“ホントの小岩“の姿って? 街の盛り上げ人が明かす下町事情

2023.09.14

“ホントの小岩“の姿って? 街の盛り上げ人が明かす下町事情

都内で最東端の街である、江戸川区の小岩。いくつもの商店街が広がり、昔ながらの下町感が残る地域となっています。メディアにもたびたび取り上げられ「飲み屋が多い」「治安があまりよくない」なんてイメージもありますが、いったい真相はどうなのでしょうか? 書籍『ラブユー小岩レトロ』を出版した松岡サラサさんに聞きました。

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    こんにちは、ライターのはるまきもえです。

     

    私は2年半ほど小岩(こいわ)で暮らしています。地元から上京し転々と引っ越しを繰り返していたのですが、初めて妙に落ち着く街に出会ってしまいました。

     

    小岩とは、新中川と江戸川に挟まれた都内最東端の街になります。JR総武線が通っており、快速は止まらないものの、電車1本で新宿まで横断することができます。

     

    少し足を伸ばせば浅草、上野、秋葉原があり、買い物もそこまで不便ではなく、非常に住みやすい位置にあります。なんといっても都内なのに家賃が安い!

     

    ところで、みなさんが「小岩」に抱くイメージはどのようなものでしょうか?

     

    以前、小岩は某テレビ番組で何度か取り上げられ、少し注目されていましたよね。「気がついたら自転車のサドルがブロッコリーになっている」とか、「名物おじさんが出現する」とか、なかなかカオスなトピックで盛り上がっていました。

     

    突出した情報はさておき、多くの人が小岩に「飲み屋が多くて、少し治安が悪い下町」というような印象を持っているのではないでしょうか。実はこのイメージは、今の小岩からすると“半分当たっていて、半分外れている”くらいの表現なんです。

     

    それはいったいどういうことなのか? 私は小岩で暮らして2年半になりますが、まだまだこの街のことを語るには新参者です。

     

    ですので、今回は小岩のスペシャリスト・松岡サラサさんをお呼びし、本当の小岩についてお伺いしてみました!

     

    <実は、小岩はこんな街>

    ・社長と商人が特徴的な街

    ・「治安が悪い」というイメージは自転車の多さにあり?

    ・「江戸川区の歌舞伎町」と呼ばれていた

    ・再開発により、小岩の人口は1万人増える?

    ・昭和を感じる“小岩レトロ”がある

     

    総武線の街は“川”で分けられている?

    お話を伺った松岡サラサさん

    「松岡さんは、『小岩コンテンツプロジェクト』の実行委員長として活動されているんですよね。具体的には、どんな活動をしているんですか?」

    「2020年から『小岩デラックス』というYouTubeチャンネルで、小岩の魅力について発信しています。小岩の町中華や酒場の紹介、お店を絡めた企画などの動画を投稿していますね」

    「また、2022年の7月には『ラブユー小岩レトロ』という書籍も出版しました。小岩の人情味あふれるお店や銭湯を撮影し、1冊の本にまとめました」

     

    『ラブユー小岩レトロ』小岩コンテンツプロジェクト・松岡サラサ著

     

    小岩レトロなお店11店舗の様子に加え、店主インタビューやコラムなども記載されている

     

    「写真だけじゃなくて、お店の人にお話をお伺いしているんですね。まさにローカルガイドブックだ。実際に住んでいる人から語る小岩のお話、気になります。ちなみに松岡さんは、生まれてからずっと小岩で暮らしているんですか?」

    「小岩で生まれ育ちましたが、2019年に小岩に戻って来るまでは他の地域にも住んだことがあります」

    「そうなんですね。小岩と比べてどうでした?」

    「自分が暮らしている街って、実際に住んでいるとなかなか気づかない魅力があったりしますよね。外から見たときに、より小岩のことがわかった気がします。例えば、お隣りの市川は小岩に比べてかなり対照的な街ですよね」

     

    総武線の路線図の一部

    「あー! それはちょっとわかります。ひと駅しか離れていないのに、小岩と市川ってかなり雰囲気が違いますよね」

    「以前に聞いたことがあるのですが、市川は『住む場所』、小岩は『働く場所』という雰囲気がありますよね。市川は、都心で働いている人が帰ってくる住宅地。小岩は、商人が自分の店を持って商売をしている街、という特徴があるように感じます」

     

    「また、お店の人に話を聞くと、市川と小岩では買い物の傾向もまったく違うそうです。こんなにも近い距離にあるのに、ここまで雰囲気や傾向が異なるというのも、なかなか珍しい事例なのではないでしょうか」

