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はたらく女性の深呼吸マガジン

イーアイデム

「妊娠2ヶ月」で報告するのは早すぎ? 妊娠初期とその働き方について知ってほしい

寄稿 コロポン

 コロポンさん

妊娠したら、お腹が大きくなるということは知っている。妊娠すると、悪阻(つわり)というやつが襲ってきて吐き気がするらしい、ということは知っている。

だけど、その悪阻は、お腹が大きくなるよりもはるかに前からはじまるということをご存知でしょうか。
それも、妊娠2ヶ月からはじまるということを。

妊娠2ヶ月で「妊娠しました」報告するのは早いんじゃないか問題

妊娠2ヶ月で悪阻がはじまるなら、すぐにでも会社や同僚にその旨を伝えるべき、のはず。
でも、躊躇しませんか。「妊娠2ヶ月」という響きに。

妊娠2ヶ月のイメージ、どのようにお持ちでしょうか。
私のイメージは、いつ見たのかさえもわからないテレビドラマによって形作られたようでした。キッチンで「うっ」と吐き気を催し「もしかして」とひとり呟いたあと産婦人科に行くと「妊娠3ヶ月です」と告知されるお約束、あれです。

このうっすら残っていた記憶によって、「うっ」ときたらだいたい妊娠3ヶ月なのかな、と思ってました。つまり、妊娠2ヶ月だなんて、子どもが宿っているか宿っていないかよくわからない、妊婦さん自身は普段と変わらない暮らしをしている時期に違いない、と。周囲に報告するタイミングといえば、安定期。安定期に入ってようやく「実は妊娠しておりまして……」だなんて奥ゆかしい感じで会社や同僚に告知するものなのかなあ、と、そんなふうに思っていました。

……簡単に言ってしまうと、よく知らなかったんです。勝手にそうイメージしてたんです。だって、周囲に妊婦さんが存在したことがなかったし、自分が妊娠するのも初めてだったので。

妊婦に対するイメージがそんなものだったばっかりに、たった妊娠2ヶ月で周囲に「妊娠しました」と報告するのは、あまりにも時期尚早だと思ってました

「たった妊娠2ヶ月で言っちゃう? 喜びすぎじゃない?」

だなんて思われたらどうしよう。いや、私だったら多少思うかも。これは安定期まで言わないほうがいいだろう。実際、安定期までは流産のリスクが高いわけだし、周囲に言ってしまってから不幸にも流産となってしまったら、自分の精神的ダメージは計り知れないことになるに違いない。
だからやっぱり、妊娠2ヶ月で周囲に言うなんて早すぎる。安定期まで待とう。そう、決断していました。

でも現実はそんなに甘くありませんでした。


申し遅れましたが、私はコロポンというライターネームで、はてなブログの片隅で記事をしたためている者です。

1年くらい働いては転職、という軽快なフットワークを不本意ながら繰り広げ、職歴欄だけが長くなること数年。ようやくとあるベンチャー企業に拾われたのをきっかけに、ここで長く働きたいと願うようになり、腰を据えてからはや2年が経とうとしていたある日のことでした、妊娠が発覚したのは。

悪阻がつらすぎてそれどころじゃない

「妊娠報告は安定期に入ってからしよう」

そんな自分の決断と、日々変化していく身体の調子はまったく相関性がありません。

妊娠の確定診断を受けたとき、私は妊娠2ヶ月である5週と2日目でした。望んでいたにもかかわらず、にわかには信じがたい気持ちで、驚きと喜びで胸がいっぱいになったのも、つかの間。さっそくその日のうちに吐き気も私の身体に宿りました。
あまりの急な人生の変化についていけなくなりそうです。まさか自分が妊婦になって、こんな急展開で悪阻に苦しむなんて想像さえしていませんでした。


ここで妊婦のスケジュールを確認してみましょう。

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WHO(世界保健機関)による妊娠週数の数え方は、最終月経が始まった日からスタートします。早いひとでは妊娠2ヶ月から深刻な悪阻に悩まされ、妊娠3ヶ月に向けていよいよ本格的に締め上げられるようです。安定期なんてはるか遠くにあります。


私はまだ5週2日。すでに一度トイレで吐きました。この先どうなるんだろう。想像もしたくない。

次の日。朝起きると、身体は昨日よりもさらに重くなっていて、熱っぽく、さっそくトイレに駆け込みました。
少子化対策とか言いながら、なぜ悪阻止めのような薬がないのか、本気で怒りはじめたのもこの日が最初。もう妊婦辞めたい。けど、自分の意思で辞められるものでもないし、子どもは欲しいし、もう感情もとりとめなく荒ぶるばかり。

出社するにも、会社の最寄り駅までのたった2駅がつらい。まだ母子手帳さえ貰っていないのでマタニティマークもない今、席を譲ってほしいだなんて言い出すこともできず、扉の近くの手すりを握り締めて揺れに耐える。涙が出る。こんなことで泣いたり耐えたりする自分が切なくなる……。

