遅刻したら、賃金が減らされた。 これってあり?

~原則として、働かなかった時間分の賃金は支給されない~

1.「ノーワーク・ノーペイの原則」とは

「子供を保育園に送ってから出勤したら、10分遅刻してしまいました。これぐらいの遅刻なら許してもらえて、時給は普通に支給されるでしょうか?」

という質問を受けることがあります。

このような場合、一般的には、遅刻した時間分の賃金は支給されません。労働契約とは、労働者が労働した場合に、その使用者が賃金を支払うことを定めるものですが、これは、逆に言えば、労働者が労務の提供をしなければ、対応する賃金の支払い義務が生じないということを意味します。(これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます)

ですから、例えば時給が900円の場合、10分遅刻をしたら、その1時間について時給から150円(=900円÷60分×10分)が差し引かれたとしても当然のことと言えます。

2.罰金には労基法で上限額が定められている

「働かなかった時間分の賃金が支払われない」のは仕方ないにしても、遅刻した罰(制裁)として、さらに賃金減額を行なう会社もあります。例えば、「遅刻した場合は1回につき500円を賃金から差し引く」というものですが、このような制裁を行なうのであれば、会社は、就業規則でそのようなルールを定めておくことが必要です。なお、就業規則で減給の制裁を定める場合は、労働基準法第91条の「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」という制限に従わなければなりません。例えば、平均賃金が1日5000円の労働者については、1回の遅刻に対する罰金の上限額は2500円になり、その月に支払われる賃金の総額が10万円ならば1万円を超える額の罰金を科すことはできない、ということになります。

なお、10分遅刻した場合に、30分間遅刻したものとして賃金カットを行っている会社もあります。これは、「労働時間の算定において細かい計算が大変なので、30分単位で賃金を支給する」という事務処理上の都合から生じているケースが多いのですが、この場合は、「遅刻した10分間の賃金減額はノーワーク・ノーペイの原則によるもの」で、「出勤後の20分間の賃金減額は制裁によるもの」というとらえ方になります。

3.電車が遅れた場合には、遅刻が免除されることもある

ところで、遅刻といっても、寝坊などの自分の不注意である場合と、そうではない場合(自分に落ち度がない、不可抗力による場合)があります。後者の例としては、電車が遅れたために出勤時刻に間に合わなかった場合などがありますが、このようなときには、自分に落ち度がなかったことを証明できれば(例えば、公共交通機関からもらった「遅延証明書」があれば)、遅刻扱いは免除されるのでしょうか。

一般的には、こういう場合でも「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されて、賃金は支払われません。ただし、会社によっては遅延証明書の提出を条件として遅刻を免除してくれるというルールを設けている会社もあります。こういう場合は、遅延証明書を忘れずにもらってくるようにしなければなりません。

4.遅刻の取扱いや制裁については就業規則で確認すること

このように、遅刻した場合は、「ノーワーク・ノーペイの原則」に従って、その時間分の賃金が支払われないということが一般的に行われていますが、「さらに罰金(減給の制裁)が科せられる場合」「労働時間の集計を30分単位で行なうなど、実際に遅刻した時間以上の賃金減額が生じる場合」および「電車遅延などの不可抗力であれば遅刻が免除される場合」など、会社によってその取り扱いは様々です。遅刻の場合の具体的な取扱いや制裁の内容などについて、各自で就業規則を確認しておくことが大切でしょう。

また、不測の事態に備えて会社には始業時刻よりも少し早めに到着するように心がけること、遅刻が確実になった場合は職場にすぐに連絡することなども必要です。「賃金が支払われるかどうか」「自分のせいかどうか」には関係なく、遅刻をすれば、同僚に迷惑をかけてしまいます。職場のマナーとして、一人ひとりが遅刻をなくすように努力していかなければなりません。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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