    「何かしらの文化の違いがありそうですね。でも、小岩と市川に限らず、総武線の街って川を跨いだら雰囲気が一変するように感じます」

    「そうですね。小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町は同じような空気を感じます。江戸川を挟んで市川からはまた違う街、隅田川を挟む両国や浅草橋あたりからは、また違う街の雰囲気がありますよね」

     

    錦糸町には「ウインズ競馬場」があり、小岩の住人は日々勝負を仕掛けに行くのだ

     

    戦後の経済成長を火種に歓楽街へと進化した「江戸川区の歌舞伎町」

    「松岡さんは、どうして『小岩コンテンツプロジェクト』を始めようと思ったんですか?」

    「僕は以前、編集の仕事をしていたのですが、家業を継ぐために2019年に小岩に戻ってきました。それまではあまり意識していなかったんですけど、帰ってきて改めて小岩を見たときに、『あれ、小岩の商店街ってこんなに元気なかったっけ?』と感じたんです」

    「昔はもっと活気があったんでしょうか?」

    「第二次世界大戦後の昭和21年ごろ、人口が急激に増えて小岩は歓楽街へと発展していったそうです。“江戸川区の歌舞伎町”なんて言われるくらい、眠らない街だったんですよ」

     

    「江戸川区の歌舞伎町⁉ それはすごい……。そのころの小岩の話、もっと聞きたいです!」

    「今もそうですが、小岩は商人や職人、現場仕事をする人が多くいる街なんです。代表的なものでいうと、昔は『ベニスマーケット』というものがありました。いわゆる闇市だったようです。サンロードと昭和通りをつなぐ中央通りのあたりです。ドブ川の上に板を敷いて、その上にバーっと露天が立ち並んでいたみたいです」

     

    現在の小岩中央通り

     

    「ベニスマーケットを中心にたくさんの飲み屋ができて、映画館も10軒近くありました。北口の仲通りにはキャバクラやクラブが集まっていましたし、二枚橋の方には『東京パレス』という赤線(※)もあったと聞いています」

    ※赤線……戦後、GHQによる公娼廃止指令(1946年)から売春防止法の施行(1958年)までの期間、半ば公認で売春が行われていた地域のこと

    「赤線なんて言葉、初めて聞きました」

    「つまり小岩=歓楽街ですよね。その雰囲気は今も続いていると思います。映画館や劇場はなくなってしまったのですが、未だ小岩に長く残っているお店は、パチンコ、飲み屋、マッサージの3点セットです。小岩は、いわば“快楽主義者の街”といってもいいかもしれませんね」

    「なるほど(笑)。そういった背景があって今も飲み屋が多いんですね。あと小岩のイメージには“治安が悪い”なんてものもあったりしますが、そのことについてはどう思いますか? 私は実際に住んでみて、そんなことは感じないのですが……」

     

    「おそらくそのイメージは、自転車盗難の多さからきているのではないかと思います。小岩は昔から自転車文化が強く根付いています。自転車を利用する人数が多いので、同時に盗難件数も多くなります。結果、犯罪率が高いということになるのではないでしょうか」

    ※編集部注:江戸川区のホームページでも、犯罪総数のうち1/3ほどを自転車盗難が占めることがわかる(令和3年)。ただし、防犯への取り組みにより以前に比べて犯罪発生件数は減っているとのこと

    https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e008/bosaianzen/bouhan/kunaihanzai/bohan_2.html

    「たしかに小岩は、自転車に乗ってる人がめちゃくちゃ多いなと思っていました!」

    「そこに飲み屋が多いという事実も組み合わさって、治安が悪いというイメージになったのではないでしょうか。でも、実際僕は一度も怖い目にはあったことはないので、イメージがかなり先行しているなと感じます

    「私もこの2年半暮らしてみて、とくに危ない経験をしたことはないですね。商店街は人通りも多いし、駅周辺を歩くときはむしろ安心します。そもそもなぜ、小岩は自転車文化なんでしょうか」

    「これは僕の考えなのですが、都営新宿線ができたのが45年前の1978年になります。小岩周辺でいうと、篠崎駅、瑞江駅、一之江駅などが都営新宿線ですよね。都営新宿線は、JRよりかなり後に登場しました。だから、まだJR以外の交通機関がなかったころはみんな一度小岩駅までJRに乗り、そこから自転車で移動する方が多かったんじゃないかなと」

     

    1978年の小岩駅前

     

