出身で大学から東京に出て、今も東京で暮らしています。

kobeniさんが、ワーキングマザーとして寄稿していて、「お母さん」に関して考えていることって何ですか?

ママ友と話していると、「家のことをやる」ことにすごく誇りを持っている人が多いです。家事が得意で、かつ“私が”やらなければならないと思っている。その理由は、うまく言語化できていないにせよ、突き詰めるとやっぱり「女性だから」なんです。私の両親は「女だから◯◯」のような育て方を一切しない人でした。だから私はそういう感情が結構フラットで。当時としては珍しかったんじゃないかなと思います。

確かに、「男女共同参画」「機会均等」などの考え方はまだ浸透していない頃ですよね。

母は教師として長く働いていたんですが、世間では自分が少数派だということをよくわかっているようでした。当時、女性が長く続けられる職業は教師くらいしかなかったことも聞いていました。母は私に、「女性も経済的に自立しなければならない」ということを繰り返し言っていましたね。

私はそれを聞いて、「そうか、女性がずっと働き続けるのって、難しいことなんだ」って思ったんです。自分がそうなりたいなら、注意深く生きないと、という気持ちをずっと持っていた気がします。大きくなるにつれて、親の言うことと世の中の現状が違うということに、驚きやギャップを感じるようになってきて。

親の話と世間が違う……と自覚したのは、何がきっかけだったんでしょう?

小学生のときに何年も学級委員をやっていました。親は褒めてくれたんですが、「どうも、女の子が目立つようなことをするとモテないぞ!」と気づき、モテないのはやだなーと思って(笑)、中学校に入ってからは「長」の役割をやるのをやめてしまいました。「真面目にやるのださーい」みたいな雰囲気、あるじゃないですか。高校に入ってからは、ただのサブカル女子(笑)として過ごしていたように思います。

「女性のあり方を考える」という感じではなかったんですね。

はい、普通に高校生活をエンジョイしていましたね。大学は東京の大学を選びました。周囲には地元に残る人が多かったんですが、「地元に残らなきゃ」「女の子はそんなに勉強しなくていい」ということは全然考えていませんでした。マスコミ関連の会社が多い東京に行きたい、そのためには親を納得させるだけの学校に行かないと!と思って、一生懸命勉強していました。私は一人娘でしたが、親も上京には賛成してくれました。

大学生活を謳歌できず自信喪失、小さいことの積み重ねで復活

東京の大学に進んで、生活は変わりましたか?

親や地元の友達と離れ、新たな環境で人間関係を作っていく経験がなかったので、大学で孤独になって、強い挫折感を味わいました。授業はばらばらだし、サークルに入る人も入らない人もいる。スムーズになじんで大学生活を謳歌する人と自分を比べて、すっかり自信をなくしました。すごく寂しくて、自分が何もできない気がして。大学1年の冬に実家に帰ったときには、布団をかぶってずっと泣いていました。

kobeniさんの今の活動を見ていると意外ですね!

でも、せっかく頑張って勉強したのにもったいないし、何とかしようとは思いました。自信を取り戻そうと思って大学2年から始めたのが「自動車の免許取得」だったんです(笑)。みんなが当たり前にやっていて自分にはできないと思ったことをとりあえずやってみようと。ちょっとしたことです、本当に。バイトも始めました。

そこから状況は好転しましたか?

家と大学以外に行く場所ができたことで、だんだん生活が作られていって、大学とは違う人間関係も生まれました。大学のクラスの友達がものすごく真面目だったので、そうじゃないタイプとも知り合いたいと思って、映画のサークルに入ってみたり、短期留学をしてみたり。映画のサークルでは観るだけではなく、撮り始めたんですよ。

だいぶ活動的に……!

サークルの先輩が「撮ると撮らないの間にすごく違いがあるから、撮りなよ」って熱心に勧めてくれて。それで8ミリ映画の脚本を書いて、よくわからないながらも撮ってみたら、狭いサークルの中なんですけどほめられて、すごくびっくりしました。思っていることを表現したら「良い」と言われた。その辺からちょっとずつ自信を取り戻した気がします。その先は大学を卒業するまで映画ばっかり撮っていましたね。

自信をなくしたときの対処法としても、良いヒントになりそうですね。

意外とできた!という経験で、それまでマイナスだったものがゼロくらいに戻るじゃないですか。小さいことを積み重ねるって大事ですよね。一足飛びに何か難しいことをやろうとしなくていいんだと思います。

大学卒業後は広告関連の会社に入社したとのことですが、広告の分野にはもともと興味があったんですか?

