人間だって「ざんねんないきもの」! 動物たちのトホホな生態を知ると心が軽くなる

2020.01.23

人間だって「ざんねんないきもの」! 動物たちのトホホな生態を知ると心が軽くなる

おもわず「どうしてそうなった?」と言いたくなる動物たちの生態をまとめ、シリーズ累計360万部を突破した大人気の本「ざんねんないきもの事典」。著者であり動物学者の今泉忠明さんと上野動物園を巡りながら、さまざまな動物たちの「ざんねんなところ」を聞きました。実は、私たち人間もざんねんないきものだった…?

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    みなさん、動物は好きですか?

    いいですよね、動物って。愛らしくって、見ていて飽きないし。

     

    わたしはカバのでっぷりしたおしりと、そこにぺちっと張り付いた尻尾がたまらなく大好きです。ついでに言うと、カバって自分のナワバリを主張するために「撒き糞(まきふん)」という行為をとるんですが、水中でペペペペペーッと糞を撒き散らす尻尾にズキュンです。

    ああ、かわいい・・・。

     

    動物好きのみなさんはご存じかもしれませんが、現在シリーズ累計360万部を突破した大人気の本があります。

     

    それが、こちらのざんねんないきもの事典です!!

     

    そして『ざんねんないきもの事典』全シリーズを抱えているのが、私。ライターのきむらいりです。

     

    “『ざんねんないきもの事典』シリーズは
    生き物に少しでも興味と愛情をもっていただければと
    あえて「ざんねん」という言葉を使って、
    これまでの本ではあまり語られてこなかった
    生き物の “意外な一面”を紹介しています。”

    (ざんねんないきもの事典(高橋書店)公式サイトより)

     

    身近な動物たちの特徴や生態を、クスっと笑える文章とイラストで紹介していて、「こどもの本総選挙2018」で1位に選ばれたり、2018年の日販ベストセラーでは児童書部門で1〜3位を独占したりと、子どもたちを中心に大人気の本。

     

    でもこれ、大人が読んでもすごーくおもしろい。進化の話なんかは、「なるほどね!」「どうしてそうなった!?」の繰り返しで、不思議なことに読み終わった頃には「一生懸命生きるぞ!」と、前向きな気持ちになるのです。

     

    と、いうことで……

     

    『ざんねんないきもの事典』の監修者であり動物学者の今泉忠明先生に、上野動物園へお越しいただきました!

     

    パンダでおなじみの上野動物園は1882年に開園した日本初の動物園であり、今なお年間来場者数No.1のレジェンド動物園です。そして50年以上にも渡って動物を研究してきた今泉先生は、世界最小のほ乳類「トウキョウトガリネズミ」を世界で初めて生きたまま捕獲したこともある、すんごいお方。

    ちなみに今泉先生は上野動物園で解説員を務めていたこともあるので、このシチュエーションはめちゃめちゃ贅沢。

     

    今泉忠明(いまいずみ ただあき)

    1944年東京都生まれの動物学者。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒業後、国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学ぶ。上野動物園の動物解説員を経て、「ねこの博物館」(静岡県伊東市)館長、日本動物科学研究所所長などを歴任。
    監修をつとめた『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)は、シリーズ累計360万部(2020年1月時点)の大ヒット。
    父、兄、息子ともに動物学者という“動物一家”の一員である。

     

    今回は、今泉先生と一緒に上野動物園をお散歩しながら、愛おしくも「ざんねんないきものたち」について詳しく教えてもらおうと思います。

     

    一生懸命生きているのに、なぜかざんねんな進化をしてしまった動物たち。彼らの生き様を知ることで、複雑で難しい動物になってしまった「ざんねんないきもの」こと我々人間も、ちょっぴり生きやすくなるのではないでしょうか!

