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社会保険に加入したほうが得か、損か?

社労士 ピックアップ

メリットとデメリットを比べてみましょう

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1.社会保険に加入するメリット、デメリット

「社会保険に加入したほうが得か、損か」を考えるときには、メリットとデメリットを比べてみることが必要です。主なメリット、デメリットをあげると、次のようになります。

 

●社会保険に加入するメリット
①病気や老齢になって給料がもらえなくなったときに、給付金・年金等が支給される。②社会保険料が所得から控除されるため、納付するべき所得税や住民税が減る。
③労働時間や年収の上限を意識しないで働くことができる。

●社会保険に加入するデメリット

①毎月の給料から社会保険料が徴収されて、手取り額が減る。
②配偶者の家族手当が支給停止になることがある。(家族手当の支給対象を「社会保険の被扶養者」に限定している場合)

 

さて、メリット③にあげた「労働時間や年収の上限を意識しないで働くことができる」について、少し詳しく説明しましょう。

そもそも社会保険への加入・非加入は、本人が選択できるものではなく、労働時間や年収について一定の要件を満たすかどうかによって決まります。ですから、社会保険に加入したくないパート従業員は、加入要件である「週労働時間30時間以上」(※)を満たさないように働かなければなりません。なお、社会保険に加入しないパート従業員は、「年収130万円未満」であれば、配偶者が加入する社会保険の被扶養者になれます。したがって、配偶者の被扶養者になろうとするパート従業員は、「年収130万円未満」になるように働くことが必要です。(これを「130万円の壁」と言います。)

このように社会保険に加入せず、配偶者の被扶養者になろうとするパート従業員は、「週労働時間30時間未満・年収130万円未満」という制限のもとで働かなければなりません。一方、社会保険に加入する場合は、これらの制限を気にせず、稼ぎたいだけ自由に働くことができるのです。

 

※2016年10月1日から、従業員数501人以上の企業については、社会保険の加入要件が「週労働時間20時間以上、勤続1年以上見込み、月額8.8万円以上(ただし学生は適用除外)」に改正されます。

 

 

2.年収約150万円以下であれば、社会保険に加入しないほうが「得」

それでは、メリットとデメリットを比較して、「社会保険に加入したほうが得か、損か」について考えてみましょう。

まず、メリット①であげた「給付金・年金が支給される」ということですが、勤務先の社会保険に加入しなくても、配偶者の社会保険の被扶養者になったり、国民健康保険や国民年金に加入したりすれば、病気や老齢のときの給付等が行われますので、あまり考える必要はありません。また、メリット②にあげた節税効果も、デメリット①の「手取り額の減少」の方が絶対に大きくなるので、これも考えなくてもよいでしょう。

したがって、社会保険加入の損得についてはデメリット①とメリット③とを比較する、つまり「社会保険料を徴収されても、労働時間や年収の上限なく働いたほうがよいのかどうか」を考えればよいことになります。

毎月の給料から徴収される社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険の保険料の合算)は、給料の約15%に相当します。例えば、年収150万円のパート従業員は、社会保険料として年間約23万円が徴収されることになりますが、そうなると年収130万円で社会保険に加入しないパート従業員の手取り額を下回ることになり、「損」をしてしまいます。

つまり、年収見込み額が130万円以上150万円以下の場合、社会保険に加入して保険料を徴収されると、実際の手取り額が130万円を下回ってしまうので、むしろ年収130万円未満になるように労働時間を調整して働いた方がよいということになります。

なお、デメリット②にあげた「社会保険に加入すると、配偶者の家族手当が支給停止になる場合」については、上記の150万円に配偶者の家族手当の年間支給額を加算して考えればよいでしょう。例えば、月1万円の家族手当が支給されている場合は、年収162万円以上にならないのであれば、年収130万円未満に抑えて働いた方が「得」ということになります。

ただし、これまで述べたことは、配偶者が加入する社会保険の被扶養者になれるパート従業員について言えることです。配偶者の被扶養者にならず、勤務先の社会保険にも加入しないパート従業員は、居住地の市町村が運営する国民健康保険や国民年金に加入することになりますが、ここで納付する保険料は、多くの場合、勤務先の社会保険に加入した場合の保険料を上回ります。したがって、配偶者の被扶養者になることができないパート従業員は、週30時間以上勤務して、勤務先の社会保険に加入したほうが「得」になります。

  

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

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Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。