サークルで作っていた冊子に、自分が書いた文章を載せたことがありました。友達がそれを読んで「文章うまいね」って言ってくれたんです。その言葉が印象深くて、「そういえば文章を読んだり書いたりするの好きだった」と気づいて。マスコミ関係の会社が東京にあるから東京の大学に来たんだし、と思って、出版社や広告関係の会社をいろいろ受けました。

出版社には全然受からなかったんですが、ロッキング・オンだけ最終試験までいったんです。我ながら面白いと思って、結構人生のネタにしてます(笑)。

「なんでそれが当たり前だと思うの?」と考えるのが大事

仕事をする上で、自信が持てないときにkobeniさんはどう対処していたのでしょうか。大学時代に少しヒントがありそうに思うのですが……

身近なところから地道にこつこつ「自信をつける」のほかに、「自信があるように振る舞う」も大事な気がしています。若い頃って、仕事の方向性を見つけるためにすごく模索する時期で、なかなか自信が持てないですよね。でも、ある程度ハッタリも必要ですし、実際に自信がある方が当然良い結果になると思います。例えばクライアントのところへプレゼンに行ったときに、自信のなさが相手に伝わると不安にさせてしまう。

仕事に関して、後輩や友達にアドバイスする機会もあるのでしょうか。

20代の人から相談を受けることはありますね。20代は、やりたいことや得意なことがわからず焦るような状態でも全然良いんじゃないかな。苦しい時期だけど、むしろ健全なのかもしれません。結果を出したいと思うから焦ったり不安になる訳で。

私の場合は、結構単純なんですが、後輩が増えてきたら急に気持ちが楽になりました。年下の人が多くなると、自分が当たり前にやってきたことについて「教えてください」と言われるようになって。「この仕事に自信が持てず、将来のことが不安だ」と相談された場合は、「今は不安かもしれないけど、ずっと働いているとフッと『あ、頼られてる』と感じる時期が来るよ」と言っています。

今のkobeniさんは、「働くこと」についてあらためてどう思っていますか?

みんな「その人らしさ」を持っていると思うんですよね。自分ではなかなか見つけられなくても、他の人から「◯◯さんはここが良いね」って言われること、あるじゃないですか。それを聞き逃さないようにして、自分でそこを育てるのが大事かなという気がします。自分の良いところと他の人の良いところは違うから。

自分で育てて、伸ばすんですね。

女性は「働くこと」について考える機会が多いですしね。男性の場合、働くのは当たり前って育てられることが多くて、疑いようがない、考えたこともない感じだと思うんです。男性は男性で別の大変さがあると思うけど、夫婦間でもときどき話がかみ合わなくなるケースを聞きます。

例えば、働くのが当然と思って働く夫に、子育て中で仕事が思うようにできない妻が「仕事したい」と言ったら、夫から「自分の方が給料高いし働かなくてもいい」って言われたり。

男女の役割分担には刷り込み、思い込みもありますよね。

例えば「女性は家事ができないと恥ずかしい」と思う人は多いだろうと思います。しかし現実的には、夫婦どちらも仕事をしている状態で女性だけが家事をしたら、ダブルワークで倒れてしまうでしょう? 「なんでそれが当たり前だと思うの?」と考え続けるのが良いんじゃないかな。「そういうものだ」ってそのままにしておくと、何か起きたときにすごくモヤモヤする。自分の悩みや痛みから、考えて、調べて、例えば「ジェンダー(社会的・文化的性差)」という言葉にたどり着く、「あ、私の違和感はこれだったんだ」と気づく……こんなことの繰り返しが大事だと思います。

違いはあるけれど、そこを認識した上で考えようと。

私が子育てを始めて、「ああ……」と敗北感があったのは、「男の子と女の子は全然違う」ということでした。うちは男子2人なんですが、男らしく育てようというつもりはなかったのに、女の子たちと比べると気が散りやすかったり、暴れるのが好きだったり……。逆に女の子は言葉を覚えるのが結構早かったり、じっと遊んでいるのが得意だったり。

男女に違いがあることは仕方ないと思っているんですけど、家事や育児も同じか?というのはわからないですよね。女性だって、男性しかやっていなかったはずの「仕事」をやるようになって、そして誰も別にほめてはくれない(笑)。たぶん仕事も、昔は男性しかできないと思われていた訳で。

「会社での自分とは関係ない自分」として始めたブログ

2009年4月からブログを書き続けていらっしゃいますが、ブログを始めたきっかけについて教えてください。

kobeni.hatenablog.jp

実はインターネットを使い始めたのは結構遅くて。会社の同期のエンジニアから、「はてなブックマークが面白いよ」って教えてもらったんです。最初は読者としてはてなブックマークの「人気エントリー」をよく見ていました。

以前からネット慣れしていらっしゃるのかと思っていました。

それまではネット上に長い文章をアップしたこともなかったんです。1人目の育児休業中に、ネットの記事をいろいろと読みました。そのうち自分でも記事の感想を書きたいと思うようになって、ブログを始めました。

ブログは「会社での自分とは関係ない自分」として始めたかった。肩書き、年齢、性別などが一切関係ない場所なので、自分が書くものが面白ければ読まれるはず、面白くなければ読まれないだろう、ちょっと挑戦してみたいなと思って。

「働く女性」に関する記事を多く書いていますね。

母の影響もあって、個人的に「女性が働き続けること」について関心を持っていました。もしブログを長く続けていくなら、働くお母さんや働く女性のための記事を書けたらいいなと思いました。

考えを書いて発信することで、ご自身の仕事や考え方に与えた影響はありましたか?

