自分で社会保険に加入した場合と配偶者の扶養親族になった場合の違いは?

~社会保険に加入するか、被扶養者になるか、あらためて考えてみよう~

1.社会保険に加入すれば、月々の報酬から保険料が徴収される

年収130万円(2016年10月から従業員501人以上の会社は106万円)前後のパート従業員は、自分で勤務先の社会保険に加入するか、配偶者の被扶養者になるか、という選択で頭を悩ませます。
ところで、自分で社会保険に加入する場合と配偶者の被扶養者になる場合とでは、どのような違いがあるのでしょうか。
まず、負担面を考えてみると、自分で社会保険に加入した場合は、報酬の約15%に相当する額の保険料が毎月徴収されますが、配偶者の被扶養者になった場合は、保険料負担はありません。なお、配偶者が支払う社会保険料は、被扶養者が増えたとして変わりません。
つまり、保険料負担のことだけを考えると、自分で社会保険に加入するよりも、配偶者の被扶養者になった方が、断然「お得」ということになります。

2.社会保険加入者も被扶養者も、病院等に支払う一部負担金は同じ

給付面から、社会保険に加入した場合と配偶者の被扶養者になった場合とを比較してみましょう。
社会保険に加入している人は、病院等で診療を受けたときに、窓口で健康保険証を提示すれば、支払う費用は、医療費の3割(一部負担金)のみで、残りの7割は健康保険が負担してくれます。一方、配偶者の被扶養者も、一部負担金は医療費の3割で、残りの7割は配偶者が加入する健康保険が負担してくれます。
つまり、自分で社会保険に加入しても、配偶者の被扶養者となっても、病院等に支払う医療費は、原則として「3割」負担で同じということです。

3.社会保険加入者は、病気や出産で会社を休むと給付金が支給される

健康保険に加入している人は、業務外の事由による病気やケガのために会社を休み、会社から報酬を受けられないときには、休業日1日につき1日分の報酬の3分の2に相当する給付金(傷病手当金)が支給されます。また、出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で会社を休み、報酬の支払いがなかった期間についても、休業日1日につき1日分の報酬の3分の2に相当する給付金(出産手当金)が支給されます。
一方、被扶養者には、傷病手当金や出産手当金は支給されません。ですから、配偶者の被扶養者になった人は、病気や出産等で会社を長期間休むと、その間は収入が得られなくなってしまいます。
なお、健康保険に加入している人、またはその被扶養者が出産した場合には、出産育児一時金(家族出産育児一時金)が、また、死亡した場合には埋葬料(家族埋葬料)が支給されます。これらは、社会保険に加入している場合と配偶者の被扶養者になる場合とで同じ金額になります。((家族)出産育児一時金は、原則として1児につき42万円、(家族)埋葬料は5万円です。)

4.社会保険加入者は、被扶養者よりも、老後に支給される年金が多くなる

社会保険に加入している人が毎月納める保険料のうち半分以上(報酬の約9%)は、高齢や障害等によって働けなくなったときに年金を支給するために使われます。
配偶者の被扶養者になった人も、一定の要件を満たせば、65歳以降、国から老齢年金が支給されます。これは「老齢基礎年金」と呼ばれるもので、年額で約78万円(満額の場合)となります。一方、社会保険に加入している人は、基礎年金に加え、在職期間中の報酬額や社会保険への加入期間に応じて「老齢厚生年金」が支給されます。
つまり、社会保険に加入している人は、今、納めている保険料の一部が、老後に年金として戻ってくると考えればよいのです。

5.万が一のときに備えたい、老後の年金を多くしたい人は、社会保険に加入しましょう

最後に、「社会保険に加入するか、配偶者の被扶養者になるか」について、どのように判断すればよいのか、まとめてみましょう。
社会保険に加入すれば、毎月、保険料を徴収されますが、その一方で、病気や出産のために長期間会社を休む場合には給付金が支給されますし、また老後にもらえる年金の額が増えます。

つまり、基本的に、次のように考えればよいということになります。
(1)「報酬の一部を、病気や出産で長期に休むときや老後の備えとして使いたい」のであれば、自分で勤務先の社会保険に加入したほうがよい。
(2)「社会保険料を支払わずに、報酬の手取り額をなるべく多くしたい」のであれば、配偶者の被扶養者になったほうがよい。

今年も、年収が確定する12月末が近づいてきました。社会保険に加入するか、配偶者の被扶養者になるか、この機会にじっくりと考えてみてください。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

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