パートタイマーでも転勤を命じられることがありますか?転勤命令を拒否できますか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

<質問>

私は、近所のスーパーでパートタイマーとして働いている主婦です。先日、勤務先の店長から「来月から他県の店に転勤してくれ」と言われました。その店は自宅から遠いので、もし転勤するのであれば、引越しをしなければなりません。家庭の事情で引越しができないため転勤を拒否したところ、店長から「会社が決めたことなので、君は転勤命令を拒否できない。転勤できないならば、今月末で退職してくれ」と言われました。

パートタイマーでも転勤を命じられることはあるのでしょうか?

そして、私は、この転勤命令を拒否することができるのでしょうか?

パートタイマーでも転勤を命じられることがある

<回答>

正社員でもパートタイマーでも、従業員であれば、会社から勤務場所や担当業務の変更(異動)を命じられることがあります。一般的に、同一の勤務地内での異動を「配置転換」、勤務地の変更を伴う異動を「転勤」と呼びますが、パートタイマーについては、同一勤務地内の配置転換のみを行い、転居を伴う転勤は行わないことにしている会社もあります。これは、パートタイマーは転勤よりも現地で新規採用したほうが低コストで済むこと、家庭の事情などで転居ができない人が多いことなどの理由により、その会社が独自に定めているにすぎません。

パートタイマーの異動や転勤を禁止している法令は存在しませんし、実際に、パートタイマーを転勤の対象としている会社もあります。したがって、最初のご質問については、「パートタイマーでも転勤を命じられることがある」というお答えになります。

従業員に異動、転勤を命じることがある場合、会社は、就業規則や労働契約書に「(他の事業所への)異動、転勤を命じることがある」等と明示しておかなければなりません。ですから、就業規則や労働契約書等に「異動、転勤がありうる」旨の記載があれば、その人は、会社から異動・転勤を命じられる可能性は十分にあります。

正当な転勤命令であれば、原則として、それを拒否できない

就業規則等に「転勤がありうる」と明記されている場合、従業員は、会社からの転勤命令を拒否することができるのでしょうか?

原則として、会社の転勤命令が正当なものであれば、従業員は、それを拒否することはできません。転勤対象者である従業員が転勤を拒否し続けると、業務命令違反となり、会社から制裁処分を科せられることもあります。

会社の転勤命令が正当であるかどうかは、「業務上の必要性が存在すること」「不当な動機・目的が認められないこと」「従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせないこと」等を考慮して判断されます。逆に言えば、これらの条件を満たさない転勤命令は、それ自体が無効とされますので、従業員は、従わなくてもよいのです。

さて、ご質問のケースについて考えてみましょう。

近隣地区でパートタイマーとして採用した主婦が、家庭の事情で転居できないことを、この会社は百も承知のはずです。それにも関わらず、「転勤を拒否するならば退職してくれ」とまで言ってくるのですから、店長は、この人にわざと転勤を拒否させて、それを理由に退職に追い込もうとしているようにも思えます。そうであるならば、この転勤命令については、業務上の必要性がほとんど存在せず、従業員を退職に追い込もうとする「不当な動機」があるものと考えられますので、この人は、それを拒否することができます。なお、転勤命令自体が無効とされれば、この人は、それに従わなかったという理由で、会社から制裁を受けたり、退職に追い込まれたりすることもありません。

労働契約を締結するときには、転勤の有無も会社に確認しよう

質問のような転勤に関するトラブルは、パートタイマーにも発生することがあります。トラブルを避けるためには、入社時あるいは契約更新時に「自分が異動・転勤の対象者となっているのか」「異動があるとすれば、どの地域までか」等を会社との間で確認しておくことが必要です。そして、家庭の事情などで転勤ができない場合は、自分から会社にその旨を伝えて、労働契約書等に「転勤なし」などと明記しておいてもらうとよいでしょう。転勤しないことを条件に契約締結した従業員に対して、会社は転勤命令を出すことはできません。

ともすると、パートタイマーは「正社員じゃないから転勤はないだろう」と勝手に思い込んでしまい、このような確認を怠りがちです。転勤に関するトラブルを避けるために、あらかじめ会社との間で異動・転勤の有無を明確にしておくようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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