自分にとって、ブログを書くという経験はかなり大きかったです。記事への反応を見て「悪気はないのに怒られた」と悩んだこともありました。でも、「自分が当たり前だと思っていることは当たり前ではない」という、すごく基本的なことを知りましたね。私は割と、ばーんと正直に発言し過ぎて「なにこいつ」と思われる……という経験を繰り返している気がして。

ネットでもそのまま「ばーん」という感じだったんですね。

例えば会社でもたぶん、「そんなのこうすればいいじゃん」みたいなキツい言い方をしていたと思うんですよ。でもそのままの言い方や考え方でブログを書くと「こういう人だっているじゃないか」という意見や反応が来る。しかもそれが正しいことだったりする。

……ということは、私は実社会で、人を傷つけている可能性があるって思ったんです。キツい態度でえらそうにしゃべって、「自分の考えは絶対正しい」みたいな言い方して……でも相手は言い返せなくて、愛想笑いをして、流してくれていたのかもしれない。いろいろな人、いろいろな考え方があるということを学べました。

少数派の意見をネット上に広げたら、近い仲間が見つかった

子育てをしながらブログを書くのは大変だったのでは?

ものすごく頑張って書いていて、周りの人には「いつ書いてるんだ!」ってよく言われましたね……。育休から復職したとき、仕事を制限せざるを得ない状況になりました。仕事の内容も大きく変わってしまい、フラストレーションがすごく溜まりました。その発散方法は人それぞれだと思いますが、私の場合は「隙間時間に書けるブログでフラストレーションを発散するしかない!」と思っていました。

kobeniの日記

普通だったことが普通ではなくなる状況はつらいですね。

そういうお母さん、結構多いんですよ。よくあるのは「マミートラック」(出産・育児休業を経て復職した女性が、子育てと仕事を両立する名目でそれまでと違う仕事に変わり、キャリアアップのコースから外れてしまうこと)。今までと同じワークスタイルで働けないときに、負担は軽いけれど自分がやってきたことと全然関係ない仕事しかさせてもらえない、自分らしさが発揮できない……それまでプライドを持って仕事に取り組んできたのに、アイデンティティや熱意、キャリアプランなどが置き去りにされてしまう。

都市部はだいぶ変化してきていると思いますけど、地方によっては、まだまだ復職が難しい職場、妊娠したら退職するしかない職場もあると思います。子どもが小さいうちは、子育てしながら自分ができることを探さないといけない。

それがkobeniさんにとってはブログだった?

何かを始めて、その告知をしたり仲間を集めたりするのに、ブログはすごく良いんじゃないかと思います。誰でも開設できるし、お金もかからないし。その「何か」は、隙間時間でできて、自分が好きでやりたいと思うことなら何でもいい。ブログをTwitterと連携すれば、趣味でも仕事でも関心が近い人とつながれます。それがきっかけで「良いね」って言われたり、喜ばれたりすることって大事ですよね。

kobeniさんはブログもTwitterも活用されていますね。

働くお母さんや働く女性の話題をブログに書いてTwitterに流すと、ワークライフバランスをもっと良くしたいと思う人たちとつながることができて、実際に会うこともありました。「働くお母さん」って、会社の中ではどうしても少数派なんですよね。ひとりぼっちだとか、女性はいるけど自分が育休取得第1号だった、という人もいます。みんな悩みもたくさんある。でも、ネット上でそれを広げてみたら、仲間が実はいっぱいいる!ということがわかります。

ネットを通じて、見える範囲が広がったんですね。

私がブログを始めた2009年ごろって、基本的に会社以外の人と接する機会が少なく、「会社と家庭が自分の世界」という感じの人がまだまだ多かったと思います。インターネットを通じて「もっと他の世界の人とも付き合わなきゃいけないな、狭かったな」と思いました。

全然違う場所で違うことをして暮らしている人、今まで出会わなかったような人と、知り合う・つながるというすごく貴重な経験をして、結構感動しました。今はもしかしたらみんな当然だと思うかもしれないけど、そのときは「マジではてなとTwitterありがとう!」って思ってました(笑)。考え方も変わるし、視野も広がるし、楽しいですよね!

お話を伺った人:kobeni (id:kobeni_08)

kobeni

2人の男児を子育て中のワーキングマザーです。はてなで「faviconkobeniの日記」というブログを書いています。ブログを始めるまで、周囲の人に「面白い」と言われることなど全くなかったので、「面白いですね!」と言われると大変驚きますし、いちいち嬉しいなと思っております。

※2022年10月14日、記事の一部を修正しました。

「女性が働くこと」には1つの答えが存在しない――紫原明子さんのシフトチェンジ《後編》

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はたらく女性の深呼吸マガジン『りっすん』では、女性が普段の仕事や生活で感じるさまざまな思いをもっと誰かと気軽に話し合えるような土壌を整えていきたいと考えています。エッセイストの紫原(しはら)明子さんへの インタビュー前編 では、31歳での「初めての就職」や、自分を楽にする方法の模索について伺っています。

後編では、明子さんが個人ブログ「手の中で膨らむ」をきっかけに文筆業へと踏み出していったお話、「主婦業からキャリアを作る」ことへのヒントをお聞きしました。

ブログからエッセイストへ、そして書籍『家族無計画』へ

ブログを始めたのが2013年2月で、「初めてのエッセイの公開」「ブログでの離婚の発表」がほぼ同時期の2015年4月でした。寄稿のお仕事を始めたきっかけは?

