はたらく女性の深呼吸マガジン

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積水化学・沓掛さん「『こんな人になら、私もなれそう』と思ってもらえる先輩になりたい」

沓掛さん
『りっすん』が「企業の中で働く女性」にフォーカスするシリーズ「おしごとりっすん」。第4回は、積水化学工業株式会社のリフォーム営業統括部で活躍されている沓掛愛美(くつかけ・まなみ)さんです。大学卒業後、リフォーム全般のサービスを行う積水化学グループ会社の東京セキスイファミエス株式会社に入社した沓掛さんですが、30歳を機に、社内制度を使って同グループの積水化学工業株式会社に出向という形で異動しました。なぜその選択をしたのか、生活はどのように変化したのか、お話を伺いました。

テレビ番組に影響を受けて建築が学べる大学に進学

入社までの経緯を教えてください。

沓掛さん(以下、沓掛) 建築系の大学を卒業後、積水化学グループ会社の東京セキスイファミエス株式会社に営業職で就職しました。その後、2014年に積水化学工業株式会社の住宅カンパニーに移り、今に至ります。

建築系の大学に通っていたというのは、建築関係の仕事に就きたいという思いがあったからでしょうか?

沓掛 そうですね。私は2007年に就職しましたが、10代の頃『大改造!!劇的ビフォーアフター』という、家のリフォームをするテレビ番組がはやっていたんですよね。それを見て、「私も匠になりたい!」と思って(笑)。

大学では具体的にどんなことを学ばれていたのでしょうか。

沓掛 構造や大規模建築など、建築の中にもいろいろな分野がありますが、その中でも私は動線など、「いかに快適に住むか」を中心に学んでいました。例えば、“キッチンとランドリースペースが近いと家事が楽になる”というように、「家の中の人の動き」を考え、間取りを作るというものです。人によってライフスタイルは違うので、その人その人に合わせたプランを考えるのは大変ですが、とてもおもしろかったですね。

最初の会社では、大学で学んだことを生かせていたという実感はありましたか?

沓掛 リフォームと聞くと、間取りをがらっと変えて……というようなイメージがあると思いますが、外壁の塗り替えなどを行う「メンテナンス」や、太陽光パネルを設置といった「エネルギー提案」もリフォームになります。営業時代はそういうメニューをメインに扱っていたので、大学で学んだことがすごく生かせていたかというと、なかなか難しかった気がします。でも、大学では学ばなかったことも知れて、リフォームの新しい魅力を見つけられました。

自由に働ける期間もあとわずかだと思い、30歳で新たな仕事にチャレンジ

沓掛さん

社内の人材公募制度を利用し異動されたということですが、なぜそれを利用しようと思ったのでしょうか。

沓掛 30歳手前で、社内のキャリアプラン研修を受けたことがきっかけです。研修では、自分の年齢や、今後どんな人生のイベントが待っているかを書き出す機会があり、そのときに、「私ももう30歳。今は夫婦2人だけど、将来は子どもも欲しいし、自由に思いっきり働けるのもあと3年ぐらいかも……」と感じて。

今後どういうふうに働いていこうかな、何をしていこうかなと考えていたタイミングで、ちょうどリフォーム事業の社内公募があったんです。それで、「新しい業務や環境にチャレンジするなら今だ」というタイミングもあり、思い切って応募しました。

募集していた仕事内容にも魅力を感じた部分はあったのでしょうか?

沓掛 募集内容には、商品サービスの企画立案・研修というおおまかなことは記載されていましたが、具体的に何をするかは分かりませんでした。でも、新しいチャレンジをしてみたい、リフォームの仕事をずっとやりたいという、2つの大きな望みはクリアできるので、魅力的に感じました。

異動して、日常が変わるということに抵抗はありませんでしたか?

沓掛 そのときは、異動するといっても同じグループ会社かつ、今まで携わってきたリフォームに関する業務ということもあり「そんなに戸惑うこともないのでは」と簡単に考えていたので、大きな不安や抵抗はありませんでした。ただ、実際に異動してからは、しばらくの間は苦労しましたね。

具体的には、どんなところが大変でしたか?

