こんにちは、長野県長野市在住のライターのナカノです。

昨年のはじめに出産をしてから、これまでの暮らしがガラッと変わりました。

 

子供中心の生活になったのももちろん、常に動き続ける1歳児のパワフルさに体力を削られ、ヘトヘトなこの1年。

 

あ〜! 鯉を食べて精をつけたい〜!!

 

ということで、長野県佐久(さく)市にやってきました。

 

 

「ということで、じゃないよ」

「あ、2018年に長野に移住した、ジモコロ編集長の柿次郎さんじゃないですか。一緒に鯉を食べて元気になりましょ!」

「(やけに説明口調だな)いやいや、冒頭から意味不明でしょ。精をつけたいから鯉を食べる? だから佐久市に来た? そもそも鯉って食べるものじゃなくない?

「そんなことないですよ!私が生まれ育ったここ佐久市は、鯉を食べる文化のある街なんです。佐久市民にとって、鯉は冠婚葬祭で食卓に並ぶおめでたい魚なんですから」

 

お盆の鯉料理に興奮していた私

 

「うーん」

「『年末年始は鯉がないと始まらない』『お蕎麦屋さんのサイドメニューとして鯉のうま煮を頼む』なんて人もたくさんいるんですよ」

「えー……」

「鯉の産地は日本にいくつかありますが、佐久市のブランド鯉『佐久鯉』は全国随一のおいしさなんです。東京の割烹に卸したり、お偉い政治家の方がお忍びで食べに来るほど! 栄養価も高く滋養強壮にもよいと言われ、妊婦や産後のお母さんなど、精をつけたい人にはぴったりの食材なのです!」

「ふーん」

「疑問どころか関心なくしてるじゃないですか。しょうがないなぁ、これから佐久鯉発祥と言われているお宿に鯉の歴史を取材するので、一緒に鯉料理を食べながら話を聞きましょう!」

 

☆本記事は「長野県佐久市 リモート市役所」の提供でお送りするPR記事となっています。

前半では佐久鯉の魅力とその歴史を、後半では佐久出身者のナカノと地元の方々で佐久のオススメスポットを紹介していきます!

 

今回お話を伺うのは、佐久鯉発祥の宿として知られ、現在も鯉料理の提供を行う「佐久ホテル」の19代当主・篠澤昭剛(ささざわ あきたけ)さんです。

 

これが、佐久鯉料理だ!

「こんにちは! 私、佐久市出身なので鯉になじみはあるのですが、佐久鯉の歴史などは全然知らなくて。今日は色々とお話を聞かせてください!」

「おまかせください! なにはともあれ、まずは当館の鯉料理を召し上がっていただきましょうか」

「やったー! ありがとうございます!」

 

まずいただいたのは、鯉かつ重。

 

「鯉かつ! いきなり食べたことのない変化球だ!」

「信州味噌の元祖とも言われる、安養寺味噌をベースにした特製ソースが特徴なんですよ!」

 

身がふわふわでめちゃくちゃおいしい! うなぎに近い食感だ!

 

「柿次郎さん、初めての佐久鯉どうですか?」

「え、鯉ってこんなにおいしいの……? ナカノちゃん、こんなにうまいもの食べて育ったの!? 」

「ふふふ、そうでしょう! おいしくて元気になっちゃいますよね」

 

続いて、鯉のうま煮御膳もいただきました!

 

こちらは「鯉の洗い」。薄くスライスした鯉の身を湯通しし、水で締めています。

 

「うわー、これもおいしい! エンガワのようなサクッとした食感がクセになりますね。全然臭みもない!」

「そうなんですよ。洗いには臭みを消す意味合いもあり酢味噌を付けますが、佐久鯉はほとんど臭みがないので、わさび醤油でもおいしくいただけるんです」

 

うま煮には、鯉の卵もたっぷり載っています!

 

「間違いない味〜。こっくりとした甘さでご飯が進む!!」

「鯉初心者の方にはうま煮がおすすめですね。砂糖と醤油で甘じょっぱく煮ているので食べやすいですよ」

「柿次郎さん、めちゃくちゃ鯉ハマってますね!」

「いや〜、これだけで佐久に住みたくなるね」

 