ブログを読んだ方から、結婚生活をテーマにしたイベントへの登壇の依頼が来たんですね。そのイベントがきっかけで、最初の寄稿のお話をいただきました。

そして、ほぼ同時に、2つのメディアから依頼を受けて連載が始まりました。1つは女性がひとりで生きることをテーマにしているメディアで、もう1つは本になった「家族無計画」です。


ブログでは、明子さん流の育児・家庭運営法があると思えば、キャバクラ潜入記やセックスレスの話題も出てきたりして、ずいぶん振り幅が広いですよね。

狙って書くときと全然狙わないときがあります。「セックスレス解消焼肉」っていうテーマはかなり狙って書きました。ブロガーとして焼肉店に呼ばれてみたら、一緒に行った人がお肉を食べて恍惚とした表情をしていたので、これは卑猥な雰囲気の焼き肉の感想にした方が面白いなと思って。卑猥な言葉はひと言も入れてないけど、通して読むと……っていうレポートにしました(笑)。

【これはまさにセックスレス解消焼肉】主婦は焼肉矢澤で禁断の一線を越えたのか。 - 手の中で膨らむ

【これはまさにセックスレス解消焼肉】主婦は焼肉矢澤で禁断の一線を越えたのか。 - 手の中で膨らむ

キャバクラ体験記やセックスレスの話を書いてから、「笑い」よりも「本音」「気持ち」の部分を期待されていると実感するようになり、その期待に応えたいという気持ちが出てきました。

そこはやはり「面白いと言ってもらえるとうれしい」というのがポイントなのでしょうか。

はい、喜ばせたいという気持ちは強いです。文章を書くことはもともと好きだったんですが、子どもを産んでから自分を客観視できるようになったような気がしています。クールな振る舞いをしようとしても、「ちょっと笑っちゃうような自分がいる」ということを、ちょっと離れたところから見られるようになりました。

私は「ホーホケキョ となりの山田くん」や「あたしンち」のような作品がとても好きなんです。ああいうふうに日常が淡々と続くのは素晴らしい。日常が続いていく上で、笑いって欠かせないじゃないですか。そこで「ちょっと笑っちゃう」というのは平和ですごく良いですよね。

“すごくかちっとした家族観”からシフトチェンジした理由は「離婚したから」

元夫のIT起業家・家入一真さんとの結婚生活ではかなり波瀾万丈な時期があったことを『家族無計画』でも書いています。日常を愛する気持ちとのバランスを、どのようにとっていたんですか?

家族無計画

家族無計画

私が育った家族は本当に淡々とした家族で、結婚してから真逆の世界を見てしまった。安心感のある世界は私の原風景でもあるんです。現実においては得がたいものだったから、原風景に立ち戻れる感覚もあって、ああいう当たり前の日常が好きなんでしょうね。

淡々と日常を生きて、どうでもいいことで笑いあうような家族でないと、幸せになれないと思っていました。もともとは私の家族観ってすごくかちっとしていて、それ以外の考えをあまり許さないような感じだったんですよ。

「かちっと」からシフトチェンジして、自分にもっと余裕を作ろう、と考えるようになったのはなぜですか?

それはたぶん「自分が離婚したから」ですね。離婚までに「自分が努力を怠ったのか?」「私が、または相手がすごく悪人だったのか?」「しかるべき処置はとれたのか?」など、さまざまな反省はあったんですが、そのときそのときでは最善の選択をしてきたと思えるし、結果として「やむを得なかった」と思うんです。

それまでが失敗だとは思わないし、今は自分を肯定する気持ちもあって楽しく生きているし、そういう経験があったからいまエッセイを書いているし、結果として得られたものは大きかった。離婚を経ても現実として家族として成立する、みんな楽しく生きられるということを実感できました。

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ブログで自分のことを発信される意義を、「余裕を作る」ためのヒントのひとつとして届けられたらと思うのですが……。

ブログは、「私はこういうことが得意です」「こんなことをいまやっています」と声高に発信できる良いツールだから、みんなやってみるといいんじゃないかなって思います!

最初はセラピーのように書けばいいんじゃないかなという気がしています。私にとってエッセイを書くって、自助セラピーに近いんです。離婚して「どよーん」となりかねないところを、エッセイを書くことによって「私はこうで、こうだから、こうなって離婚したんだ」と自分の中で因果を作ることができるから。

もともと因果なんて、自分の中でもあいまいなものじゃないですか。でもそれを文章に書いて、その落としどころをちょっと希望があるものにしておけば、自分をその方向に導いてあげることができる。「ブログを書く」ことは自分を助けてくれるし、その記事を読んだ他の人も助けてあげることができるかもしれないんですよね。

子どもたちに「人間の感情の多様性、多面性」を文章を通じて伝えていきたい

Webで連載している「りこんのこども」は、親の離婚を経験した子どもたちへの取材をもとに書くメタノンフィクションですね。書籍化されて8月25日に発売となりました。エッセイとは違うジャンルを選んだのはなぜでしょう。

りこんのこども

りこんのこども

子供たちの取材中の言葉をそのまま淡々と書いていくよりも、もっとありのままに伝えられる書き方はないだろうかと考えた結果、物語のような体裁をとることになりました。日常の風景などについては一部フィクションで補っている部分もあります。でも「きっとこの子はこういう生活をしているだろう」と、私の中では必然性がある書き方なんです。その子がこういう環境でこんな会話をしているから、こういう考えを持つに至ったんだと、立体的に伝わればいいなと思っています。

これまでと違うジャンルで、離婚、そして子どもというテーマを扱うのはかなりの挑戦ではないかと思ったのですが、やってみようと思った原動力は何ですか?

