「土日は休む」と言ったのに、上司が勝手にシフトに入れてきた。どうすればよい?

パートで遭遇するさまざまなトラブル・・・。
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<質問>

私は、近所のスーパーで、週4日ほどパートタイマーとして働いています。週末は家族と過ごしたいため、採用面接のときに「土日は勤務できない」と会社に伝えており、入社してから今月まで土日のシフトに入ることはありませんでした。
ところが、翌月のシフト表を見たら、私が、土日に数回勤務することになっています。上司に確認したところ、「パートが不足しているので、翌月からパートタイマー全員を土日勤務の対象にする。土日勤務を拒否するなら、退職してもらう」というのです。

私は、土日に勤務しなければならないのでしょうか?
また、このまま土日勤務を拒否し続けたら、私は、解雇されてしまうのでしょうか?

労働条件として認められていれば、土日勤務を拒否することができる

<回答>

会社も労働者も、相手側の合意がなければ、労働契約を結んだときに定めた労働条件を勝手に変更することはできません(労働契約法第8条)。ここでいう労働条件とは、給料、労働時間、労働日、就業場所などを指し、「土日に勤務できない」ことも含まれます。ですから、土日に勤務できないという労働条件のもとで入社したパートタイマーについて、会社は、本人の合意がない限り、土日勤務を命じることはできません。

もっとも、会社や上司は、「シフト編成をするため、本人希望を聞いただけ」であって、最初から、土日に働けないことを労働条件として認めていなかったのかもしれません。そうであれば、人手不足の影響で各自の希望どおりにシフト編成をすることが難しくなった以上、従業員は、会社が命じる土日勤務に、できる限り応じるべきです。

土日に働けないことが労働条件として認められるかどうかで、今回のケースの取扱いは、大きく変わってしまいます。ですから、土日勤務が絶対にできないという労働者は、入社時あるいは契約更新時に締結する労働契約書等に、「土日勤務は不可」と付記してもらい、それが労働条件であることを明確にしておくとよいでしょう。こうしておけば、今回のようなケースに遭遇したときでも、会社側に契約書等を提示して、土日のシフトから外してもらうことを要求できます。

土日勤務を拒否したという事由だけで解雇されることは、普通は起こらない

土日勤務を拒否し続けた場合、質問者は、解雇されてしまうのでしょうか。

土日に働けないことを労働条件として認めるならば、今回のケースは、本人の合意がないままに労働条件を変更しようとしている会社側に非があるので、土日勤務の拒否を理由に退職を強要したり、解雇したりすると、労働基準監督署などから「解雇等は無効」という判断が下されることになるでしょう。

一方、土日に働けないことが労働条件として認められない場合でも、土日勤務の拒否だけを理由として労働者を解雇すれば、労働基準監督署から「解雇は行き過ぎ」と判断される可能性が高いと考えられます。労働契約法第17条では「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定めていますが、土日勤務の拒否は、「やむを得ない事由」に該当するほど重大なものではないと考えられるからです。

いずれにせよ、このケースについて、会社は、土日勤務の拒否だけを理由にして従業員を退職に追い込んだり、解雇したりすることは、極めて困難です。ですから、質問者は、上司から「退職してもらう」と言われても、それに従う必要はまったくありません。

職場のチームワークを考えて、できる範囲で土日勤務に協力するほうがよい

法令に照らし合わせると、質問者はこれまでどおり、土日勤務を拒否することができますし、それを理由として解雇されることはないと安心してもよいでしょう。

しかし、上司の言葉にあるように「パートが不足しているので、パートタイマー全員を土日勤務の対象にした」のであれば、土日勤務を拒否するパートタイマーは、同僚から「自分勝手な人」とか「チームワークを乱す人」などと見られてしまう可能性はあります。そうなると、結果として、質問者は、今の職場で働き続けることが難しくなってしまうかもしれません。

そう考えると、質問者は、土日勤務をすべて拒否してしまうのではなく、可能な範囲で協力するほうがよいと言えます。少しでも土日勤務に協力すれば、上司や同僚は、質問者を「家庭の事情もあるのに協力してくれる人」と見てくれることでしょう。

質問者は、「話が違う」と言って土日勤務を最初から拒否してしまうのではなく、自分のできる範囲で土日勤務に協力するという意識を持って、あらためて上司とシフトについて話し合ってみるべきだと思います。

 

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

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Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

 

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退職願いを出しても、人手不足を理由に認めてもらえない。このまま退職できないの?

