はたらく女性の深呼吸マガジン

イーアイデム

人生は自分の足だけでは進めないけれど、夫と一緒に走ることはできる

初めまして、くろいわと申します。

フルタイムの共働き家庭で小学生の子どもを育てつつ、フルマラソンを中心にレースを楽しむ市民ランナーです。「働くお母さんが走るブログ」という直球勝負のタイトルのブログを書いています。ちなみに今まで走った一番長い距離のレースは100kmマラソンです!(飲み会で盛り上がる鉄板ネタですからぜひ一度いかがですか!?)

ところで急に話は変わりますけど!

小さい子どもを持つ母親が働いていると、いろいろと、ありがたいご意見を賜ることがあります。

<ケース1>
1週間以上前から夫に仕事の調整をお願いして事前に家事を済ませ、ようやくたどり着いた懇親会という名の飲み会で、その場にいた仕事先の男性(2歳のお子さんがいる)に、
「くろいわさん、お子さんいるんだ、え、じゃあ早く帰らないと! もう寝てるっていっても早く寝顔が見たいでしょ、母親なんだから!」
と(おそらくは善意で)お説教をいただく。
<ケース2>
子どもがまだ保育園に通っている時代、夫に「私の仕事の比重をもうちょっと上げたいから協力してほしい」と相談したら、
「どっちかが子どもを見てないといけないでしょ? 娘のことを邪魔みたいに言わないで」
と、保育園の送り迎えを担当し、毎日食事を作り、残業もできず、泊まりの出張にも行かない私が、まるで育児放棄を図っているかのようにたしなめられる。


…………。

あああああああ~~~~!!(思い出すだけで血圧が上がって血管に負荷がかかる……!)

あれ? 子どもの面倒を見るのって私「だけ」の仕事だっけ……? 私、ひとりで子ども作ったんだっけ……?

私の夫はとても優しいし、子どものことを溺愛していて、子どもの世話を丸投げして不安がないくらい育児にも協力的でとても助かっています。子どもも夫のことが大好き。家事も炊事以外ならまかせられる、頼りになる夫です。

ただ、共働き夫婦がお互い自分の権利ばかりを主張すると、どうしてもうまくいかないこともあるわけで。

「もっと仕事をしたい(量、あるいは質を高めたい)」という、一般的には「仕事熱心」と評価される姿勢が、「子どもがいるのにわがまま」「子どもを一番に考えてあげて?」と言われてしまうこともあったり、そうした言葉を浴びることで「仕事もがんばっていく」と決めた気持ちに後ろめたさを感じてしまったり。

さらに、味方であってほしい夫にこうした悩みを打ち明けると「子どもが小さいうちは仕方ないでしょ」と私(だけ)が仕事をセーブするのが当然のように言われて悲しい思いをしたこともありました(もちろん男性には男性なりの息苦しさがあるとは思いますが)。

また、夫は何かと協力的ではありましたが、夫の「協力」を得なければ「出張する」「残業する」ということができない現状は「仕事を続ける上での弱点」であり「職場や家庭における立場の弱さ」だと感じていました。だからこそ夫に「出張に行きたいから娘を保育園に送ってほしい」とお願いした時に「それ本当に必要な出張なの?」とか言われた日にはもう……。

子どもを持つ人生を選んだ以上、ある程度のことは覚悟していたつもりでしたが、実際にその世界に飛び込んでみると、目の回るような毎日がただ過ぎていき、時たま「私は親としても会社員としても中途半端で世の中の何の役にも立ってない!」という被害妄想に陥り、擦り切れていく……。

その結果。

フルマラソンのタイムが、速くなりました。

■ 子どもが保育園の年少だった年のタイム
4時間15分

■ 子どもが保育園の年中だった年のタイム
3時間46分

■ 子どもが保育園の年長だった年のタイム
3時間34分


めきめき伸びた。すごい。

ちなみに100kmマラソンを走ったのも子どもが年長の時でした!! ハハハッ!!(乾いた笑い)

子育ても家庭も仕事も、がんばったからってすべて報われるわけじゃないし、自分以外の要素は必ずしも自分の思う通りにはならないじゃないですか。

でも積み上げたマラソンの練習だけは、本番で私を裏切らない。

すごい……ありがとう、私の心肺機能と脚と日頃のストレスをバネに最後まで粘れるメンタル……!