私のエッセイは、毎回「1つの体験と1つの教訓」のような構成にしています。理論だけで体験がないものだと読む人が宙ぶらりんになってしまうから、そこはちゃんと体験に裏打ちされたものにしようと思っています。でもそれだと原稿を量産できないんですね。エッセイに自分が体験したことしか書けないのでは、仕事として心許ないし、本当はもっといっぱい手を動かしたり書いたりできるのに……というジレンマがありました。だから、「りこんのこども」はすごく難しいしいつも悩みながら書いているけれど、新しいジャンルに挑戦できて本当によかったと思っています。

他にチャレンジしてみたいジャンルはありますか?

私が一番尊敬する書き手は、児童文学作家の松谷みよ子さんなんです。松谷さんの作品のような、子どもが読めるフィクションを書きたいという思いがあります。次に書きたいと思っているのは、両親の離婚を経験した子どもが、異世界に転生したり魔法が使えたりしなくても、自分の生い立ちに物語を見いだせる、というフィクションです。

松谷みよ子さんは『モモちゃんとアカネちゃんの本』シリーズで、両親の離婚を経験する子どもの話を書いていますね。

モモちゃんとアカネちゃんの本(1)ちいさいモモちゃん (児童文学創作シリーズ)

モモちゃんとアカネちゃんの本(1)ちいさいモモちゃん (児童文学創作シリーズ)

そうなんですよね。子どもにもちゃんとわかるように離婚やお父さんの死を描いています。あの表現ってすごいなと思うんです。子どものうちから「そういうこともあるんだよ」と伝えることができる。

「りこんのこども」の取材で印象的だった子がいて、「自分はお母さんが嫌いになって離婚した人の子どもなのに、お母さんは私のことが嫌いじゃないの?」って言うんですよ。確かにそうだなと。親が離婚したことによって、子どもの中に2つの正義が生まれて、一時的に相容れなくなってしまうんですね。子どもって、好きか嫌いかとか、うれしい悲しいとか、そういう感じで考えていて、離婚した親同士はお互いを嫌いだと思っている。

小さいころはどうしても二元論で考えがちですよね。

子どもに対して、親同士の愛情の多様性、多面性というものを伝えるのはすごく難しいことなんだと知りました。離婚はしたけどなんとなく切れないパートナーだよね、というような“情”の部分は、大人には実際にあったとしても、子どもにはどうしても見えない。「お父さんとお母さんは離婚するけどあなたのパパとママだよ」って言われた子は、矛盾を自分の中でどう処理していいかわからなくなってしまう。

理解した振りをしていても、やっぱり受け入れがたい、納得できない、という気持ちになりますね。

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親の離婚は、当事者である子どもたちにとっては、世の中の多様性を優先的に早く勉強できる機会を持っているということだと思うんです。離婚を経験した子どもに、親がきちんとそういう面を伝えていかなければいけないというのが、「りこんのこども」で最後に言おうと思っているメッセージなんです。人間の感情も、社会の人付き合いも、表と裏だけじゃなくて、もっと立体的で多面的で複雑で、だから2つの正義だけじゃない、本当はもっといっぱい正義があって、それらが一緒に存在していてもいいんだよ、って。子どもたちがうまくそれを処理するアシストになるようなフィクションが書けたらいいなと思っています。

「女性が働くこと」はケースバイケース。可能性を広げるために試行錯誤をする

明子さんが仕事をする際に、参考にされている方、ロールモデルだと思った方はいますか?

それが、あんまりいなくて……。専業主婦で、私と同じようなキャリアを作ろうとしている人は周りにいなかったんです。でも唯一、初めて格好良い女性を見た!と思ったのが、最初に働いた出版社の取引先の社長秘書さんでした。

どこが格好良い!と思ったのでしょうか。

一瞬ご挨拶をしたんですが、全然笑顔じゃないんですよ。媚びた笑いをしていなかった。

にこにこしてみんなを和ませる役割も悪くはないと思っていたけど、その年上の女性を見て、女性であることを利用して媚びなくても、仕事がちゃんと出来さえすればこんなに強くいてもいいんだ!という発見をしました。

「主婦業」をずっとやってきた人がキャリアを作っていくことには、どうしても困難が伴うと思います。明子さんのお考えをお聞かせください。

主婦業はすごく立派な仕事です。そして、いまAirBnBなどの民泊がブームになっていることによって、掃除をしたり空き家を片付けたりする「プロ」がどんどんお金を稼ぎ始めているらしいんですね。そんな活躍をする人が出てきているということは、きっと主婦業がお金になる仕事に変わりつつある、そういう世の中や社会になりつつある、ということなんじゃないかと思っています。

お金を得る仕事へつながる可能性があるということですね。

もし離婚したり、旦那さんが先に死んでしまったりしたら、そこから先の経済的なよりどころや支えとなるものをどう作っていくかが、仕事を持たない主婦の一番のネックだったと思うんですね。でも、少なくとも都市部では今後、結構改善されていくんじゃないかなって。