     

    ざんねんで愛おしい動物たちの生き様

    「今日はよろしくお願いします! わたし、動物が大好きで……今泉先生と一緒に動物園を周れるなんて、めちゃめちゃうれしいです!」

    「はい。よろしくお願いします〜」

    「今日はこんな感じのルートで巡ろうと思っています。さっそく、参りましょう!!」

     

    話題のシャンシャンがいるパンダ舎は、人気すぎて撮影NGでした

    「あっ!! 先生、カワウソがいますよ! かわいい〜〜〜〜〜」

     

    「これはユーラシアカワウソですね。カワウソは『毛皮が良すぎる』ところがざんねんだよねえ〜。あとは『好奇心が強すぎる』ところ」

    「かわいい! ざんねんポイントもすごくかわいい!!」

    「カワウソの毛皮は1㎠に5万本の毛が生えていて、防水性、保温性に優れています。だから乱獲されちゃう。それよりもさらに優れた毛皮はラッコなんですけどね。彼らは1㎠に10万本の毛が生えているといわれていて」

    「Oh……」

    「あとは警戒心よりも好奇心が勝ってしまうから、危険なところや人間にも臆せず近づいちゃう」

    「そのせいでカワウソの個体数が減っているのだとすれば、本当に本当にざんねんすぎる」

    「江戸時代は東京にもいっぱいいたんですよ、カワウソって。夜釣りをしているとビクから魚を持っていくもんだから、当時は不漁をカワウソのせいにしてたみたい」

    「いたずらっこなところはとってもチャーミングだけど、できればもうすこし警戒心を持ってほしいぞ、カワウソよ……!」

     

    トンネルを通るのも、彼らのもつ「好奇心」ゆえの習性

     

    「お、スマトラトラがいますね。『猫すり』してる」

    「『猫すり』ってなんですか?」

    「退屈すると同じところを何度も行ったり来たりするんです。その習性のことをいいます」

    「本書のなかでは、トラのざんねんなところは『笑っちゃうほど狩りがヘタ』って書いてましたね」

    「そうそう! トラはなんたって狩りがヘタなんですよ〜。ざんねんだよねえ、見た目はこんなにカッコイイのに」

    「ヘタというと、成功率はどのくらいなんですか?」

    「1割くらいかなあ。10回やって1回成功するかどうか……という感じで」

    「思ったよりだいぶ少ない……!」

    「そうそう。だけどトラは一匹で狩りをするから、牛なんかをゲットできたら3〜4日は大丈夫なんですよ。たぶん、それ以上取れちゃったらトラもサボるだろうから、ちょうどいいんじゃないかな」

    「(トラも怠けるの……!?)」

     

    トラのおこぼれに預かる野生のカラス

    「トラは狩りがヘタなのに、どうしていまだに単独で狩りをするんですか? ライオンみたいに集団のほうが成功率はあがりそうなのに」

    「トラは基本的に森に住む生き物なんですよ。森の中って木がたくさん生えてるから、単独のほうが動きやすい。ライオンは平原でしょ? 見晴らしがよくて獲物も逃げやすいから、大勢で囲ったほうが効率がいいんだよね」

    「ああ〜、そもそも生活している環境が違うから狩りのスタイルも違うんですね」

    「そういうこと! 実は、猫も犬も先祖は同じなの。『ミアキス』っていう、小型の食肉種がいたんだけど」

    「ミアキス!?」

    「そのミアキスが森を拠点に進化していったのがトラなどのネコ科の動物で、平原に出ていったのがオオカミとかイヌ科の動物。トラの縞模様は、森の中で生きるためのカムフラージュなんですよ。そのうち森から平原に出ていくネコもいて、それがライオンに進化している」

     

    「だからトラとライオンの頭骨ってすごく似ていて、よーく見てみないとわからないくらいなんです。縞模様もないしね!(笑)」

    「平原では群れのほうが生きやすいから、オオカミもライオンも群れで生活しているんですね。 環境に適して進化している……当たり前だけど、改めて聞くとすごく合理的だなあ」

     