当時どんどんマラソンにのめりこんでいく私に夫は「どうしちゃったの……?」と異星人を見るような目つきで接してきました。

そう、我が家はインドア系夫婦で、独身時代のデートといえば、映画か野球・プロレス観戦か飲み歩き。そもそも私が走り始めたきっかけは「産後のダイエット目的のジョギング」でしたから。夫からは「マラソンなんか走って何が楽しいの? 100kmも走るとか頭がおかしい……」というような扱いを受けていました。

が。

今では、夫もすっかりフルマラソンを愛する市民ランナーになっております。

kuroiwa

新宿都庁前、東京マラソンスタート地点の道標前で。

きっかけは、夫がフルマラソンのレースに当選したことでした。大都市レースの抽選への申し込みを、私が夫にそそのかしたのです。

「抽選だし、申し込むだけならタダだから! 2人とも当たったら(どちらかが子どもを見ていないといけないから)私が走るけどね!」と。

そして別々に申し込んだところ、夫だけが当選。膝を痛めたりしつつも初のフルマラソンを完走した夫は、私と同様にマラソンの沼に沈んでいきました。

同じ方向を向いて走る

我が家は夫以外に子どもを預ける身内がいない核家族なので、朝型の夫は子どもが起きる前に、夜型の私は子どもが寝た後に走ることで平和にそれぞれの練習時間を確保しています。たまに、代休を合わせたり、参観日のために取った有休を活用したりして夫婦で走っています。

走るだけなら30分の隙間があればできます。子どもが行事でいつもより1時間家を早く出る日とか、逆に帰りが遅くなる日とか。

近所をゆっくり走りながら「どの方面に行こうか」と相談しつつ、「ここのお店美味しそうだね」とか、「そういえば昔たまに行ってたお店がなくなってたよ」とか、「こんなところに公園あるんだね、今度子どもと一緒に来ようか」とか、他愛ない会話をできるくらいのペースで。

子どもを真ん中にした家族3人の「日常」と、夫と2人きりで過ごす「非日常」。

あれ? 楽しい!?

走ると心拍数が上がるので、いわゆる「つり橋効果」もある気がします。

さきほどの道標とシューズの写真は、2人で代休を合わせ、東京マラソンのコースを半分弱ジョギングで巡った時のものです。新宿から飯田橋に抜け、神田、日本橋、浅草と、観光名所が随所にある見どころ満載のコースで、夫婦のデートにも最適じゃない~~~?と思って出かけたんですよね。


▼「デート」中の会話
「暑すぎる……バテた……」(9月の真昼間)

「さっきレッドブル飲んだでしょ? そろそろカフェインが効いてくるころだから! 行くよ!!」

「いや、これ、人が走っていい気温じゃないでしょ……」


デートっていうか……特訓?

わりと過酷でした。

9月のコンクリートジャングルは直射日光も強ければ輻射熱(ふくしゃねつ)もすさまじくて、ちょっとくらい風が吹いていても走ってたら関係ないですからね。

アイスを買い食いしたり、コンビニで買ったばかりの冷たい水を夫にかけてあげたりしながら、熱中症にならないように気遣いつつ、歩いたり走ったり。

kuroiwa

15kmくらい進んだ浅草で休憩したり。

kuroiwa

日陰で冷茶を飲みながら涼んだり。

あと、ジョギング中って首から上はヒマなので、贔屓にしている球団の選手の調子とか、最近読んだ警察小説が面白かったとか、週刊誌に載っていた芸能人のゴシップとか、職場の上司が業務時間中に立ち歩きしてビンからスプーンではちみつをすくって舐めててくまのプーさんかと思ったとか、普段できないどうでもいい会話をしながら走ります。