あと、主婦業のほかに、ネットワークを持っておけばいいと思うんです。いつか仕事をしたいと考えたときに「働き口があるよ!」と紹介してくれるようなネットワーク。「お金を稼ぐ」または「ネットワークを持つ」、どちらかがあれば、いざとなったときにどうにでもなるって思えそうです。例えばいきなり仕事を始めなくても、ボランティアとかNPOとか、趣味のサークルでも良いんじゃないかな。

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ママコミュニティ以外の接点、ということでしょうか。

ちょっとした人のつながりを持っておくと助けてもらえるきっかけになると思います。そのためには、ママコミュニティ以外のコミュニティに興味を持ってみると、ママコミュニティで培った能力をそこで生かせると思うんですよね。

どこでもそうだと思うんですが、1つのコミュニティだけに所属していると、みんな同じ属性になりがちですよね。そこを飛び出して別の世界に入ることによって、ごく当たり前に持っていたものを武器にすることができるというか。

明子さんのような働き方を目指したい、という人はいそうですね。

うーん、いるんですかね……。でも、30代で1回休職してまた働きたいという人から相談を受けることはありますし、同じような状況の方は多いとも感じます。離婚することになったから仕事をしないといけない、でももう40歳を過ぎていて、子どもが受験を迎えるのにコンビニか居酒屋のバイトしか職がない、というような深刻な話も多いです。

そういう相談に対して、どのように答えていらっしゃるのでしょうか。

「これはありかな」と思ってお伝えしているのは「小さな会社に入った方がいい」。派遣でもパートでも、バイトでも。小さな会社なら肩書きを手に入れやすいんじゃないかと思うんです。人が少ないので、いろいろな役回りをすることが多いと思います。私は小さな会社に雑用として入ったけれど、PRの担当になって、その会社を出た後でも「PR経験者です」と名乗れるようになりました。次につながる何かが見えそうなところに入れればいいのかな、と。

次を見る、先を考える、というところが大事なんですね。

そういう話をするときに難しいなと思うのは、その人の性格、シチュエーション、住む場所などで、武器になるものがまったく違ってくるんですよね。ケースバイケースだからわかりやすいロールモデルも現れにくいし、見つけづらい。都市部でしか使えない手法もあるかもしれない。だから一概には話しにくい……というのが難しいところですね。

この「りっすん」では、女性に新鮮な空気を吸ってもらって働く気分を転換できる、深呼吸してもらえるようなメディアを目指そうとしています。

答えを安易に提示してくれる、言い切るようなメディアって、たくさんありますよね。でも、さっきもお話しした通り、「女性が働くこと」ってかなりケースバイケースだと思うんです。「これしか道がないです」「これがベストです」ということなんて、どこにも存在しないし、見えないものは見えない、わからないものはわからないと思うんですね。

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私と同じように30代まで仕事をしていなくて、何かとっかかりがほしい人や、空白を埋めるプロセスがいきなり必要になる人は、ひとつのやり方、ひとつの答えではうまくいかないし、その人なりに試行錯誤する必要がどうしてもあると思うんです。いまお話ししたことは、全部「たくさんある可能性のひとつ」でしかないんじゃないかな、試行錯誤していくのが大事なんじゃないかな、と思っています。

ありがとうございました!

文・万井綾子/写真・赤司聡

お話を伺った人:紫原明子 (id:akikomainichi)

紫原明子

エッセイスト。1982年、福岡県生まれ。高校卒業後、音楽学校在学中に起業家の家入一真氏と結婚。後に離婚し、現在は14歳と10歳の子を持つシングルマザー。『cakes』『SOLO』『Project DRESS』などで連載を持つ。フリーランスで企業とユーザーのコミュニケーション支援、ウェブメディアのコンサルティング業務等にも従事。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)。

ブログ:手の中で膨らむ

エッセイスト・紫原明子さんが試行錯誤した「専業主婦から社会人へ」の可能性《前編》

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はたらく女性の深呼吸マガジン『りっすん』では、女性が普段の仕事や生活で感じるさまざまな思い――楽しさも苦しさも、“考え事”も“もやもや”も――について、もっと誰かと気軽に話し合えるような土壌を整えていきたいと考えています。そこでまずお話を伺い、記事として届けたいと考えたのが、エッセイストの紫原(しはら)明子さんです。

18歳でIT起業家と結婚し、19歳で出産。その後、社会人経験のないまま2人の子どもを持つ専業主婦、奔放な起業家の妻として過ごした明子さんは、離婚に直面してから31歳で「初めての就職」をしました

一般的に、職歴のない主婦の就職活動には困難が伴います。ロールモデルもわかりやすいキャリアパスもそこには存在しません。そんな中、明子さんはどのように前へ進んでいったのか。そして、人気となった明子さんの個人ブログ「手の中で膨らむ」では、自分のことを表現するために何を意識したのか――その中から、「女性が働くこと」を考えるヒントを得てみたいと思います。

専業主婦として31歳まで過ごした紫原さんの「社会人デビュー」

明子さんの今のお仕事について教えてください。

エッセイやコラムなどの執筆活動と並行して、業務委託で週2回、ニュースアプリの運営会社で働いています。スポットでPRの仕事、例えばイベントの運営などを引き受けることもあります。

