こんにちは、淡路島出身のライター吉野舞です。写真に写っている黄色いキャラクターは、アイルランドを代表するポテトチップスメーカーのマスコット「Tayto(タイトー)」くん。

 

私は昨年10月から12月の2ヶ月間、語学勉強のためにヨーロッパで3番目に大きな島「アイルランド」に住んでいました。

 

「そもそもアイルランドってどこ?」と思ったあなた……

 

アイルランドはイギリスの横にある島国で、約503万人の人々が暮らしています(2021年現在)。国土は北海道より少し小さく、言語はアイルランド語と英語、2つの公用語があります。

 

1973年にEUに加入し、2001年から通貨がユーロに変わりました。国民の平均年齢は35歳と、EU内で平均年齢が最も低いのが特徴。その他にも、ギネスビールやU2のボノやエンヤなどの著名ミュージシャンなど、「無印良品」の店内で何気なく流れている独自なメロディーのBGMでお馴染み、ケルト音楽の発信地です。

 

 

滞在中はアイルランドの首都・ダブリンの一般家庭にホームステイさせて頂いたのですが、そこで気づいたことがあるんです。それは……

 

アイルランド人って関西人とめっちゃ似てる!!!

 

信じられない人も多いと思うので、簡単にアイルランド人の気質をまとめてみました。

 

<アイルランド人と関西人の共通点>

・おしゃべり大好き

・超世話焼き

・すぐにアドバイスしたがる

・国と地元にプライドを持っているから、地元の話が好き

・お店でおばちゃんと目があったら、話しかけられ捕まる

ね、関西人の皆さんなら共感すること間違いなしでしょ! 特に最後の例えなんてまさに「関西のおばちゃんあるある」(笑)。

 

そこで今回はアイルランドの歴史や食文化とともに、根っからの関西人の私がアイルランドで感じた「関西人っぽさ」を紹介します。

それでは小さな国にギュッと詰まったお国柄を見ていきましょう〜!

 

ライタープロフィール:吉野 舞

1995年生まれ。淡路島出身。武蔵野美術大学卒業。2019年、朝日新聞社に入社。2021年フリーランスライターとして独立。アイルランドに留学しようと思ったきっかけは、じゃがいもと紅茶が好きだからと友人の実家があったから。

 

アイルランドには2つの国が共存している

まずはアイルランドの歴史についてざっくりと説明します。アイルランドは隣の島国イギリスとの「関係性の中で作られた国」だと言われています。

 

12世紀にイギリスによる支配が始まり、アイルランド人は土地や宗教などの国民的アイデンティティを剥奪されました。イギリスによる不当な弾圧を目の当たりにし、独立運動をはじめましたが、英政府は運動を抑えるため1801年にアイルランドを併合

 

1845年からは葉枯病によるジャガイモの不作のため起こった「ジャガイモ飢饉」と呼ばれる最悪の飢饉が起こりました。当時のアイルランドは小麦や野菜などをイギリス本土に輸出しており、それらは全て飢えで苦しむアイルランド人の口に入ることはなかったのです。人口の約20%が餓死および病死、10%から20%が移民としてアメリカなどへ移住しました。

 

ダブリンにあるジャガイモ大飢饉のモニュメント

 

その後、1916年にはイギリスからの独立を目ざすアイルランド独立派による「イースター蜂起(ほうき)」が引き金となり独立戦争へ突入。

 

1949年にはイギリス連邦から脱退し、アイルランド共和国として独立しましたが、プロテスタント系(※)の住民が多い北アイルランドは今でもイギリスの領土のまま。そのため現在もアイルランドの島には2つの国が共存しています。

※プロテスタント系……キリスト教の一派。アイルランドはカトリック系が大部分を占めているため、北アイルランドの住民は宗教の違いから独立の際にイギリス領に留まった。1960年代にプロテスタントとカトリック系の住民が争った様子は映画『ベルファスト』(2021年公開)で見れるので、気になった方はチェック!