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<質問>

私は、1年契約のパートタイマーとして、今の勤務先で3年間働いてきました。このたび、別の会社に正社員として採用されることになったので、現勤務先に退職願いを提出したところ、「人手不足なので退職を認めるわけにはいかない。勝手に退職したら、1年間働くことを定めた契約に違反することになるから、君は会社に対して損害賠償をしなければならない。」と言われてしまいました。

私は、現勤務先を退職することはできないのでしょうか?
また、契約期間の途中で退職したら、損害賠償しなければならないのでしょうか?

期間の定めのない労働契約の場合は、申し入れの2週間後に退職できる

<回答>

労働者からの退職の申し入れについては、法令でいくつかのルールが定められています。

まず、民法第627条1項では、期間の定めのない労働契約は、当事者である労働者または使用者の一方が解約を申入れれば、その2週間後に契約が終了することを定めています。また、労働基準法第137条では、1年を超える期間を定めた労働契約を締結している労働者(専門的知識を有する者や満60歳以上の者は除く)は、契約開始から1年が経過すれば、使用者に申し出て、いつでも退職できることを定めています。

これらのルールは、退職したいと思っている労働者が、長期間にわたり会社に不当に縛られることを避けるために作られたものです。

1年以内の期間を定めた労働契約の場合は、原則として、途中で退職できない

さて、1年以内の期間を定めた労働契約を締結している場合は、どうなるのでしょうか?

民法第628条は、期間を定めた労働契約を締結している場合でも、「やむを得ない事由」があるときは、労働者または会社は、ただちに契約を解除できると定めています。また、「この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」とも定めています。

つまり、「やむを得ない事由がない限り、労働者も会社も、労働契約で定めた期間を守るべきだ」というのが、民法の基本的な考え方です。(前述した労働基準法第137条は、「1年を超える期間を定めた契約の場合」の特例を定めたものです。)ですから、1年以内の期間を定めた契約を締結している労働者は、病気で働けなくなった等の「やむを得ない事由」がなければ、原則として、期間の途中で退職することはできないということになります。

もっとも、期間の途中で退職できないことにこだわりすぎると、労働者と会社の両方にデメリットが生じます。労働者にしてみれば「退職したい」と思いながら働いても良いことはありませんし、会社は、意欲が低下した労働者を雇い続けても良いことはありません。

ですから、労働者と会社が合意することにより、労働契約で定めた期間の途中でも退職できるような運用が実際には行われています。会社の就業規則や労働条件通知書などを見ると、期間を定めた労働契約であっても「退職する場合は30日前までに申し出ること」などと記載されていることがあります。これは、「会社としては、労働者から申し出があれば、原則として30日後には退職させる」ということを示しているのです。

最終的には退職できるだろうが、会社に退職を認めてもらう努力が必要

質問者の場合は、1年という期間を定めた契約を締結しているので、民法の定めによれば、「やむをえない事由」がない限り、期間の途中では退職できないことになります。(現勤務先で3年間勤務しているとのことですが、それと「1年を超える期間を定めた契約を締結していること」とは異なります。)ただし、就業規則や労働条件通知書などに「退職する場合は30日前までに申し出ること」などの記載があれば、質問者は、申し出をした30日後には、現勤務先を退職することが可能です。

なお、会社は、退職が質問者の過失によって生じたものであれば損害賠償を請求することもできますが、この場合の賠償金は大きな金額にはなりません。現実的に考えれば、少額の賠償金を得るために、会社がわざわざ動くことはないでしょうから、質問者が損害賠償しなければならないという事態は、実際にはほとんど起こらないものと考えられます。

今回のケースについては、現勤務先が質問者を引き留めることができないと判断すれば、最終的に質問者は退職できるでしょう。しかし、3年間勤務した会社とケンカ別れするか、円満退職するかとでは、質問者も、その後の気持ちの面で大きな違いが出てくることになります。ですから、質問者は、退職を会社に認めてもらえるように、できる限り努力するべきだと思います。

 

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

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Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

 

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「派手な服装での出社を認めない!」と言う上司の命令。従わなきゃダメですか?