    「自転車が多いのは、まだ交通機関が発達していなかった時代の名残ということですか?」

    「憶測ですが、そういった時代背景があったことはたしかではないでしょうか。実際に僕の小さいころはバスはありましたが、都営新宿線のようなJR以外の交通機関はまだなかったので」

    「なるほど。辿っていけばちゃんと理由はあるんですね」

     

    一国一城の主人が集まった街

    「歴史を聞けば聞くほど、小岩って奥深い街だなぁ。小岩には商人が多いという話がありましたが、それはわかる気がします! 私は小岩の老舗居酒屋で1年くらいアルバイトをしていたんですけど、実際にお客さんもそういう気質の人が多かったです」

     

    はるまきがアルバイトをしていた居酒屋「鳥正」

     

    「先ほどの市川との比較にもあったのですが、小岩は個人商店が多い街です。規模は小さいですが、みんながそれぞれ自分の店を持っている社長なんですよ。組織で働いているサラリーマンというよりか、自分の店を自分で守っている人が多いんです。だからなのか、アクの強い方も多い印象がありますよね」

     

    「飲みの席で会った友達には『おーい〇〇! また馬鹿やってるか!』みたいな挨拶が当たり前なんです。たとえて言うなら、こち亀の“両津勘吉”や、“寅さん”みたいなイメージですね」

    「たしかに、そういう人は小岩でよく見かけます(笑)」

    「ただ、経営者は自分の城を自分で守らないといけないので、昔は特にそうでないとやっていけない部分があったからだと思います」

    「でも不思議なことに、あまり嫌な感じがしないんですよね。変に着飾っていないというか、ありのままで接してくれている感じがするので」

    「そうなんです! 側から見たら『何でそんなこというの?』と思われるような話し方をしたりしているのですが、そこにはちゃんと愛情があるんですよ。いま小岩に住んでいる若い方はそんなことないのですが、昔はほんとそういう人が多かったですね(笑)」

     

    商店街に押し寄せる再開発の波

    「時代背景も含めて、小岩という街がわかってきた気がします。世間のイメージに当てはまるところと、当てはまらないところがそれぞれあるんですね」

    「そうですね。小岩のイメージのひとつに“飲み屋が多い”というものがありますが、それは今も昔も変わっていません。ただ、昔は朝の5時まで営業していた店も、今は11時くらいで閉まる店がほとんどです」

    「コロナの影響もあるんでしょうか?」

    「少なからずあると思います。さらに小岩は現在、大規模な再開発の渦中にあるんです。その影響で、昔からある古いお店がどんどん閉まっているんですよ」

     

    キャバクラやクラブ、飲食店が集まっていた北口仲通りも再開発が進んでいる

     

    「それはちょっと寂しいですね……」

    「僕もなんとか小岩の街並みを記録として残しておきたくて、先ほどご紹介した『ラブユー小岩レトロ』という書籍を出版したんですよ」

     

    「レトロというと、最近は『昭和レトロ』とか『平成レトロ』がブームになっていて、昔のお店やカルチャーに興味を持っている若者も増えてきましたよね。そういったレトロとはまた違うんですか?」

    「『小岩レトロ』の言葉には、昭和を感じるような懐かしさ、という意味も込められています。だけどそれだけではなくて、商人の街らしく長年営業している個人店の風景や、自然と会話が生まれる小岩らしい人情味も含めて、『小岩レトロ』というタイトルをつけさせてもらいました」

     

    「本書は2022年の7月に発売したのですが、掲載させていただいた『萬石』さんという中華料理屋さんや、『照の湯』という銭湯などはもう閉店してしまいました」

    「そうなんですか⁉︎ 悲しい……。では松岡さんは、ギリギリのタイミングで取材されたんですね」

    「再開発一歩手前のこの瞬間だからこそ、本にして収めたかったんですよね。昔ながらのお店がなくなっていくのは、時代の流れというのもあります。ただ、小岩に暮らしている人の数が減っていないので、街自体が過疎化しているというわけではないんですよ」

     

    再開発が進んでいる南口

     

    「駅前にも、どんどん大きなマンションが建っていますもんね。引っ越してくる人も多そうです」

    「再開発が終わるのは約10年後だそうです。この駅周りの再開発で、小岩の住人が約1万人程度増えるのでは?という試算もあるみたいです」

    「1万人⁉ 変革期じゃないですか。この再開発が、小岩の商店街に活気を戻してくれるきっかけになったりしないのでしょうか?」

    「なると思いますよ。ただ、僕が懸念しているのはちょっと別の視点なんです。問題なのは、住む人の多さではないんですよ」

     