沓掛 当たり前のことですが、私のことを知っている人や私が知っている人がいません。そして、同じグループでも社内のルールやシステムが違う。やることが違う……と、とにかく何もかもが違いました。

グループ会社といえども、最初は戸惑いがあったんですね。

沓掛 そうですね。仕事や環境に慣れることに時間がかかりました。以前は目の前のお客様に対して「何を提案するか」という業務が主でしたが、異動後は社内全体や不特定多数のお客様へ向けて情報を発信するようになり、仕事の範囲もすごく広がって。また、それまではエリアの決まった営業所で仕事をしていたので、出張はありませんでしたが、異動後は、全国各地に出張へ行くことも増えました。

ただ、大変ではありますが、自分の為に時間を使える時期に挑戦してよかったなと思っています。子どもができてから新しい環境に……というのは、それこそ難しいことだと思うので。今年で異動して丸3年が経ち、業務にもだいぶ慣れ、仕事を楽しめるようにりました。

情報誌作成や商品企画など、幅広い仕事で活躍中

沓掛さん

現在のお仕事の内容を教えてください。

沓掛 仕事内容の幅が本当に広いので、一言で説明するのは難しいのですが……リフォーム事業に関するバックアップ業務全般を行っています。大きく分けると、お客様向けの仕事と、社内向けの仕事があります。

お客様向けの仕事では、弊社が手掛ける住宅(セキスイハイム)にお住まいの方に、年4回お届けする『ハーモネート』という情報誌の企画・編集を行っています。他に、Webサイトやカタログの企画・制作なども行います。社内向けの仕事は、イントラネットの企画・整備・運営や、リフォーム対応の商品企画などをします。時期にもよりますが、どちらかというとお客様向けの仕事のほうが比率は高いですね。

沓掛さん

お客様向け情報誌『ハーモネート』、リフォームのカタログ

多岐にわたってご活躍されているんですね。現在のチームはどのような構成なのでしょうか。

沓掛 現在は、リフォーム営業統括部という部署に所属しています。メンバーは13人で、そのうち女性は2名です。年齢的には私が最年少になります。仕事の進め方は、グループメンバーだけで進める、というよりもさまざまなメンバーと連携して仕事をすることが多いです。例えば、会員向けの情報誌を作るときは、部内メンバー+制作会社の方、商品企画では、商品開発部+私たちのメンバー数名というように、仕事の内容によってチームが変わります。

失敗したら、まず事実を認めることが大事。そこから解決策を考える

仕事をしているとつらいこともあるかと思いますが、それを乗り越えるコツや方法はありますか?

沓掛 私は心の切り替えがあまり上手じゃなく、「会社に行きたくない」と思うと、なかなかモチベ―ジョンを取り戻せないんですよね。行きたくない日が始まると、1週間ぐらい沈んだ気持ちが続いてしまうこともあります。

そういうときは、例えば新しい靴を買って「明日はあの靴を履いていこう」と思ったり、前日、会社におやつを置いて帰って「早くあのスイーツを食べたい」と自分を騙しています。会社に行くのが楽しみになる別の目的を作ることで、なんとか足を向かわせている感じですね(笑)。

出社後は、上司や先輩に話を聞いてもらったり、退勤後同期と飲みに行ったりして、気持ちをリフレッシュさせるようにしています。最終的に、何をしたらスパッと気持ちを切り替えられるかはまだ把握できていないので、模索中です。

他にも試した方法はあるのでしょうか?

沓掛 丸一日寝る日を作ることもあります。思いっきり寝たら、「まぁいっか」とすっきりすることもありました。それと、偉人の名言や、仕事で成功されている人が書かれた本や記事を読むと、前向きになれたり、悩みを解決するヒントが隠されていることもあるんですよね。

最近だと、働く女性にスポットを当てた記事で書かれていた、「ワークライフバランス」の話が心に残っています。私は、「バランス」と言うからには、どちらも均等に頑張らなければいけないのではと思っていました。でも、その記事には「人生の中で、今はワークに重きを置いてる時期、今はライフに重きを置いてる時期だとマネジメントすることが、ワークライフバランスです」と書かれていて。

ついつい今だけを見て「こんなにワークに片寄っている。洗濯物もたまるし、夕食が用意できず主人任せになったり……私はダメだー」となっていましたが、「今は仕事を頑張っている時期だから、これでもいいんだ」と、気持ちが楽になりました。

沓掛さん

仕事で落ち込んでしまった、というエピソードがあれば教えてください。

沓掛 すぐ忘れちゃうタイプで……直近で大きな落ち込みはないですね(笑)。でもやっぱり、大なり小なり、仕事で失敗してしまったときは落ち込みます。

失敗したときは、どのように気持ちの整理をつけているのでしょうか。

沓掛 失敗してしまったときは、その事実を認めるようにしています。「なんか上手くいかないなー」と、ぼんやり思っているのではなく、「ここが失敗した!」と上手くいかなかったポイントを確認する。

例えば、ページ作成を依頼し、でき上がったものが意図と違う内容で戻ってきたとします。納期まで時間がない場合、失敗した原因は「依頼の仕方が悪く意図を伝えきれなかったこと」と「スケジュールに余裕がなかったこと」。悔しいですが、そのことをきちんと受け入れます。すると、「できる範囲で納期変更の交渉や修正を行おう」と今やるべきことが明確になったり、次回は、「依頼時のやり方を改め、確認スケジュールも長めに設定するぞ」と考えられるようになり、落ち込む暇がなくなります。

お客様からの反応は励みに。自分の成長を感じるのも、活力のひとつ

仕事のやりがいは、どんなときに感じますか?