武田信玄や徳川家の家臣も食べた佐久鯉

「佐久ホテルさんの鯉料理、めっちゃくちゃおいしかったです」

「そうでしょう! 鯉のうま煮のタレは245年継ぎ足しでやっていますから。コクがすごいんですよ」

「245年!? どうりで味の奥深さがあるわけだ ……あれ? 失礼ですが、佐久ホテルさんってかなり歴史のある宿なんですか」

「ええ、まぁ、室町時代からやっていますので、もうじき創立600年ですね」

室町時代には足利家、江戸時代には徳川家の家臣の方々に鯉料理を献上していたという文献がホテルに残っています」

「あとはそうですねぇ、銀閣寺をつくられた足利義政からは、家臣を接待したということで感謝状が送られましたし、信玄さんを接待したときにはお礼に直筆の自画像をいただきました」

「(信玄さん!)さらっと語るエピソードが濃すぎる……」

 

「とても由緒ある宿だとよく分かったんですが、鯉料理についても文献は残っているんですか?」

「ええ、鯉料理が食べられていたことは、約400年前の江戸時代初期頃から文献に残っています。その頃は大名に献上する料理として、鯛やあわびと並んで鯉料理が選ばれたようですね

「へえ! でも長野からの献上品に魚が並ぶなんて不思議です」

「海のない長野県だからこそ、海鮮を献上することが最上のおもてなしだと考えられていたんですよ」

「なるほど! でもどうやって、その時代に鮮魚の流通を……?」

 

「一番近い新潟の海から江戸までの間に点在する、氷室と呼ばれる貯蔵庫を使うことで、新鮮な状態で献上することができたんです。冬に池や山から切り出した氷を蔵に入れて、もみがらやおがくずをかけておくと夏までひんやり保てるんです」

「もちろんその時代に新幹線なんてないから徒歩で行くわけですよね。すごいなぁ……」

「さらに、献上された海鮮はお刺身でも食べられていたというんだから驚きです。あわびは氷をくり抜いたところに刺し身を入れて食べる、水貝という料理法で食べられていたそうです」

 

同じ佐久地域である小諸城主への献上料理も豪華絢爛

 

「鯉はどのように調理されて、大名に食べられていたんですか?」

「文献によると、お刺身とお吸い物の二種類を召し上がられたとありましたね。当時の記録では、一度の食事でふたつの料理を出したのは鯉だけだったそうですよ」

「それだけ鯉のおいしさを伝えたかったのかもしれないですね」

「そうなんです。火を通したものと生だと全然味が違いますからね。大名様にもきっと鯉の味の幅を感じてもらえたんじゃないでしょうか」

「鯉は、大名のような偉い人に献上される魚だったんですよね。庶民はいつから食べるようになったんですか?」

「幕末くらいに、産後のお母さんに送ったという記録が残っています。当時は出産後に亡くなってしまうお母さんや、お母さんのお乳が出なくて亡くなってしまう子どもが多くいた時代。鯉を薬のように食べさせていたのでしょう

 

駅のお土産売り場に掲げられた鯉の薬効

 

「ナカノちゃんも妊娠したときには鯉をたくさん食べたの?」

「はい!母親から『乳が沢山出るように鯉を食べな!』と言われましたね。江戸時代から、それくらい栄養価の高い魚だと知られていたんだなぁ」

「栄養があるだけでなく、たとえば鯉の胆嚢は干しておいて、お腹が痛くなったら薬として飲んでいたようです。昔、理科の授業で鯉の解剖をしていたときに『胆汁を飲みなさい!』なんて言われましたよ」

 

「まぁ、胆汁ってめっちゃくちゃ苦いんですけど(笑)」

 

「(鯉エピソードを活き活きと語るなぁ)」

 

なぜ佐久は鯉の街になったのか

「鯉が古くから食べられていることはわかりました。でも、どうして佐久は鯉の街として全国的に知られているんですか?」

「鯉の産地は全国にいくつかあるのですが、お殿様や皇室に献上していたという文化は、佐久にしかなかったようですね。数年前まで、鯉の生産量も佐久市が日本一でしたし(※現在は茨城県霞ヶ浦)、おそらく人口あたりの鯉の消費量は、今も佐久市が全国一位だったはず」

「なるほど。品質がよいからこそ、昔から多くの人に愛されていたと」

「佐久鯉は、千曲川の清流の素晴らしい水質で育ってきましたからね。養殖する環境も他とは違うんですよ」

「養殖というと、いけすで育てるイメージがあります!」

「その通りです。でもただのいけすじゃないんですよ。通常、鯉はため池や湖を使用したいけすを用いることが多いですが、佐久鯉は、千曲川から水を引いた、流れの強いいけすで生育されています」

「流れが強いとどうなるんですか?」

鯉が24時間動き続けることによって、身が引き締まり、おいしくなるんです!」

 

佐久養魚場協同組合では、千曲川から引いた毎秒3トンの流水で鯉を育てている

 