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<質問>

先日、お気に入りのワンピースを着て出社したところ、上司から「職場は、おしゃれをしに来るところじゃない。そんな派手な服装では出社を認めない」と怒られてしまいました。確かに普段よりは派手目でしたが、周りの人に不快感を与えるような格好ではなかったと思います。その日は早退し、翌日から地味目な服装で出社していますが、何となくスッキリしません。

上司から「派手な服装」と判断されたら、出社してはいけないのでしょうか?

服装などに関するルールが定められている場合は、それに従わなければならない

<回答>

仕事をするときの格好は、昔と比べると自由になりました。Tシャツやデニムのようなラフな服装で仕事をしている人も、今では職場で普通に見かけるようになっています。

その一方で、勤務時の服装や身だしなみに厳格なルールを定めている会社もあります。例えば、食品製造会社では、衛生管理上、担当者の髪型などに制限を設けています。

勤務時の服装や身だしなみについては、仕事の内容などに応じて、各社が独自にルールを決めることになっています。ですから、質問者は、まず、自社の就業規則や服装に関する社内ルールなどを確認してみてください。就業規則などに服装に関するルールがあれば、それに従わなければなりませんし、規則に違反しているのであれば、出勤停止などの処分を受けることもありえます。

服装に問題があるかどうかは、「業務への支障の有無」で判断される

就業規則などの定めが、「他人に不快感を与えない服装にする」などの曖昧な表現になっている場合、どこからルール違反になるのかが分からず、会社・上司と従業員の間でトラブルになることがあります。

過去には、長髪でひげをはやしていた郵便局職員が、身だしなみを理由に人事評価を下げられ賃金もカットされたこと、および、ひげをそるように上司から執拗に指示されたことに不満を持ち、裁判を起こした例があります。この裁判では、職員側が勝訴し、裁判所は、会社に対してカットした分の賃金と慰謝料の支払いを命じました。(郵便事業事件・大阪高裁・平成22年10月」)

一方で、「暑いから」という理由で制帽を着用せずに乗務したバスの運転手が、会社から受けた減給処分を不当として起こした裁判では、会社側が勝訴し、処分は妥当とされました。(神奈川中央交通事件・横浜地裁・平成6年9月)

これらの例を見ると、服装や身だしなみが適しているかどうかは、上司や本人の感じ方ではなく、業務への支障の有無で判断されていることが分かります。郵便局職員の裁判では、長髪やひげが業務に支障を及ぼすものではないので「問題なし」とされ、バスの運転手の裁判では、規則に定められた制帽を着用していないことが乗客に不安を与えることにもなりかねないので「問題あり」とされたのです。

今回のケースも、質問者の服装が業務に支障を及ぼすかどうかで、問題の有無が判断されます。顧客と接する機会がない仕事であれば、どのような服装で勤務しても構わないのでしょうが、落ち着いた感じで顧客応対する仕事であれば、「派手」と感じる人が出てきそうな服装は避けるべきです。つまり、服装に対する指示が、上司の個人的な趣味ではなく、業務の必要性に基づいたものであれば、質問者は、それに従うべきと言えます。

服装や身だしなみは、職場の雰囲気などに合わせておく方が無難

ただし、「業務に支障を及ぼすかどうか」も上司と本人との間で見方が異なってくるので、結局、判断は難しいと言わざるをえません。また、業務に支障がないとしても、あるいは、就業規則にルールが定められていなくても、職場のマナーとして、従業員は服装や身だしなみには気をつけなければいけません。

このように考えると、基本的に、服装や身だしなみは、会社の雰囲気や職場の同僚などに合わせておいたほうがよいと言えます。個人的な趣味やセンスが関係する服装や身だしなみについて、問題があるかどうかを議論したところできりがありません。それならば、議論にならないように、職場の人と同じような「無難な格好」をしておくべきです。

質問者も、「『おしゃれをしに来るところじゃない』と言うような上司がいる職場に、お気に入りの服を着て行く必要はない」と割り切って、無難な格好で出社されたほうがよいのではないでしょうか。

なお、上司や同僚が「女性(男性)らしい服装をしてこい」とか「身だしなみがだらしないから仕事もできない」などと執拗に言ってくる場合は、セクハラやパワハラが絡む問題になります。このようなときは、会社の人事部門などに相談してください。

 

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

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Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

 

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パートタイマーでも転勤を命じられることがありますか?転勤命令を拒否できますか?

