会社のパソコンを壊したら、弁償しなければなりませんか?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
あなたの疑問に社労士がお答えします。

あなたの落ち度で会社の備品を壊した場合には、損害賠償を求められることもある

<質問>

仕事中、パソコンの上にお茶をこぼして、壊してしまいました。上司に報告したら、新しいパソコンを購入する手配をしてくれましたが、「君に弁償してもらうから、パソコンの購入代金を今月分の給与から天引きする」と言うのです。

こういう場合、全額を弁償しなければならないのでしょうか?

また、弁償する場合、給与から天引きされるのはしかたがないことでしょうか?

弁償させるとしても、損害額の一部にとどめるのが一般的

従業員が、故意または重大な過失によって会社の備品などを壊してしまった場合、会社は、その従業員に損害賠償を求めることができます。ただし、実際には、よほどのことがない限り、会社が従業員に損害賠償を求めることはありません。また、弁償させるとしても、実際に生じた損害額の一部にとどめることが一般的です。

「パソコンの上にお茶をこぼす」ことは、職場において日常的に発生しうることですし、あなたも悪気があってこぼしたわけではないと思います。それなのに、あなたにパソコンを壊した責任すべてを負わせて、パソコンの購入代金全額を弁償させるのは、会社の対応としては、やや「行き過ぎ」といえるでしょう。例えば、過去の裁判では、労働者が居眠りにより操作を誤って機械を破損した事案において、損害額の25%に限って賠償責任を認めています。そういうことを踏まえると、あなたに弁償させるとしても、せいぜいパソコン代金の20%~30%が妥当なところと考えられます。

上司は、実際に生じた損害を賠償させるというよりも、あなたや職場のみんなの気持ちを引き締めるために、「うっかりミスへの制裁を科す」という意味で、弁償を求めているのかもしれませんね。

たとえ、このような制裁の意味であったとしても、従業員に損害額の全部を弁償させることは、やはり「行き過ぎ」だと思います。そもそも、制裁処分としての弁償を求めるのであれば、その旨、就業規則に明記されていなければなりません。就業規則に「故意または過失により会社に損害を与えたときは減給とする」などの定めがなければ、原則として、会社は、備品を壊した従業員に制裁処分を科すことはできません。そういう記載があるかどうか、あなたの会社の就業規則を確認しみてください。

あなたの承諾なしに、給与から天引きすることはできない。

なお、弁償額の給与からの天引きについては、あなたから会社へ申し出ない限り、会社は行うことはできません。労働基準法第24条において、会社が給与から天引きできるのは、「法令に別段の定めがある場合(例えば、源泉所得税や社会保険料など)」および「労働組合または労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合(例えば、社内預金の積立額の天引きなど)」に限られています。したがって、あなたが弁償を行うことになったとしても、給与天引き以外で支払うことを希望すれば、会社は弁償額を給与から天引きすることはできません。

今、あなたがとるべき対応は?

ここまで述べてきたことをまとめると、あなたがとるべき対応は、次のようになります。

まず、自分の不注意で会社のパソコンを壊してしまったことを素直に反省して、もう一度、上司に謝ることです。上司は、壊れたパソコンのことよりも、職場全体の気持ちの緩みを考えて、「弁償しろ」と言っているようにも思えます。あなたが、自分に非があったことを認めて、このようなミスをしないよう、しっかりと仕事をすることを誓えば、上司は「そこまで反省しているのであれば、今回ばかりは大目に見よう」と態度を変えてくるかもしれません。そうなれば、あなたが弁償するという話自体がなくなり、すべてが丸く納まります。

 

それでも弁償を求められたら、どれくらいの負担が妥当か、上司との間で話し合うことが必要です。常識的に考えれば、あなたが弁償に応じるとしても、新しいパソコンの購入代金の20~30%の負担が妥当なところです。それを超える負担を上司から求められたら、「自分に非があったとはいえ、弁償の負担が重すぎる」と、あなたの意見をはっきりと伝えましょう。上司が意見を聞き入れてくれないのであれば、会社の人事部や総務部などに相談して、話し合いに入ってもらうとよいでしょう。

 

また、給与から弁償額を天引きされることが嫌ならば、会社にはっきりと伝えてください。あなたが同意していない限り、会社は弁償額を給与から天引きすることはできません。逆に、上司から「弁償額は、現金で、私に渡せ」という指示があった場合は、念のため、人事部や総務部など、その旨の確認をとるようにしましょう。上司が、会社に無断で弁償を求め、そのお金を着服してしまう可能性がないとは言えません。上司の独断ではなく、会社の対応として弁償が求められており、しっかりと処理されるのかどうか、あなたから確認したほうがよいでしょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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