長く専業主婦として過ごしたあと、31歳で「初めての就職」をされました。最初の勤め先はどのようなきっかけで見つけられたのでしょうか。

元夫との離婚を視野に入れたとき、東京での生活費を維持するために「とにかく働かないといけない」と考えました。「資格がなくて大卒じゃなくてもできる、パートではない仕事」を探そうと思ったんですが、そういう仕事は何かのご縁がないと無理かなと。そこで、いろいろな人を招いてホームパーティーをしていました。そしたら、少しずつ本当に知り合いが広がっていって。ボランティアではあったんですが、IT系向けのイベントを運営する非営利団体に所属することになったんです。

その団体でのイベントで、講演をしてくださる方々のアテンド役として、出版社の経営者とお話しする機会がありました。そのときに「ちょっとうちの会社手伝ってくれない?」と言われまして。願ってもない話が来た、こんな話ほかにない!と思って、その出版社に入社しました。男性ばっかりの会社だったので、食器を洗ったりとかの雑用係です。

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働こうと思ったときに、いいタイミングで話が舞い込んできたんですね。

そうなんです。非営利団体にいたころ「仕事を探しています。もしよかったら仕事をください」と常々言っていて、初めて声をかけてもらったんです。しかも講演者のアテンドの仕事が、私が主婦としてやっていたことの延長でできたので、そこでベストパフォーマンスを発揮した(笑)。お茶を出すタイミングがばっちりとか、のどが渇いていそうだなと思ったらお水を出すとか、「お弁当そろそろ食べますか」と声をかけるとか、そういう部分で「あっ、できる」と実感して。自分が動けばことはぽんぽんと運ぶんだ、ということが結構自信につながりましたね。

出版社はやっぱりすごく忙しくて、1年ほど働いていたら、体調を崩してしまいました。それで辞めてからは、フリーランスとして友人・知人経由の依頼で仕事を受ける形をとっています。気づけばIT業界に長くいるようになって、その領域でのつながりを生かしてイベントの登壇者を見つけてくるなど、自分の強みを求められる仕事をしています。

ずっと知り合いを通じて輪が広がっているイメージですね。

出版社での仕事がすごく人脈を広げてくれて、そこで培ったものが次へ、次へと生かされていると感じます。すごく忙しかったけれど、その分、濃い時間を過ごせたことも事実で、とてもありがたいことでした。なかなかない突飛なケースだとは重々承知しておりますが……。

「子どもに申し訳ない」という自分の気持ちが、子どもを“かわいそう”にしていた気がする

専業主婦から順調にワーキングマザーへとシフトできた……と捉えられることもあるかと思います。それに対して思うことはありますか?

振り返ってみれば順調にいったなぁという気持ちはあります。ただ、スタートが遅かったぶん、やっぱり大変なこともありました。30歳を過ぎて初めて仕事を覚えるという状況で、「今を逃したらもう次のチャンスはない」と思っていて、そのときは本当にがむしゃらに頑張りましたね。

環境がそれまでと大きく変わってお子さんはどう感じられていたのでしょう。

いま息子が中3で、娘は小5です。当時は下の子どもが小学校に入ったばかりで、子育てとの両立は結構悩みました。私が「仕事楽しい!」とハイになってどんどん忙しくなっていくにつれて、子どもが家でだんだん無気力になっていくんです。帰宅してみたら子どもがソファに横になってテレビを見ていて、あんまりしゃべらないし、不思議なことに虫歯も増えるし。

お子さんが直接、明子さんに「働かないでほしい」「家にいてほしい」と言うことはあったんでしょうか。

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「生活のためにお母さんが働いている」ということは伝えていましたし、納得しているかどうかはさておき一応「わかった」と言います。でも「仕事だから」と言うと「また仕事?」って返ってくることはありました。

直接的なことはあまり言わない?

そうですね。それは言わなかったかなぁ。

子どもだって学校から帰ってきて疲れているから、ソファでテレビを見ていたってよかったと、いまは思えるんですが、当時は私の中に負い目が大きくて。誰から責められているわけでもないのに気持ちが板挟みになってしまい、体調を崩すこともしょっちゅうありました。

離婚をしてシングルマザーになった、結婚せずにシングルマザーになった、結婚していてもお父さんが育児にあまり参加しないなど、いろいろな立場での「働くお母さんと子ども」の関係性があるかと思います。明子さんはその点で工夫をされたことはありますか?

