退職願いを出しても、人手不足を理由に認めてもらえない。このまま退職できないの?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

私は、1年契約のパートタイマーとして、今の勤務先で3年間働いてきました。このたび、別の会社に正社員として採用されることになったので、現勤務先に退職願いを提出したところ、「人手不足なので退職を認めるわけにはいかない。勝手に退職したら、1年間働くことを定めた契約に違反することになるから、君は会社に対して損害賠償をしなければならない。」と言われてしまいました。

私は、現勤務先を退職することはできないのでしょうか?
また、契約期間の途中で退職したら、損害賠償しなければならないのでしょうか?

期間の定めのない労働契約の場合は、申し入れの2週間後に退職できる

<回答>

労働者からの退職の申し入れについては、法令でいくつかのルールが定められています。

まず、民法第627条1項では、期間の定めのない労働契約は、当事者である労働者または使用者の一方が解約を申入れれば、その2週間後に契約が終了することを定めています。また、労働基準法第137条では、1年を超える期間を定めた労働契約を締結している労働者(専門的知識を有する者や満60歳以上の者は除く)は、契約開始から1年が経過すれば、使用者に申し出て、いつでも退職できることを定めています。

これらのルールは、退職したいと思っている労働者が、長期間にわたり会社に不当に縛られることを避けるために作られたものです。

1年以内の期間を定めた労働契約の場合は、原則として、途中で退職できない

さて、1年以内の期間を定めた労働契約を締結している場合は、どうなるのでしょうか?

民法第628条は、期間を定めた労働契約を締結している場合でも、「やむを得ない事由」があるときは、労働者または会社は、ただちに契約を解除できると定めています。また、「この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」とも定めています。

つまり、「やむを得ない事由がない限り、労働者も会社も、労働契約で定めた期間を守るべきだ」というのが、民法の基本的な考え方です。(前述した労働基準法第137条は、「1年を超える期間を定めた契約の場合」の特例を定めたものです。)ですから、1年以内の期間を定めた契約を締結している労働者は、病気で働けなくなった等の「やむを得ない事由」がなければ、原則として、期間の途中で退職することはできないということになります。

もっとも、期間の途中で退職できないことにこだわりすぎると、労働者と会社の両方にデメリットが生じます。労働者にしてみれば「退職したい」と思いながら働いても良いことはありませんし、会社は、意欲が低下した労働者を雇い続けても良いことはありません。

ですから、労働者と会社が合意することにより、労働契約で定めた期間の途中でも退職できるような運用が実際には行われています。会社の就業規則や労働条件通知書などを見ると、期間を定めた労働契約であっても「退職する場合は30日前までに申し出ること」などと記載されていることがあります。これは、「会社としては、労働者から申し出があれば、原則として30日後には退職させる」ということを示しているのです。

最終的には退職できるだろうが、会社に退職を認めてもらう努力が必要

質問者の場合は、1年という期間を定めた契約を締結しているので、民法の定めによれば、「やむをえない事由」がない限り、期間の途中では退職できないことになります。(現勤務先で3年間勤務しているとのことですが、それと「1年を超える期間を定めた契約を締結していること」とは異なります。)ただし、就業規則や労働条件通知書などに「退職する場合は30日前までに申し出ること」などの記載があれば、質問者は、申し出をした30日後には、現勤務先を退職することが可能です。

なお、会社は、退職が質問者の過失によって生じたものであれば損害賠償を請求することもできますが、この場合の賠償金は大きな金額にはなりません。現実的に考えれば、少額の賠償金を得るために、会社がわざわざ動くことはないでしょうから、質問者が損害賠償しなければならないという事態は、実際にはほとんど起こらないものと考えられます。

今回のケースについては、現勤務先が質問者を引き留めることができないと判断すれば、最終的に質問者は退職できるでしょう。しかし、3年間勤務した会社とケンカ別れするか、円満退職するかとでは、質問者も、その後の気持ちの面で大きな違いが出てくることになります。ですから、質問者は、退職を会社に認めてもらえるように、できる限り努力するべきだと思います。

 

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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