 

この北アイルランド問題について、私はアイルランドに行く前まで「ほとんどの国民はアイルランド統一を願っている」ものばかりだと勝手に想像していました。

 

でも実際、アイルランド人に話を聞いてみると「平和的に共存できるのであれば、無理に統一する必要はない」の声が多く、完全な問題解決に向けて動くというよりも明確な答えを出さないことで、平穏を保っている印象を受けました。それだけこの領土問題はアイルランド人にとって根深いんですよね……。

 

博物館で見た昔の看板。翻訳すると「イングランドはアイルランドの敵」 北アイルランドで紛争が続いていた頃はこんなメッセージが街に掲げられていた

 

さて、これからアイルランドへ渡航する予定の方で気をつけてほしいのは「住宅不足問題」。現在、ウクライナからの避難民の受け入れや家賃高騰で住む家を見つけられず、国全体でホームレスになる人が急増しています。

 

特にダブリンの家賃は本当に高く(東京でいう恵比寿や銀座のような家賃相場!)、家賃を払えないため仕方なく両親と暮らす20〜30代の若者も多いんです。家探しの難しさにかこつけた詐欺も増えているので、怪しい人達には気をつけてね!

 

街の中にふらっといる白鳥

 

おいもパラダイス! アイルランドのごはん事情

次に紹介するのは「アイルランドの食文化」です。アイルランド人の主食は「ジャガイモ」と「パン」。

 

ジャガイモは日本でも馴染みのある野菜ですが、正直アイルランドに行く前までは「イモが料理の主役なんてありえへん!」と思っていたんですけど、そんな先入観はジャガイモ料理の前で軽く吹っ飛びました。

 

なぜならジャガイモ料理のレシピ数が多いから飽きないんです! 茹でたり、潰してマッシュポテトにしてメイン料理に添えたり、パイ生地の代わりに使ったり……。

 

毎日食べられるように工夫されたジャガイモ料理の数々を見ていると、大飢饉や土地を追われた困難な歴史の中で生き延び、そして希望を見出してきたアイルランド人の「覚悟と強さ」に触れた気がしました。

 

ジャガイモ料理の一部。煮込みや大皿料理が多いのは、その昔大家族で食卓を囲んだ時代の名残だそう

 

ジャガイモの味も日本産とは違っていて、とても濃厚で味わい深いのが特徴。時にはサンドイッチの具として、ポテトチップスを挟んで食べるくらいイモの形状など気にせず食べるんですよね。すごい……。

 

そして食事の中で印象に残っているのは、ホストマザーが作ってくれたアイルランドの伝統料理「ギネスシチュー」。ギネスビールの生まれ故郷であるアイルランドは、料理にもビールを使います。

 

ビールで煮込んだ牛肉はとろっとろで、ジャガイモは一緒に煮込まず別でマッシュポテトを作り、上にのせて食べる形式。初めて食べた瞬間、想像もしなかった苦味に思わず顔をしかめてしまいましたが……味わいに慣れるとおいしく感じました!

 

 

アイルランドの代表的な朝ごはんも紹介させてください。基本のメニューは重曹で膨らませた「ソーダブレッド」「ベーコンとソーセージ」「ホワイト&ブラックプディング」。お肉がない時でも、バターと紅茶は絶対に添えられています。

 

こげ茶と黒色が特徴の「ホワイト&ブラックプディング」は、肉を使わず豚の脂身や血、オートミールやスパイスなどを混ぜて作られたソーセージ。

 

「豚の血が入っている」と聞いておそるおそる食べてみたのですが、案外血の匂いは感じず、麦が入っているのでプチプチとした食感がありました。アイルランド人はこのプディングが大好物なのですが、私は苦手で全て食べることができませんでした……。

 

左上からソーセージ、ホワイト&ブラックプディング、ベーコン。左下がライ麦パン。右上がソーダブレッド

 

アイルランドは酪農が盛んな国なので、新鮮なミルクを安く簡単に手に入れることができます。時々カフェに行くと、テーブルには砂糖と同じように「ミルクピッチャー」が置いてあって、紅茶にた〜っぷりのミルクを入れて飲むのがアイルランド流!