仕事が理由で子どもと100%関われないことへの後ろめたさを持つか持たないかは、自分次第だったんじゃないかな……と思います。私は「申し訳ない、申し訳ない」という子どもへの気持ちが強すぎて、子どもをかわいそうだと思いながら見る自分自身が、子どもを“かわいそう”にしていたのかなって思うことがあります。

子どもは良くも悪くも私が家にいない間に好き勝手できて、楽しいこともきっとあったはずなんですよ。好きなだけゲームやったり、お友達をいっぱい呼んで子どもだけで遊んだり。

自分ができる範囲で最大限の配慮をしていることを自分で認めて、割り切らないといけなかったな、って思います。子どもに対して100%のケアをすること、四六時中子どものそばにいることが、子どもにとって本当に良いことなのかどうか、それはわからないし。

子どもにも自分の世界がありますもんね。

「自分を楽にする方法」「余裕がある状態」を自分で試してみよう

私の母は自宅で英語の先生をやっていたんですね。仕事のほかにPTAの活動で家にいないこともあったけれど、それでも自分は母からちゃんとしたケアを受けていたなと思い返すことがあって。それに比べて、私は母がしてくれていたことを、自分の子どもに対してできていないかも、と考えてしまうんです。

自分の生い立ち、育った環境をすべてのお手本や基準のように考える節がどうしてもあって、ついそれをいまの社会にも当てはめようとしちゃうんですけど、昔と今とではライフスタイルはかなり違いますよね。なんだかんだいってみんな、自分が育てられたように子どもを育てれば安心って思ってしまうところ、あるじゃないですか。

自分がよかれと思ったことが実は……というのは普段の生活でもよくある気がします。

働くお母さんとしてうまくいく方法が決まっているわけではないし、うまくいかなければ新しい仕組みを自分で作っちゃうとか、いろいろ試すといいんじゃないかと思うんです。自分を楽にする方法を考えて、生きやすい方法、後ろめたくないやり方を子どもに示しておくと、きっと子どもが大人になったときに、同じように子育てができると思うから。

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自分を楽にする方法を考えるというところに、いままさに悩むお母さんにとっては思考の飛躍が必要かな?とも思いました。柔軟に考えられるコツはありますか?

自分の能力を、6~7割ぐらいで見積もることでしょうか。隙を残しておくというか……。具体的には、「今日はこれから家に帰って晩ごはんを作る余裕はあるけど、そこで晩ごはんを作っちゃうと8割くらいまで疲れちゃうから、お総菜を買って帰ろう」という感じですかね。

常に余裕がある状態にしておかないと、子どもが夜中に急に熱を出して不慮の対応に迫られるときに、すぐキャパシティオーバーになっちゃう。手を抜くことに対してポジティブになって、頼れるものには頼ればいいんじゃないかなって。

ブログを拝見していると、出版社を辞めてからは“働くこと”から少し距離を置いているように伺えました。おいしそうなパンの写真が連日登場していましたが、どういったきっかけでパン作りを?

疲れて仕事を辞めて、崩してしまった体調を立て直すために、パンを焼くのはすごく有効でした。人肌で発酵するし、こねると感触がどんどん手の中で変わっていくし、自分の思い通りになっているという実感がすぐ得られるから、精神安定にすごくいいんですよ。

前から焼いてはいたんですが、当時の疲れた心にすごくフィットしました。癒やされたい気持ちが強かったときはとりつかれたように焼いていて、1日に2回焼いたり、夜10~11時くらいに焼き始めて午前3~4時まで焼いたり。

パンを焼くのは気持ちいい。 - 手の中で膨らむ

パンを焼くのは気持ちいい。 - 手の中で膨らむ

仕事に疲れてしまったということは、たぶんそれまでのやり方がどこか違っていたんだろうと思いました。だから、それまでやっていなかったことをやろうと、ブログも書くようになったんですよ。

「やっていなかったこと」としてブログを選んだ理由は何でしょう?

出版社で広報をやっていた頃は、商品やコンテンツが何よりも前に出るべきで、自分が主張してはいけないという気持ちが強くあったんです。だからその時期は何となくブログを書くような気持ちになれなかったんですよね。

もともと文章を書くのは好きでした。10代の頃にホームページを作って、中二病っぽい感性で文章を書くなんていうこともしていました(笑)。自己主張ができないと感じた状況にいたから、ブログで自分を目立たせていかないと、次の縁が来ないと思ったんです。人に面白いと言ってもらえるのがとても好きなので、いつもウケを狙って書いて、笑ってもらえたらうれしくて。

ブログでは、お子さんがプレゼンをしたことやPlayStation(プレステ)型のケーキを作った記事がネット上でバズっていましたよね。

akikomainichi.hatenablog.com
akikomainichi.hatenablog.com

あー、忘れていました。そうでしたね! この2つの記事は反響が大きかったにもかかわらず好意的な反応ばかりだったという奇跡を感じました(笑)。

プレステケーキは、自分が作ったもので狙った通りにウケてもらえたということがすごく楽しかったですね。質感がセメントっぽいところがよかったんですよね。もしきれいに作れていたらウケは狙わなかったかもしれないけど……。

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インタビュー後編では、ブログを書いていた明子さんがどのように文筆業へ進んでいったのか、離婚と家族観、「主婦業からキャリアを作る」ことへのヒントなどを伺います。

www.e-aidem.com

文・万井綾子/写真・赤司聡

お話を伺った人:紫原明子 (id:akikomainichi)

紫原明子

エッセイスト。1982年、福岡県生まれ。高校卒業後、音楽学校在学中に起業家の家入一真氏と結婚。後に離婚し、現在は14歳と10歳の子を持つシングルマザー。『cakes』『SOLO』『Project DRESS』などで連載を持つ。フリーランスで企業とユーザーのコミュニケーション支援、ウェブメディアのコンサルティング業務等にも従事。著書に『家族無計画』(朝日出版社)、『りこんのこども』(マガジンハウス)。

ブログ:手の中で膨らむ