普段、自宅では必要事項を聞きたいというだけでも、


「明日あなたは宇都宮だっけ? 夕飯いるんだっけ?」

「明日は宇都宮じゃなくて都内で……」

子ども「ねえねえねえ見て! この紙粘土すごい軽いの!!! 跳ねるの!! すごい!!」

「ほんとだ! 軽い!!」

「ピンクに塗ったんだ、かわいいねえ」


こんな感じですんなりいかない。無駄話をするまでにたどり着かない。

適当なところでジョギングを切り上げて、ランニングステーション(更衣室とシャワーを備えた施設。皇居周辺にたくさんあります)で汗を流して、しっかり水分補給してから。

\打ち上げ!/

kuroiwa

暑くてキツかったね、でも東京マラソン走りたいよねえ、本番は2月だから寒いよね、2人とも当たったら困るねえ(ちなみにこの年の競争率は11倍で2人とも外れました)、と笑いながら、ファミレスじゃないお店のハンバーグを2人で食べるの久々じゃない?と話して。そして学童へ早めのお迎えに行って、また日常へ戻る。

人生は自分のペースでばかりは進めないけれど

一緒に走った翌日から夫は私に何も言わず出張へ行きまくるし、上司から夜の会合への参加を打診されて夫にお伺いを立てたら「その日はまだ分かんない」って言われて

(分かんないって言うか私の予定は確定しているんですけども)

と思ったりする(あんまり言うと喧嘩になるので……)。

それでも、「夫と2人でどうでもいい話をしながら東京マラソンのコースを走ってビールを飲んで楽しかった」という経験がかすんだり消えたりはしないし、また一緒に走りたいなと思う。

「長い距離を自分のペースで、自分の足だけで走る」というイメージからか、人生をマラソンにたとえるような言葉を聞くこともありますが、少なくとも私からすると、まったく違います。他者と関わり合う必要がある人生は、自分の足だけでは進めないし、自分のペースでは進めないこともあるし、思うようにならないことばかりです。

でも実際のマラソンレースは、練習の段階から、今日はサボるか走るかも、目標タイムも、レースの序盤に抑えるか突っ込むかも、苦しくなった時に諦めるか最後まで可能な限り粘るかも、すべて自分の意志だけで決められる「自分との闘い」です。その過程が確実にタイムに跳ね返ってくる。思い通りにならなかったとしても、すべて自分の責任です。私はこれこそマラソンレースの醍醐味だと思っています。

同時に、レースで達成感を得るだけではなくて、誰かと同じ方向を見ながら、歩調を合わせ、景色を見ながらゆっくり走る楽しみ方ができるのもマラソンの好きなところ。

“同じ方向を見ながら走る相手”を夫に求められるようになったというのは、幸運なことなのかもしれません(それとこれとは別なので、生活上の喧嘩はしますが)。

ちなみに冒頭に書いたような仕事と家庭を両立する上での課題は、子どもが小学校に上がったタイミングで職場の部署が異動になり、

  • そもそも夜の会合の機会がぐっと減った
  • 出張先の選定や訪問時間に関して融通が利くようになった
  • 仕事の仕方に関する裁量が大きくなった


という、私と夫の努力とはまったく関係ない部分である「環境」が解決してくれつつあります……。

§


先日、秋から冬にかけて出たいフルマラソンのレースについてカレンダーを見ながらすり合わせていた時、ふと、夫がまだ走り始めていない時代のことを思い出しました。


「私がマラソンにのめり込んでいったころに『どうしちゃったの!?』って言ってたあなたが、ここまでハマるなんてね……」

「今でも『どうしちゃったの!?』って思ってるし、そもそもおれはマラソンにハマってない」

「私は年内のフルマラソン1本だけど、あなた年内だけで2本走るじゃない」

「ハマってない」

「そう..….? いいけど...…」


けがしない程度に、それぞれ、細く長くやっていきましょうね(子どもが手を離れた後に夫婦で海外マラソンに行くのがひそかな野望です)。

著者:くろいわ (id:shin_kuroiwa)

くろいわ

運動神経のなさを気合いだけでカバーするサブ4ランナー。フルマラソンサブ3.5(3時間半切り)を目指しています。走っても痩せないのは仕様です。

ブログ:shin-kuroiwa.hateblo.jp