「つまり、佐久鯉はマッチョってこと……?」

「そういうことです! また、千曲川流域は水温が低いため、出荷する大きさに育つまでに時間がかかるんです。ほかの鯉が1年かかるところ、佐久鯉は2年から3年ほどと言われています

 

「他の地域の鯉の倍以上かかるんですね。食べるまでの道のりが遠いなぁ……」

佐久鯉は他の産地の10倍の値がつくこともあるそうですよ。最近は佐久鯉でかまぼこをつくったり、鯉のひれ酒をつくったりと、様々な商品が生み出されています」

「そんなに商品展開を! まだまだ佐久鯉はビジネスチャンスがありそうだなぁ」

「そういえば、数年前に地元の高校生が和食コンテストで鯉料理をつくって優勝したというニュースも見ましたね! 佐久鯉が若い人に届いている感覚はありますか?」

「以前よりも、食べに来てくれる人は多くなったかもしれませんね。先日もテレビで取り上げられたものを観て、うま煮を食べに山梨から20代くらいの方々が大勢で来てくださいましたよ」

 

2008年に地域団体商標登録の認定を受け、佐久鯉はブランド化された

 

「先ほどから当たり前のように聞いていましたが、『佐久鯉』って名称は佐久で育った鯉につけられるものなんですか?」

「そうですね。実は、歴史の中で純粋な佐久生まれの鯉はいなくなってしまったそうなんですが、いろいろな県の鯉を持ってきて、佐久で育て、地元に定着させていったと聞いています」

「そうだったんだ!」

 

スーパーに並び、給食にも出る佐久鯉

「そういえば、ナカノちゃんの実家では普段から鯉を食べるの?」

「年末年始に鯉料理を食べることが多くて、鯉こく(※鯉の味噌煮込み)やうま煮が食卓に並びますね。あ、あと1口サイズの鯉の唐揚げを甘辛く味付けした鯉チップもおやつ代わりに食べてましたね」

「それは素晴らしい!スーパーで鯉がずらっと並んでいるのも、このあたりならではの風景ですよね」

「血だらけのぶつ切りがパック詰めされている姿は、ちょっとギョッとしますよね……!」

「そうですね(笑)。でも、鯉の血はとてもいい出汁になるんですよ」

「血が出汁に!? 初めて聞いた!」

「うま煮はじっくり煮るので骨まで食べられますし、鯉は全身余すところなく食べれる魚なんです!」

こんなにおいしくて、栄養に溢れていて、血から骨まで食べられるなんて最高だ……

 

「地元ならではというと、このあたりでは佐久鯉を給食に出す学校も多いんですよ」

「へえ! 地元の名産を小さい頃から食べるって、いい学びになりますよね」

「いずれ子どもたちが大人になったときに『地元の鯉が食べたいなぁ』『鯉っておいしかったよなぁ』と地元を誇れるポイントになったら嬉しいですね」

 

佐久鯉のお土産品は駅の売店でも大きく展開されている

 

「その子たちが上京して、大学の友達に『地元は鯉が有名で、めっちゃおいしいんだよ』って話題する姿が目に浮かぶ……(親目線)」

「私が小学生のときは、夏のプールが終わるとそこに先生たちが鯉を放流して釣り堀にしてくれて『今日は釣り大会だ!』なんて遊んでくれましたね」

 

「しかも釣った鯉を先生たちが鯉こくにしてくれて。あれはよかったなぁ」

 

「(本当に鯉が好きなんだなぁ!)鯉は、いち名産品にとどまらず、街の文化としても重要な存在ですね」

「しかも鯉は1年通しておいしくいただけますから。これからもたくさんの方に食べていただきたいです」

「なんだかこうやって鯉の話を聞いていたら、地元に戻りたくなりますね。今日はいろいろお聞かせいただきありがとうございました!」

「ぜひ、佐久市に戻ってきて子育てしてくださいね!」

 

「いやぁ、鯉ってこんなに美味しい食べ物だったんだね。しっかり佐久の文化として根付いているし」

「柿次郎さんに佐久の鯉文化を知ってもらえて嬉しい! それに、佐久の魅力って鯉だけじゃないんですよ? 自然に溢れているし、抜群の晴天率で晴れの日が多いし、病院も充実していて全国でも有数の健康長寿の街なんです!」

「おお、さすが佐久出身。佐久平駅には新幹線だって停まるし、住み心地のいい街なんだなぁ」

「せっかく柿次郎さんが佐久に来てくれたことだし、ほかの素敵スポットも紹介させてください! 佐久の魅力はまだまだあるんです〜!」

 

知ったら住みたくなっちゃう! 佐久のおすすめスポット