    調べても調べても飽きることのない「いきもの」たち

    「ちなみに、先生はどうして動物学者になられたんですか? やっぱり動物が好きだから?」

    「ん〜、特別好きってわけではないんだけど」

    「そうなの!?」

    「私は動物が好きというよりも、調査が好きなんです。『なんでリスはここに巣を作るんだろう?』とか、そういうのを調べるのがおもしろくって、ずっと続けてきたんですね」

    「動物は調査のしがいがあると?」

    「そうですね。動物のことがわかると、人間のこともわかるんですよ。なぜなら、もとは人間も動物だったから。でも人間は知能が発達してきたから、原始的な行動はとらなくなりました。それでも心の奥底には動物的な本能があるんです。そうやって人間のこともわかっていくのがすごくおもしろくて」

    「ああ〜。その感じ、すごくわかります!!」

     

    「先生、今度は手の長いお猿さんがいます!!」

    「これはテナガザルですね」

    「そのまんまだった……!」

    「霊長類のなかで人間に近しいと言われているのは、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルの4種類。僕は、個人的にはテナガザルが人間の祖先だと思っているんですよ。ゴリラよりも人間に近いから」

    「それはどうしてですか?」

     

    「見てください、木にぶら下がっているでしょう。あれってようは肩が360度回るからできるんですよ。でも、ゴリラは後ろには回らない。基本的に、可動域は前方だけ」

    「テナガザルのほうが肩の可動域が人間に近い、ってことですね」

    ゴリラは下手投げしかできないけど、テナガザルは上から投げられるからね」

    「ということは、テナガザルは野球ができる?」

    「そうそう。それにテナガザルはオスメスのペアで暮らしていて、ナワバリを示すために毎朝30分ほど一緒に歌うんです。それに、木の上を二本足でスタスタと歩くことも結構あるしね」

    「なんとデュエットも……! テナガザル、人間と似ている部分がたくさんあるんですね」

     

    「さっきはゴリラよりテナガザルのほうが人間に近い、って話したけど、ゴリラはゴリラですごく人間ぽくてざんねんなところが多いんですよ〜」

    「人間っぽいざんねんさ、とは!?」

    「本にも書いたんですけど、ゴリラはすーぐ下痢をするの」

    「知能の高さゆえ、ストレスを感じやすいんでしたっけ?」

    「そう、神経質なんだよね。彼らのようにある程度知能が発達してくると、周りを気にするようになります。そうすると、動物園みたいにたくさんの人がじーっと見てくる環境って、実はすごくストレスなんです」

    「そりゃそうですよね。人間だって周りからジロジロ見られたら嫌になりますもん」

    「だからね、動物園のゴリラを見ていると大抵がうつむいていたり横を向いていたりするんです。見られたくないから。で、だんだんイライラしてくると睨んできたりする」

     

    眼光鋭いゴリラがいたら、それはイライラが募った状態なのかもしれない

    「見られていることはわかっているから、やだなーと思いながらもチラチラと横目でこちらの様子を伺うんですよ」

    「すごく人間っぽいですね。神経質なゴリラのざんねんポイント、ほかにもありますか?」

    『下痢や吐瀉物(としゃぶつ)を食べちゃう』んだよねえ」

    「ええー、どうして食べちゃうんでしょう?」

    「そこは動物だからね。人間は、教育のなかで『自分からでた排泄物は捨てるべきもの』と学びます。でもゴリラはそういう教育を受けないので、『自分から出たものは自分のもの』だと思っているんです。人間だって、赤ちゃんのうちはその分別がつかないから自分のうんちを平気で触ったり口に運ぼうとしますよね」

    「たしかに。人間は親や周りの人からいろいろな『教育』を受けて、物事の分別や理を学んでいくけれど、それがほかの動物たちとの大きな違いなんですね」

     

    人間ほどざんねんないきものはいない

    「ゴリラは知能の高さゆえ、ざんねんなところが多いんですよね。それでいうと、劇的に進化してきた人間にも、たくさんのざんねんさがあるんじゃないでしょうか?」

    「人間はざんねんなところだらけですよね〜。でも、人間の進化は途中で止まってるんですよ。発達はしてきたんだけどね」

    「な、なんだって……!?」

     