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<質問>

私は、近所のスーパーでパートタイマーとして働いている主婦です。先日、勤務先の店長から「来月から他県の店に転勤してくれ」と言われました。その店は自宅から遠いので、もし転勤するのであれば、引越しをしなければなりません。家庭の事情で引越しができないため転勤を拒否したところ、店長から「会社が決めたことなので、君は転勤命令を拒否できない。転勤できないならば、今月末で退職してくれ」と言われました。

パートタイマーでも転勤を命じられることはあるのでしょうか?

そして、私は、この転勤命令を拒否することができるのでしょうか?

パートタイマーでも転勤を命じられることがある

<回答>

正社員でもパートタイマーでも、従業員であれば、会社から勤務場所や担当業務の変更(異動)を命じられることがあります。一般的に、同一の勤務地内での異動を「配置転換」、勤務地の変更を伴う異動を「転勤」と呼びますが、パートタイマーについては、同一勤務地内の配置転換のみを行い、転居を伴う転勤は行わないことにしている会社もあります。これは、パートタイマーは転勤よりも現地で新規採用したほうが低コストで済むこと、家庭の事情などで転居ができない人が多いことなどの理由により、その会社が独自に定めているにすぎません。

パートタイマーの異動や転勤を禁止している法令は存在しませんし、実際に、パートタイマーを転勤の対象としている会社もあります。したがって、最初のご質問については、「パートタイマーでも転勤を命じられることがある」というお答えになります。

従業員に異動、転勤を命じることがある場合、会社は、就業規則や労働契約書に「(他の事業所への)異動、転勤を命じることがある」等と明示しておかなければなりません。ですから、就業規則や労働契約書等に「異動、転勤がありうる」旨の記載があれば、その人は、会社から異動・転勤を命じられる可能性は十分にあります。

正当な転勤命令であれば、原則として、それを拒否できない

就業規則等に「転勤がありうる」と明記されている場合、従業員は、会社からの転勤命令を拒否することができるのでしょうか?

原則として、会社の転勤命令が正当なものであれば、従業員は、それを拒否することはできません。転勤対象者である従業員が転勤を拒否し続けると、業務命令違反となり、会社から制裁処分を科せられることもあります。

会社の転勤命令が正当であるかどうかは、「業務上の必要性が存在すること」「不当な動機・目的が認められないこと」「従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせないこと」等を考慮して判断されます。逆に言えば、これらの条件を満たさない転勤命令は、それ自体が無効とされますので、従業員は、従わなくてもよいのです。

さて、ご質問のケースについて考えてみましょう。

近隣地区でパートタイマーとして採用した主婦が、家庭の事情で転居できないことを、この会社は百も承知のはずです。それにも関わらず、「転勤を拒否するならば退職してくれ」とまで言ってくるのですから、店長は、この人にわざと転勤を拒否させて、それを理由に退職に追い込もうとしているようにも思えます。そうであるならば、この転勤命令については、業務上の必要性がほとんど存在せず、従業員を退職に追い込もうとする「不当な動機」があるものと考えられますので、この人は、それを拒否することができます。なお、転勤命令自体が無効とされれば、この人は、それに従わなかったという理由で、会社から制裁を受けたり、退職に追い込まれたりすることもありません。

労働契約を締結するときには、転勤の有無も会社に確認しよう

質問のような転勤に関するトラブルは、パートタイマーにも発生することがあります。トラブルを避けるためには、入社時あるいは契約更新時に「自分が異動・転勤の対象者となっているのか」「異動があるとすれば、どの地域までか」等を会社との間で確認しておくことが必要です。そして、家庭の事情などで転勤ができない場合は、自分から会社にその旨を伝えて、労働契約書等に「転勤なし」などと明記しておいてもらうとよいでしょう。転勤しないことを条件に契約締結した従業員に対して、会社は転勤命令を出すことはできません。

ともすると、パートタイマーは「正社員じゃないから転勤はないだろう」と勝手に思い込んでしまい、このような確認を怠りがちです。転勤に関するトラブルを避けるために、あらかじめ会社との間で異動・転勤の有無を明確にしておくようにしましょう。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

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Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

 

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無期契約に転換すると、仕事はきつくなりますか?