    あなたの街でも起きているかも? 続々と増える中国文化

    「小岩の街は、ここ4〜5年で中国の方が急増しています。昔は韓国系のお店も多かったのですが、ここ数年で中国系の店舗がかなり増えました」

    「なんで急に、中国のお店や人が増えたのでしょうか?」

    「コロナや再開発が原因で、もともとあった飲み屋さんが潰れ、居抜き物件や空き地に中国の方が飲食店を出店するようになったのだと思います。それに伴い、食材を卸売りする中国系の物産店なども増えてきたように感じますね」

     

    韓国や中国の輸入食材を販売している「楽買マーケット」 

     

    「あと、小岩は最東端とはいえ都内になります。個人的な意見ではありますが、“東京”という住所を求めて外国の方が増えてきたというのは、あるかもしれませんね」

    「それはちょっとわかるかも(笑)。私も上京してきたのですが、住所を書くときに『東京都』って書くと『東京に住んでいるんだ!』ってちょっと嬉しくなったことがあります」

    「日本人でもその心理はありますよね。外国の方からすると、自分の国に手紙を送ったり、物資を送ったときにインパクトがあるのではないでしょうか」

    「こういった背景って、小岩以外でも起きてそうな現象ですね。外国人が増えた理由、すごく腑に落ちました。」

     

    実は水面下では“分断”が起きている⁉︎

    「私も街を歩いて、中国人の方が経営している中華料理屋さんが増えているなと感じていたんですけど、なぜか入りづらいんですよね……。池袋とか新大久保のような雰囲気とはちょっと違って、少し壁を感じて入るのに勇気がいるというか」

    「そう。問題はそこなんです。外国の文化が入ってくることはいいのですが、もともとある日本の文化と新たに入ってきた異国の文化が、うまく融合ができていないと感じています。パッと見じゃわかりづらいですが、水面下で街の分断が起きているように思います」

    「街の分断ってどういうことでしょう? たとえば、同じクラスに地元からそのまま入学してきた生徒と、別の地域から入学してきた生徒のあいだに距離ができてしまう、みたいなことですか?」

    「ずいぶんリアルなたとえ話ですね……(笑)」

    「ちょっとリアルすぎました(笑)。でも、もともと完成されている人間関係の中に新たなコミュニティが入ると、すぐには相容れない事例って身近によく起きていますよね。でもこの状態だと、1つのクラスで見たときに結束力というか、まとまりがないというか……」

    「壁をなくしていきたいですよね。僕が懸念しているのは、外国人に対して感じている壁だけではなく、再開発で新たに小岩に住み始めた人たちとの間にも、壁ができてしまうことです。こうなると、同じ小岩に住んでいるのにさらに独立したグループが増えてしまう可能性があります」

     

    「ど、どうすれば……。ええと、さっきの学校の例で考えると、絆が生まれるタイミングといえば、修学旅行とか学校祭ですよね。ということはこれを街規模で考えればいいんだから……小岩全体で何かイベントを行うとか、どうですか?」

    「それもいい案ですね! 実際に『小岩コンテンツプロジェクト』では、5月18日に“初めての飲食店でも気軽に行けること”を目的とした『#518の日(小岩の日)』というイベントを開催しました。1000円で参加店舗の自慢の一品とドリンク1杯を楽しめるというものです」

    「楽しそう! 飲み屋が多い小岩に合っているし、ちょっと入りづらいなーって思っていたお店を覗けるいい機会になりそう」

    「ほかにも、小岩デラックスのYouTubeチャンネルでは、“ガチ中華”という視点で、小岩の中華料理屋さんを紹介する動画を公開しています。実際にお店に入らなくても、店内の様子が動画で見ることができたら、入りづらさも少し減るのではないでしょうか」

    「『小岩コンテンツプロジェクト』では、分断の壁をなくすために、いろんな視点から企画を立てて実行しているんですね」

     

    小岩の商店街の新たなかたちとは?