    【進化と発達のちがい】

    ■進化とは?
    生物の見た目や能力、行動などがとても大きく変わること。
    気温や住む場所が変わるなど、大きな環境の変化があるとほとんどの生物は死んでしまう。しかし、ごくまれに新しい環境にあった体や能力を持つものが生まれ、生き残ることで進化がおこる。

    ■発達とは?
    生物の持つ機能が高度に発揮されるようになること。
    歩けるようになったり言葉が喋れるようになったり、身体的・精神的な構造や機能が伸びることを発達という。

    「実は人間の体って原始的なままなんです。だっていまだに5本指でしょう? 5本指は哺乳類の基本形で、すごく原始的な状態。これが進化していくと、指が3本になったりするので」

    「そんな風に考えたことなかったので、ちょっと驚きました。進化と発達って全然違いますね」

    「人間は歩く時にかかとをつけて歩くでしょ? これも原始的なんです。進化するとより早く移動するためにつま先で歩くようになりますから。ちなみにゾウは指先で立っているので、常に爪先立ちです」

     

    先生曰く「ざんねんながら、ゾウは現代には大きすぎて行き場所がない」とのこと

    「そうじゃないと、関節に負担がかかり過ぎちゃうんですよ。足の裏のように見える部分は、実は皮膚。指の隙間を埋めるように皮膚が発達しているんです。ゾウ以外にも、恐竜だとかサイだとか、体の大きなやつはみんな指先で歩いていますよ」

    「ほえ〜〜! 知らなかった!!」

     

    「人間は体が原始的なまま急に脳が発達しちゃったから、いろいろ置いてけぼりになっているんですよ。だから、健康面でのざんねんポイントが多い。腰が痛いとか足がむくむとか肩が凝るだとか」

    「体が追いついてないんですね」

    「そうそう、だから人間ってよく転ぶじゃない」

    「動物は転ばないんですか?」

    「滅多にないですね。人間は体に対して脳が大きすぎるうえ二足歩行で重心が上にあるものだから、バランスを取るのが難しいんですよ」

    「あ〜、なるほど。幼児がよく転ぶのは頭が重たいからだと、聞いたことがあります」

    「酔っ払いもよく転ぶけどね(笑)。ほかにも、定期的に髪を切らなきゃいけないところとか。『もういいのに!』って思っても、伸びてくるじゃない」

    「肩こりもむくみも、散髪もいらない動物たちと、常に体の不調を抱えている人間……ますます人間って、とってもざんねんないきものなんじゃないかって気がしてきます」

     

    「そうかもしれないですねえ」

    「(先生が遠い目に・・・!)人間はもうこの先、進化することはないんでしょうか?」

    「よっぽどのことがない限り、起こらないでしょうね。『進化』は自然淘汰の中で起こります。だけど、人間界には医者がいるので自然のままというのは、もうありえない訳です。風邪をひいたら薬を飲むように、科学の力で自然に抗っているわけですから」

    「医学の発達は進化を止めている……!?」

    「そうとも言えるかもしれないね。でも、それが一番平和なんですよ。だって、自然を相手に戦うのってすごく大変なことなので」

     

    「先生に動物たちのざんねんなところや生態について教えてもらいながら園内を周ってきましたが、その視点で見ていると動物たちのもつ特徴がすごく合理的というか。環境に適した進化をしてきたことがわかって、とてもおもしろかったです」

    「うんうん、うまくできてますよね。それらが自分の意志じゃなく、自然の力によって引き起こされているのが、本当にすごいよね」

    「すこしでも有利な特徴をもった個体が生き延びる、という自然の仕組みで進化してきたんですもんね」

    ざんねんな部分は『進化の足あと』ですから」

    「『人間がざんねんな部分だらけなのは、まだ進化しきれていないからだ』と考えると、なんだか不器用で生きるのがヘタな人間が、とても愛おしくなりますね。先生、今日はありがとうございました!!」

     

    紹介しきれなかった「ざんねんないきもの」たちが登場!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    きむらいり
    きむらいり

    1990年生まれの編集者/ライター。北海道函館市出身。実家はちいさなパン屋です。動物が好きで、この世で一番愛らしいのはカバだと思っています。

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