沓掛 お客様の反応、社内の環境、自分自身の成長などで感じます。

お客様向けの情報誌に、編集部宛てのアンケートハガキが付いており、そのお便りが毎号5,000通ぐらい届きます。企画した記事に対して「おもしろかった」「参考にしたい」というような声をもらうと、純粋にうれしいし、励みになります。

社内では、「こうしたらどうか」と自分が感じたことを素直に上司やメンバーに話せ、実行に移せる環境にやりがいを感じます。話を受け入れ、前向きに意見をくれる周囲の方々に感謝しています。

自分の成長では、最初は慣れなかった仕事が、1回目より2回目、2回目より3回目というように、回を重ねるごとに上手くできるようになっていると、やっぱりうれしいですね。自己満足と言われてしまうかもしれないですけど(笑)。おごるのはよくないですが、自分の頑張りを認めてあげる瞬間も大切なんじゃないかなと思います。

自分の中で「やりがい」を感じる切り口をいくつか持っておくと、常に何かしらの「うれしいこと」があるので、モチベーションを保つのに役立っています。

沓掛さん

仕事をしていく上で、目標としている人やロールモデルはいらっしゃいますか?

沓掛 ずばり「この人」という方はいませんが、その都度、自分の気持ちに合った人を目標にしています。最近ですと、企画内容を上手くまとめられない案件があったとき、別の企画で上手に内容をまとめ、進めている女性の先輩を見つけました。「なるほど、こうやってやればいいんだ」と参考にしたり。そんなふうに、いろんな人のいいところをつまんでいる感じです。

あと、最近影響を受けたのが、ある男性タレントさんの記事。そこには、「10代はアイドルとして生きていて、20代は役者になると目標を決めて、それに必要な格闘技を習い始め、師範資格を身につけた」ということが書かれていました。10年単位で物事を考え、極められるってすごいなと思いましたし、私も長い視野で今後のキャリアを考えてみようと思いましたね。

後輩から「この人にできるなら私にもできる」と思ってもらえる存在でありたい

今後のキャリアについて、どのようにお考えですか。

沓掛 先ほど話した男性タレントさんの話でいうと、私の20代は、リフォームの営業や設計の技術を磨く時間でした。30代は、企画編集など違う分野での仕事がスタートしたので、そのスキルを高めていきたいと思っています。同時に、40代・50代へ向けて、私はどういう仕事が得意なのか、好きなのか、ということも見つけていきたいですね。

ワークライフバランスについては、今後どうしていきたいですか?

沓掛 子どもを産みたいなと思っています。そして、その後も、リフォームに関わる仕事を続けたいです。

現在の部署では最年少ということですが、後輩ができたとき伝えていきたいと思っていることがあれば、教えてください。

沓掛 私の周りの女性は、すごい方が多いんです。バリバリ仕事ができてかっこいい、憧れの的になるような女性ばかりで。

でも私はバリバリタイプではないので、後輩から「この人にできるなら私にもできる」と思われる存在でいたいです。私を見て「こんな人になら、私もなれそう」って思ってもらえたら成功です。

雲の上の存在ばかりだと、「私はあんなふうにはなれない」って最初から諦めてしまう人も中にはいると思うんです(自分がそうなので)。なので、身近な存在といいますか……そんなふうに見られる先輩がいてもいいんじゃないかなって。こんな私でもやりがいを持って働けているんだよっていうのを後輩には伝えていきたいと思っています。

ありがとうございました!

取材・執筆/石部千晶(六識)
撮影/小高雅也

お話を伺った方:沓掛愛美(積水化学工業株式会社 リフォーム営業統括部 企画部)

沓掛さん

積水化学工業に移って3年、Webサイトや情報誌の編集・企画を中心に幅広い分野の仕事を担当。女性ならではの細やかな視線で、新企画や冊子の構成などを提案する。いろいろなことに興味を持つので、趣味はそのときどきで変わる。最近では、取材先で影響を受け、断捨離に目覚める。

次回の更新は、8月23日(水)の予定です。