そしてこれが少なくともあと2ヶ月程度は続くのかと思うと、

「妊娠報告は安定期に入ってからしよう」

だなんていう決心はすぐに消え去りました。
たぶん、仕事もまともにできないだろうし、もう、言うしかない。

「妊娠2ヶ月」を社長に報告する

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私が働くベンチャー企業は、ベンチャー企業というだけあって社員も多くありません。当時も6名程度だったと思います。一応、少数精鋭。

そんな中で社員がひとり妊娠する、ということが意味することは、大企業の比ではなく大きいはずです。だからこそ、私は安定期に入ってからしれっと言いたかった。妊娠はしてるけど、業務に影響はありませんし、体調は第一だけど引き続き働きますのでどうぞよろしく、だなんていうクールな態度でありたかったんです。
そんなものは夢想だったわけで、もう正直に言うしかなくなった今。社長を呼んで、1対1でミーティングスペースへ。

「言いにくいんですが、……妊娠しました」
社長がどう反応するのか、心臓がうるさいくらいに鳴りました。

「おめでとう!よかったね!」

まず第一声いただく。そして、
「妊娠も、子どもを持つことも、会社にとっては嬉しいことだから。いろんな考えや環境のひとが働く会社を作りたいから、本当に嬉しいよ」
と言ってくれました。

なんというか、呆気にとられました。妊娠って、会社にとっては悪いことしかないと思い込んでいたから。そんなふうに言ってくれるだけで、少し救われたような気がしました。そして私は、自分のこの経験を仕事に活かしていきたいと強く思うようになった上に、またこの会社のことが好きになってしまいました。これはもしかしたら、いやたぶん、社長の思うつぼなのかもしれません。それでも、みんなWin-Winだから、それでいいかなと思ったり。



社員全員には、もっと体調が悪くなったら報告しようと思っていたのですが、時を待たずして職場のトイレに頻繁に出入りするようになってしまったため、妊娠6週には言いました。

どんな反応をされるのかな、と思っていたんですが、特に何も起きませんでした。過度な遠慮もなく自然に接してくれたので、お互いやりにくさはほとんどなかったのかなと思います。私のほうは体調がいいときに仕事を一気に片付けるようにしたり、無理なものは無理と言っちゃったりして、会社全体の業務にはただちに影響はないように配慮したつもりです。「こうやって支え合えるのも、チームで仕事するメリットなのかも」と思えました。

そして流産した。でも、言ってよかった

妊娠10週目。2週間前の検診で確認できたはずの赤ちゃんの心拍が、この日は見えませんでした。大きさも妊娠8週目後半あたりから成長していなかったようです。
「悪阻がつらいのは、赤ちゃんががんばっている証拠」
だなんていう励ましの言葉を大事にしていたせいで、ますます悲しさがこみ上げてしまいました。悪阻はまだあるけれど、赤ちゃんは、母の気づかぬうちに、亡くなっていました。

安定期より前に職場で妊娠報告するリスクのひとつが流産、ですが、私はそれでもみんなに言ってよかったと思っています。

妊娠を隠していたら仕事にもっと影響が出ていたでしょう。流産にしてもお腹の中に留まったまま亡くなった場合は「掻爬(そうは)手術」という全身麻酔を伴う手術が必要で、1日~2日は安静にしなければなりません。
同僚としても、妊娠していることを早めに知れたほうが仕事の調整もできるし、妊婦さんが突然数日職場に来ないということがあったとしてもバックアップする準備を整えておくことができます

そして何より、殺伐としがちなIT業界のオフィスに、ちょっとだけ優しさが流れました。チームの温かさを感じて、私は幸せでした。そのチームの強さは、流産したあとももちろん続きます。
あのときやっぱり言ってよかったと、今でも思います。

「妊娠2ヶ月」から言える、そんな社会になったらいいな

私の場合は「言ってよかった」に尽きますが、世間一般的には「妊娠2ヶ月で妊娠報告は早すぎる」という風潮が強いように思います。実際、芸能人や著名人の妊娠報告も、妊娠3ヶ月を過ぎてから、または安定期に入ってからが大半を占めています。

でも企業で働く一個人としては、妊娠して悪阻がはじまったら、たとえ妊娠2ヶ月でも無理せずすぐに報告したほうがいいと強く思います。そのほうが結局、みんなが働きやすい環境を作れるはずです。
そして、世間的にも「妊娠2ヶ月」の報告をすんなり受け入れるのが普通になってほしいと願っています。妊娠報告はかなりセンシティブな話題でもあるため、そう簡単には“世間の当たり前”が変化するとは思えませんが、働く女性が増えている今こそ必要な変化であると感じています。

まずは自分から第一歩を踏み出そう、ということで。
私は悪阻のあまりのつらさに妊娠を恐れてしまいあれから1年経ってしまいましたが、ようやくまた妊活を開始しました。
もし妊娠できたら、また同じように報告するつもりです。

著者:コロポンid:colopon

コロポン

北海道出身、旧帝大文学部卒業ののちにゲームプランナー・ディレクターに。その後5年で5社ほど働く中で派遣OLも経験。派遣OLブログを書いていたら、現在の会社である旅行系ITベンチャー企業に拾われました。Webメディアを運営しつつ、自分でも女性の生き方・考え方や旅関連の執筆業をしています。

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