    「日本人のお店に外国の方が、外国の方のお店に日本人が訪れるようになれば昔とは違うかたちで街に活気が出ると思うのですが、なかなか難しい問題ですね。ちなみに、日本人が新たにお店を出店している事例はあるのでしょうか?」

    「いくつか新たに小岩の地で頑張っている店舗がありますよ。よければお店に行ってみましょう!」

     

    ネオ下町バル ラルフ

    「2022年の12月にオープンした『ネオ下町バル ラルフ』さんです」

    「小岩にこんなオシャレなお店があるとは……!」

     

    店長の竹中春海さん

     

    「店長さんは、小岩の街についてどう感じていますか?」

    「もっと若い人が街に来てくれたらいいですね。うちの店も、渋谷にありそうな今どきの雰囲気を意識した内装にしました。再開発も始まっているし、街が盛り上がればいいなと感じています」

    『ネオ下町バル ラルフ』

    ●住所:東京都江戸川区南小岩8-19-4

    ●TEL:03-6826-9230

    ●定休日:不定休

     

    AyasuCafe KOIWA(アヤスカフェ小岩)

    コワーキングカフェ「AyasuCafe KOIWA(アヤスカフェ小岩)」

     

    「こちらの『AyasuCafe KOIWA』さんは、カフェとしてだけでなく、コワーキングスペースとしても利用できるんです」

    「小岩にコワーキングスペースはあまりないので、ありがたいですね!」 

     

    オーナーの野村 綾さん

     

    若者世代をターゲットにしつつ、親御さん世代にも人気なんです。奥の小上がりのスペースには、ランチタイムになると小さなお子さん連れのお客さんでいっぱいになりますよ」

    「たしかに、お子さんを連れてきて面倒をみながらご飯も食べられて、同じコミュニティの人たちとつながることもできる場所はありがたいですね。何かあったときにそのつながりが活きるかもしれないし、日常の情報交換もできますよね」

    「そうですね。昔は夜も営業していたのですが、今はみなさんの生活様式が変化してきたので、17時半ラストオーダーで営業しています」

    「こういったコワーキングスペースでありながら、地域の人たちとコニュニケーションが取れるお店って、今までの小岩ではなかったですよね」

    「そうですね! 私も作業をしに利用したいなと思いました。お店を見て回って感じたのですが、みんな何か新たなかたちで融合できる場所を生み出そうとしているんですね」

    「そうですね。たとえば昔の商店街って、生活のために食料や物品を買う場所という役割を担っていましたが、今は便利なお店も増え、その役割も変えていかなければいけない部分もあると思います」

     

    地元の方たちが集まる、小岩駅前の老舗喫茶店「白鳥」

     

    「再開発で新しいお店がたくさん増えていく中で、昔ながらの既存のお店や、地域のご年配の方たちとうまく連携できるようなきっかけができれば理想ではあるのですが」

    「先ほどの『AyasuCafe KOIWA』さんみたいな、いろんな人たちの間で会話が生まれるような場所が増えたら、連携も取れそうですね」

    「子育てが忙しい人がいたら、近くに住んでいるおじいちゃんおばあちゃんが代わりに面倒みるよ、みたいなやりとりが生まれるとか。本来の下町ってそういうつながりがあるべき場所ですよね」

    「たしかに、商店街の役割って食料や物品を買うだけじゃなくて、人と人とのつながりが生まれる場所でもありますよね。昔ながらの小売店がなくなってしまうのは悲しいけど、今の生活スタイルを変えてお店を利用するのはなかなか難しいし、新しい商店街のかたちを模索していかなければいけないように感じます」

    「このまま小岩の街で分断が進まないように、みんなが新しく融合できる場所というか、ムーブメントをつくっていきたいですね。小岩のような街で成功事例があれば、同じような問題で悩んでいる地域のロールモデルにもなるのではないでしょうか。小岩らしさを残しつつ、新たな小岩の良さを生み出していけたらいいですね」

    『AyasuCafe KOIWA』

    ●住所:東京都江戸川区南小岩8-11-8

    ●TEL:03-4361-8114

    ●定休日:月曜(日・祝不定休)

     

    おわりに

    小岩は今、時代の流れによって大きな変化が起きている渦中にあります。でも、いま小岩で起きている課題は、別の地域でも同じように起きている変化の一つなのではないでしょうか?

     

    松岡さんのお話を聞いて、変わりゆく流れの中でも小岩らしい商人魂がこれからも在り続けるように、新しい街づくりが起きていけばいいなと思いました。私もひとりの住人として、この記事が少しでも力になればと願っています。

     

    みなさんもぜひ機会があれば、小岩を訪れてみてください。豪快でちょっと強気な商人さんが、お酒を酌み交わしてくれるはずです!

    イーアイデム

    この記事を書いた人

    はるまきもえ
    はるまきもえ

    93年生まれ。フリーライター。調理師学校、栄養士学校を卒業後、北海道からノリで上京。デパ地下惣菜会社で5年間勤務し、店長を経てなぜか今はライターに。暇さえあればYouTubeとTikTokを見る。映画と漫画とアニメが好きな広く浅いオタク。今日も勢いで生きている。

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