 

以上のように、アイルランド産のジャガイモと乳製品はとても濃厚で美味しいので、ぜひ機会があれば食べてみてください……!

 

関西人とアイルランド人は似ていた

アイルランドに着いて1週間弱、電車に乗っていると突然女の子が「カバン開いているよ」と声をかけてくれたり、スーパーのレジに並んでいると知らないおばちゃんから「ちゃんと背筋を伸ばすと、素敵なレディになれるわよ!」と猫背を注意してくれたりと、「知らない人によく話しかけられるな〜」と思いました。

 

ホームステイ先ではよく親族などが遊びに来るのですが、とにかくどの人もおしゃべり大好きで、永遠に会話が止まりません。しかも早口。他にも、パブに行くとベロンベロンに酔ったおじさんが「何飲んでいるんや?」なんて話しかけてくることも日常茶飯事。

 

ホームスティ先でのパーティの様子。アイルランドでは常にひとつの机で3つ以上の会話が生まれる

 

アイルランド人には誰とでも気さくに話す人懐っこさがあり、人に対して高い関心を持っています。口が達者というわけではないのですが、会話内でもぼんやりと言いたいことを言ってるなって感じがするんです。

 

そう、アイルランド人の国民性を一言でまとめると「フレンドリーで我が強い」

これってもう関西人と同じでは……??(笑)波長が合うからか実際にアイルランドに住んでいる日本人も関西人率が高く、街を歩いているとどこからか関西弁が聞こえてくることも。

 

教会で見かけた面白いおじさん。一瞬、広島カープのファンかと思った

 

ちなみに、アイルランド人の友人に「どうしてアイルランドにはフレンドリーな人が多いの?」と聞いてみた所、「その昔、自分の祖先たちは大飢饉から生き延びるために異国の地へと冒険に踏み出した歴史がある。だからこの国の人たちは、外から来た人を受け入れる寛容さがあるんじゃないかな」と話していました。

 

私の出身地である淡路島の人のような陽気さはないものの、いつでも家族が集まり語らい、何でも共有し合うアイルランド人のコミニュティを見ていると、まるで実家にいるような安心感を覚えて、一度も寂しい気持ちになりませんでした。

 

お喋りが好きな国だからか街中にはカフェが多い(こういう所も関西と似てる)

 

ただひとつ文句を言うとしたら、アイルランド人はおしゃべり好きだからか喋りがめっちゃ早い! それにアイルランド訛りの英語は話し方やアクセントも独特なので、慣れるまで大変でした。

 

だけど、個人的にクセが強いと言われているアイルランド英語を理解できるようになると、イギリスの人たちが話す英語は「なにこれ、聞き取りやすいやん〜!」となったので、訛りって語学勉強のラスボス、つまり最高レベルのものではないかと思っています。

 

アイルランドで暮らしてみて

アイルランド紀行、どうでしたか? この記事を読んだ関西人はアイルランドに行きたくなったのではないでしょうか(笑)。

 

英語上達だけではなく、自分にとって馴染みのある関西人とアイルランド人が似ていたことで、世代問わずアイルランド人の友人が沢山できたことは予想外の収穫でした。

 

アイルランドのことわざで好きなものがあります。

「 Life is like a cup of tea, it’s all in how you make it.」

(人生は一杯の紅茶みたいなもの。そこにはあなたが作ったもの全てが含まれている)

 

紅茶の味は淹れ方次第で劇的に変わる。だから「紅茶も人生も、美味しくするのか苦くするのかは全てはあなた次第」といった意味です。これからは紅茶を飲む度にこのことわざを思い出して、どんな世界でもしっかりと自分を見失わず進んでいきたいなあと思います。

 

ダブリンの街はとてもコンパクトなので、主要な観光スポットは2〜3日で回れます。皆さんも、ぜひ機会があればアイルランドを訪れてみてくださいね!