最近、よく耳にする「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)」って何ですか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

 <質問>

妊娠したので、上司に報告がてら育児休業の相談をしたところ、「職場に戻ってこれるかどうか分からないのだから、いっそのこと退職してくれ。妊娠や育児のために働けない人を雇い続けても、職場の負担になるだけだ」と言われてしまいました。

これから妊婦検診や育児休業等で会社を休む日が多くなるとは思いますが、だからといって、私は会社を辞めなくてはならないのでしょうか?

また、上司からこのようなことを言われてショックを受けた人がこれまでにも数多くいると思うのですが、何とかならないでしょうか?

「マタハラ」とは、妊娠、出産などを理由に職場で行われる嫌がらせのこと

「女性は、妊娠したら仕事を辞めて、出産や育児に専念するべきだ」

このような古い考え方を持っている人が、日本企業には、まだまだたくさん存在します。あなたの上司も「妊娠したのだから、退職するのが当たり前」と思い込んでいるのかもしれません。そう思うのは個人の勝手かもしれませんが、それが発言や行動に現れて、妊娠や出産をした従業員が嫌な思いをしたり、退職せざるをえない状況に追い込まれたりするのであれば、大いに問題があります。「少子化」という問題に直面している我が国において、今や、会社も妊娠や出産をした従業員を支えていくことが当然に求められるようになっているのです。

妊娠、出産および産前産後休業・育児休業などを理由として上司や同僚から嫌がらせを受けることを「マタニティ・ハラスメント」(略して「マタハラ」)といいます。以前から、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法では、妊娠、出産や育児休業の取得などを理由として、解雇・雇い止め(契約更新をしないこと)をする、減給するなどの不利益な取扱いをすることを禁じていました。しかし、職場では、このような不利益な取扱いまでいかなくても、妊娠・出産した従業員に対して、退職を促す発言をしたり、仲間外れにしたりするなどの嫌がらせが行われることがあります。これが「マタハラ」です。

厚生労働省が2015年に行った実態調査では、妊娠・出産した正社員の21%、派遣社員の48%が「マタハラを経験したことがある」と回答しています。特に雇用が不安定で立場の弱いパート・アルバイトや派遣社員が被害に遭う割合が高く、ハラスメントの内容としては「『迷惑』・『辞めたら?』等、権利を主張しづらくする発言」が47%、「雇い止め」が21%となっています。

マタハラの防止は、法令上、会社に義務付けられている

マタハラは、妊婦に対して精神的苦痛を与え、それが流産や早産を引き起こしてしまう危険性もあり、「セクハラ」よりも深刻であるとも言われ続けてきました。そのため、2017年1月1日には法改正が行われ、上司・同僚が職場において妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由としたハラスメントをしないように防止措置を講じることが会社に義務付けられたのです。具体的には、業種・規模を問わず、すべての事業主に次の4つのことが義務付けられました。

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
(4)職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

今や、マタハラの防止は、会社全体で取り組むべき重要な施策になっているのです。

マタハラを受けたときには、イヤだという意思を伝え、誰かに相談すること

さて、質問の回答に戻りましょう。

まず、妊娠を理由に退職を促す上司の発言は、マタハラになりますので、あなたはそれに従うことはありません。したがって、あなたは、会社を退職することはありません。そして、今後、マタハラが起きないように、今回のことを会社の窓口に相談しましょう。社内に相談相手がいないときは、ひとりで悩んだりせずに、都道府県労働局等の外部機関に相談してみてください。

マタハラを受けたときに、まず大事なことは、「やめてほしい」という意思をはっきりと相手に伝えることです。ハラスメントは受け流しているだけでは状況は改善されません。マタハラをする上司や同僚に「やめてください」「私はイヤです」と、勇気をもって言ってください。あなたの勇気が同じように悩んでいる周りの人を救うことにもつながるのです。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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