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<質問>

私は、これまで1年ごとに契約更新を行いながら、今の会社で5年間働いてきました。
次の契約更新について話しているときに、上司から「君は、次の契約更新で勤続5年を超えるから、期間の定めのない契約(無期契約)へ転換しないか?」と言われました。確かに、無期契約にしてもらえれば、契約が打ち切られる心配がなくなってよいのですが、その代わりに、労働時間を増やされたり、責任が重い仕事を押し付けられたりするのではないかと不安です。
無期契約へ転換すると、仕事はきつくなると思っていたほうがよいのでしょうか?
また、無期契約に転換すれば、パートでも正社員と同じように賞与や退職金が支給されるようになるのでしょうか?

5年を超えて働いているパートは、会社に申し込めば「無期契約」に転換できる

<回答>

 2013年4月に施行された改正労働契約法において、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、従業員の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期契約)に転換されるルールが導入されました。これが「無期転換ルール」です。
2018年4月に法改正から5年が経過することになりますので、1年あるいは半年ごとに契約を反復更新しているパート従業員の場合、来年4月以降の契約更新から、この無期転換ルールが順次適用されることになります。
会社によっては、契約更新事務が複雑になることを防ぐため、上司や人事部がパート従業員の意向を個別に聞いて、通算6年目に入る契約更新の際に、希望者全員をまとめて無期転換するところもあります。あなたの会社も、このパターンをとっているようですね。
あなたが今の会社で長く働きたいと思うのであれば、上司の勧めを受けて、無期転換するとよいでしょう。一方、無期転換は、あくまでも従業員からの申込みによって行われるものなので、あなたは、上司からの勧めを断り、これまでどおり有期契約を反復更新しながら働き続けることもできます。また、上司からの勧めをいったんは断ったものの、後になって気が変わったという場合でも、あらためて申込みをすれば、あなたは次の契約更新のときに無期契約に転換してもらうことができます。

無期転換の前後で、労働条件や仕事内容は、原則として変わらない

改正労働契約法では、無期契約へ転換した後の労働条件については、移行時において締結している有期契約のものと同一にする(別段の定めがある部分を除く)と定めています。ですから、無期転換の前後において、職務、勤務地、賃金、労働時間などの労働条件は、原則として変わりません。つまり、無期転換したからといって、労働時間を増やされたり、責任が重い仕事を押し付けられたり、仕事がきつくなったりすることはないものと考えておいてもよいでしょう。

しかし、人によっては、無期転換にあたり、会社から「フルタイムで働いてほしい」「リーダーになってほしい」等の労働条件や仕事内容の変更を求められることはあります。この場合は、あなたが合意すれば、労働条件等の変更が認められることになります。もし、あなたが「仕事がきつくなるからイヤだ」と思うのであれば、労働条件等の変更に応じなければよいのです。あなたが変更に合意しなければ、労働時間や仕事内容は従来どおりのまま無期契約に転換することになります。

報酬を多くもらいたいのであれば、無期転換よりも正社員登用を目指すべき

これまで、会社の中では「無期契約=正社員、有期契約=パートなどの非正規従業員」という区分があったため、「無期転換=正社員化」と思い込んでいる人をよく見かけます。
しかし、それは誤解です。ほとんどの場合において、無期契約に転換されたとしても、正社員になれるわけではありません。先ほど述べたとおり、「無期契約へ転換した後の労働条件は、移行時において締結している有期契約のものと同一にする」ことが基本です。ですから、パート従業員が無期契約に転換されたとしても、時給はそれまでと変わらず、賞与や退職金も支給されないままということが多いのです。
なお、パート従業員の労働条件や無期転換をした場合の取り扱いは、会社によって異なりますので、細かいことは自分の会社の就業規則などを見て確認してください。
改正労働契約法は、「有期契約を無期化するルール」を定めただけで、「パート従業員の労働条件を正社員と同じにすること」までを会社に求めたわけではありません。ですから、「報酬を多くもらいたい」と思うパート従業員は、これまでどおり、無期転換ではなく、正社員登用を目指したほうがよいということになります。

社労士

深瀬勝範(ふかせ かつのり)

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Fフロンティア株式会社代表取締役。社会保険労務士。1962年神奈川県生まれ。一橋大卒。大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、独立。企業・公共団体の人事制度設計や事業計画の策定等のコンサルティング、人事労務専門誌などに寄稿も行っている。著書に「労政時報別冊 実践人事デ-タ活用術」(労務行政)。

 

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